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曝
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さら
ふりがな文庫
“
曝
(
さら
)” の例文
「病院とか
兵站部
(
へいたんぶ
)
とか、婦人たちは、それぞれ適宜な部署へ分けて、なるべく、危険に
曝
(
さら
)
されんように、明日でも配置してくれんか」
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
多摩川に
曝
(
さら
)
す手作りさらさらに何ぞこの
女
(
こ
)
の
許多
(
ここだ
)
恋
(
かな
)
しき。こう万葉に詠まれたところのその景色のよい多摩川で彼は終日狩り暮した。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
河岸に面して、軒の低い、古くて雨風に
曝
(
さら
)
された、小さな家が並び、なかば
毀
(
こわ
)
れた舟があげてあったり、干し網が垂れていたりした。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
朝
(
あした
)
にはポヽロの廣こうぢに出でゝ、競馬の
準備
(
こゝろがまへ
)
を觀、夕にはコルソオの大道をゆきかへりて、店々の窓に
曝
(
さら
)
せる
假粧
(
けしやう
)
の衣類を
閲
(
けみ
)
しつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかし水際に始めて昨日、今日の
嫩
(
わか
)
い命を托して、
娑婆
(
しゃば
)
の風に薄い顔を
曝
(
さら
)
すうちは銭のごとく細かである。色も全く青いとは云えぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
日華洋行
(
にっかようこう
)
の主人
陳彩
(
ちんさい
)
は、机に背広の
両肘
(
りょうひじ
)
を
凭
(
もた
)
せて、火の消えた
葉巻
(
はまき
)
を
啣
(
くわ
)
えたまま、今日も
堆
(
うずたか
)
い商用書類に、繁忙な眼を
曝
(
さら
)
していた。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
櫻に早い三月の初め、死體は朝日に
曝
(
さら
)
されて、道端の下水の中に轉げ込んで居たのを、町内の人達が見付けて大騷ぎになつたのでした。
銭形平次捕物控:013 美女を洗ひ出す
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
源吉は、熱っぽい頬を、夜風に
曝
(
さら
)
しながら、一つ一つが、余りに順序よく、破綻を起さなかったのが、
寧
(
むし
)
ろ、あっ気なくさえ思われた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「誰が親と奉公人と一緒にして物を言うような、そんな人があるものですか。こんなところで親の恥まで
曝
(
さら
)
さなくってもようござんす」
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それにかかわらず安陵竜陽みな凶終するよう論ずるは、性慾顛倒の
不男
(
ぶおとこ
)
や、
靨
(
えくぼ
)
を売って活計する色子野郎ばかりに眼を
曝
(
さら
)
した
僻論
(
へきろん
)
じゃ。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それが、あの本物の空襲下に
曝
(
さら
)
されて、どこの区域よりも二三倍がた、混乱ぶりのひどかったことは、まことに意外の出来ごとだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私は、いつまでも外気に顔を
曝
(
さら
)
していることに「或る危惧」を覚えたので、まだ酔いを醒してもいなかったのだが、御面師に声をかけた。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
裏の物干しには、笹村が押入れに
束
(
つく
)
ねておいた
夏襯衣
(
なつシャツ
)
や
半帕
(
ハンケチ
)
、
寝衣
(
ねまき
)
などが、片端から洗われて、風のない静かな朝の日光に
曝
(
さら
)
されていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
雨が
霽
(
は
)
れると水に濡れた家具や
夜具
(
やぐ
)
蒲団
(
ふとん
)
を初め、何とも知れぬ
汚
(
きたな
)
らしい
襤褸
(
ぼろ
)
の数々は旗か
幟
(
のぼり
)
のやうに
両岸
(
りやうがん
)
の屋根や窓の上に
曝
(
さら
)
し出される。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
斎戒沐浴して髪に香を焚きこめる、——刺客の手にかかることがあろうとも、見苦しい
首級
(
しゅきゅう
)
を
曝
(
さら
)
したくないとの
床
(
ゆか
)
しい御覚悟からなのだ。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お
前様方
(
めえさんがた
)
が人中で
面
(
つら
)
を
曝
(
さら
)
して、こんな会をしなさるのは、ああ、あの
夫人
(
おくさん
)
は
情
(
なさけ
)
深い感心な御方だと人に謂われたいからであろう。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先ず目についたのは鑵詰工場らしい、ほとんど吹き
曝
(
さら
)
しのバラックだ。大きい、
犢
(
こうし
)
ほどの樺色の樺太犬がのそりと、その前には出ていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
彼
(
かれ
)
は
絶
(
た
)
えず
或
(
ある
)
物
(
もの
)
を
探
(
さが
)
すやうな
然
(
しか
)
も
隱蔽
(
いんぺい
)
した
心裏
(
しんり
)
の
或
(
ある
)
物
(
もの
)
を
知
(
し
)
られまいといふやうな、
不見目
(
みじめ
)
な
容貌
(
ようばう
)
を
村落
(
むら
)
の
内
(
うち
)
に
曝
(
さら
)
す
必要
(
ひつえう
)
が
漸
(
やうや
)
く
減
(
げん
)
じて
來
(
き
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
あそこにアイスフォオゲルの
家
(
いえ
)
がある。どこかあの
辺
(
へん
)
で、北極探険者アンドレエの骨が
曝
(
さら
)
されている。あそこで
地極
(
ちきょく
)
の
夜
(
よ
)
が人を
威
(
おど
)
している。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
この驚くべき夫婦の秘密が明るみへ
曝
(
さら
)
し出されたけれども、それもほんの五六日世間の視聴を集めただけで、次第に忘れられたのであった。
日本に於けるクリップン事件
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
相川珠子と云えば、殺人鬼「赤い蠍」の第二の犠牲者として、無残にもその死体を銀座街頭に
曝
(
さら
)
された娘さんではなかったか。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「それはわかりませんが、
姦通
(
まおとこ
)
だということです……引き上げられてからまたその死骸を、三日の間
曝
(
さら
)
されるんだそうですよ」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これ等の売薬や書籍は白昼堂々と店頭に
曝
(
さら
)
されている。いずれも数年以前はその筋のお許しが出なかったものばかりである。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
祭の日などには舞台据えらるべき
広辻
(
ひろつじ
)
あり、貧しき家の児ら
血色
(
ちいろ
)
なき顔を
曝
(
さら
)
して
戯
(
たわむ
)
れす、
懐手
(
ふところで
)
して立てるもあり。ここに来かかりし
乞食
(
こじき
)
あり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それが
誘拐
(
ゆうかい
)
されて屋根のないボウトに
棲
(
す
)
み、何カ月も風雨に
曝
(
さら
)
されて、こんな物をただ一つの
玩具
(
おもちゃ
)
に一人で遊んでいたのだ。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
神楽坂署で夫の前科を云い立てられた時には、彼女は自分の身体を裸にして
曝
(
さら
)
されたよりも、浅間しく感ぜられたのだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「私はもしも
遣損
(
やりそこな
)
つて、
耻
(
はぢ
)
でも
曝
(
さら
)
すやうな事が有つちやと、それが苦労に成つて
耐
(
たま
)
らなかつたんだから、これでもう可いわ」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私はむくむくと床をぬけ出して、そのぢぢむさい姿を
日向
(
ひなた
)
に
曝
(
さら
)
し、人並に、否病めるが故に更により多くの日光を浴びようと端近くにじり出る。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
うまくランデブーすれば、
雄蝉
(
おすぜみ
)
は
莞爾
(
かんじ
)
として
死出
(
しで
)
の
旅路
(
たびじ
)
へと急ぎ、
憐
(
あわ
)
れにも木から落ちて
死骸
(
しがい
)
を地に
曝
(
さら
)
し、
蟻
(
あり
)
の
餌
(
え
)
となる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
針で刺すように冷い朝風に吹き
曝
(
さら
)
されながら、ほのぼのと明け行く雪の山を眺めていた三人連れの草鞋履きの男があった。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「そんなに永くぐずぐずしていちゃいかん。私は一秒一秒自分の命もここにいられる
方々
(
かたがた
)
の命も危険に
曝
(
さら
)
しているのだ。」
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
空の雄鶏は残らず来いと身構える——しかし、嵐に
面
(
おもて
)
を
曝
(
さら
)
すことさえおそれない「もう一つの」は、この時、微風に戯れながら相手にならない。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
本三位の卿の擒となりて京鎌倉に恥を
曝
(
さら
)
せしこと、君には口惜しう見え給ふほどならば、何とて無官の大夫が
健氣
(
けなげ
)
なる
討死
(
うちじに
)
を譽とは思ひ給はぬ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
隠居した後も、道を行きつつ
古草鞋
(
ふるわらじ
)
を拾って帰り、水に洗い日に
曝
(
さら
)
して自ら
剉
(
きざ
)
み、出入の左官に与えなどした。しかし伊兵衛は
卑吝
(
ひりん
)
では無かった。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と大津にゐて詠んでゐる句を見ると、二百年前にはそれが實景であつたかも知れぬが、今はもう半ば枯れて空しく無慘な殘骸を湖畔に
曝
(
さら
)
してゐる。
湖光島影:琵琶湖めぐり
(旧字旧仮名)
/
近松秋江
(著)
この様なる所にて犬畜生同様名も知れぬ
屍
(
かばね
)
を
曝
(
さら
)
すこと如何にも口惜しく候
儘
(
まま
)
、息のあるうちに月の光を頼りに一筆書残し申候、右に
認
(
したた
)
めし條々実証也
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
家の壁もところどころ
剥
(
は
)
げて
漆喰下地
(
しっくいしたじ
)
がむきだしになっているのは、雨や
旋風
(
かぜ
)
や、秋の気候の変化など、あらゆる荒天に
曝
(
さら
)
されて来たものと見える。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
何年もの風雨で
曝
(
さら
)
され、もはやはげかかっているその色が今日の荒々しい灰色の空の下では、佐伯祐三の絵にあるような都会の裏町の趣を見せている。
海流
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
だが、それはまだまだ、手軽な方でな、後で
曝
(
さら
)
け出された事実というのが、比べもつかんほど奇怪なことじゃった。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
これに反して他の一方は、危険と徒労とに
曝
(
さら
)
されてはいるけれども、時あって
莫大
(
ばくだい
)
な利得を挙げ得たことは、昔は今よりもさらに著しい体験であった。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
嗚呼人よ、東海君子国の世界に
誇負
(
こふ
)
する
所以
(
ゆゑん
)
の者は、一に鮮血を怒涛に洗ひ、死屍を戦雲原頭に
曝
(
さら
)
して、
汚塵
(
をぢん
)
濛々
(
もうもう
)
の中に功を奏する戦術の巧妙によるか。
渋民村より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
されたとしたら、どうして、その顔を、そのままなつかしい家人たちの前に
曝
(
さら
)
すことが出来るだろう! 彼は、一さんばしりに、逃げ去る外はないのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そんな年寄りになるまで生きていて、人から老人扱いをされ、浅ましい醜態を
曝
(
さら
)
して
徘徊
(
はいかい
)
する位なら、今の
中
(
うち
)
に早く死んだ方がどんなにましかも知れない。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
私などもその一人であるが、これではならぬと思ってつとめて天下の劇跡に眼を
曝
(
さら
)
すことにしているのである。
書について
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
その日、二人は電車を降りて別れるまで、この冒険の予想を、
殊
(
こと
)
に、どの程度まで自分達は危険に
曝
(
さら
)
されるであろうかという点について色々と語り合った。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
国民塗炭に苦しむここに十数年、我の忠実なる兵卒にして我のために
屍
(
かばね
)
を戦場に
曝
(
さら
)
せしものその幾千なるを知らず、我何ぞ永くこの悲劇を見るに忍びんや
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
ワシントン、
那波翁
(
なおう
)
云々
(
うんぬん
)
は
中々
(
なかなか
)
小生
輩
(
はい
)
の事にあらず、
万
(
まん
)
一
不幸
(
ふこう
)
相破
(
あいやぶ
)
れ
屍
(
かばね
)
を原野に
曝
(
さら
)
し
藤原広嗣
(
ふじわらのひろつぐ
)
等
(
ら
)
とその
品評
(
ひんぴょう
)
を同じゅうするも
足利尊氏
(
あしかがたかうじ
)
と成るを望まざるなり
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
如何
(
いか
)
なる
露国
(
ロシア
)
の、日本に対する圧迫、
凌辱
(
りょうじょく
)
に
依
(
よ
)
って、日本の政府が、あの
如
(
ごと
)
く日本国民を憤起させて
敢
(
あえ
)
て満洲の草原に幾万の同胞の
屍
(
しかばね
)
を
曝
(
さら
)
させたかは、当時
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
人々の前へ
曝
(
さら
)
け出しに行くことがどうして私にできようか!——何としてもそれはできない!——それ故に
ベートーヴェンの生涯:03 ハイリゲンシュタットの遺書
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(著)
それとも死ぬまでも惑い
悶
(
もだ
)
えて衰頽した
躯
(
からだ
)
を荒野に
曝
(
さら
)
すのが偉大であるか愚であるか、それは別問題として
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
曝
漢検準1級
部首:⽇
19画
“曝”を含む語句
曝露
雨曝
恥曝
吹曝
曝書
生曝
棚曝
偃曝
店曝
業曝
曝露症
野臾曝言
野曝
耻曝
簷曝雑記
秘密曝露
洗曝
曝骨
曝首
南軒曝背
...