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攫
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さら
ふりがな文庫
“
攫
(
さら
)” の例文
(
茫然
(
ぼんやり
)
してると、
木精
(
こだま
)
が
攫
(
さら
)
ふぜ、
昼間
(
ひるま
)
だつて
用捨
(
ようしや
)
はねえよ。)と
嘲
(
あざけ
)
るが
如
(
ごと
)
く
言
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
てたが、
軈
(
やが
)
て
岩
(
いは
)
の
陰
(
かげ
)
に
入
(
はい
)
つて
高
(
たか
)
い
処
(
ところ
)
の
草
(
くさ
)
に
隠
(
かく
)
れた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
庄太郎が女に
攫
(
さら
)
われてから七日目の晩にふらりと帰って来て、急に熱が出てどっと、床に
就
(
つ
)
いていると云って
健
(
けん
)
さんが知らせに来た。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「——誰かが
攫
(
さら
)
って……」といって入口の方を
指
(
ゆびさ
)
したと思うと、ガックリと頭を
垂
(
た
)
れた。ジュリアはまた失心してしまったのだった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「来てはいけないのか。あっ待った。そこの
女子
(
おなご
)
。いずれおまえは、里から
攫
(
さら
)
われてきた人妻か娘だろう。あぶないよ、
退
(
の
)
いていな」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
品物をポケットへ
攫
(
さら
)
い込むが早く玄関へ急いだ。流石の策士も奇襲を食って慌てたのだった。寒中にも
拘
(
かかわ
)
らず、額に汗をかいていた。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
昔は天狗が人を
攫
(
さら
)
って来ては掛けたので、この名があると云うているが、恐らく空葬の習俗が
泯
(
ほろ
)
びた後に天狗に附会したものであろう。
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
わざ/\神田から來た錢形平次の鼻を明かして、
顎
(
あご
)
の下から下手人を
攫
(
さら
)
つたのが、この中年男の自尊心を、すつかり滿足させたのです。
銭形平次捕物控:203 死人の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
復員者はそこここに戻って来て、崩壊した駅は雑沓して
賑
(
にぎ
)
わった。その妻子を
閃光
(
せんこう
)
で
攫
(
さら
)
われた男は晴着を飾る
新妻
(
にいづま
)
を伴って歩いていた。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
どこでさらわれた、どうして
攫
(
さら
)
われた、さらった武士はどんな人相かと、拙者たたみかけてききますと、場所は浅草の
河喜
(
かわき
)
という料亭。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ろくでもないばかな共和めが! 世の母親がいくらきれいな子供をこしらえても、皆
攫
(
さら
)
ってゆきやがる。ああこの子は死んでしまった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そしてすばしこく相手の手からその石をひつ
攫
(
さら
)
つたかと思ふと、獣のやうな狡猾さと敏捷さとをもつて、いきなり外へ駆け出して往つた。
石を愛するもの
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
月はな
蓋
(
ふた
)
をあけてみて、思いもよらぬお得意が
攫
(
さら
)
われているのを発見することがあるが、みなK紙にしてやられているのである。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
なにしろ一味の重鎮が
攫
(
さら
)
われたのだから、じっとしてはいられない。三人の侍臣に念を押して出てゆくと、若さまは大笑いに笑いだした。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
つまり、山路を、こけつまろびつ上らんとして、危なく崖下に顛落することの不幸の代りに、空中高く
攫
(
さら
)
われてしまったのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
吾輩みたいに無代価で
攫
(
さら
)
って来たシロモノを売りつける癖の附いた人間から見れば、この金網の番人なぞは、よっぽど尊敬していい訳だ。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それを私が認めると同時にその強盗らも認めたと見え、両人は立ち上って受け取った物だけ
引
(
ひ
)
っ
攫
(
さら
)
いある方向へ逃げ去ってしまったです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
一個の蟇口、十円足らずの金銭がこうして二つの魂を奪い、生命を
攫
(
さら
)
っていくのかと思いますと、
膚
(
はだえ
)
に
粟
(
あわ
)
の噴くのを覚えます。
錯覚の拷問室
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
かめ「マアどうもいけしゃア/\よく
他
(
ひと
)
の娘を
攫
(
さら
)
っておいて、
強談
(
いすり
)
がましい事をおいいだが、
誰
(
たれ
)
に沙汰をして他の娘を自分の娘におしだよ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
手前たちも覚えてゐるだらうが、去年の秋の嵐の晩に、この
宿
(
しゆく
)
の庄屋へ忍びこみの、有り金を残らず
掻
(
か
)
つ
攫
(
さら
)
つたのは、誰でも無えこのおれだ。
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そしてその友だち自身、何の理由もなく、大学へ進む途中に
攫
(
さら
)
われるようにしてある年上の美しい女とあたら秀才の身を心中してしまった」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
𤢖は
此
(
こ
)
の雪の夜に、
何処
(
どこ
)
からか若い女を
攫
(
さら
)
って来たのであろう。お葉は
愈
(
いよい
)
よ驚き
怪
(
あやし
)
んで、
猶
(
なお
)
も
窃
(
ひそ
)
かに
其
(
そ
)
の
成行
(
なりゆき
)
を窺っていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お
品
(
しな
)
は
何時
(
いつ
)
でも
日
(
ひ
)
のあるうちに
夜
(
よ
)
なべに
繩
(
なは
)
に
綯
(
な
)
ふ
藁
(
わら
)
へ
水
(
みず
)
を
掛
(
か
)
けて
置
(
お
)
いたり、
落葉
(
おちば
)
を
攫
(
さら
)
つて
見
(
み
)
たりそこらこゝらと
手
(
て
)
を
動
(
うご
)
かすことを
止
(
や
)
めなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
攫
(
さら
)
われた子供の安否は急を告げている。家には二人の死人がある。もうこの上は、猶予なく警察へ報せなければならない。
寒の夜晴れ
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
卓一はその美しさに
肚胸
(
とむね
)
をつかれた思ひを起し、なぜか激しい感動に一瞬己れを
攫
(
さら
)
ひ去られてしまはなければならない気持に追はれるのだつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
二本松義継の為に
遽
(
にわか
)
に父の輝宗が
攫
(
さら
)
い去られた時、鉄砲を打掛けて其為に父も殺されたが義継をも殺して了った位のイラヒドイところのある政宗だ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
てっきり何者かに
攫
(
さら
)
われたのです。イヤ、何者かではない、あの三重渦巻の怪物に連れ去られたのに違いありません。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
料理場を飛び出すと、まるで
巫女
(
ウイッチ
)
のように宙を飛んで家へ駆けてゆき、お台所から鶏卵と
水飴
(
みずあめ
)
と
乾杏子
(
ほしあんず
)
をひっ
攫
(
さら
)
って、えらい勢いで駆け戻って来ました。
キャラコさん:08 月光曲
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ひとりで舞台を
攫
(
さら
)
ったヘンダスンは、得意時の人間の商人的馬鹿ていねいさで
卓子
(
いす
)
へ近づいて、いきなりポケットから二通の書類を取り出して叩きつけた。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そして、信長と秀吉と家康は、満身に照明を浴びつゝ相
踵
(
つ
)
いで登場して、英雄の名を
攫
(
さら
)
つてしまつたのである。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
これは、石坂家では美しい男ばかり生むから、越後国彌彦山に棲む玅太郎婆あさんと呼ぶ雪女に、
攫
(
さら
)
われて行くのであると村人は信じているのであるという。
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
昔の日本人は前後左右に気を配る以外にはわずかに
鳶
(
とんび
)
に
油揚
(
あぶらげ
)
を
攫
(
さら
)
われない用心だけしていればよかったが
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
また我はガニメーデが
攫
(
さら
)
はれて
神集
(
かんづとひ
)
にゆき、その
侶
(
とも
)
あとに殘されしところにゐたりとおぼえぬ 二二—二四
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
騒ぎに紛れて千浪をひっ
攫
(
さら
)
い、
急遽
(
きゅうきょ
)
袂
(
たもと
)
をつらねて下山の途についたと知るや否、
腰間
(
こし
)
に躍る女髪兼安を抑えてただちにあとを踏み、今やっとこの中腹のお花畑へ
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
激しい波浪と闘いながら、辛うじてつかまり合っているような自分達のうちから、また一人
攫
(
さら
)
われて行くということを、考えてさえゾッとしずにはおられなかった。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「あッは!」と
魔女
(
まじょ
)
は
嘲笑
(
あざわら
)
った。「お
前
(
まえ
)
は
可愛
(
かわい
)
い
人
(
ひと
)
を
連
(
つ
)
れに
来
(
き
)
たのだろうが、あの
綺麗
(
きれい
)
な
鳥
(
とり
)
は、もう
巣
(
す
)
の
中
(
なか
)
で、
歌
(
うた
)
っては
居
(
い
)
ない。あれは
猫
(
ねこ
)
が
攫
(
さら
)
ってってしまったよ。 ...
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
文吾は再び拔き足して、母の傍に忍び寄ると、其の新らしいじんきの束を
攫
(
さら
)
つて、更に物蔭へ隱れた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
毎晩新しい
贔屓
(
ひいき
)
から、宴席にまねかれぬこととてなく、江戸中の評判を、すっかり
攫
(
さら
)
った形であった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、見ると、黒い
絮
(
わた
)
のような煙の中に怪物の姿があって、それが
尖
(
と
)
んがった牙のような
喙
(
くち
)
と長い爪を見せて、穴から一人の者を
攫
(
さら
)
って煙に乗って空にのぼろうとした。
嬌娜
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ガブリエル夫人は、夫の不在中に女の子を生んだが、間もなくその赤ん坊は邸内から何者にか
攫
(
さら
)
われて、八方手を尽くしてたずねたが、ついにその行くえが知れなかった。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
脛
(
すね
)
までひたして、がばがばと歩き廻り、また波打際にとって返す。波打際で海に向って立っていると、波が静かに押し寄せて来て、
蹠
(
あしうら
)
や
踵
(
かかと
)
の下の砂をすこしずつ
攫
(
さら
)
って行く。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
まるで私が
攫
(
さら
)
って行きはしまいかと怖れるように、クージカをしっかり抱き緊めるのです。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
家へ帰って来ると、二匹の犬のほうがかえって彼女の愛情を
攫
(
さら
)
ってしまうのだった。彼女は毎晩、母親のように、優しく犬の世話をした。暇さえあれば、二匹の犬を撫でてやった。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
けれども掘り返され掘り返されする内に、此の土地に投ぜられた資本及び労働に対する報酬は減って来た。播かれた種が皆な烏に
攫
(
さら
)
って行かれたり、唐茄子に
糸瓜
(
へちま
)
が実ったりして来た。
第四階級の文学
(新字新仮名)
/
中野秀人
(著)
骸骨の樣な橋も黒々と長く見えてゐたが、斜めに見えてゐたものが眞正面に展いて見えたかと思ふと、またするすると斜めに走つて、雪のなかに
攫
(
さら
)
はれるやうに見えなくなつてしまふ。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
「昼間だったかね。賊は金や宝石を
攫
(
さら
)
って行ったんだろう。ざらにある事件さ」
ペルゴレーズ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
昨年の今頃に老人は独り息子を強盗罪で連れて行かれ、そのため老婆は気違いにまでなっていた。洋服男さえ見れば彼女はいつもの発作をおこし「人
攫
(
さら
)
い、人攫い!」と喚き廻るのだった。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
比嘉春潮
(
ひがしゅんちょう
)
君の話によれば、かの島でモノに
攫
(
さら
)
われた人は、木の梢や水面また断崖絶壁のごとき、普通に人のあるかぬところを歩くことができ、また
下水
(
げすい
)
の中や
洞窟
(
どうくつ
)
床下
(
ゆかした
)
等をも平気で通過する。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
斯
(
こ
)
うした
佗
(
わび
)
しい心持の時に限って思出されるのは、二年
前
(
ぜん
)
彼を捨てゝ
何処
(
どこ
)
へか走ったグヰンという女であった。彼女は泉原の
不在
(
るす
)
の間に、銀行の貯金帳を
攫
(
さら
)
って
行方
(
ゆくえ
)
を
晦
(
くら
)
まして了ったのである。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
山のような大波に
攫
(
さら
)
われて、艦が烈しく傾斜して、浪頭が眼前に散らついた。艦がギイギイと急転回して、今こそ渦巻の中へ捲き込まれたかと思わず
瞼
(
まぶた
)
を閉じずにはいられなかったのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
かくて磯山は
奔竄
(
ほんざん
)
しぬ、同志の軍用金は
攫
(
さら
)
われたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
攫
漢検1級
部首:⼿
23画
“攫”を含む語句
引攫
一攫
攫取
人攫
一攫千金
掻攫
鷲攫
把攫
手攫
攫徒
攫客
強攫
一抓一攫
攫出
一攫一抓
吹攫
打攫
攫得
攫浚付
攫者
...