さら)” の例文
裏へ行って手を洗って戻ってくると、かしらは汚点ひとつない、まっさらの日の丸の旗を畳紙たとうからだして綱に結びつけ、手下といっしょにえッえッとひきあげた。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そのせゐで、不折氏の門札はいつもさらだ。そしてその六朝文字が初めから段々とちがつて来てゐる。
「会社へ勤めるのにさらの洋服を拵えにゃならん云うて来とるんじゃ。」為吉は不服そうだった。
老夫婦 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「二年以上もここに突き刺さっていたにしては、まるっきり釘の錆び方がちがう。……守宮の身に近いところはともかく、釘の頭のほうはもっと錆が浮いていなければならないはずなのに、見ろ、この通りまっさらだ」
顎十郎捕物帳:24 蠑螈 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)