さら)” の例文
大気都姫はとうとう食事の度に、彼と同じさらほたりを、犬の前にも並べるようになった。彼はにがい顔をして、一度は犬をい払おうとした。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奇異なる二重の天秤のさらの上に、見えざる「影」の犯した悪行と、未行はれずして止んだ善行とをはかつてゐるのである。自分には天秤のさらの上り下りが見えた。
彼はそこで犬と共に、肉を食ったり酒を飲んだりした。犬は彼の不快を知っているように、いつもさらめ廻しながら、彼の方へきばいて見せた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それからさらだのほたりだのが粉微塵こなみじんに砕ける音、——今まで笑い声に満ちていた洞穴ほらあなの中も、一しきりはまるで嵐のような、混乱の底に投げこまれてしまった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、彼は丁度その時、さらの魚に箸をつけてゐたせゐか、彼女の相図には気もつかずに
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)