さら)” の例文
父の首がさらされてから十三日目の晩に、六三郎は手拭に顔を包んでそっと福島屋へ訪ねて行った。今の身の上で晴れがましい遊興はできない。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしは処刑おしおきになるだろうが、その代り私の首がさらされる頃は、お静を始め七人の花嫁は、島原か長崎へ叩き売られているよ
正しい記録では『水左記すいさき』の康平六年二月十六日の条に、安倍貞任あべのさだとう以下の首級を都に渡して、西獄の𬄚の木にさらしたとあるそうである(古名録巻二九)。
アテヌキという地名 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
足利尊氏あしかがたかうじの木像がさらされるとかいうなら、筋は通るが、しかし、碩学せきがく高僧である大和尚が、死後まで、俗人冷遇の目のかたきにされるというのがわからねえでがす
恐らく一番貧乏くじを引いたのは氏政だろう。首は氏照と一緒に、京都一条の戻橋もどりばしさらされて居るのである。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
将門が醍醐の開基理源大師の法力ほふりきいましめられ、さらくびに遭つたのを残念がつて、首が空を飛んで来たのを拾つたのだといふが、事に依つたら、大師が申請まをしうけたのかも知れない。
「旗あげせぬうちに捕えられ、打ち首じゃ! さらくびじゃ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたしは処刑おしおきになるだろうが、その代り私の首がさらされる頃は、お静を始め七人の花嫁は、島原か長崎へ叩き売られているよ
すすき尾花の山科原のまんなかに、竹の柱を三本立てて、その上に人間の生首が一つさらしてあるのです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いとま乞いをして寺を出るころには雨が降って来た。六三郎は雨の中を千日寺へも行った。父の死首しにくびはもうさらされていないでも、せめて墓詣りだけでもして行きたいと思ったのである。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幕軍は、城中に在ったものは老幼悉く斬って、その首をさらした。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「お前さんは此間から、殺しも斬合いもさらし首も描いたが、女の、怨女の末期は手本が無いと言って居なすった」
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
人間の首も、ただの首ではない、獄門台にさらされている人間の生首を一つ描いてあることにまぎれもないのですから、お松がかおの色をかえないわけにはゆきません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかもその六三郎は千日寺にさらされている首のひとつにゆかりのある者であった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そう言うわけじゃございませんが、お気に召さないといけませんから、描くのは勘弁して下さい——死人やさらし首と並べて描いちゃ、第一気色が悪うございます」
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
浪士たちににくまれてツイこの間の晩、首を斬られて、両国橋へさらし物にかけられた惣兵衛の家です。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白昼都大路でさらされようとも、この男の首だけは秘密にしてやるべきことが武士道に叶っている——それが今日になって、何人の手に於ても考証が届くはずはなかろう。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鈴ヶ森で白髪首を並べてさらされたことは、よもや忘れはしめえ、みんなお前のした事だよ。
これより先、浪人たちにうらまれて、両国橋にさらされた本所の相生町の箱屋惣兵衛の家が、何者かによって買取られて、新たに修復を加えられて、別のもののようになりました。
面白可笑おかしく描いて、女子供の慰み物にするのが稼業ではないか、——どれ見せい、貴様の絵は——んだこりゃ、どれもこれも、気味の悪い、斬り合いや、死骸や、さらし首ばかり
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
やぶへでも捨ててしまえばいいのに、こうして土地の目抜きの橋の上まで、わざわざ持って来て捨てた以上は、半ば以上は、さらものの意図を含んだ所業と見なければなりますまい。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「人形の首をさらした、——という話、気味は悪いが、充分に面白い積りです」
こんな狂言をして乗込んで金をろうとして来た者だ、それだから二人とも殺してしまった、以後の見せしめにこの首をさらものにしてやるがよい、後難は更にうれうるところはない
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鈴ヶ森で白髮首しらがくびを並べてさらされたことは、よもや忘れはしめえ。
右の者商人の身ながら元来賄金まひなひきんを請ひ、府下の模様を内通致し、あまつさへ婦人を貪り候段、不届至極につき、一夜天誅を加へ両国橋上にさらし候所、何者の仕業に候、取片附け候段、不届かつ不心得につき
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
河井龍之介の首は、間もなく鈴ヶ森にさらされました。
かみだって、好んで見せたいからさらすわけじゃあるめえ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
河井龍之介の首は、間もなく鈴ヶ森にさらされました。