さら)” の例文
洪水の時にでも、土をさらわれて行ったらしい断岸きりぎしに、楊柳かわやなぎおおきなのが、根を露出して、水のうえへかがみ腰に枝を垂れている——
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歯の根がガチガチ鳴り出して、眼がポオとなってウッカリすると波にさらわれそうになって来たので四人がだんだん近寄って来て……これはイカン。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
物持、分限、わけても非道な金貸などを襲つて、丁度隙間から入る風のやうに何處からともなく忍び込み、現金だけをさらつて、煙の如く消えるのです。
それをしたら、即座そくざに彼女の魅力の膝下しっかに踏まえられて、せっかく、固持して来た覚悟を苦もなくさらって行かれそうな予感が彼を警戒さしたのであろう。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
恰度これから午後にかけて干潮時と見え、つやのある引潮の小波さざなみが、静かな音を立てて岩の上をさらっていた。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
以上いじやうごどく、大體だいたい調査てうさんだのであるが、なほこまかに、小石こいしや、どろさらしてたら、玉類たまるゐ金環類きんくわんるゐ發見はつけんもあるのだらうが、それは坪井博士つぼゐはかせられてからにして
「其れは長二や、だお前には早過ぎるやうだよ」と伯母はかうべを振りぬ「私も結局孤独ひとりの方が好いと、心から思ふやうになつたのは、十年以来このかたくらゐなものだよ——今だから洗ひさらひ言うて仕舞ふが、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「湖水をさらった天罰だ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
八五郎を拝んで、平次を引出したのは、土地の仲間にこの功名をさらって行かれたくないばかりの苦策くさくだったのです。
「きょうは、社中が寄って、さらいやら、新曲の評をし合うているのじゃ。ゆるりと、遊んでゆけ」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
このゲンコの梅という奴は、ずっと前に大人の力持をやって相当人気を博していたもんだが、アトから来た少年力持の吾輩に人気をさらわれてスッカリ腐り込んでいた奴だ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
八五郎を拜んで、平次を引出したのは、土地の仲間にこの功名をさらつて行かれ度くないばかりの苦策くさくだつたのです。
その狐か狸かがさらって行った金高を集めたなら、大したものづら……といったような話を、頭に刻み込み刻み込み行くうちに銀之丞は、いつのにか菊川の町外れを右に曲って
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
平次はその日のうちに人を雇つて、お秀の家の窓下の川二間四方ほどのところを丁寧にさらひました。
喰う米も無い(当時一升十銭時代)貧窮のただ中に大枚二円五十銭の小遣(催能の都度に祖父が費消する定額)をさらって弟子の駈り出しに出かけたので、祖母や母はかなり泣かされたものだという。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
平次はその日のうちに人を雇って、お秀の家の窓下の川二間四方ほどのところを丁寧にさらいました。
ナアニ途中で波にさらわれたと云いやあソレッキリだからね。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「三輪の親分にもさう言つてやるが宜い。隅田川をさらつたつて鑿なんか出るわけはないとな」
「成程そう言ったものですかね、親分のに落ちないことが、どう間違ったってあっしの腑に落ちる筈は無い、それじゃしばらくドブさらいでも何でもやって見るとしましょうか」
そのころどこからともなく江戸に現われた修験者しゅげんじゃで、四十五六の魁偉かいいな男でしたが、不思議な法力を持つとうわさされて、わずかの間に江戸中の人気をさらい、谷中に建てた堂宇は
物をも言わずに花嫁の駕籠を引っさらって、引摺るように、横手の狭い路地の口へ——。
物をも言わずに花嫁の駕籠を引っさらって、引摺るように、横手の狭い路地の口へ——。
その上あの邊はさらつたばかりで自棄やけに深いから危ふくおぼれかけたところを——
「親分さんが、昨夜ゆうべ、——池は明日さらってみるとおっしゃったものですから」
「相棒は氣が變つた。左吉松の匕首を取上げると、後ろから馴々しく近寄つて、自分で自分を縛つて居る左吉松の咽笛のどぶえを、一と思ひに掻ききり、二千五百兩の小判をさらつて逃げ出してしまつた」
その頃何處からともなく江戸に現はれた修驗者しゆげんしやで、四十五六の魁偉くわいゐな男でしたが、不思議な法力を持つと噂されて、僅かの間に江戸中の人氣をさらひ、谷中に建てた堂宇は、小さい乍ら豪勢を極め
その頃江戸中をふるえ上がらせた兇賊で、人もあやめず、戸障子も破らない代り、巧みに人の虚を衝いて、深夜の雨戸を開けさせて入り、抜刀で脅して有金を残らずさらって行く手際は、巧妙と言おうか
「天狗がさらわない代り、良い年増が自分の巣へくわえ込むよ」
「その溝をさらってみようと思うんだ」
「明日は一つ池をさらってみよう」