さら)” の例文
おれのからだが、天日てんぴさらされて、見る/\腐るとこだつた。だが、をかしいぞ。あれは昔だ。あのこじあける音がしたのも、昔だ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
『少將は心弱き者、一朝事あらん時、妻子の愛にかされて未練の最後に一門の恥をさらさんもはかられず、時頼、たのむは其方一人』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
吾人たとひ現時に於て骨を溝中にさらすとも百世の後、我日本の精神界、道徳界に大造たいざうあるの名を遺さば亦以てうらみなかるべし。
信仰個条なかるべからず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
世俗の空気にさらされて、それ相応に萌芽を出し生長をぐるものなれば、その出来不出来は、その培養たる教育の良否によって定まることなり。
家庭習慣の教えを論ず (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だが、これはまあ、何ということだ。その植物は、どの茎もどの茎も、皆半分位の所から折り取られて、見るも無慙むざんなむくろをさらしていたではないか。
毒草 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
のちにはらんで産むところの子、両牙長くい尾角ともに備わり、げんとして牛鬼のごとくであったので父母怒ってこれを殺し、銕のくしに刺して路傍にさらした。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
本身を隠し得ず、また一日のうち三度皮肉地に落ち熱沙身をさらすと答う、何が一番竜の望みかと問うと、畜生道中正法を知らぬ故人間道に生まれたいと答う
渡海以来の某は日夜戦陣に屍をさらすをもって本意として来た。生きて日本へ帰る事などかつて思った事もない。老骨一つ、よし此処に討死しても日本の恥にもなるまい
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ふと気がつけば、草庵の外に横たはり、露を受け、早朝の天日にさらされてゐる自分の姿を見出した。
閑山 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「ここに我々にとっての小さな仕事があるんだがね。もしこれがうまくゆけば、一人の全く疑惑の中にある生活を、明るみにさらけ出してみせることが出来ると云うものだよ」
彼は世を恨むるあまりその執念のるままに、人の生ける肉をくらひ、以つていささか逆境にさらされたりし枯膓こちよういやさんが為に、三悪道に捨身の大願を発起ほつきせる心中には、百の呵責かしやく
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
野育ちだから、生来具有の百の欠点を臆面もなくさらけ出して、所謂いわゆる教育ある人達を顰蹙ひんしゅくせしめたけれど、其代り子供の時分は、今の様に矯飾きょうしょくはしなかった。みんな無教育な親達のお蔭だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
命を不斷の戰にさらして爲めに心中に
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
おろしに吹きさらされて、荒草深い山裾の斜面に、万蔵法院まんざうはふゐんのみあかしの煽られて居たのに目馴れた人たちは、この幸福な転変に目を睜つて居るだらう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ふと気がつけば、草庵の外に横たわり、露を受け、早朝の天日にさらされている自分の姿を見出した。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
飄日のためにさらされず、蚊虻のために触嬈せらるるところとならずや〉、風雨やんでかの竜一年少梵志ぼんしに化し、仏を拝し法に帰した、これ畜生が仏法に入ったはじめだと見ゆ。
秋の野風にさらして、恨みさびたる其樣は、如何なる大道心者にても、こゝろうごかんばかりなるに、峰の嵐にうづもれて嘆きの聲の聞えぬにや、鈴の音は調子少しも亂れず、行ひすましたる瀧口が心
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
積悪の応報覿面てきめんの末をうれひてかざる直道が心のまなこは、無残にもうらみやいばつんざかれて、路上に横死おうしの恥をさらせる父が死顔の、犬にられ、泥にまみれて、古蓆ふるむしろの陰にまくらせるを、怪くも歴々まざまざと見て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おれのからだが、天日てんぴさらされて、見る見る、腐るところだった。だが、おかしいぞ。こうつと——あれは昔だ。あのこじあける音がするのも、昔だ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
あんな勿体もったいぶった顔付を臆面もなく人前へさらすのは不名誉至極な話である。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
全く以て恥さらしだ。
さうして其が乾くと、谷の澱みに持ちりて浸す。浸してはさらし、晒しては水に潰でた幾日の後、筵の上で槌の音高くこも/″\、交々こも/″\と叩き柔らげた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
山颪に吹きさらされて、荒草深い山裾の斜面に、万法蔵院の細々とした御灯の、あおられて居たのに目馴れた人たちは、この幸福な転変に、目をみはって居るだろう。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ずうと這い寄って来た身狭乳母むさのちおもは、郎女の前に居たけをそびやかして、おおいになった。外光の直射を防ぐ為と、一つは、男たちの前、殊には、庶民の目に、貴人あてびとの姿をさらすまい、とするのであろう。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)