こゝ)” の例文
爾来じらい同志を糾合きうがふし、相共に此問題を研究し来りしが、時機やうやく到来し、こゝに一小雑誌を刊行して我が同胞にまみゆるの栄を得たるを謝す。
「平和」発行之辞 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
縁談どころか、瑠璃さんには、何時までも、こゝにゐて貰ひたいのだ。殊に、光一があゝなつてしまへば、お父様の子はお前だけなのだ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
げにこゝにいたり我は自らわが及ばざりしを認む、喜曲または悲曲の作者もそのテーマの難きに處してかくくぢけしことはあらじ 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
取出し夫見よ酒も肴も幾許いくらでも出せ喰倒しをするやうな卑劣ひれつの武士と思ふかこゝ盲目めくらめと云ながら百兩餘りもあらんと思はるゝ胴卷どうまき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくわたしはばけものといふものは非常ひぜう面白おもしろいものだとおもつてるので、これくわんするほんの漠然ばくぜんたる感想かんさうを、いさゝこゝぶるにぎない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あらためてこゝふ。意味いみおいての大怪窟だいくわいくつが、學術がくじゆつひかり如何どうらされるであらうか。ふか興味きようみもつ此大發掘このだいはつくつむかへざるをない。
動物性毒に関する迷信もはなはだ数多いが、就中なかんづく毒蛇に関しては古来色々の伝説が行はれて居るからこゝれを説いて見ようと思ふ。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
しかしながら彼のために不幸なことには、一旦癒えていた彼のいまわしい性癖に油を注ぐ一人の女性がこゝに登場して来るのである。
真実ほんとに仕方が無いぞい——彼娘あのこは。』と細君は怒気を含んで、『其袋をこゝへ持つて来な——これ、早く持つて来ねえかよ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
只管ひたすら走りて大通りに出でこゝにて又馬車に飛乗りゼルサレム街にる警察本署をしていそがせたり目科は馬車の中にても心一方ひとかたならず騒ぐと見え
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
此時このとき如何いかうれしく、また、如何いかなる談話だんわのあつたかはたゞ諸君しよくん想像さうぞうまかせるが、こゝ一言ひとことしるしてかねばならぬのは、この大輕氣球だいけいききゆうことである。
お前さんは心配をしねえでいゝよお隅さんを連れて構わず往って下さい、多助さんも行って下さい、旦那様がこゝにいては悪いから帰って下さえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その留守の事だすが、こゝに逃げ込んで来た旅人が、クレバスの中に落ちて、行方が分らなくなった椿事ちんじが持ち上りました。
したがつこゝ堅實けんじつなる基礎きそ出來でき以上いじやう基礎きそうへつて今後こんごおほい日本にほん産業さんげふ振興しんこう貿易ぼうえき發達はつたつはかつてくことが、吾々われ/\政府せいふ責務せきむであり
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
このこと最後さいごこうおい再説さいせつすることだからこゝには説明せつめいりやくするが、とにかく餘震よしんおそれるにりない。たゞおそるべきは最初さいしよ大地震だいぢしん主要動しゆようどうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
色々と思ひまはした末にこゝまで来ると、彼はそこに生き甲斐のない自分を見出だした。敗亡の苦い淋しさが、彼を石の枕でもしてゐるやうに思はせた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
余与よと京水と同行どうかう十人小千谷をはなれて西の方●新保しんほ村●薮川新田やぶかはしんでんなどいふ村々を一宮いちのみやといふ村にいたる、山間やまあひ篆畦あぜみち曲節まがり/\こゝいた行程みちのり一里半ばかりなり。
明治二十四年十二月十八日、代議士田中正造は、第二議会へ始めて「足尾銅山鉱毒加害の儀に付質問書」を提出して、こゝに足尾銅山鉱業停止の火蓋ひぶたを切つた。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こゝまたきいちやんととなへて、もと、其處そこうち内藝妓うちげいしやをしてたのがある。いま堅氣かたぎで、手傳てつだひにる。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なに、構はん/\、こゝに麿くさかい好きな丈け食べるこつちや、足らなんだら又煎つて呉れるぞ。」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
もしまた醫學いがく目的もくてきくすりもつて、苦痛くつううすらげるものとすなれば、自然しぜんこゝに一つの疑問ぎもんしやうじてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あまり義太夫をやりすぎたのである。つまり、得意が身を殺してしまつたのである。いくら得意でもホドホドにしなければならぬといふ生きた例をこゝに見ることが出来る。
駒台の発案者 (新字旧仮名) / 関根金次郎(著)
自分がこゝまで流れて来るには、あの無恋の状態の、なま/\しい体験があつての事だ。……
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
この動力(源因)はすなはち術語の罪過にして、世俗の所謂過失及び刑法の所謂犯罪等と混同すべからず。例之たとへこゝに曲中の人物が数奇不過不幸惨憺さんたんの境界に終ることありと仮定せよ。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
最初から阪崎先生や民友社の誤謬を叱り飛すと大袈裟に出掛けた僕だから今更ら智者も千慮の一失と胡魔化したとて、どうせ諸君が御承知なさるまいからこゝに謹んで正誤致します。
こゝに至つて両校の間に繋つた一縷の連鎖すらも、全然切断せられて了つたのである。
よく非常防空のじつを挙げ、こゝに、第一回空襲の敵機を文字通り撃滅し得たり……。
そんなら自分が今こゝで平岡のためはんして、連借でもしたら、うするだらう。矢っ張りの時の様に奇麗に片付けて呉れるだらうか。あに其所そこ迄考へてゐて、断わつたんだらうか。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きぬぎ更へんとて家にかへれば、ベルナルドオとぶらひ來て我を待てり。われ。いかなればこゝには來たる。さきの婦人をばいづくにかおきし。友は指をてゝ我をおどすまねしていはく。け。
廿にぢう四年中に雑誌編輯ざつしへんしうの手を洗つてから、こゝとしること九年になります、ところの九の字がまた不思議ふしぎで、実は来春らいしゆんにもつたら、又々また/\手勢てぜいひきゐ雑誌界ざつしかいに打つて出やうとふ計画も有るのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さればこゝにも天安てんやすが、家台見世から仕上たる、二階造の大道具、其小道具の器物迄、そつくり跡を引受けて、彼十二時の趣向に基き、下料やすいを名代看板に、再び見世をあけ六ツから、廓帰の御入来あらば
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
而してこゝで謂ふ心理的発展とは、所詮修辞的発達の意である。
詩と現代 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
と畳みかけてなじる。こゝにアルマンは飜然ほんぜんとして夢から覚めた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
けれどもこゝ大問題だいもんだいがあるのよ、なに
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
こゝ全都ぜんと繁栄はんえい
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こゝの主人は、館花浪路たてはななみぢと云ふ老人で、井上八段の門下で、幸田露伴先生とは同門だつた。時々幸田さんのところへお相手に行つてゐた。
将棋 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
心こそ凡てのものを涵する止水しすゐなれ。迷ふもこゝにあり、悟るも茲にあり、殺するも仁するも茲にあり、愛も非愛も茲にこそたゝふるなれ。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
きらひ鎌倉の尼寺あまでらへ夜通のつもりにて行れるなり出入の駕籠舁かごかき善六といふがたつての頼み今夜はこゝに泊られしなりと聞かぬ事まで喋々べら/\と話すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
化物學ばけものがくといふ學問がくもんがありとすれば、いままでべたことは、その序論じよろんるべきものであつて、こゝにはたゞ序論じよろんだけをべたことになるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
さてこゝに到りてわが記憶才に勝つ、そはかの十字架の上にクリストかゞやき給ひしかど我はふさはしきたとへを得るをえざればなり 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こゝで下手でも安田一角という者は、剣術の先生で弟子も持っているから、丁度お隅に惚れているのを幸い、一角をおいやって惣次郎を殺し
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
余は何事なるや知らざれどこゝにて目科と共に馬車をくだり群集を推分おしわけて館の戸口に進まんとするに巡査の一人強く余等よらさえぎりて引退ひきしりぞかしめんとす
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
色事師いろごとしの面目にかけてもと、必死になって侍従の君に泣きを入れたいきさつは、わずらわしいのでこゝに詳述するのを避けよう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
世の中のことは御互ひに助けたり助けられたりさ——まあ、勝野君、左様さうぢや有ませんか。今こゝで直に異分予を奈何どうするといふ訳にもいかない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今年ことし十二さい少年せうねんにはめづらしきまで大人似おとなびて、氣象きしよう凛々りゝしい、擧動きよどう沈着ちんちやくな、まるで、小櫻木大佐せうさくらぎたいさこゝるやうな、雄壯をゝしき少年せうねんとはなつた。
この際には後者の場合即ち鉱物(こゝに於ては石)が毒(又は薬)と見做された迷信のことを書いて見ようと思ふ。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
余与よと京水と同行どうかう十人小千谷をはなれて西の方●新保しんほ村●薮川新田やぶかはしんでんなどいふ村々を一宮いちのみやといふ村にいたる、山間やまあひ篆畦あぜみち曲節まがり/\こゝいた行程みちのり一里半ばかりなり。
こゝくだんむすめたるや、いまもおはなししたとほり、吉原よしはらことはぢとし、待合まちあひこといやだとつた心懸こゝろがけなんだから、まあはたからすゝめても、結綿いひわたなんぞにはうよりは
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自身を殺して妻子を助けてやろうと、それから大決心をしてこゝに私は殺さぬ者を殺したとして大胆にも叫んだのであります。署長殿の前に嘘自白をしたのであります。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
さうして今後こんご豫算計畫よさんけいくわくにも毎年まいねん七八千萬圓まんゑん國債こくさい計上けいじやうしてはじめて編成へんせい出來できるのであるが大正たいしやうねん以來いらい十五年目ねんめはじめこゝ國債こくさい計上けいじやうしない豫算よさん出來できたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)