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臭
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にほひ
ふりがな文庫
“
臭
(
にほひ
)” の例文
それよりも彼がそれ程に苦心をした飯は、何か用具について居たのか、彼の手にあつたのか、とにかく石油の
臭
(
にほひ
)
が沁み込んで居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼
(
かれ
)
はどつかり
坐
(
すわ
)
つた、
横
(
よこ
)
になつたが
又
(
また
)
起直
(
おきなほ
)
る。
而
(
さう
)
して
袖
(
そで
)
で
額
(
ひたひ
)
に
流
(
なが
)
れる
冷汗
(
ひやあせ
)
を
拭
(
ふ
)
いたが
顏中
(
かほぢゆう
)
燒魚
(
やきざかな
)
の
腥膻
(
なまぐさ
)
い
臭
(
にほひ
)
がして
來
(
き
)
た。
彼
(
かれ
)
は
又
(
また
)
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
す。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
鉄平は戸口をつと
這入
(
はひ
)
つて、正面にある
離座敷
(
はなれざしき
)
の雨戸を
半棒
(
はんぼう
)
で
敲
(
たゝ
)
きこはした。戸の破れた所からは烟が出て、火薬の
臭
(
にほひ
)
がした。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
小屋
(
こや
)
で
卯平
(
うへい
)
が
鹽鮭
(
しほざけ
)
を
燒
(
や
)
く
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いでは一
種
(
しゆ
)
の
刺戟
(
しげき
)
を
感
(
かん
)
ずると
共
(
とも
)
に
卯平
(
うへい
)
を
嫉
(
にく
)
むやうな
不快
(
ふくわい
)
の
念
(
ねん
)
がどうかすると
遂
(
つひ
)
起
(
おこ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
其處
(
そこ
)
には墓塲のくされたる如き
臭
(
にほひ
)
充
(
み
)
ち/\て、新しき生命ある空氣は少しだになく、
住
(
すま
)
へる人また遠くこの世を隔てたるにはあらずやと疑はる。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
綺麗
(
きれい
)
といひて
見返勝
(
みかへりがち
)
、のんきにうしろ
歩行
(
あるき
)
をすれば、
得
(
え
)
ならぬ
臭
(
にほひ
)
、
細
(
ほそ
)
き
道
(
みち
)
を、
肥料室
(
こやしむろ
)
の
挾撃
(
はさみうち
)
なり。
目
(
め
)
を
眠
(
ねむ
)
つて
吶喊
(
とつかん
)
す。
既
(
すで
)
にして
三島神社
(
みしまじんじや
)
の
角
(
かど
)
なり。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
代助は斯んな話を聞く
度
(
たび
)
に、
勇
(
いさ
)
ましいと云ふ気持よりも、まづ怖い方が先に
立
(
た
)
つ。度胸を買つてやる前に、
腥
(
なま
)
ぐさい
臭
(
にほひ
)
が
鼻柱
(
はなばしら
)
を抜ける様に
応
(
こた
)
へる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
中には保存して置いても
可
(
い
)
いが、も少し香料でも余計に附けて手入れを好くして
欲
(
ほ
)
しい。一般に
仏蘭西
(
フランス
)
の男の
髭
(
ひげ
)
は悪い
臭
(
にほひ
)
がすると云ふ答もあつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
此故
(
このゆゑ
)
に
腥
(
なまぐさ
)
き
血
(
ち
)
の
臭
(
にほひ
)
失
(
う
)
せて
白粉
(
おしろい
)
の
香
(
かをり
)
鼻
(
はな
)
を
突
(
つ
)
く
太平
(
たいへい
)
の
御代
(
みよ
)
にては
小説家
(
せうせつか
)
即ち
文学者
(
ぶんがくしや
)
の
数
(
かず
)
次第々々
(
しだい/\
)
に
増加
(
ぞうか
)
し、
鯛
(
たひ
)
は
花
(
はな
)
は
見
(
み
)
ぬ
里
(
さと
)
もあれど、
鯡
(
にしん
)
寄
(
よ
)
る
北海
(
ほつかい
)
の
浜辺
(
はまべ
)
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
炭火は赤く爐に燃え、燭は煙つてだらだらと蝋を流し、皿の中からは春さきの
溝
(
どぶ
)
のやうな
臭
(
にほひ
)
が立つ。
サバトの門立
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
かういふ風に僕は郊外に住んでゐるから
余計
(
よけい
)
そんな感じがするのだが、十一月の
末
(
すゑ
)
から十二月の初めにかけて、夜
晩
(
おそ
)
く外からなんど帰つて来ると、かう
何
(
なん
)
ともしれぬ物の
臭
(
にほひ
)
が立ち
籠
(
こ
)
めてゐる。
一番気乗のする時
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
後
(
のち
)
には晝の日なかにも蒼白い幽靈を見るやうになつた。黒猫の背なかから
臭
(
にほひ
)
の強い大麥の穗を眺めながら、
前
(
さき
)
の世の母を思ひ、まだ見ぬなつかしい
何人
(
なにびと
)
かを探すやうなあどけない眼つきをした。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
街はまた意外に大きくも賑かでもないらしく、少し歩いてゐるうちに間もなく其處等中魚の
臭
(
にほひ
)
のする漁師町に入り込んだ。鰹の大漁と見え、到るところ眼の活きた青紫の鮮かなのが轉がしてある。
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
定
(
さだ
)
めて
腐
(
くさ
)
りかけてゐるであらうし、また
眞夜中
(
まよなか
)
の
幾時
(
いくとき
)
かは
幽靈
(
いうれい
)
も
出
(
で
)
るといふ……えゝ、どうしょう、
目
(
め
)
が
覺
(
さ
)
めたら?……
厭
(
いや
)
らしい
其
(
その
)
臭
(
にほひ
)
と、
聞
(
き
)
けば
必然
(
きっと
)
狂亂
(
きちがひ
)
になるといふ
彼
(
あの
)
曼陀羅華
(
まんだらげ
)
を
根
(
ね
)
びくやうな
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「あの地藏樣を嗅いで見ると全く湯屋の
湯槽
(
ゆぶね
)
の
臭
(
にほひ
)
がしたよ」
銭形平次捕物控:009 人肌地藏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
外から
砂鐵
(
さてつ
)
の
臭
(
にほひ
)
を持つて來る海際の午後
メランコリア
(旧字旧仮名)
/
三富朽葉
(著)
そはあやしき
臭
(
にほひ
)
を放てり。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
最初
(
さいしよ
)
に見出し候者は
私
(
わたく
)
し
悴
(
せがれ
)
甚之助に御座候
其仔細
(
そのしさい
)
は同日の
夕刻
(
ゆふこく
)
雪も
降止
(
ふりやみ
)
候に何となく
怪
(
あやし
)
き
臭
(
にほひ
)
致せば近所の者共表へ
出
(
い
)
で
穿鑿
(
せんさく
)
致し候に
何時
(
いつも
)
何事にても人先に出て
世話
(
せわ
)
致
(
いた
)
し候お三
婆
(
ばゞ
)
のみ一人相見え申さざれば私し
悴
(
せがれ
)
甚之助
不審
(
ふしん
)
に存じ
渠
(
かれ
)
が家の戸を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「生活の
饐
(
す
)
える
臭
(
にほひ
)
だ!」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
漬
(
つ
)
けた
玉菜
(
たまな
)
や、ランプの
燻
(
いぶり
)
や、
南京蟲
(
なんきんむし
)
や、アンモニヤの
臭
(
にほひ
)
が
混
(
こん
)
じて、
入
(
はひ
)
つた
初
(
はじ
)
めの一
分時
(
ぷんじ
)
は、
動物園
(
どうぶつゑん
)
にでも
行
(
い
)
つたかのやうな
感覺
(
かんかく
)
を
惹起
(
ひきおこ
)
すので。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
おつぎは
手
(
て
)
ランプを
置
(
お
)
いて
勘次
(
かんじ
)
がしたやうに
鼻
(
はな
)
へ
當
(
あ
)
てゝ
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いで
見
(
み
)
たり、
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
だけを
袖
(
そで
)
へ
透
(
とほ
)
して
見
(
み
)
たりした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
斯
(
こ
)
んな
新
(
あた
)
らしい
刺戟
(
しげき
)
の
下
(
もと
)
に、しばらくは
慾求
(
よくきう
)
の
滿足
(
まんぞく
)
を
得
(
え
)
た。けれども
一
(
ひ
)
と
通
(
とほ
)
り
古
(
ふる
)
い
都
(
みやこ
)
の
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いで
歩
(
ある
)
くうちに、
凡
(
すべ
)
てがやがて、
平板
(
へいばん
)
に
見
(
み
)
えだして
來
(
き
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
思ひも懸けぬ細い
路
(
みち
)
が、更に思ひもかけぬ汚い狭い
衰
(
おとろ
)
へた町を前に
展
(
ひろ
)
げた。
溝
(
どぶ
)
の日に乾く
臭
(
にほひ
)
と物の腐る
臭
(
にほひ
)
と沈滞した
埃
(
ほこり
)
の
交
(
まじ
)
つた空気の
臭
(
にほひ
)
とが
凄
(
すさま
)
しく鼻を
衝
(
つ
)
いた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
屋根板
(
やねいた
)
の
臭
(
にほひ
)
の
芬
(
ぷん
)
とする、いぢかり
股
(
また
)
の、
腕脛
(
うですね
)
の
節
(
ふし
)
くれ
立
(
た
)
つた
木像女
(
もくざうをんな
)
が
何
(
なに
)
に
成
(
な
)
る! ……
悪
(
わる
)
く
拳
(
こぶし
)
に
采
(
さい
)
を
持
(
も
)
たせて、
不可思議
(
ふかしぎ
)
めいた、
神通
(
じんつう
)
めいた、
何
(
なに
)
となく
天地
(
あめつち
)
の
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
石油の
臭
(
にほひ
)
新らしく人は去る、
流行
(
はやり
)
の
背広
(
せびろ
)
の身がるさよ。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「
身體
(
からだ
)
の
割
(
わり
)
にしちや
圖
(
づ
)
無
(
ね
)
えな」と
鍛冶
(
かぢ
)
は
微笑
(
びせう
)
した。
鐵
(
てつ
)
の
臭
(
にほひ
)
のする
唐鍬
(
たうぐは
)
を
提
(
さ
)
げて
勘次
(
かんじ
)
は
復
(
また
)
土手
(
どて
)
を
走
(
はし
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
勿體
(
もつたい
)
ないが、
俗
(
ぞく
)
に
言
(
い
)
ふ
上潮
(
あげしほ
)
から
引上
(
ひきあ
)
げたやうな
十錢紙幣
(
じつせんしへい
)
が
蟇口
(
がまぐち
)
に
濕々
(
じめ/\
)
して、
金
(
かね
)
の
威光
(
ゐくわう
)
より、
黴
(
かび
)
の
臭
(
にほひ
)
を
放
(
なは
)
つた
折
(
をり
)
から、
當番
(
たうばん
)
の
幹事
(
かんじ
)
は
決
(
けつ
)
して
剩錢
(
つりせん
)
を
持出
(
もちだ
)
さず、
會員
(
くわいゐん
)
は
各自
(
かくじ
)
九九九
(
くうくうくう
)
の
粒
(
つぶ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
九九九会小記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
奥迄行つて二階へ
上
(
のぼ
)
つて、それから三階へ
上
(
のぼ
)
つて、本郷より高い所で、生きたものを
近付
(
ちかづ
)
けずに、紙の
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
ぎながら、——読んで見たい。けれども何を読むかに至つては、別に判然した考がない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
シヤツは
長
(
なが
)
し、ヅボン
下
(
した
)
は
短
(
みじ
)
かし、
上着
(
うはぎ
)
は
魚
(
さかな
)
の
燒
(
や
)
いた
臭
(
にほひ
)
がする。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そのなかの賣藥の版木と、硝石の
臭
(
にほひ
)
と、…………
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
この
時
(
とき
)
も、さいはひ
何處
(
どこ
)
の
窓
(
まど
)
も
戸
(
と
)
も
閉込
(
とぢこ
)
んで
居
(
ゐ
)
たから、きなつ
臭
(
くさ
)
いのを
通
(
とほ
)
り
越
(
こ
)
して、
少々
(
せう/\
)
小火
(
ぼや
)
の
臭
(
にほひ
)
のするのが
屋根々々
(
やね/\
)
の
雪
(
ゆき
)
を
這
(
は
)
つて
遁
(
に
)
げて、
近所
(
きんじよ
)
へも
知
(
し
)
れないで、
申譯
(
まをしわけ
)
をしないで
濟
(
す
)
んだ。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ねばれる蛇の卵見ゆ、かつは
臭
(
にほひ
)
のくさければ
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
及び腰してひとすぢに土の
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いでゆく
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
湿
(
しめ
)
つた胡瓜と茄子の鄙びた新らしい
臭
(
にほひ
)
が
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
臭
常用漢字
中学
部首:⾃
9画
“臭”を含む語句
臭気
面倒臭
臭味
異臭
魚臭
臭氣
乳臭
惡臭
肥桶臭
水臭
脂臭
物臭
悪臭
体臭
汗臭
黴臭
胡散臭
生臭
乳臭児
土臭
...