相違そうい)” の例文
おみよは、自分じぶんもそれに相違そういないとおもいましたから、いそいでそのあといましたけれど、もはやその姿すがたえなかったのであります。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
康頼 しかしありありと歌までおぼえているのです。霊夢れいむ相違そういありません。たとえそうでなくっても、わしはそうと信じたいのです。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
現界げんかい景色けしきくらべてべつ格段かくだん相違そういもありませぬが、ただこちらの景色けしきほうがどことなくきよらかで、そして奥深おくふかかんじがいたしました。
金は借りるが、返す事はご免だと云う連中はみんな、こんな奴等が卒業してやる仕事に相違そういない。全体中学校へ何しにはいってるんだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして女世帯らしい細やかさとにおいとが、家じゅうに満ちていて、どこからどこまで乱雑で薄汚ない彼の家とは雲泥うんでい相違そういだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
おとこおんな相違そういが、いまあきらかに袖子そでこえてきた。さものんきそうなにいさんたちとちがって、彼女かのじょ自分じぶんまもらねばならなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それと同時にここに日の光をさえぎって昼もなお暗い大木が切々きれぎれに一ツ一ツ蛭になってしまうのに相違そういないと、いや、全くの事で。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は私本太平記の中で、私の想像によるその人を書いてきたが、あん相違そういしたとは、ちっとも感じられなかった。初対面でもない気がした。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どういうものだからないが、人身御供ひとみごくうをとるやつはたしかにこれに相違そういない。なんでもたいそうしっぺい太郎たろうという人をこわがっている様子ようすだ。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「弟があんな勢いでのぼって来るのは、必ずただごとではない。きっとわたしの国をうばい取ろうと思って出て来たに相違そういない」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
かういふふうに、土地とち高低こうてい位置いち相違そういによつて、さむあたゝかさがちがふにつれて、える樹木じゆもくもそれ/″\ちがふのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それは見覚えのある銀座裏の袋小路ふくろこうじ相違そういなかった。彼の立っているのは、カフェ・ドラゴンとおほりとの間にある日本だての二階家の屋根だった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小娘のくせに、よくやったものだと感心した。学校の処置は親切であったに相違そういないが、博雄の消極的な気質きしつが、ここへ追いこんだものと思った。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
現在げんざい野蠻人やばんじんなどが、これとおなじような器物きぶつ使つかつてゐるところからかんがへますと、この石匙いしさじけだものかはぐために使用しようしたものに相違そういありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此陸界このりくかい水界中すいかいちゆうおいとくふかうみ部分ぶぶんとは、土地とち構造こうぞうとく其地震學上そのぢしんがくじようから性質せいしつおいなりな相違そういがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
この話が私の夢か私の一時的狂気のまぼろしでなかったならば、あの押絵おしえと旅をしていた男こそ狂人であったに相違そういない。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お父さんのおっしゃるとおり、これはある意味から考えると特典に相違そういありません。それで僕は正三がどこまでも男子の意気を失わない決心なら賛成です。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いつのにか戸はしまっているではないか、いまの列車の動揺どうようのために、ひとりでにしまったのに相違そういない。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
当時の時勢より見れば瘠我慢に相違そういなしといえども、その瘠我慢やせがまんこそ帝室ていしつの重きを成したる由縁ゆえんなれ。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
花前は、けさ民子たみこをだいてしばらくあるいておった。細君はもちろん、若衆わかしゅうをはじめ下女げじょまでいっせいにふしぎがったとの話である。それは実際じっさいふしぎに相違そういない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
繚乱りょうらん」と云う言葉や、「千紫万紅せんしばんこう」と云う言葉は、春の野の花を形容したものであろうが、ここのは秋のトーンであるところの「黄」を基調にした相違そういがあるだけで
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なにかの多分たぶん間違まちがいです。』とアンドレイ、エヒミチはかたちぢめてう。『間違まちがい相違そういないです。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
江戸で出した国書の別幅べっぷくに十一色の目録があったが、本書とは墨色が相違そういしていたそうである。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
林太郎りんたろうはにやにやわらって常夜燈じょうやとうにもたれてみている。林太郎はただツルの花をうずめるのをみていただけに相違そういない。「お茶わかしたよ」ととうとう私はかぶとをぬいだ。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
僕が東京から台湾へ来たのだって、世界を漫遊まんゆうした人にとってはほんの小旅行に相違そういない。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
いずれ川上の方の事だから高いには相違そういないが、おそろしい高い山々が、余り高くって天につかえそうだからわざと首をすくめているというような恰好かっこうをして、がんっている状態ありさま
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ぬすとはたしかに盗森に相違そういない。おれはあけがた、東の空のひかりと、西の月のあかりとで、たしかにそれを見届けた。しかしみんなももう帰ってよかろう。あわはきっと返させよう。
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はずれたくさりのさきが、大きく揺れる時彼の頭を撃ったものに相違そういない。彼は明らかに気を失っている。その上、彼がまたがっている梁の片端は、さし込んであった支柱からぐいと外れている。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
ぼくはたちまち逆上して、身体からだ中や其処そこらを探しまわった揚句あげくの果は、おそらく、ゴルフ場で落したに相違そういないときめてしまいました。百五十弗は、当時の為替かわせ率で、四百五十円位にあたります。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
きくと、女中のだれかが強盗をかくしているに相違そういないと云うので、女中を一々呼び出した。すると、その中に大納言殿どのと云われる上席の女中がいたが、それが風邪気味かぜぎみだと云って、出て来ない。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その当時はむろん日本ではまことに珍しいものであったに相違そういない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その順序からいえば、故先生の御後室お蓮様は、なるほど母上に相違そういないのだが、色恋の相手と見ている年下の男に、いきなり母上とやられちゃア、女の身として、これほどお座のめる話はない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さかずきには、いえまえをかごがとおったことも、いま人力車じんりきしゃとおり、自動車じどうしゃとおることも、たいした相違そういがないのだから、無関心むかんしんでした。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先を争った衝突は、折合がついたには相違そういないが、つまり中学校が一歩をゆずったのである。資格から云うと師範学校の方が上だそうだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『あなたがたなかにも、人間にんげんきなものときらいなもの、また性質せいしつのさびしいものと陽気ようきなものと、いろいろ相違そういがあるでしょうね?』
ばいでもむかしいま角度かくど幾分いくぶん相違そういしてゐるようですし、赤貝あかゞひでもせんかずすこかはつてゐるといふようなことが、貝塚かひづか貝殼かひがら調しらべてればわかります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「ふん、まぐれたりにたったな。いかにも二ひきねこ相違そういありません。それで一ぴき赤猫あかねこ、一ぴき白猫しろねこです。」
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「これはきっと、あなたさまがついに天下をお治めになるというめでたい先ぶれに相違そういございません」と、こういう意味の歌をおことをひいて歌いました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
たとへば東京市内とうきようしないでも下町したまちやまとで震動しんどうおほいさに非常ひじよう相違そういがある。がいして下町したまちほうおほきく、やま二三倍にさんばいしくはそれ以上いじようにもなることがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
もし読者諸君がその車輌に同車していたならきっとおかしく思われたに相違そういない。というのは、戸浪三四郎は『新青年』へ随筆を寄稿してこんなことを云った。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御安心ごあんしんくださいまし。上書うわがきなんざ二のつぎ三のつぎ中味なかみからふうまで、おせんの相違そういはございません。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さだめし、つかれているだろうと思ったところが、あん相違そういして、忍剣はすこしもおとろえていなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人はこういうところに、こうしていても、胸の雲霧くもきりれぬ事は、られぬふすま相違そういはない。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
精神病者せいしんびょうしゃ相違そういないけれど、花前はなまえが人間ちゅうの廃物はいぶつでないことは、畜牛ちくぎゅういっさいのことをべんじて、ほとんどさしつかえなきのみならず、あるてんには、なみの人のおよばぬことをしている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
獄舎ろうやつながれるなどうことは良心りょうしんにさえやましいところいならばすこしも恐怖おそるるにらぬこと、こんなことをおそれるのは精神病せいしんびょう相違そういなきこと、と、かれみずかおもうてここにいたらぬのでもいが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だが博雄は、これから大学課程に入るのであり、入学試験も受けたには相違そういないが、目下海山ともに不明である。外観がいかん平静を装っているけれども、内心には只ならぬものがふくまれているらしい。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
「ははあ、あいつらは岩頸がんけいだな。岩頸だ、岩頸だ。相違そういない。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
現世げんせかたかられば一ぺん夢物語ゆめものがたりのようにきこえるでございましょうが、そこが現世げんせ幽界ゆうかいとの相違そういなのだからなんとも致方いたしかたがございませぬ。
ところが清にも別段の考えもなかったようだ。ただ手車てぐるまへ乗って、立派な玄関げんかんのある家をこしらえるに相違そういないと云った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)