)” の例文
三年経ってからたポツポツと美妙の名が低級な雑誌に見え出して、そういう雑誌の発行者や編輯者の口からうわさを聞く事があったが
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「叔母さん、どんなに私は是方こっちへ参るのが楽みだか知れませんでしたよ。お近う御座いますから、たこれから度々たびたび寄せて頂きます」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なんてのたくり/\けえつてんだ、さうすつとまた駄目だめりやつてう、すぐうつてふんだぞなんておこつたてえになあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
南洲乃ち三十圓を與へて曰ふ、汝に一月ひとつきほう金を與へん、汝は宜しく汝の心にむかうて我が才力さいりき如何を問ふべしと。其人た來らず。
今は「四十年前少壮の時、功名いささひそかに期する有り。老来らず干戈かんかの事、ただる春風桃李のさかずき」と独語せしむるに到りぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その花さくときはその稈は花後遂に枯死しその根茎すなわち鞭は大いにその勢力を減殺せられた大形の竹稈を生ずることあたわず。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
何か羽虫を見付るとすういと飛んで行く、そしてスミスの飛行よりももっと巧妙に一つくるりと宙返りを打ってたすういと戻って来る。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
天下騒然た文を語る者なし、然るに君が家の蘭学事始は我輩学者社会の宝書なり、今これを失ふては後世子孫我洋学の歴史を知るによしなく
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
アリストテレスの罪過を広意に敷延すれば即ち結果に対する原因なり、末路に対する伏線なり(た其不幸に終ると幸福に終るとを問はず)
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
足本國の外をまざる我徒ともがらに至りては、只だその瑰偉くわいゐ珍奇なるがために魂をうばはれぬれば、今たその髣髴はうふつをだに語ることを得ざるならん。
併し其辺には彼の意に適った思わしい隠場所も無かったので、命令いいつけかない二本の脚を、無理に引擦ひきずってた歩き出した。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は丁度そうした心構で初めて其の家庭の内部に臨んだのだが、そこに漂うている空気は、何も彼も私にとってた甚だ意外のものであった。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
あいちやんはこれを哄笑おほわらひしました、しかし其聲そのこゑきつけられては大變たいへんだとおもつていそいでもりなかもどりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それから此校ここに二年ばかりおって、大学に入って、大分御無沙汰をして、それから外国に行きまして、外国から帰って来て、此校ここへ這入った。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
た例の写生をして見ようかと思いついてふとそこにあった蔓草つるくさの花(この花の本名は知らぬが予の郷里では子供などがタテタテコンポと呼ぶ花である)
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
是に於いて、皇太子た使者を返し、其の衣を取らしめ、常のごとたまふ。時の人大にあやしみて曰く、聖の聖を知ること、其れまことなる哉。いよいよかしこまる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
何卒どうぞ其うしてお呉れよ、年増としましにお前が恋しくなるので、——其れに、た言ふ様だが、わしの一生の御願だでの、一日も早く嫁を貰ふことにしてお呉れよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
はじしんしうがつしてはなれ、はなれて五百さいにしてがつし、がつして七十さいにして霸王はわうたるものでん」と
富嶽駿河の国に崛起くつきせしといふ朝、彼は幾億万里の天崕てんがいよりその山巓さんてんに急げり、而して富嶽の威容を愛するが故に、その殿居にとゞまりみて、遂にた去らず。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
今の西暦第十九世紀の醫道に至りては、おそらくはた持藥の名を口にするものなからむ。われはもとより譬喩ひゆ跛足はそくになり易きを知れば、こゝに持藥劇藥の事を論ぜず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
た談判に来おったなと、苦り切っている亭主の面前に、百磅の金を並べて、さて言うよう
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
宿屋の一室に端座たんざし、過去を思い、現在をおもんばかりて、深き憂いに沈み、婦女の身のとど果敢はかなきを感じて、つまらぬ愚痴ぐちに同志をうらむの念も起りたりしが、た思いかえして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その歓喜に比しては比較にもならぬほど些少さしょうなものであるのを知った時、してや投げ与えたと思ったその贈品すら、畢竟ひっきょうた自己に還って来るものであるのを発見した時
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
亥「ちゃん能く寝ているな、勘忍してくんねえ、おらた牢へくかも知れねえ、業平橋の文治を殺して亥太郎のつらを磨くから、おれが牢へ往って不自由だろうが勘忍して呉んねえ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そう言ったまゝ、後はだまあって此度は一層強い太息ためいきを洩らしながら、それまでは火鉢の縁にかざしていた両手を懐中ふところに入れて、傍の一閑張りの机にぐッたりと身を凭せかけた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そのうち或る日不思議な出来事があつて、あれを永遠にた起つことの出来ないやうにしてしまつた。それからと云ふものは、あれはサン・ステフアノの寺の石畳みの下に眠つてゐる。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
立派に布施ふせも置いて帰ろう、しかし、正面から僧の前へ出しては、た何とか難癖なんくせをつけて押し返されないとも限らないので、布施は今の内に出して置いて、僧が帰り次第に帰ろうと思った。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けいに沿ふて猶進むこと數歩、路は急に兩傍りやうはうより迫れる小丘陵の間にりて、溪聲俄かに前に高く、鏜鏗だうかうたる響はた以前の嘈々さう/\切々せつ/\たるに似ず、いぶかりつゝも猶進めば、兩傍の丘陵は忽ち開けて
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
はなはだしいかな、おとろえたるや。ひさしくゆめにだも周公しゅうこうず」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
嬉しくもないが一げつた来たようで、何にとなくにぎやかな心地がした。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すなわち剣を抜いて保食神を撃殺したまひき(中略)。是の後に天照大神た天熊大人をつかわして往いて看せたまふ。是の時に保食神まことすでみまかれり、唯し其の神の頂に牛馬化為れり云々(岩波文庫本)。
一道の火柱直上ちよくじやうして天をき、ほとばしでたる熱石は「ルビン」をめたる如き観をなせり。されど此等の石は或は再び坑中かうちゆうに没し、或は灰の丘に沿ひてころがり下り、た我等の頭上に落つることなし。
ヴエスヴイオ山 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
況復秦兵耐苦戦 況やた秦兵の苦戦に耐うるをや
詩人への註文 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
此処へ這込はいこんでからた一発ったのかな。
たこれに過ぐるものなし
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おくつき、きて
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しな天秤てんびんおろした。おしなたけみじか天秤てんびんさきえだこしらへたちひさなかぎをぶらさげてそれで手桶てをけけてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
続きに続いた親しいものの死から散々におびやかされた彼はたしてもその光景によって否応いやおうなしに見せつけられたと思うものがあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
棒切れで無茶苦茶に引掻き廻してやるが、暫くするとたコトコトはじめる。此音は一晩中止まないで一方ならず私を苦しめた。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「こんな弱った事はない、」と、U氏はた暫らく黙してしまった。やがて、「君は島田のワイフの咄を何処どこかで聞いたろう?」
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
今則ち断然策を決し、まさに深密に請托せいたくして、坐を貴艦中に仮り、海外に潜出して以て五大州を周遊せんとす、た国禁をも顧みざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
われ等は歸途にきたり。此時身邊なる熔岩の流に、爆然聲ありて、陷穽かんせいを生じ炎焔ほのほを吐くを見き。されどわれはをのゝふるふことなかりき。
數多あまた賓客まらうど女王樣ぢよわうさまのお留守るすにつけこんで、樹蔭こかげやすんでりました、が、女王樣ぢよわうさまのお姿すがたはいするやいなや、いそいで競技ゲームりかゝりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
江戸広しといえども、市に売る者なし、家に織る者なし。学者書生の如きもその行く所を知らず、大都会中た一所の学校を見ず、一名の学士に逢わず。
故社員の一言今尚精神 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
冬になって茎葉が枯れても地中の地下茎は依然として生き残り、来春たその株から新らしい芽を出すのである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
大和はた沈黙せしが、やがて梅子のかたひざを向けぬ「山木さん、何時、先生を拘引すると申すのです」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
つひ隊長たいちやうにんりてもつとなへ、其次そのつぎもつ隊長たいちやうす。ここおいこれす。婦人ふじん(九)左右前後跪起さいうぜんごききみな(一〇)規矩繩墨きくじようぼくあたり、あへこゑいだすものし。
この間に、藤村の方では、誰かをめとってた離縁したのか、それとも死別したのか、私の記憶している頃には、叔母の産んだ子でない男の子が一人いて、私と同年であった。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
領主 何も別に隠している覚えはないが、それでも、かくしているように見えると云うなら為方しかたがない。そう見られるばかりだ。(とた窓の方へ向かんとするを引き止め)
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
暫しありて清二郎は湯にとて降りてきたらず、雨はあがりしその翌日あくるひの夕暮、荻江おぎえが家の窓の下に風鈴ふうりんと共にだんまりの小花、文子の口より今朝聞きし座敷の様子いぶかしく
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)