大分だいぶん)” の例文
よる大分だいぶんけてゐた。「遼陽城頭れうやうじやうとうけて‥‥」と、さつきまで先登せんとうの一大隊だいたいはうきこえてゐた軍歌ぐんかこゑももう途絶とだえてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
役人を已めてから、実業界に這入はいって、何かかにかしているうちに、自然と金がたまって、この十四五年来は大分だいぶんの財産家になった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ええ、大分だいぶんの高だというよ。はじめッからお雪さんは嫌っていた男だってね。私も知ってるやつだよ。万吉てッて、とおりの金持の息子なの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若い門弟は一寸令嬢の一人に悪戯いたづらがして見たくなつた。実をいふと、その門弟は大分だいぶん前から二人のうちの姉さんを想つてゐたのだ。
イヤしかしそなたの質問とい大分だいぶんわし領分外りょうぶんがい事柄ことがらわたってた。産土うぶすなのことなら、わしよりもそなたの指導役しどうやくほうくわしいであろう。
春枝はるえ大分だいぶん愚痴ぐちます。をんなはあれだからいかんです。はゝゝゝゝ。けれどわたくしも、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつみゝにしたときにはじつおどろきました。
……入つて來なはつた時から、さうやないかと思ひましたんやけど、大分だいぶん變りなはつたよつてな。……しやとおもて、名札を見ましたのや。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
派出婦、美容術師、助産婦、看護婦なぞの第二職業は大分だいぶん秘密の程度が高くなる。前の第三級に対して第二級とでも云おうか。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
見廻みまはつひはなしに身がいり大分だいぶんふけたり嘸々さぞ/\草臥くたびれしならん今夜は寛々ゆる/\と休むがよしと漸々盃盞さかづきをさめ女どもに云付て寢床ねどこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分も特別心懸けて教えていたが、その時分は最早もはや自分で大分だいぶん門弟をとって立派にかんばんをかける様になった。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
大分だいぶんのぼったところの「駕立場かごたてば」は藩侯はんこう登山の折の休憩所で、ここの眺望は雲仙の第一景として知られている。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
小脇に挟んだ英国の一雑誌には頼まれて寄稿した柏亭自身の論文や絵が巻頭に載つて居る。その論文は最近日本の芸術につい大分だいぶんに気焔を吐いたものであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
段々と無理を致しまして、長い間に懵々うかうか穴を開けましたのが、積り積つて大分だいぶんに成りましたので御座います。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ただ四五年の間絶えず茶屋酒に親んで来て修業が大分だいぶんに積んで来た上の彼としては、野暮やぼ臭いことを云つて一一女の所行を数へ立てて、女房かなにかのやうに
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
ベンヺ そのかぜうかばなしに、大分だいぶんときつぶれた。ようせぬと、夜會やくわいてゝ、時後ときおくれになってしまはう。
『もちろんぼくはじめてだ。こんなにべるとはおもはなかつたよ。愉快々々ゆくわいゆくわい。そりやさうと大分だいぶんさむくなつてた。ラランよ、ヱヴェレストのてつぺんはまだとほいか。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
もっとも私のところへ取りに寄来よこした薬と云うのが凡て主人の使うもので、それが皆一種の解熱剤であるのを見ても、大分だいぶん無理な夜更しでもするらしいのは判っていたのだが
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
かく長たらしく書いたことを回顧かいこすると、僕の平生の筆法ひっぽうとは大分だいぶん調子がちがっておる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「どうしたい池田屋さん、大分だいぶんせかせかして居るが、ひどく忙しそうじゃないか。」
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
秋「成程是は妙なだ、福禄寿ふくろくじゅにしては形が変だな、成程大分だいぶんい画だ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この坊さんはラサ府に着いてからも大層難儀して全く喰物がなくなって困った時分に私はあべこべに大分だいぶんの物がありましたから、その人に対し救えるだけの事をして幾分の助けをしたのであります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
墓原はかはらへ出たのは十二時すぎ、それから、ああして、ああして、と此処ここまであいだのことを心に繰返して、大分だいぶんの時間がったから。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大分だいぶん懐中ふところを膨らませたが、近頃世間の景気が思はしくなくなりかけたのを見ると、今のうちにも一度会が開いておきたくなつた。
役人をめてから、実業界に這入つて、なにかにかしてゐるうちに、自然と金がたまつて、此十四五年来は大分だいぶんの財産家になつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれこれするうちに、指導役しどうやくのおじいさんからは、おみや普請ふしんが、大分だいぶん進行しんこうしてるとのお通知しらせがありました。——
其処そこにはもう大分だいぶん詩人が集まつて居た。ポォル・フォォルの夫人が令嬢をれて奥の方に来て居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かけコレ/\町人其方は大分だいぶんさけが飮る樣子なりといふに彼男は此方こなたに向ひイヤモウ酒は大好物だいかうぶつで御座りますと云ひければ半四郎夫は話せる/\其の酒飮はそれがし大好だいすきなり酒は一人で飮ではうまくなし一ぱいあひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし、其代そのかはり、大分だいぶんいろくろくなりましたよ。はい。』
奉「フム大分だいぶん久しく居ったな」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
墓原はかはらたのは十二時過じすぎ、それから、あゝして、あゝして、と此處こゝまであひだのことをこゝろ繰返くりかへして、大分だいぶん時間じかんつたから。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
婦人は指先に一寸きずをしてゐたのに過ぎなかつたが、医者が丁寧にしんの臓まで診察しようとしたので大分だいぶん時間が手間どつた。
二十三の青年が到底人生につかれてゐる事が出来ない時節が来た。三四郎はる。大学の池の周囲まはり大分だいぶんまはつて見たが、別段のへんもない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
欧洲へ来てだ日の浅い僕の観察に大した自信も無い事ながら、従来日本に居て新帰朝者の報告で聞いて居たのと実際と大分だいぶん相違のあるらしいのに事に触れて気が附く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのころわたくし大分だいぶん幽界ゆうかい生活せいかつれてていましたものの、かく自分じぶんより千年せんねんあまりも以前いぜん帰幽きゆうせられた、史上しじょう名高なだか御方おかたうしてひざまじえてしたしく物語ものがたるのかとおもうと
差置さしおき實父富右衞門のかはりに御仕置に致すことは相成あひなら公儀かみには然樣さやうの御規定は無事なきことなるぞと申さるゝに城富は至極しごく道理もつともの御儀なれども親の罪科ざいくわに代りし事古來より大分だいぶん御座る樣に承まはり及びますれば何卒なにとぞ御慈悲ごじひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大分だいぶん以前の話だが、独帝カイゼルには伯母さんに当る英国のヸクトリア女皇ぢよわうくなられて、葬儀の日取が電報で独帝カイゼルもとしらされて来た事があつた。
それが學年がくねんはじまりだつたので、京都きやうとのまだあさ宗助そうすけには大分だいぶん便宜べんぎであつた。かれ安井やすゐ案内あんないあたらしい土地とち印象いんしやうさけごとんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大分だいぶん涼しくなって来た。」と金之助は袖を合せて、想い出したように言いつつも、うなずき頷き聞くのである。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかし通尖つうせん上人といふ坊さんがあつた。内外諸宗にわたつて博識の名が隠れもなく、自分にも大分だいぶんそれを自慢に思つてゐた。
「や、まだ台函だいばこに、お包が、」とすッ飛んで取りに駆けたは、火の玉小僧の風体に大分だいぶんおびえているらしい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
所が前半には其弊そのへい大分だいぶん少い。一種の空気がずつと貫いて陰鬱な色が万遍まんべんなく自然じねんに出てゐる。この意味において著者が前篇だけを世に公けにするのは余の賛成する所である。
『煤煙』の序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて日本に着いてみると、牛どころかまだ人間の始末もついてゐない頃なので、欧羅巴で考へたのとは大分だいぶん見当が違つた。
路も大分だいぶんのぼりになって、ぐいと伸上のびあがるように、思い切って真暗まっくらな中を、草をむしって、身を退いて高いところへ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出京しゆつきやう當座たうざは、大分だいぶん身體からだおとろへてゐたので、御米およね勿論もちろん宗助そうすけもひどく其所そこ氣遣きづかつたが、今度こんどこそはといふはら兩方りやうはうにあつたので、はりのあるつき無事ぶじ段々だん/\かさねてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
で、この頃では大分だいぶん手馴れて来て、蚊だと直ぐにれるが、蠅だけはとても手におへないので、そんな折には大事の鞄を抱へて逃げる事にめてゐる。
「ふむ、大分だいぶん大きくなった乳嘴ちくびにぼっと色が着いて、肩で呼吸いきして、……見た処が四月よつきの末頃、もう確かだ。それで可しと、掻合せてやんなよ、お寒いのに。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし自分が議論のために議論をしているのだからつまらないと気がつくまでには、彼女の反省力から見て、まだ大分だいぶん道程みちのりがあった。意地の方から行くと、あまりにが強過ぎた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
画家ゑかき仲間の達者人たつしやじんといはれた富岡鉄斎翁も近頃大分だいぶんほうけて来た。ずるい道具屋などはそれをい事にして、よく贋物にせものを持ち込んでは、うま箱書はこがきを取らうとする。
それから清水港しみづみなととほつて、江尻えじりると、もう大分だいぶん以前いぜんるが、神田かんだ叔父をぢ一所いつしよとき、わざとハイカラの旅館りよくわんげて、道中繪だうちうゑのやうな海道筋かいだうすぢ町屋まちやなか
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
狭い庭だけれども、つちかはいてゐるので、たつぷり濡らすには大分だいぶん骨が折れた。代助はうでいたいと云つて、好加減いゝかげんにして足をいてあがつた。烟草たばこいて、椽側に休んでゐると、門野が其姿を
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)