鎌倉かまくら)” の例文
大震後横浜よこはまから鎌倉かまくらへかけて被害の状況を見学に行ったとき、かの地方の丘陵のふもとを縫う古い村家が存外平気で残っているのに
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ここの富士浅間ふじせんげん山大名やまだいみょうはなにものかというに、鎌倉かまくら時代からこの裾野すその一円にばっこしている郷士ごうしのすえで根来小角ねごろしょうかくというものである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎌倉かまくら東慶とうけい寺には、豊臣秀頼とよとみひでよりの忘れ形見という天秀尼てんしゅうにの墓がある。かれとこれとは同じような運命をになって生まれたとも見られる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから最近には鎌倉かまくらすまつて横須賀よこすかの学校へかよふやうになつたから、東京以外の十二月にも親しむことが出来たといふわけだ。
一番気乗のする時 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かねてわたしは日蓮の『高祖遺文録こうそいぶんろく』という本を読みまして、あの鎌倉かまくら時代に名高い坊さんの生まれた地方を見たいと思っていたのです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
実家さと両親りょうしんたいへんにわたくしうえあんじてくれまして、しのびやかにわたくし仮宅かりずまいおとずれ、鎌倉かまくらかえれとすすめてくださるのでした。
鎌倉かまくらあたりまで行くのにもひざかけから旅カバンまで用意しなければならないのですから、日本の文明はまだなかなかのものです。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
おめえみたいなあわてものは、今から用意させておかねえと、いざ鎌倉かまくらというときになってとち狂うからと思って、活を入れておいたんだ。
源頼朝みなもとのよりともが、鎌倉かまくら幕府ばくふをひらいてからは、日本にっぽん政治せいじ武士ぶしがおさめていて、天皇てんのうはただのかざりにすぎなかったのですが、このときから
堀主水が鎌倉かまくら蟄居ちっきょしていると、江戸から早馬で注進があった日に、宮内と慎九郎とは、支配頭に呼び出されて、頭ごなしにしかりつけられた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
滑稽こつけいなのは、日本にほん麻雀道マージヤンだうのメツカのしようある鎌倉かまくらではだれでもおくさんが懷姙くわいにんすると、その檀那樣だんなさまがきつと大當おほあたりをするとふ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
結局、私は何と云われても構わず、母にお金をねだって、とうとうその覗き絵を手に入れ、それを持って、箱根はこねから鎌倉かまくらの方へ旅をしました。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もしも鎌倉かまくらが近いころまでのような、さびしいただの田舎いなかになっていたならば、このような手毬歌は生まれようはずがない。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鎌倉かまくらの西御門には紀州の附家老つけがろうであった水野家の菩提ぼだい寺(尼寺)の高松寺こうしょうじがあります。そこには白梅も紅梅もあります。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
わたくしが富士川游ふじかわゆうさんに借りた津軽家の医官の宿直日記によるに、允成ただしげは天明六年八月十九日に豊島町どおり横町よこちょう鎌倉かまくら横町家主いえぬし伊右衛門店いえもんたなを借りた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二年前ある人の使つかい帝国ていこくホテルへ行った時は錠前じょうまえ直しと間違まちがえられた事がある。ケットをかぶって、鎌倉かまくらの大仏を見物した時は車屋から親方と云われた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれも、これも。書いて置きたい事が一ぱい出て来た。まず、鎌倉かまくらの事件を書いて、駄目。どこかに手落ちが在る。さらに又、一作書いて、やはり不満である。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
また鎌倉かまくられいると由比ヶ濱ゆひがはま砂丘さきゆうは、ゆきした岩盤がんばん比較ひかくして四五倍しごばいおほいさにることもある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
くはしことあづかるが、水上みなかみさんは、先月せんげつ三十一にちに、鎌倉かまくら稻瀬川いなせがは別莊べつさうあそんだのである。別莊べつさうつぶれた。家族かぞく一人いちにん下敷したじきんなすつた。が、無事ぶじだつたのである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは帰朝してから、聞いたことですが、故郷鎌倉かまくらでの幼馴染おさななじみの少年少女も来ていてくれたそうです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
いや、鎌倉かまくらまで一緒に乗り合わして来た友人にね、此の暴風雨あらしじゃ道が大変だから、鎌倉で宿まって行かないかと、われたけれどもね。やっぱり此方こっちが心配でね。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ある日庸三が、鎌倉かまくらの友人を訪問して来ると、その留守に珍らしく葉子がやって来たことを知った。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
領し物頭役ものがしらやく相勤あひつとめたる大橋文右衞門清長きよながいざ鎌倉かまくらと云ふ時のため武士の省愼たしなみ差替さしかへの大小具足ぐそくりやうぐらゐは所持致し居り候これ御覽ごらん候へと仕舞置しまひおきたる具足櫃ぐそくびつ并びに差替の大小を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あーラいやだ。だって、去年の夏、鎌倉かまくらの帰りに、お母さんが買って下さったじゃないの‥‥」
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
秋の中過なかばすぎ、冬近くなるといずれの海浜かいひんとわず、大方はさびれて来る、鎌倉かまくらそのとおりで、自分のように年中住んでる者のほかは、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網じびきあみの男
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
巨大な鎌倉かまくららしい佛像の臺座の下、見事なへうの皮の上にフンハリと落ちて居ますが、曲者くせものは多分、唐紙越しに一發で主人を仕止め、鐵砲を投げ出して逃げうせたのでせう。
東京でおやしきがお焼けになったかたもおありになりましたが、でもさいわいにいずれもおけがもなくておすみになりましたが、鎌倉かまくらでは山階宮妃やましなのみやひ佐紀子さきこ女王殿下が圧死になり
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
オモロにひなも都もということを京鎌倉きやかまくらといったり、勝連城を日本やまと鎌倉かまくらたとえたりした所などを見ると、当時京都と鎌倉との関係が琉球の都鄙とひに知れ渡っていたことが知れる。
土塊石片録 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
がなしみさ鎌倉かまくら美奈みな瀬河せがはしほつなむか 〔巻十四・三三六六〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
謀叛むほんきこえありて鎌倉かまくら討手うつて佐々木三郎兵衛入道西念としば/\たゝかひてつひ落城らくじやうせり。
二十はたちはるゆめらして、落花らくくわゆふべになにごとをおもひつきてか、令孃ひめ別莊住居べつさうずまゐしたきねがひ、鎌倉かまくら何處どことやらに、眺望てうばうえらんで去年こぞはれしが、はなしのみにてぬもゆかかしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此辺を分倍河原ぶばいかわらと云って、新田義貞大に鎌倉かまくら北条勢ほうじょうぜいを破った古戦場である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「僕は鎌倉かまくらへしばらく行って来るつもりだ」と、いう。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
やまと鎌倉かまくらに譬へる
沖縄の旅 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そのうち香織かおりえんあって、鎌倉かまくらんでいる、一人ひとりさむらいもととつぎ、夫婦仲ふうふなかたいそう円満えんまんで、そのあいだ二人ふたりおとこうまれました。
鎌倉かまくら時代の化け物と江戸時代の化け物を比較し、江戸の化け物とロンドンの化け物を比較してみればこの事はよくわかる。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鎌倉かまくらの大仏はもっと実感的だった。あの体内へはいった時の気持が忘れられないで、ただそれだけのために、三度も四度も鎌倉へ行ったほどだ。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鎌倉かまくらの覇業を永久に維持する大いなる目的の前には、あるに甲斐かいなき我が子を捨て殺しにしたものの、さすがに子は可愛いものであったろうと推し量ると
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私はこんなふうにして生きて来たのです。始めてあなたに鎌倉かまくらで会った時も、あなたといっしょに郊外を散歩した時も、私の気分に大した変りはなかったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、もう一つの「鎌倉かまくら椿つばき」というのだけは、その大和田氏の『歌謡類聚かようるいじゅ』の中にも、またほかの色々の本にも、そっくり同じというものがまだ出ていない。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれども往復震動おうふくしんどうきゆう緩慢かんまんとなつたゝめ、地動ちどうつよさは次第しだいおとろへてしまつた。鎌倉かまくら小田原邊をだはらへんでも、もつとはげしかつたのは最初さいしよ一分間以内いつぷんかんいないであつたといへる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
本来ならこの散策子さんさくしが、そのぶらぶら歩行あるきの手すさびに、近頃買求かいもとめた安直あんちょくステッキを、真直まっすぐみちに立てて、鎌倉かまくらの方へ倒れたらじいを呼ぼう、逗子ずしの方へ寝たら黙って置こう
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある日、——そうそう、あの日は紀元節きげんせつだっけ。何でも朝から雨の降り出した、寒さの厳しい午後だったが、千枝子は久しぶりに鎌倉かまくらへ、遊びに行って来ると云い出した。
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただ、二人でよく故里ふるさと鎌倉かまくら浜辺はまべをあるいているゆめをみる。ふたりとも一言もしゃべりはしない。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
鎌倉かまくらに行った時以来、自分のふところからもぎ放してしまって、金輪際こんりんざい忘れてしまおうと堅く心に契っていたその定子が……それはその場合葉子を全くみじめにしてしまった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ここに三浦兵衛尉義勝ひょうえのじょうよしかつとありますよ。この人はじゅ五位だ。元弘げんこう二年新田義貞にったよしさだたすけて、鎌倉かまくらを攻め、北条高時ほうじょうたかときの一族を滅ぼす、先世のあだかえすというべしとしてありますよ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一日、二日はゼスチュア遊びをして、はじめは面白かったが、二日には、全然いやになって、鎌倉かまくらけいちゃんの発案で、兄さん、新宿のマメちゃん、僕と四人で「父帰る」の朗読をやった。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
其人そのひとゆかしからねど其心そのこヽろにくからず、ふみいだきて幾夜いくよわびしが、れながらよわこヽろあさましさにあきれ、ればこそはけばこそはおもひもすなれ、いざ鎌倉かまくら退がれて此人このひとのことをもわす
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いずこまで越したもうやとのわが問いは貴嬢きみを苦しめしだけまたかの君の笑壺えつぼに入りたるがごとし。かの君、大磯おおいそに一泊して明日は鎌倉かまくらまで引っ返しかしこにて両三日遊びたき願いに候えど——。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
悉皆こと/″\く討亡ばして源氏一統の御代となし御自分は鎌倉かまくらながら日本草創さうさう武家の天下として武將の元祖とあふがれ給ふ事是頼朝公は惣領の甚六なれども自然しぜんと大徳のそなはられし事斯の如くなり又其御舍弟の兩人は現在其功を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)