つひや)” の例文
勝道上人は日光の開山者で、日光を開くために前後十數年をつひやし、それまでは世に知られ無い神祕境であつたのを遂に開いたのである。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
信長の安土の城は、天正四年から七年まで、巨万の財をつひやして作り上げたもので、戦争の為めの城と云ふより、むしろ、華麗な邸宅だつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
さいはひに、でない。わたし柳川やながは恩人おんじんだとおもふ——おもつてる。もう一歩ひとあしやうがおそいと、最早もはやことばつひやすにおよぶまい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わが越後のごとく年毎としごと幾丈いくぢやうの雪をなんたのしき事かあらん。雪のためちからつくざいつひやし千しんする事、しもところておもひはかるべし。
かの時我はつひやすにあたりて手のあまりにひろく翼を伸ぶるをうるを知り、これを悔ゆることほかの罪の如くなりき 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
從來じうらいかれとほ奉公ほうこういくらでも慰藉ゐしやみち發見はつけんしてたのは割合わりあひあたゝかなふところほとんどつひやしつゝあつたからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其の癖新体詩家である保雄は不断相応に後進の韻文作家をひき立てゝ、会を組織する、雑誌を発行する、其等の事に金銭と労力をつひやして居る事は一とほりで無い。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
徳藏稻荷の堂守だうもり殺しは、それつきり下手人げしゆにんが判りませんでした。錢形平次は身一つに引受けて、いろ/\探索たんさくの手をつひやしましたが、何としても解りません。
おほ人足にんそく使用しようしたのを一人ひとり勞作らうさくなをして、一にち平均へいきん時間じかんると、まさに八十餘日よにちつひやした計算けいさんである。
こゝに半夜をつひややがて閉場のワルツに送られて群集と共に外にいづるや、つめたき風颯然さつぜんとして面をつ……余は常に劇場を出でたる此の瞬間の情味を忘れ得ず候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
無数の薬の名前と、その置き場所とをすつかり覚え込むまでには、かなりの日数をつひやした。が、併しそれは左程困らなかつた。困つたのは客との応対であつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
彼等かれらあさきて先づ火焚き塲の火をさかんにし、食物調理しよくもつてうりを爲し、飮食いんしよくを終りたる後は、或は食物原料採集げんれうさいしうに出掛け、或は器具製造に從事じうじし、日中のときつひやしたる後
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ふるびついたる戟共ほこどもおなじく年老としおいたる手々てんでり、汝等なんぢらこゝろびつきし意趣いしゅ中裁ちゅうさいちからつひやす。
私はその朝、この日頃の期待にも似ず、ぼんやりと寢床の中に一日の午前をつひやしかけた。なぜかしら頭をそつとして置きたくて、一寸のあひだ體を動すのがいやだつた。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
今迄私は私の些々さゝたる生活の出來事を詳細に亙つて記し、私の生涯の最初の十年の爲めに殆んど同數の章をつひやした。しかしこれは普通の自叙傳となるべきものではない。
じつこのあひだときつひやことぷんか、十五ふん人間にんげん一生懸命いつせうけんめいになると、隨分ずいぶん力量ちからるものだよ。
あたひたかき物は海人あまの家にふさはしからず。父の見給はばいかにつみし給はんといふ。豊雄、一三三たからつひやして買ひたるにもあらず。きのふ一三四人のさせしをここに置きしなり。
「この年(千八百八十二年)わが病的なる日本美術品蒐集しうしふの為につひやせし金額、実に三千フランに達したり。これわが収入の全部にして、懐中時計をあがなふべき四十フランの残余さへとどめず」
其議論のはげしきつひに小西技師をして、国境論者こくけうろんしやは別隊をひきゐてべつ探検たんけんすべしとの語をはつせしむるにいたりたる程なりき、もし糧食れうしよくそなへ充分にして廿日以上の日子をつひやすの覚悟なりせば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
もううなつてると、るべきかねらうと最初さいしよかんがへもなくなるし、またそれがめに葉書代はがきだいつひやすのはそんだといふやうかんがへもなし、是非ぜひともなければならない日課につくわとして
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
二とせの間、劇場にて貯へし金をば、藥餌の料につひやし盡し候ひぬ。
半日はんにちつひやす身分の女とても
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
つひやすば
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かれ奉公ほうこうして給料きふれう自分じぶんつひやしてころでは餘所目よそめにはうたがはれる年頃としごろの卅ぢかくまで獨身どくしん生活せいくわつ繼續けいぞくした。そのあひだかれ黴毒ばいどくんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
穿物はきものおもいために、細君さいくんあしはこ敏活びんくわつならず。がそれ所爲せゐ散策さんさくかゝ長時間ちやうじかんつひやしたのではない。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此雪いくばくのちからをつひやし、いくばくの銭をつひやし、終日しゆうじつほりたるあとへその夜大雪あけて見ればもとのごとし。かゝる時は主人あるじはさら也、下人しもべかしらたれ歎息ためいきをつくのみ也。
千萬言をつひやしたところで、呑込める筈はなく、百人に許した唇も、どんな罪惡の因子いんしを持つて居るかも知れない血統ちすぢも、花魁おいらんといふ名で淨化される、單純至極な考へやうには
なみ江丸えまる本島ほんたうはこんでしよひんうちにあつたのでたゞちに着手ちやくしゆしたが、其爲そのためすくなからぬ勞力ほねをりと、諸種しよしゆ重要ぢゆうえうなる藥品等やくひんとうつひやしたは勿論もちろん海底戰鬪艇かいていせんとうてい内部ないぶ各室かくしつ裝飾用さうしよくようにと
若きをのこ七二けくおびえして、銭おほくつひやすことよといふに、殿とののぼらせ給ふ時、七三小豆嶋あづきじまより七四室津むろづのわたりし給ふに、七五なまからきめにあはせ給ふを、みともはべりしもののかたりしを思へば
すべての老人としよりほとんきやうするばかりにさわ二日ふつかそのにち卯平うへいには不快ふくわいでさうして無意味むいみつひやされた。かれになつてから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この打合うちあはせがをはると、大佐たいさ命令めいれいで、輕氣球けいきゝゆう海岸かいがん砂上しやじやう引出ひきいだされ、水素瓦斯すいそがす充分じふぶん滿たされ、數日分すうじつぶん食料しよくれうと、飮料水いんれうすいと、藥品やくひん買入かひいれや、船舶せんぱく雇入やとひいれのめにつひや
此雪を取除とりのけんとするには人力じんりき銭財せんざいとをつひやすゆゑ、寸導せめてだんを作りてみちひらく也。そも/\初雪より歳を越て雪きゆるまでの事を繁細はんさいに記さば小冊にはつくしがたし、ゆゑにはぶきてしるさゞる事甚多し。
○さてわが駅中えきちゆうに稲荷屋喜右エ門といふもの、石綿を紡績はうせきする事に千思せんしりよつひやし、つひみづからその術を得て火浣布を織いだせり。又其頃我が近村きんそん大沢村の医師黒田玄鶴げんくわくも同じく火浣布を織る術をたり。