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編笠
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あみがさ
ふりがな文庫
“
編笠
(
あみがさ
)” の例文
と、思わず立ちどまると、女の方でも、はッとしたらしく、ついと
編笠
(
あみがさ
)
のつばへ手をやって、急に、そ知らぬ振りをするかに見えた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心に
編笠
(
あみがさ
)
を冠る思いをして故国を出て来たものがこの眼に見えない幽囚は
寧
(
むし
)
ろ当然のことのようにも思われた——孤独も、禁慾も。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
松山に渡った一行は、毎日
編笠
(
あみがさ
)
を深くして、敵の
行方
(
ゆくえ
)
を探して歩いた。しかし兵衛も用心が厳しいと見えて、容易に在処を
露
(
あらわ
)
さなかった。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
日本
堤
(
づつみ
)
を
編笠
(
あみがさ
)
茶屋まで行くと、——これから先は町人共でさへ顏を隱す者が多いくらゐだから、御身分の方がお顏をさらしては通りにくい。
銭形平次捕物控:174 髷切り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
着流しに
長脇差
(
ながわきざし
)
、ひとつ
印籠
(
いんろう
)
という異様な
風態
(
ふうてい
)
だったので、人目をひかぬはずもなかったが、
尾張
(
おわり
)
の殿様も姫路の殿様も、
編笠
(
あみがさ
)
なしの
素面
(
すめん
)
で
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
つい十年ほど前の、旧幕時代には、芝居者は河原乞食と
賤
(
いや
)
しめられ、
編笠
(
あみがさ
)
をかぶらなければ、市中を歩かせなかったという。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「や、いかにも。これはこれは、人違いに相違ございません」あわててとったは
編笠
(
あみがさ
)
である。そこで
殷懃
(
いんぎん
)
に小腰をかがめ
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は深い
編笠
(
あみがさ
)
をかぶって、
白柄
(
しろつか
)
の大小を横たえて、この頃
流行
(
はや
)
る
伊達羽織
(
だてばおり
)
を腰に巻いて、
袴
(
はかま
)
の
股立
(
ももだ
)
ちを高く取っていた。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鬼怒川
(
きぬがは
)
を
徃復
(
わうふく
)
する
高瀬船
(
たかせぶね
)
の
船頭
(
せんどう
)
が
被
(
かぶ
)
る
編笠
(
あみがさ
)
を
戴
(
いたゞ
)
いて、
洗
(
あら
)
ひ
曝
(
ざら
)
しの
單衣
(
ひとへ
)
を
裾
(
すそ
)
は
左
(
ひだり
)
の
小褄
(
こづま
)
をとつて
帶
(
おび
)
へ
挾
(
はさ
)
んだ
丈
(
だけ
)
で、
飴
(
あめ
)
は
箱
(
はこ
)
へ
入
(
い
)
れて
肩
(
かた
)
から
掛
(
か
)
けてある。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
旅館の主人、馬を勧め、
剛力
(
がうりき
)
を勧め、
蓆
(
ござ
)
を勧め、
編笠
(
あみがさ
)
を勤む、皆之を
卻
(
しりぞ
)
く、この極楽の山、
只
(
たゞ
)
一本の
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
にて足れりと
広舌
(
くわうぜつ
)
して、朝まだき裾野を
往
(
ゆ
)
く。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
そこには、小さい組み立ての机、
筮竹
(
ぜいちく
)
、
算木
(
さんぎ
)
で暮す、
編笠
(
あみがさ
)
の下から、白い
髯
(
ひげ
)
だけ見せた老人が、これから、商売道具を並べ立てようとしているのであった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
種々
(
いろ/\
)
考えました処が、江戸には親類もありますから、
何卒
(
どうぞ
)
江戸へ参り
度
(
た
)
いと思いまして、
故郷
(
こきょう
)
が懐かしいまゝ無理に離縁を取って出ましたが、手振り
編笠
(
あみがさ
)
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
竜之助は脇差を奪い、刀を取って腰に差し、
編笠
(
あみがさ
)
を拾ってかぶるなり縁側からふいと表へ出てしまいました。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
赤紐で白い
腮
(
あご
)
をくゝつて
葦
(
あし
)
の
編笠
(
あみがさ
)
を深目にかぶつた雪子の、長い袖をたを/\と波うたせ、若衆の叩く太鼓に合せて
字村
(
あざむら
)
の少女たちに混つて踊つてゐる姿など
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
夫婦づれで
編笠
(
あみがさ
)
をかぶって
脚絆
(
きゃはん
)
をつけて歩いて行くホウカイ
節
(
ぶし
)
、七色の
護謨風船
(
ごむふうせん
)
を飛ばして売って歩く
爺
(
おやじ
)
、時には美しく着飾った近所の豪家の娘なども通った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
不生の域に達すれば、もとより美と醜とは争いを失ってしまう。いつも巡礼の
編笠
(
あみがさ
)
には十字型にこう記す
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
いずれも
編笠
(
あみがさ
)
で
深
(
ふか
)
く
顔
(
かお
)
を
隠
(
かく
)
したまま、
眼
(
め
)
をしばたたくのみで、
互
(
たがい
)
に一
言
(
ごん
)
も
発
(
はっ
)
しなかったが、
急
(
きゅう
)
に
何
(
なに
)
か
思
(
おも
)
いだしたのであろう。
羽左衛門
(
うざえもん
)
は、
寂
(
さび
)
しく
眉
(
まゆ
)
をひそめた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
わたくしが急いで近寄って
編笠
(
あみがさ
)
の中を
覗
(
のぞ
)
くと、彼はせぐり上げせぐり上げして来る涙を、胸の
喘
(
あえ
)
ぎだけでは受け留めかねて、赤くした眼からたらたら流している。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
重政がこの絵本にはその他なほ楽屋裏の
新道
(
しんみち
)
に
編笠
(
あみがさ
)
深き
若衆形
(
わかしゅがた
)
の楽屋入りを見せ、舞台のうしろに
囃子方
(
はやしかた
)
腰かけて三味線
弾
(
ひ
)
きゐる
傍
(
かたわら
)
に扮装せる役者の
打語
(
うちかた
)
れるあり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
編笠
(
あみがさ
)
を
被
(
かぶ
)
って白い
手甲
(
てっこう
)
と
脚袢
(
きゃはん
)
を着けた
月琴弾
(
げっきんひき
)
の若い女の休んでいる汚ない茶店の婆さんに同じ
問
(
とい
)
をかけたら、婆さんは案外にもすぐそこだと
容易
(
たやす
)
く教えてくれたので
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弟は
困
(
こま
)
って、又何べんも片方の眼だけをパチ/\させて、「故里の方はとても嵐だって!」と繰りかえしたところが、お前が
編笠
(
あみがさ
)
をいじりながら、突然奇妙な顔をして
母たち
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
青い軍服を着た海軍士官の一隊が——彼の眼には
編笠
(
あみがさ
)
をかむって
珠数繋
(
じゅずつな
)
ぎになっている囚人の姿に見えてくる。こうした
憂鬱
(
ゆううつ
)
に沈みきって、
悄然
(
しょうぜん
)
とむなしい旅から戻って来た。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
人間というやつは、昔々から、生れついた
生地
(
きじ
)
の顔を、人前にさらすことを、ひどくはにかむ傾向がある。日本では
頭被
(
かつぎ
)
、
編笠
(
あみがさ
)
、
頭巾
(
ずきん
)
の類が、その時々の人間の顔を隠してきた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
『瀧口が庵は此處ながら、浮世の人にはる/″\訪はるゝ覺えはなきに』と言ひつゝ訝しげなる顏色して門を開けば、
編笠
(
あみがさ
)
脱
(
ぬ
)
ぎつゝ、ツと通る件の旅人、僧は一目見るより打驚き
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
昔の鳥追いが
被
(
かぶ
)
っているような
編笠
(
あみがさ
)
を被って、少し
俯向
(
うつむ
)
いて歩いているその女の
襟足
(
えりあし
)
が月明りのせいもあろうけれど、驚くほど真白である。若い女でなければあんなに白い
筈
(
はず
)
がない。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
晝間
(
ひるま
)
は
納屋
(
なや
)
の
中
(
なか
)
、
鎭守
(
ちんじゆ
)
の
森
(
もり
)
、
日蔭
(
ひかげ
)
ばかりをうろつく
奴
(
やつ
)
、
夜遊
(
よあそ
)
びは
申
(
まを
)
すまでもなし。
色
(
いろ
)
が
白
(
しろ
)
いのを
大事
(
だいじ
)
がつて、
田圃
(
たんぼ
)
を
通
(
とほ
)
るにも
編笠
(
あみがさ
)
でしよなりと
遣
(
や
)
る。
炎天
(
えんてん
)
の
田
(
た
)
の
草取
(
くさとり
)
などは
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らない。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
江戸の
鳥追
(
とりおひ
)
といふは
非人
(
ひにん
)
の
婦女
(
ふぢよ
)
音曲
(
おんきよく
)
するを女太夫とて
木綿
(
もめん
)
の
衣服
(
いふく
)
をうつくしく
着
(
き
)
なし、
顔
(
かほ
)
を
粧
(
よそほ
)
ひ、
編笠
(
あみがさ
)
をかむり、
三弦
(
さみせん
)
に
胡弓
(
こきう
)
などをあはせ、
賀唱
(
めでたきうた
)
をおもしろくうたひ、
門々
(
かど/\
)
に立て銭を
乞
(
こ
)
ふ。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
太田は
編笠
(
あみがさ
)
を少しアミダにかぶってまだふらふらする足を踏みしめながらその後に従ったが、——そうしてやがて来てしまったここの一廓は、これはまたなんという陰気に静まりかえった所であろう。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
日本
堤
(
づつみ
)
を
編笠
(
あみがさ
)
茶屋まで行くと、——これから先は町人共でさえ顔を隠す者が多いくらいだから、御身分の方がお顔をさらしては通りにくい。
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ここを有名な
女影
(
おなかげ
)
の里の迷路であると知ッたなら、彼も、もう一層ゆッくりと
編笠
(
あみがさ
)
の
紐
(
ひも
)
でも解いて、そこらの
草叢
(
くさむら
)
にどっかりと腰を下ろし
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
男は皆な
頬冠
(
ほつかぶ
)
り、女は皆な
編笠
(
あみがさ
)
であつた。それはめづらしく
乾燥
(
はしや
)
いだ、風の無い日で、汗は人々の身体を流れたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
日
(
ひ
)
はまだほんのりと
明
(
あか
)
るかつたので
勘次
(
かんじ
)
はそつちこつちと
空
(
から
)
な
草刈籠
(
くさかりかご
)
を
背負
(
せお
)
つた
儘
(
まゝ
)
歩
(
ある
)
いた。
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
れでも
良心
(
りやうしん
)
の
苛責
(
かしやく
)
に
對
(
たい
)
して
編笠
(
あみがさ
)
で
其
(
そ
)
の
顏
(
かほ
)
を
隔
(
へだ
)
てた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
編笠
(
あみがさ
)
はまるでフランスの女たちの持ち物のようにさえ見える。草で編んで左右の
端
(
はし
)
がいたくそる。縁を黒のびろうどでとり、それに五色の色糸で美しいかがりをする。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
夫
(
それ
)
が
宜
(
よ
)
からう、ソコでお
前
(
まへ
)
さんは
施主
(
せしゆ
)
の
事
(
こと
)
だから
袴
(
はかま
)
でも
着
(
つ
)
けるかい。金「ナニ
夜分
(
よる
)
の
事
(
こと
)
でげすから
襦袢
(
じゆばん
)
をひつくり返して
穿
(
は
)
きます。「デモ
編笠
(
あみがさ
)
は
被
(
かぶ
)
らなければなるまい。 ...
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
同じく小さい
編笠
(
あみがさ
)
と
藁草履
(
わらぞうり
)
を棺に入れた。
昨日
(
きのう
)
の夕方まで
穿
(
は
)
いていた赤い毛糸の
足袋
(
たび
)
も入れた。その
紐
(
ひも
)
の先につけた丸い
珠
(
たま
)
のぶらぶら動く姿がすぐ千代子の眼に浮んだ。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いま頂上の見晴らしのよいところへ来て、深い
編笠
(
あみがさ
)
をかたげて、甲州路の
方
(
かた
)
を見廻しました。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
脚袢
(
きゃはん
)
に
手甲
(
てっこう
)
がけ、
編笠
(
あみがさ
)
かぶった女の、四人五人、
高箒
(
たかほうき
)
と熊手を動し、落葉枯枝をかきよせているのをば、時々は不思議そうに
打眺
(
うちなが
)
めながら、
摺鉢山
(
すりばちやま
)
の
麓
(
ふもと
)
を鳥居の方へと急いだ。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
野袴
(
のばかま
)
を
穿
(
は
)
き、
編笠
(
あみがさ
)
をかむった、立派なみなりのお侍様五人が、半僧半俗といったような、
円
(
まる
)
めたお
頭
(
つむ
)
へ
頭巾
(
ずきん
)
をいただかれ、
羅織
(
うすもの
)
の
被風
(
ひふ
)
をお羽織りになられた、気高いお方を守り
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
青い着物を着、青い
股引
(
ももひき
)
をはき、青い
褌
(
ふんどし
)
をしめ、青い帯をしめ、ワラ
草履
(
ぞうり
)
をはき、——生れて始めて、俺は「
編笠
(
あみがさ
)
」をかぶった。だが、俺は褌まで青くなくたっていゝだろうと思った。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
外記は
編笠
(
あみがさ
)
をぬいで縁にあがった。お時は迎い火を消して、同じく内にはいった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その中に
二銭
(
にせん
)
の
団洲
(
だんしゅう
)
と呼ばれた、
和光
(
わこう
)
の
不破伴左衛門
(
ふわばんざえもん
)
が、
編笠
(
あみがさ
)
を片手に
見得
(
みえ
)
をしている。少年は舞台に見入ったまま、ほとんど息さえもつこうとしない。彼にもそんな時代があった。……
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
江戸の
鳥追
(
とりおひ
)
といふは
非人
(
ひにん
)
の
婦女
(
ふぢよ
)
音曲
(
おんきよく
)
するを女太夫とて
木綿
(
もめん
)
の
衣服
(
いふく
)
をうつくしく
着
(
き
)
なし、
顔
(
かほ
)
を
粧
(
よそほ
)
ひ、
編笠
(
あみがさ
)
をかむり、
三弦
(
さみせん
)
に
胡弓
(
こきう
)
などをあはせ、
賀唱
(
めでたきうた
)
をおもしろくうたひ、
門々
(
かど/\
)
に立て銭を
乞
(
こ
)
ふ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「私の気のせいかも知れませんが、ちらと、人浪をくぐって逃げた
編笠
(
あみがさ
)
の男が、どうも日本左衛門のように思われたんです」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次は巴屋を飛び出すと、
編笠
(
あみがさ
)
茶屋の裏の小料理屋、當り屋へ行つてをりました。四十五六の女房が一人、商賣物の料理の支度をしてをりましたが
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その身内のものが手錠、
腰繩
(
こしなわ
)
の姿で、裁判所の庭を通り過ぎようとした時、
冠
(
かぶ
)
っていた
編笠
(
あみがさ
)
のかげから黙って彼に
挨拶
(
あいさつ
)
した時のことを思出すことが出来る。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼
(
かれ
)
は
更
(
さら
)
に
栗
(
くり
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
つた
葉
(
は
)
の
間
(
あひだ
)
から
針
(
はり
)
の
先
(
さき
)
で
突
(
つ
)
くやうにぽちり/\と
洩
(
も
)
れて
射
(
さ
)
す
光
(
ひかり
)
を
避
(
さ
)
けて
例
(
いつ
)
もの
如
(
ごと
)
く
藺草
(
ゐぐさ
)
の
編笠
(
あみがさ
)
を
被
(
かぶ
)
つて、
麻
(
あさ
)
の
紐
(
ひも
)
を
顎
(
あご
)
でぎつと
結
(
むす
)
んである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その他
編笠
(
あみがさ
)
の類や、
竹笊
(
たけざる
)
や
帚
(
ほうき
)
などにも、大変面白い形のものを見かけます。子供の
玩
(
もてあそ
)
ぶ太鼓にも珍らしい出来のがあり、また女の児が遊ぶ
手毬
(
てまり
)
にも美しいものを見かけます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
かつては
六尺町
(
ろくしゃくまち
)
の横町から
流派
(
りゅうは
)
の
紋所
(
もんどころ
)
をつけた柿色の包みを抱えて出て来た稽古通いの娘の姿を今は
何処
(
いずこ
)
に求めようか。
久堅町
(
ひさかたまち
)
から
編笠
(
あみがさ
)
を
冠
(
かぶ
)
って出て来る
鳥追
(
とりおい
)
の三味線を何処に聞こうか。
伝通院
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私
(
わっち
)
の妹に違いないのだ、此の間の火事に
母親
(
おふくろ
)
に放れ、行方も知れねえから段々様子を聞くと、
此所
(
ここ
)
に居る事が分り、路銀を遣い、
此様
(
こん
)
な山の中まで尋ねて来て、手ぶり
編笠
(
あみがさ
)
で
帰
(
けえ
)
られましょうか
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
編笠
(
あみがさ
)
をいだいている上に、向こうを向いているところから、顔の形はわからなかったが、半白の切下げの長髪が、左右の肩へ振りかかって、歩調につれて揺れるのが、一種の特色をなしていた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
編
常用漢字
小5
部首:⽷
15画
笠
漢検準1級
部首:⽵
11画
“編笠”で始まる語句
編笠乞食
編笠姿
編笠一蓋
編笠早百合
編笠焼
編笠餅
編笠扮装
編笠茶屋