)” の例文
旧字:
この倹約は鉄嶺丸に始まって、大連から満洲一面に広がって、とうとう安東県あんとうけんて、韓国かんこくにまで及んだのだから少からず恐縮した。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その結婚は父の承認をないでも有効なのだから、バアナムの立場は、なんら法律的に根拠のあるものでないことを熟知していたし
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
一四あしがちる難波なにはて、一五須磨明石の浦ふく風を身に一六しめつも、行々一七讃岐さぬき真尾坂みをざかはやしといふにしばらく一八つゑとどむ。
にちて、アンドレイ、エヒミチは埋葬まいそうされた。その祈祷式きとうしきあずかったのは、ただミハイル、アウエリヤヌイチと、ダリュシカとで。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わけてその外交的な遠謀と智慮にかけては、若い謙信のごとき、到底、あの百錬の功を緋衣ひいの僧将の頭脳には敵すべきもなかった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつか、あおそらのぼっていって、おたがいにこのなかてきた運命うんめいについて、かたよりはほかになかったのであります。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三鷹村みたかむらの方から千歳村をて世田ヶ谷の方に流るゝ大田圃の一の小さなえだが、入江いりえの如く彼が家の下を東から西へ入り込んで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかしただ当分のうちはできるだけ事を荒立てないように黙って過ごしましたが、数年てからは事情もいくらか違って来たので
ガリレオ・ガリレイ (新字新仮名) / 石原純(著)
警鈴ベルが、じゃんじゃん鳴りだしたのは、それから更に、五分ほどて後のことだった。ゴールド女史のラジオがぷつんと切れた。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分は気を付けて各地の話を聴いていたのだが、遠州の気多けたの山村などでは、ムジナは狸のこうたものだというそうである。
狸とムジナ (新字新仮名) / 柳田国男(著)
信濃町権田原しなのまちごんだわら、青山の大通を横切って三聯隊裏さんれんたいうらしるした赤い棒の立っているあたりまで、その沿道の大きな建物はことごとく陸軍に属するもの
しかし尊意の法力も度重なっては効を奏さなかったのか、その後五年を、八年の十月には菅根朝臣が電撃を受けて震死した。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『おわかれしてから随分ずいぶんなが歳月としつきましたが、はからずもいまここでおにかかることができまして、こころからうれしうございます。』
朧気おぼろげなる一個の写真ぞ安置せらる、れ此の伯母が、いま合衾がふきんの式を拳ぐるに及ばずしてかずに入りたる人の影なり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あやしむべきかなかつたりしところをそのままに夢むるためしは有れ、所拠よりどころも無く夢みし跡を、歴々まざまざとかく目前に見ると云ふも有る事か。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
千代ちよよとまだみどり児にありしよりたゞ住吉の松を祈りき」「頼みては久しくなりぬ住吉のまつ此度はしるしみせてよ」
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おのれはとてもかくてもなむ、女のかく若き程に、かくてあるなむいといとほしき、京にのぼりてよき宮仕をもせよ。よろしきやにもならば、我を
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
かの子 ただ何となく垢抜あかぬけした感じがします。あれは散々さんざん今の新しさが使用しつくされた後のレベルから今いちだん洗練をた後にうまれた女です。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
玉川に遊ぶ者は、みち世田が谷村をん。東京城の西、青山街道を行く里余りよ、平岡逶迤いいとして起伏し、碧蕪へきぶ疎林そりんその間を点綴てんていし、鶏犬の声相聞う。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
これを亡ぼすのは、さのみむずかしいとは思わぬが、ただ恐るべきはかの妲己という妖女で、彼女かれの本性は千万年のこう金毛きんもう白面はくめんの狐じゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ほどて、兵士共が女王の室の戸を開くと、女王は黄金の床の上に眠るが如く死んで居て、二人の侍女も虫の息であつた。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
こうた下女——それもちょいと爪外れの良い年増と、美しい後添のちぞえの女はどんなものか、親分にも見当はつくでしょう。
貞観じょうがん三年奏聞を唐に渡りここには明師なしとて天竺に渡る、唐土の帝渡天の志を感じて多くの宝を与えたまいけるに
されば、更るがわる鈎を挙げて、を更め、無心にして唯あたりを待ちけるに、一時間許りける時、果して鈴に響く。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
玉敷たましきの都の中に、むねを並べいらかを争へる、たかいやしき人の住居すまひは、代々よよてつきせぬものなれど、これをまことかとたづぬれば、昔ありし家はまれなり。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大和やまとの方から泉州せんしゅうめぐり、そこに潜伏中の宮和田胤影みやわだたねかげい、大坂にある岩崎長世ながよ、および高山、河口かわぐちらの旧友と会見し、それから京都に出て
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
のち五年を勅免ちよくめんありしかども、ほふひろめためとて越後にいまししこと五年なり、ゆゑに聖人の旧跡きうせき越地にのこれり。弘法ぐほふ廿五年御歳六十の時みやこかへり玉へり。
少し時間をた時分に、用事を済ませて来た、ありがとうとその法衣ころもを返したから、尼僧はそれをとこにおいた。
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
山道五十マイルを上りまして午後五時頃ダージリンに着きましたが、カルカッタよりは三百八十哩をたのであります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また、ベン・ガンの塩漬の山羊の肉や、ヒスパニオーラ号から持って来た幾つかの珍味や一罎ひとびんの年た葡萄酒で、その食事の何とおいしかったことか。
忘れもせぬ、自分の其学校に行つて、頬にあざのある数学の教師に代数の初歩を学び始めて、まだ幾日いくかぬ頃に、新に入学して来た二人の学生があつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
数旬をやまいいえ退院たいいんせんとする時、その諸費をはらわんとせしに院吏いんりいう、君の諸入費しょにゅうひ悉皆しっかい福沢氏よりはらわたされたれば、もはやその事に及ばずとなり。
むろんそれが決定的にかれの行動を左右するまでには、まだ数多くの試練をなければならなかったであろう。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
少年時代に散々困難した上大きくなって他人の意思を知ろうとするとまたまたこんな困難をなければならん。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
葡萄牙ポルトガルに行き、ソレカラ地中海に這入はいって、元の通りの順路をて帰て来たその間の年月はおよそ一箇年、すなわち文久二年一杯、推詰おしつまってから日本に帰て来ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
古き書にもあるとおり、「なんじ一度ひとたび水田に種子たねけ、数日をて収穫すべし」と。われわれひとたびける種子たねむくいは、われわれ自身が刈らねばならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
手に手をとりくみて日を給うが、ついに心みだれ、生きてある日に違わず戯れつつも、その肉の腐りただるをおしみて、肉を吸い骨をなめ、はたくらいつくしぬ
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これは恐るべき度胸どきょうだと、感嘆したことを今でもおぼえているが、二十年をた今となると私自身が、まったく、それと同じ境地きょうちに落ちつこうとしているのだ。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
こうわたくしどもでさえ、向面むこうづらへ廻しちゃあ気味の悪い、人間には籍のないような爺、目をふさいで逃げますまでも、きついことなんぞわれたものではございませんが
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
瓦に劣る世をよとはおぼしも置かじを、そもや谷川の水おちて流がれて、清からぬ身に成り終りし、そのあやまちは幼気おさなぎの、迷ひは我れか、なかだちは過ぎし雪の日ぞかし。
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日の西に入りてよりほどたり。箱根足柄あしがらの上を包むと見えし雲は黄金色こがねいろにそまりぬ。小坪こつぼうらに帰る漁船の、風落ちて陸近ければにや、を下ろし漕ぎゆくもあり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
往来から岡の方へ余程上って、小高い所にあるから一寸ちょっと見ても涼しそうな家さ、おれがいくとお町は二つの小牛を庭の柿の木のかげつないで、十になる惣領そうりょうを相手に
姪子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
借金も少しだと困るが身分不相当に沢山になると却つて借金のお蔭で生命がつなげるやうなもんで、虚誕もちつとだと躓くが此位甲羅かふらると世渡りが出来ると見える子。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
パラパラ墓と称する墓場を、雨夜に隠火の出づると言う森と、人魂の落ちこみしと伝うる林を右左にうけて通りこし、かの唐碓のたにの下流なる曲淵まがりぶちの堤に出でたり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
各流能楽の家元いえもとから、音楽ずきの物持ち長者、骨董商こっとうしょうというような所を、根気よく万遍まんべんなくめぐって「鼓をご紛失ではござらぬかな?」こういって尋ねたものである。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其夜そのよ詩集ししふなどいだして読みしは、われながら止所とめどころのなき移気うつりぎや、それ其夜そのよの夢だけにて、翌朝よくあさはまた他事ほかのこと心移こゝろうつりて、わすれて年月としつきたりしが、うめの花のくを見ては毎年まいとし
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
年をるにしたがって曖昧あいまいになり、その後に知った木賃宿きちんやど主人あるじや、泊まり合わして心安くなった旅芸人の老人なぞの顔とごっちゃになり、まったく記憶の外に逃げ去って
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
翌日は吉野路よしのじを通って、五条橋本ごじょうはしもとなど云う処をてそのかごとりと云う山の辻堂つじどうで一泊し、十日になって紀州路きしゅうじから泉州せんしゅう牛滝うしたきと云う処へ越え、それから葛城山かつらぎざんへ往った。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
此処に定住する前、スクーナーで島々をめぐっていた間にも、私は実に色々な人間に遇った。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
最近三月みつき、半年と段々日をるにつれて激しくなって来たが、妙な事にはこのひと月程以前からどうした事かハタと止んで、その代りヘンに甘酢ッぱい子供の様にはしゃいだ声で
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)