ぢき)” の例文
会うて篤と話をしたらぢきに訳は分らうと思ふで、是非一通りは聞いて貰ひたい。その上でも心が釈けん事なら、どうもそれまで。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、れもれもぢきかれ疲勞つからしてしまふ。かれそこでふとおもいた、自分じぶん位置ゐち安全あんぜんはかるには、女主人をんなあるじ穴藏あなぐらかくれてゐるのが上策じやうさくと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
マーキュ さゝ、足下おぬしはイタリーでれにもひけらぬ易怒男おこりむしぢゃ、ぢきおこるやうに仕向しむけられる、仕向しむけらるればすぐおこる。
話し御油斷ごゆだんあるべからずと云ふにより又七點頭うなづき今宵こよひもし菊が來たらばわれぢきに取ておさなはを掛くべし其時其方は早々さう/\加賀屋長兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
教師けうしそのあとで、嬰兒あかご夜泣よなきをしてへられないといふことでぢき餘所よそした。幾度いくど住人すみてかはつて、今度こんどのはひさしくんでるさうである。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一体ぢきに手紙の返事をよこす人には神信心の厚い、正直者が多いものだが、この応募者も察する所、正直者だつたに相違ない。返事にはかうあつた。
なんだ大きな体躯なりをして立つてるやつるか、すわんなよ。弥「用が有るならぢきつてるにやア立つてるはうはええや。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「はい、もう長い間わづらつてゐます。いろいろ医者のてあても受けましたが、悪くなるばかりです。ほんたうの盲目めくらになるのもぢきだと思ひます。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
隅田川筋一帶がさうではあるが、他所ほかは近代的美を徐々に造りつつあるとき、兩國橋附近もぢきにさうなるであらう。
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
果して茶表紙にぢきに書いた別の三字があつた。此三字は「過去帳」であるらしい。推するに初め過去帳と題し、後んで糾繩抄と改めたものであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いたしませう。あき子さんは今日はまだ学校からお帰りにならないのでございますか。——坊ちやん、待つて入らつしやいましよ。もうぢき帰りますからね。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
なほ、此儀は、弥左衛門殿ぢきに見受けられ候趣にて、村方嘉右衛門殿、藤吾殿、治兵衛殿等も、其場に居合されし由に候へば、千万せんばん実事じつじたるに紛れ無かる可く候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と一寸語を切ると大急ぎで此処を逃かしてはと様に切込んで来様としますから私もぢき語を続けましたの。
獄中の女より男に (新字旧仮名) / 原田皐月(著)
そつちこつちくちけてかねえぢや、ぢき年齡としばかしとらせつちやつてやうねえぞ、らも一人ひとりしたがおめえ容易よういぢやねえよ、さうだかうだはれねえうちだぞおめえ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
本通りから左の或る横町の薄暗い静かな街へ入ると、ぢきにその屋号の出た電燈が見つかつたので、私は打水うちみづをした石畳いしだたみを踏んで、燈籠とうろうと反対の側にある玄関先きへかゝつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しばらくすると「名古屋はもうぢきでせうか」と云ふ女の声がした。見ると何時いつにか向きなほつて、および腰になつて、顔を三四郎のそば迄持つて来てゐる。三四郎は驚ろいた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
娘二 ぢきそこまで傘を借りに行くと云つたが、まさか置去りした譯でもあるまい。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
左様なら。ロミュアル、左様なら。私は貴方に恋をしてゐるのよ。私の話したい事はそれだけなの。貴方の接吻で一寸の間かへつて来た命を、貴方に返してあげませうね。またぢきにお目にかゝつてよ。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
秩父嶺ちちぶね神立かんだちわたる朝の雲み声いさぎよし若きぢきみや
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はじめしが酒は一時間過てもまだ來ず茶に醉ふてかフラ/\と露伴子はねぶり梅花道人は欠伸あくびするに我は見兼ね太華山人と共に旅人宿はたごやへ催促と出かけしにぢきに門前にて只今持ち參るの所なりといふ寺も早や興盡きてさぶき
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ぢきさま追出おひだしてうちへはれてらないや。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねえ、貴方はひとの顔さへ見りや、ぢきに悪縁だと云ふのが癖ですよ。彼我ふたりの中の悪縁は、貴方がそんなにいはなくたつて善く知つてゐまさね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わつちアおめえにりんびやうおこつてもぢきなほ禁厭まじなひをしへてらう、なはを持つてな、ぢきなほらア。主人「はてな…へえゝ。弥「痳病りんびやう尋常じんじやう)になわにかゝれとふのだ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
或日良秀は突然御邸へ參りまして、大殿樣へぢきの御眼通りを願ひました。卑しい身分のものでございますが、日頃から格別御意に入つてゐたからでございませう。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「只今一寸そこらまでお出かけになりましたのでございますけど、今にぢき帰つて入らつしやいます。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
もれえたいものがあるで、ぢきぢやぞ。)と、くびをぐたりとりながら、横柄わうへいふ。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
同時に、自分のつとめてゐる銀行の、京坂地方のある支店詰になつた。代助は、出立しつたつの当時、新夫婦を新橋の停車場に送つて、愉快さうに、ぢき帰つて来給きたまへと平岡の手を握つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
扨も松平伊豆守殿には大岡越前守のもどられし跡にて熟々つら/\と思案あるに越前さだめし明朝は登城なし天一坊樣御身分再吟味の儀將軍へぢきに願ひ出るもはかがたし然ば此方も早く登城し越前に先を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よるよこつてたつてぢきみゝそばでさら/\つとかうみづうごいてんだから、放心うつかりねむつたらそつくりつてかれつかどうだかわかんねえとおもつてね、ぼつちりともはあはんねえでたのせえ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
利藻氏と豆千代とは、画がよく解るやうに、時々感心したやうにうなづいたり、小首をかしげたりしてゐたが、なかで三毛猫は一番正直だつた。画が始まると、せなを円くしてぢき居睡ゐねむりをし出した。
「さあ唯今ちよつと手が放せませんので、御殿の方に居りますから、どうか彼方あちらへお出なすつて。ぢき其処そこですよ。婢に案内を為せます。あのとよや!」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
或日良秀は突然御邸へ参りまして、大殿様へぢきの御眼通りを願ひました。卑しい身分のものでございますが、日頃から格別御意に入つてゐたからでございませう。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其頃そのころ諸侯方しよこうがたされ、長兵衛ちやうべゑ此位このくらゐ値打ねうちが有るといふ時は、ぢき代物しろものを見ずに長兵衛ちやうべゑまうしただけにお買上かひあげになつたとふし、此人このひと大人たいじんでございますから
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それぢや僕より七つ許り若い。七年もあると、人間は大抵の事が出来る。然し月日つきひち易いものでね。七年位ぢきですよ」と云ふ。どつちが本当なんだか、三四郎にはわからなかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
取次給とりつぎたまふの官なり尤も小石川御館のみはぢきに京都より官職を受るなり二は淳和院じゆんなゐんとて日本國中の武家を支配する官なり三は奬學院しやうがくゐんとて總公家そうくげを支配する官職なり然れど江戸にてかく京都の公家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さかりころつから味噌みそきで味噌みそなくつちやなんぼにも身體からだちからつかねえでこまり/\したんだから、麥麹むぎつかうぢしほまでつてんだからまめせえりやぢきなのに、それいまんなつたつてくべぢやなし
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おや、山に十の字の焼印やきいんがあるね、これおれとこ沢庵樽たくあんだるぢやアないか。金「なんだか知れませぬが井戸端ゐどばたに水がつてあつたのをこぼしてもつましたが、ナニぢきに明けてお返しまうします。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「えゝもううに。此處を退院なさるとぢきでした、御亡おなくなりになつたのは」
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから一時いちじ中絶ちうぜつした我楽多文庫がらくたぶんこです、吉岡書籍店よしをかしよじやくてん引受ひきうけて見たいとふので、ぢき再興さいこうさせて、文庫ぶんこ改題かいだいして、かた菊版きくばんなほしました、これ新著百種しんちよひやくしゆ壱号いちがうが出るとも無く発行はつかうしたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
天氣てんきすぐれてうつくしいある午前ごぜん御米およね何時いつものとほ宗助そうすけおくしてからぢきに、おもてた。もうをんな日傘ひがさしてそとくべき時節じせつであつた。いそいで日向ひなたあるくとひたひあたりすこあせばんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
早くしてれ「エヽもう二三にん御入来おいでになるとぢきに始まります。 ...
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「もうぢき御正月おしやうぐわつね。貴方あなた御雜煑おざふにいくつがつて」といたこともあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それがぢき生温なまぬるくなるので、枕元まくらもと金盥かなだらひせて時々とき/″\しぼへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「えゝ、もと、ぢき近所に居たもんですから」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「先生、今ぢきです」と言訳いひわけをした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)