トップ
>
片頬
>
かたほ
ふりがな文庫
“
片頬
(
かたほ
)” の例文
瞳を上げる、鼻筋が冷く通って、
片頬
(
かたほ
)
にはらはらとかかる、軽いおくれ毛を撫でながら、
静
(
しずか
)
に
扉
(
ひらき
)
を出ました。水盤の前に、寂しく立つ。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大佐は
冷
(
ひやゝ
)
かに
片頬
(
かたほ
)
に笑みつ「はア、閣下、山木には
無骨
(
ぶこつ
)
な軍人などは駄目ださうです、既に三国一の
恋婿
(
こひむこ
)
が
内定
(
きま
)
つて居るんださうですから」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
とんとんと二段踏むと妹の
御太鼓
(
おたいこ
)
が
奇麗
(
きれい
)
に見える。三段目に水色の
絹
(
リボン
)
が、横に傾いて、ふっくらした
片頬
(
かたほ
)
が入口の方に向いた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或婦人の生みたる子の
片頬
(
かたほ
)
に大いなる赤き痣ありしに、其母の物語る所によれば、其女の住みし家の向ひの家、産の二三週前に焼けし由に候。
アンドレアス・タアマイエルが遺書
(新字旧仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
叔父と母親とが、赤子の死んで出たことを話して聞かすと、叔母は
片頬
(
かたほ
)
に淋しい
笑
(
え
)
みを見せて、目に冷たい涙を浮べた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
倉地は葉子が時々
途轍
(
とてつ
)
もなくわかりきった事を少女みたいな無邪気さでいう、またそれが始まったというように渋そうな笑いを
片頬
(
かたほ
)
に浮かべて見せた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ト
螓
(
しん
)
の首を
斜
(
ななめ
)
に
傾
(
か
)
しげて
嫣然
(
えんぜん
)
片頬
(
かたほ
)
に含んだお勢の微笑に
釣
(
つ
)
られて、文三は部屋へ這入り込み坐に着きながら
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
粋
(
すい
)
ほど迷う道多くて自分ながら思い分たず、うろ/\する
内
(
うち
)
日は
消
(
たち
)
て
愈〻
(
いよいよ
)
となり、
義経袴
(
よしつねばかま
)
に
男山
(
おとこやま
)
八幡
(
はちまん
)
の守りくけ込んで
愚
(
おろか
)
なと
笑
(
わらい
)
片頬
(
かたほ
)
に
叱
(
しか
)
られし
昨日
(
きのう
)
の声はまだ耳に残るに、今
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
おやと思う間もなく、五百は
片頬
(
かたほ
)
に灰を
被
(
かぶ
)
った。五百には
咄嗟
(
とっさ
)
の
間
(
あいだ
)
に、その物の姿が好くは見えなかったが、どうも少年の
悪作劇
(
いたずら
)
らしく感ぜられたので、五百は飛び附いて
掴
(
つか
)
まえた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お
勸
(
すゝめ
)
申しに參りましたと
言
(
いひ
)
ければ長三郎は
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
ゑ
)
み今に初ぬ
和郎
(
そなた
)
の
親切
(
しんせつ
)
主人思ひは有難けれど
憖
(
なま
)
じ戸外へ出る時は
反
(
かへ
)
つて身の
毒
(
どく
)
目の毒なれば
只
(
たゞ
)
居
(
ゐ
)
馴染
(
なじみ
)
し居間に居て好な書物を
讀
(
よみ
)
ながら庭の青葉を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しばらくしてから思兼尊は、こう云って、
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
えみ
)
を浮べた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
えみ
)
を含みつつ力の抜けた
空元気
(
からげんき
)
で
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
スフインクスの意地悪るき
片頬
(
かたほ
)
の
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
死んで行く人の
片頬
(
かたほ
)
に残る
笑
(
えみ
)
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
澄
(
す
)
まさば
宜
(
よ
)
かるべけれど
夫
(
それ
)
すら
彼
(
か
)
の
人
(
ひと
)
見捨
(
みす
)
てゝは
入
(
い
)
り
難
(
がた
)
かるべしとてつく/″\と
打歎
(
うちなげ
)
けど
人
(
ひと
)
に
見
(
み
)
すべき
涙
(
なみだ
)
ならねば
作
(
つく
)
り
笑顏
(
ゑがほ
)
の
片頬
(
かたほ
)
さびしく
物案
(
ものあん
)
じの
主
(
しう
)
慰
(
なぐさ
)
めながら
我
(
わ
)
れ
先
(
ま
)
づ
乱
(
みだ
)
るゝ
蓴
(
ねぬなわ
)
の
戀
(
こひ
)
はくるしき
物
(
もの
)
なるにや
成
(
な
)
るとは
見
(
み
)
えて
覺束
(
おぼつか
)
なき
人
(
ひと
)
の
便
(
たよ
)
りを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
薔薇
(
さうび
)
潮
(
さ
)
す
片頬
(
かたほ
)
にほてり
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
当の狙われた若い妓は、はッと顔を背けたので、笹葉は
片頬
(
かたほ
)
外れに肩へ
辷
(
すべ
)
って、手を払って、持ったのを
引払
(
ひっぱら
)
われて、飴の鳥はくしゃん、と
潰
(
つぶ
)
れる。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女は男の
肘
(
ひじ
)
に手を掛けて、手に力を入れて、
片頬
(
かたほ
)
を男の肩に押し付けた。歌い始めた次の歌が、次第に遠くなりながら、帰って行く二人に付いて来る。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「うけてか」と
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
え
)
める様は、谷間の
姫
(
ひめ
)
百合
(
ゆり
)
に朝日影さして、しげき露の
痕
(
あと
)
なく
晞
(
かわ
)
けるが如し。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ほツほツと
片頬
(
かたほ
)
に寄する伯母の清らけき笑の波に、篠田は幽玄の気、胸に
溢
(
あふ
)
れつ、振り返つて
一室
(
ひとま
)
に
煤
(
すゝ
)
げたる仏壇を
見遣
(
みや
)
れば、
金箔
(
きんぱく
)
剥
(
は
)
げたる黒き
位牌
(
ゐはい
)
の林の如き前に
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
髪の
結様
(
ゆいよう
)
どうしたら
誉
(
ほめ
)
らりょうかと鏡に
対
(
むか
)
って小声に問い、
或夜
(
あるばん
)
の
湯上
(
ゆあが
)
り、
耻
(
はずか
)
しながらソッと
薄化粧
(
うすげしょう
)
して
怖怖
(
こわごわ
)
坐敷
(
ざしき
)
に
出
(
いで
)
しが、
笑
(
わらい
)
片頬
(
かたほ
)
に見られし御
眼元
(
めもと
)
何やら
存
(
あ
)
るように覚えて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
中肉中背で、可哀らしい円顔をしている。
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに結って、体中で外にない赤い色をしている
六分珠
(
ろくぶだま
)
の
金釵
(
きんかん
)
を
挿
(
さ
)
した、たっぷりある髪の、
鬢
(
びん
)
のおくれ毛が、
俯向
(
うつむ
)
いている
片頬
(
かたほ
)
に掛かっている。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
肘
(
ひじ
)
を
枕
(
まくら
)
に横に倒れて、天井に円く映る
洋燈
(
ランプ
)
の
火燈
(
ほかげ
)
を目守めながら、
莞爾
(
にっこ
)
と
片頬
(
かたほ
)
に
微笑
(
えみ
)
を含んだが、
開
(
あい
)
た口が結ばって前歯が姿を隠すに連れ、
何処
(
いずく
)
からともなくまた
愁
(
うれい
)
の色が顔に
顕
(
あら
)
われて参ッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
十月
(
じふぐわつ
)
の暮れし
片頬
(
かたほ
)
を
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
溝端
(
みぞばた
)
の
片陰
(
かたかげ
)
に、
封袋
(
ふうたい
)
を切って
晃乎
(
きらり
)
とする、薬の
錫
(
すず
)
を
捻
(
ひね
)
くって、伏目に辰吉の
彳
(
たたず
)
んだ
容子
(
ようす
)
は、
片頬
(
かたほ
)
に
微笑
(
ほほえみ
)
さえ見える。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「押されるばかりで、ちっとも押せやしないわ」と娘は落ちつかぬながら、薄い
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
えみ
)
を見せる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
樊噲だって立派な将軍だが、「生きて
乃
(
すなは
)
ち噲等と伍を為す」と仕方が無しの苦笑をした韓信の笑には涙が催される。氏郷の書院柱に
靠
(
よ
)
りかかって月に泣いた此の涙には
片頬
(
かたほ
)
の
笑
(
えみ
)
が催されるではないか。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
左様
(
さう
)
ぢやありませんよ」と、梅子も思はず
片頬
(
かたほ
)
に笑みつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
女子
(
をみなご
)
の
片頬
(
かたほ
)
のしらみ
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と歎息するように
独言
(
ひとりごと
)
して、
扱
(
しご
)
いて
片頬
(
かたほ
)
を
撫
(
な
)
でた手をそのまま、欄干に
肱
(
ひじ
)
をついて、
遍
(
あまね
)
く境内をずらりと
視
(
なが
)
めた。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
後
(
おく
)
れて行くものは後れて帰る
掟
(
おきて
)
か」といい添えて
片頬
(
かたほ
)
に笑う。女の笑うときは危うい。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お丹
片頬
(
かたほ
)
に
微笑
(
えみ
)
を含み、「じゃあ
御拘引
(
おつれ
)
下さいますかね。」巡査少し慌てて、「どこへ。」「はてさ、御役所へ。」「何い。」と
眼
(
まなこ
)
を
睜
(
みは
)
れば、お丹笑い出し
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わんと云えばまたわんと云えと云う。犬は続け様にわんと云う。女は
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
えみ
)
を含む。犬はわんと云い、わんと云いながら右へ左へ走る。女は黙っている。犬は尾を
逆
(
さかしま
)
にして狂う。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
大
(
おおき
)
な懐中時計と、旗竿の影を、すっくり立って、
片頬
(
かたほ
)
夕日を浴びながら、
熟
(
じっ
)
と落着いて
視
(
なが
)
めていなさる。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
片頬
(
かたほ
)
に
觸
(
ふ
)
れた
柳
(
やなぎ
)
の
葉先
(
はさき
)
を、お
品
(
しな
)
は
其
(
その
)
艶
(
つや
)
やかに
黒
(
くろ
)
い
前齒
(
まへば
)
で
銜
(
くは
)
へて、
扱
(
こ
)
くやうにして
引斷
(
ひつき
)
つた。
青
(
あを
)
い
葉
(
は
)
を、カチ/\と
二
(
ふた
)
ツばかり
噛
(
か
)
むで
手
(
て
)
に
取
(
と
)
つて、
掌
(
てのひら
)
に
載
(
の
)
せて
見
(
み
)
た。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
片頬
(
かたほ
)
に触れた柳の葉先を、お品はその
艶
(
つや
)
やかに黒い前歯で
銜
(
くわ
)
えて、
扱
(
こ
)
くようにして
引断
(
ひっき
)
った。青い葉を、カチカチと二ツばかり
噛
(
か
)
んで手に取って、
掌
(
てのひら
)
に載せて見た。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
洗面所の壁のその柱へ、袖の陰が
薄
(
うっす
)
りと、
立縞
(
たてじま
)
の縞目が映ると、
片頬
(
かたほ
)
で白くさし覗いて
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
歩手前
(
あしてまえ
)
の店のは、
白張
(
しらはり
)
の
暖簾
(
のれん
)
のような汚れた
天蓋
(
てんがい
)
から、
捌髪
(
さばきがみ
)
の垂れ下った中に、藍色の
片頬
(
かたほ
)
に、薄目を開けて、片目で、置据えの囃子屋台を
覗
(
のぞ
)
くように見ていたし、
先隣
(
さきどなり
)
なのは
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「黙ろう、黙ろう、」と
傍
(
わき
)
を向いた、
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
えみ
)
を含みながら
吃驚
(
びっくり
)
したような色である。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手で
片頬
(
かたほ
)
をおさへて、
打傾
(
うちかたむ
)
いて
小楊枝
(
こようじ
)
をつかひながら、
皿小鉢
(
さらこばち
)
を寄せるお辻を見て
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
美女の姿は、依然として足許に
横
(
よこた
)
わる。
無慚
(
むざん
)
や、
片頬
(
かたほ
)
は土に着き、黒髪が敷居にかかって、上ざまに
結目
(
むすびめ
)
高う根が
弛
(
ゆる
)
んで、
簪
(
かんざし
)
の何か小さな花が、やがて美しい虫になって飛びそうな。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生際
(
はえぎわ
)
が抜け上って
頭
(
つむり
)
の半ばから
引詰
(
ひッつ
)
めた、ぼんのくどにて小さなおばこに、
櫂
(
かい
)
の形の
笄
(
こうがい
)
さした、
片頬
(
かたほ
)
痩
(
や
)
せて、
片頬
(
かたほ
)
肥
(
ふと
)
く、目も鼻も口も
頤
(
あご
)
も、いびつ
形
(
なり
)
に
曲
(
ゆが
)
んだが、肩も横に、胸も横に
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
影が
痣
(
あざ
)
になって、巴が一つ
片頬
(
かたほ
)
に映るように陰気に
沁
(
し
)
み込む、と思うと、ばちゃり……
内端
(
うちわ
)
に湯が動いた。何の
隙間
(
すきま
)
からか、ぷんと梅の香を、ぬくもりで溶かしたような
白粉
(
おしろい
)
の香がする。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
光景の陰惨なのに気を打たれて、姿も
悄然
(
しょうぜん
)
として淋しげに、心細く見えた女賊は、滝太郎が勇しい既往の物語にやや色を直して、
蒼白
(
あおじろ
)
い顔の
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
えみ
)
を
湛
(
たた
)
えていたが、思わず声を放って
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その窓を見向いた
片頬
(
かたほ
)
に、
颯
(
さっ
)
と
砂埃
(
すなほこり
)
を
捲
(
ま
)
く影がさして、雑所は眉を
顰
(
ひそ
)
めた。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
片頬
(
かたほ
)
を青く
捻
(
ね
)
じ向けた、鼻筋に一つの目が、じろりと
此方
(
こなた
)
を見て光った。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と崩るるごとく、
片頬
(
かたほ
)
を横に
接
(
つ
)
けんとしたが、
屹
(
きっ
)
と
立退
(
たちの
)
いて、袖を合せた。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
横目
(
よこめ
)
に
框
(
かまち
)
をすかして、
片頬
(
かたほ
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
含
(
ふく
)
むで、
堪
(
たま
)
らないといつたやうな
聲
(
こゑ
)
で
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「貴方、お疑り遊ばすと
暴風雨
(
あらし
)
になりますよ。」といって、塗盆を
片頬
(
かたほ
)
にあてて
吻々
(
ほほ
)
と笑った、聞えた
愛嬌者
(
あいきょうもの
)
である。島野は顔の皮を
弛
(
ゆる
)
めて、眉をびりびり、目を細うしたのは
謂
(
い
)
うまでもない。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見透
(
みとほし
)
の
裏
(
うら
)
は
小庭
(
こには
)
もなく、すぐ
隣屋
(
となり
)
の
物置
(
ものおき
)
で、
此處
(
こゝ
)
にも
犇々
(
ひし/\
)
と
材木
(
ざいもく
)
が
建重
(
たてかさ
)
ねてあるから、
薄暗
(
うすぐら
)
い
中
(
なか
)
に、
鮮麗
(
あざやか
)
な
其
(
その
)
淺黄
(
あさぎ
)
の
手絡
(
てがら
)
と
片頬
(
かたほ
)
の
白
(
しろ
)
いのとが、
拭込
(
ふきこ
)
むだ
柱
(
はしら
)
に
映
(
うつ
)
つて、ト
見
(
み
)
ると
露草
(
つゆぐさ
)
が
咲
(
さ
)
いたやうで
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
頬
部首:⾴
15画
“片頬”で始まる語句
片頬笑