りん)” の例文
しかし、お豆腐は一丁五りんであったのを、お豆腐やの前で読んだから知っている。お米のねだんは知らないから書くことが出来ない。
ばうなはが七せんまうで一そく草鞋わらぢが一せんりんといふ相場さうばだからどつちにしても一にち熱心ねつしんうごかせばかれは六七せんまうけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と一りんおなじことを、おなじ調子でいうんですもの。私のかどへ来ましたまでに、遠くからちょうど十三たび聞いたのでございます。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ハッハハ。なあにそれほどじゃありません。ほんのも少しです。も一分五りんですよ。ハッハハ。」となめくじが云いました。
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「家を引っくり返して、あなぐらと屋根裏とをあべこべにして、中に何があるかお前に教えてやらあ、フランだかスーだかりんだか。」
汗を絞って働く一時間の労賃が、たった一銭一りん強にしかならぬことを知ったならば、誰しもがその労賃のあまりに僅少なのに驚くであろう。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「なに、これは五りんせんじゃねえか、五りんごまかそうとおもいやがって……。」と、いまいましそうにいって、かおいろえた。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、今、そうして保名やすな狂乱もどきにボンヤリ突っ立ってる喬之助には、玄蕃の剣眼けんがんから見て、正に一りんの隙もないのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たとえば、村の雑貨屋は、巳之助の作った瓢箪型ひょうたんがたの草鞋を卸値の一銭五りんで買いとって、人力曳じんりきひきたちに小売値の二銭五厘で売っていたのである。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
土瓶形どびんがた香爐形かうろがた洋人やうじん百圓宛ひやくえんづゝつたらうか。おそらく今頃いまごろは、あのをとこに、十箇とを二錢にせんりんつたはうかつたと、後悔こうくわいをしてるであらうよ。
低落ていらくして十二ぐわつすゑには百六十二・九九となり六ぐわつくらべて十三・三二すなはち七りん下落げらくとなつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それうもかぬな、しかしさういふのには魔睡剤ますゐざいもちゆるとすぐなほるて、モルヒネをな、エート一ゲレンは一りんもう
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
予算もまたその通りで、一銭一りんの歳入歳出といえども、ことごとく議会の協賛を経なければならぬ。まだその上に行政命令の監督権も議会にある。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
私はお祖母ばあさんなどに貰つてありましたお金の中の銅貨を、二三枚だけ更に小銭に変へて貰ひました。毎日二りんづつ柴田の菓子包へ入れてやりました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
他の水夫やエンジさんは、毎晩のように飲みにでかけ、帰ってくると「一りんばな」かさいころ博奕ばくち夜更よふかしをした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その時分じぶん蕎麥そばふにしても、もりかけが八りんたねものが二せんりんであつた。牛肉ぎうにく普通なみ一人前いちにんまへせんでロースは六せんであつた。寄席よせは三せんか四せんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もちろん、夫子の云われる所は九りんまで常にあやまり無き真理だと思う。また夫子の行われる所は九分九厘まで我々の誰もが取ってもってはんとすべきものだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
固唾かたずを呑んで眼をみはった。向うから来るのは私の乗機と一りん違わぬ陸上の偵察機である。搭乗者も一人らしい。機のマークや番号はむろん見えないが……。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
幾何学上に称する点や線などは大きさなきものと説いてあるが、しかし針のさきでさえも一りん何分なんぶんの一というように必ずはかり得る大きさを有するものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一、餅菓子の白き色にして一箇一銭を値する者その色を赤くすればすなわち一箇二銭五りんとなる。味に相違あるに非ず。しかも一箇にして一銭五厘の相違は染料の価なりと。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
わしとこではお寺の建立があろうが、学校の修繕があろうが、堤防の修築があろうが、先祖代々から一文半りんも出した先例がないので、村のことでさえそういうわけだから
厄払い (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なるほどなるほどと自分は感心して、小短冊こたんじゃく位の大きさにそれをって、そして有合せの味噌みそをその杓子しゃくしの背で五りんか七厘ほど、一とはならぬ厚さにならしてりつけた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
りん(半銭)という小銅貨もまだあった。だから編物製の巾着きんちゃくなどが重宝だったものとみえる。
まいつゞきにしたつて封書ふうしよおなことで三せんだ。たまに三まいつゞきにすることもあるが、状袋じやうぶくろれたり、切手きつてつたりする面倒めんだうがないだけでも、一せんりん値打ねうちはあるからな。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
なぜといって、そのわしの車へはいってきた男は、顔から、背広から、がいとうからステッキまで、このわしと一りんもちがわないほど、そっくりそのままだったからです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鬼門きもんさわるようにおそれていた座敷ざしきだったが、留守るすだれかが這入はいったといては、流石さすがにあわてずにいられなかったらしく、こしらえかけの蜆汁しじみじるを、七りんけッぱなしにしたまま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
黒田はあれはこの世界に金を溜める以外何物もない憐れな男だと言っていた。五りんだけ安いというので石油の缶を自転車にぶらさげ、下谷したやの方まで買いに出かけるという事であった。
イタリア人 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして、一りんりんと、あなちひさなはちからだかくすほどにだんだんふかられてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
種吉は算盤そろばんおいてみて、「七りんの元を一銭に商って損するわけはない」家に金の残らぬのは前々の借金で毎日の売上げが喰込くいこんで行くためだとの種吉の言い分はもっともだったが、しかし
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
かけさせたそれが左の手ばかりでなく両手両足に及んだ剪ると云ってもほとんど眼に見えてびていないわずかに一りん二厘に過ぎないのをいつも同じ恰好かっこうに正確に剪るように命じ剪ったあと
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
誠に、なんじに告ぐ、一りんも残りなく償わずば、其処そこをいずることあたわじ。
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
氷水も甘酒も一杯八りん、その一杯が実に甘露の味であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
六分 二分四りん 三分六厘
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
さっき、子供こどもが、五りんりなかったので、どろぼうだといってしかられたといてきたが、わたしぜにわたしたときにわるいものでまちがったのだ。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それぢや差引さしひき四十一せんりん小端こばしか、こつちのおつかさま自分じぶんでもあきねえしてつから記憶おべえがえゝやな」商人あきんど十露盤そろばんつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ハヽー少し逆上ぎやくじやうしてるやうぢやから、カルメロを一りんにヤーラツパを五ふん調合てうがふしてつかはすから、小屋こやかへつて一にちに三くわい割合わりあひ服薬ふくやくいたすがよい。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ここに井戸いどってたびひとにのんでもらおうとおもいます。こころざしのあるかたは一せんでも五りんでも喜捨きしゃしてください。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
たとへてれば去年きよねんの一ぐわつはじめの爲替相場かはせさうばが四十六ドルであつてそれが六ぐわつ三十にちには四十三ドルの三にさがつてるから、わづか六箇月かげつあひだに四りん低落ていらくである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
この種の女性たちはいちように嘘言癖きょげんへきをもっていて、その身の上話の九りんまでは作りごとであり、読んだ小説か母もの映画のバリエイションときまっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おれは何とも云わずに、山嵐の机の上にあった、一銭五りんをとって、おれの蝦蟇口がまぐちのなかへ入れた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金澤かなざはにてぜに百とふは五りんなり、二百が一せん、十せんが二くわんなり。たゞし、一ゑんを二ゑんとははず。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三の戸、金田一、福岡ふくおかと来りしが、昨日きのう昼餉ひるげたべはぐりてくるしみければ今日はむすび二ツもらい来つ、いで食わんとするに臨み玉子うる家あり。価を問えば六りんと云う。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
りん切手を貼った新聞だけは必ず、間違いなく届けてもらえるように頼んでおいた。
眼を開く (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ははぐに勝手かってってかえしたとえて、ふたたび七りんしたあお渋団扇しぶうちわおとみだれた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それからおまえはうんと走って陸地測量部りくちそくりょうぶまで行くんだ。そして二人ともこううんだ。北緯ほくい二十五東経とうけいりんところに、目的もくてきのわからない大きな工事こうじができましたとな。二人とも言ってごらん
ありときのこ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
『今日は、御用はありませんか。』『ない。』『へい、ではまたどうぞ。』とか、『商人は外で待ってろ。』とか、『一りん』の負け合いで、御百度を踏んで二、三十円の註文を貰ったり……。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それが、まるで精密な計量器ではかった様に、キチンと八分目なのだ。二つのグラスはまったく同形だし、それらの位置も、テーブルの中心点からの距離が、物差ものさしを当てた様に一りん違っていない。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「四十六せんりんまうしゆるんだが、りや八りんとしてもらつてな」と商人あきんど財布さいふから自分じぶんぜにけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
りんをくれる人もあった。中には、青くびた穴あき銭を惜しそうにくれる人もあった。二銭銅貨をうけとったときには木之助は、それが馬鹿に重いような気がした。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
宗助そうすけは一せんりんして、その風船ふうせんひとつて、しゆつとちゞましてもらつて、それをたもとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)