不運ふうん)” の例文
なにとなく薄淋うすさびしくなつたなみおもながめながら、むねかゞみくと、今度こんど航海かうかいはじめから、不運ふうんかみ我等われら跟尾つきまとつてつたやうだ。
不運ふうんにもかれ誘惑いうわくされたどくをんなだともおもへるのであつたが、しかし恋愛れんあい成立せいりつについては、かれくはしいことらなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
不運ふうんなりとは何故ぞと仰せければ女中ども若君わかぎみにはじつ太守たいしゆ光貞卿の御子にておはし候へ共四十二の御厄年おやくどしの御子なりとて御捨遊おすてあそばされしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロレ はれ、それは物怪もっけ不運ふうんの! 眞實しんじつ重大ぢゅうだい容易ようゐならぬ用向ようむきその書面しょめん、それが等閑なほざりになったうへは、どのやうな一大事だいじ出來でけうもれぬ。
たとえんでいても、自分じぶん不運ふうんのために、そのうおはりや、あみにかからないのかもしれないと金持かねもちはなげいていました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そんだがれお内儀かみさんらあからなんぞにやつめあかだからわしなんざつれえもかなしいもねえはなしなんだが」かれ自分じぶん不運ふうんうつたへるのに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしやう不運ふうんはゝそだつより繼母御まゝはゝごなり御手おてかけなりかなふたひとそだてゝもらふたら、すこしは父御てゝご可愛かわゆがつて後々のち/\あのためにもなりませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すぐに、私どもは、よりあつまって、自分たちの不運ふうんを悲しみあいました。そして、どこかほかに、かくれ場をさがそうと思って、御殿を出て行きました。
ところが不運ふうんにも、その日の午後は、ある先輩せんぱいの家で、マージャンを決行する約束があった。困ったなと思うが、四人の中の一人として欠けるわけに行かない。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
おやにさえそむいて折角せっかく三浦みうら土地とちみとどまりながら、自分じぶんついなん仕出しでかしたこともなかった! んという腑甲斐ふがいなさ……んという不運ふうんうえ……口惜くやしい……かなしい……なさけない……。
わたし不運ふうん御座ござりますとて口惜くやしさかなしさ打出うちいだし、おもひもらぬことかたれば兩親ふたおやかほ見合みあはせて、さては其樣そのやうなかかとあきれて暫時しばしいふこともなし。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不運ふうん人達ひとたちておりゃる地盤グラウンドだけはえるが、この不運ふうんほん原因グラウンドは、ようしらべてぬうちはわからぬわい。
そうすれば、わたしは、そのかたのために、朝晩あさばん、どんなにでもはたらこうとおもっていました。……それが、こんなさまになってしまった。これというのもわたし不運ふうんです……。
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
七代の將軍とあが家繼公いへつぐこうとぞ申したてまつる此君御不運ふうんにまし/\もなく御他界ごたかいにて有章院殿いうしやうゐんでんと號したてまつる是に依て此度は將軍家に御繼子けいしなく殿中でんちう闇夜あんや燈火ともしび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしおな滊船ふねで、はる/″\日本につぽん歸國きこく途中とちう暗黒あんこくなる印度洋インドやう眞中たゞなかおそ海賊船かいぞくせん襲撃しふげきひ、不運ふうんなる弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつともに、夫人ふじん生死せいしわたくしにはわからぬ次第しだいだが
くにいづるまではまで不運ふうんゑんともおもはざりしが、今日けふこのごろおくりこしたる寫眞しやしんをさへるにものうく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それは! おまえも不運ふうんなことだのう……。なぜ、またはやく、まちてこなかったのだ。」
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ベンヺ はゞかりながら、この不運ふうんなる騷擾さうぜうのあさましき經緯ゆくたて手前てまへ言上ごんじゃういたしませう。
南無三なむさん。」とわたくし逡巡しりごみした。おほく白晢はくせき人種じんしゆあひだ人種じんしゆちがつた吾等われら不運ふうんにも彼等かれらとまつたのである。わたくし元來ぐわんらい無風流ぶふうりうきはまるをとこなのでこの不意打ふいうちにはほと/\閉口へいこうせざるをない。
言れて戻るそのつらさかくては終に親子共餓死がしより外に目的めあてなし如何成ばこそ斯迄にあはれの身とは成けるぞやおもまはせばまはす程妻のお久にわかれしが此身の不運ふうん不幸ふかうぞと思案に暮て居たりしが所詮斯樣の姿にて故郷こきやうはぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「たとえ、そこへいっても、どうしてべていけるかわかりません。いしげつけられたり、みんなにかたきにされていじめられるばかりです。」と、からすは不運ふうんなげきました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
此處こゝさへはなれてつたならばんなうつくしくところられるかと、ういふこと是非ぜひともかんがへます、で御座ございますから、わたし矢張やつぱりそのとほりのゆめにうかれて、此樣こん不運ふうんをはるべきが天縁てんえんでは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
レールは、いたみにえられませんでした。そしていていました。自分じぶんほど、不運ふうんなものがあるだろうか。毎日まいにち毎日まいにちいくたびとなしに、おも汽罐車きかんしゃあたまうえまれなければならない。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あのころ旦那だんなさまが離縁りえんをやると一言ひとことおつしやつたが最期さいごわたし屹度きつと何事なにごと思慮しりよもなくいとまいたゞいて、自分じぶん不都合ふつがふたなげて、此樣こん不運ふうんな、なさけない、口惜くちをしいてんめておきなさるなら
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おとうとは、ゆきうえ茫然ぼうぜんとしていますと、からながなみだまでがこおってしまうほどでありました。おとうとは、こんな不運ふうんなくらいなら、いっそかわにでもはいってんでしまったほうがいいとおもいました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
離縁りゑんつてたがいか、太郎たらう原田はらだのもの、其方そち齋藤さいとうむすめ、一ゑんれては二かほにゆくこともなるまじ、おなじく不運ふうんくほどならば原田はらだつま大泣おほなきにけ、なあせきさうではいか
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)