たくは)” の例文
井戸は小屋をかけかはやは雪中其物をになはしむべきそなへをなす。雪中には一てん野菜やさいもなければ家内かない人数にんずにしたがひて、雪中の食料しよくれうたくはふ。
分けて下さると仰しやいますので、小さい店でも持つた時の爲に少しづつはたくはへもふやし、商賣の駈引も見習つて置き度いと存じます
武士たるもの二〇みだりにあつかふべからず。かならずたくはをさむべきなり。なんぢいやしき身の分限ぶげんに過ぎたるたからを得たるは二一嗚呼をこわざなり。
御影みかげに住んでゐる男が、国元に相応かなり田畑でんばたを持つてゐるので、小作米の揚つたのを汽車で送らせて、御影の家でたくはへてゐるのがある。
中にも砲術家は大筒をもたくはへ火薬をも製するならひではあるが、此家ではそれが格別にさかんになつてゐる。去年九月の事であつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
見拔みぬきたれば申し殘す一儀あり我死なば具足櫃ぐそくびつの内に貞宗さだむねの短刀と用金のたくはへ五百兩あり其内金二百兩と短刀たんたうはお花が行衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
藥種屋 されば、其樣そのやう大毒藥だいどくやくをばたくはへてはをりまするが、マンチュアの御法度ごはっとでは、ったりゃ、いのちがござりませぬ。
こゝを先途せんどとまづたくはへたまひけるが、何れの武官にやそゝくさ此方へ来らるゝ拍子ひやうしに清人の手にせし皿をなゝめめにし、鳥飛んで空にあり、魚ゆかに躍り
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
貴方は今日こんにち無用の財をたくはへる為に、人の怨を受けたり、世にそしられたり、さうして現在の親子がかたきのやうになつて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
石鏃せきぞく製造せいぞうをわるにしたが悉皆しつかいやがら固着こちやくされしにはあらずして、餘分の物は種々の入れ物にたくはかれしものと見ゆ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
宗助そうすけからると、主人しゆじんしよにも俳句はいくにもおほくの興味きようみつてゐた。何時いつ是程これほど知識ちしきあたまなかたくはらるゝかとおもくらゐすべてに心得こゝろえのあるをとこらしくおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つまりふゆさむときにはなつあひださかんにたくはへた養分ようぶんをそのまゝつて休養きゆうようするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
画工はまたあらかじ其心そのこころして、我を伴ひりぬ。先づ蝋燭一つともし、一つをばなほころものかくしの中にたくはへおき、一巻ひとまきいとの端を入口に結びつけ、さて我手を引きて進み入りぬ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もし今日からあなたが決心してあなたの考へや行ひを正さうとおはじめになれば、二三年のうちに、あなたは新らしい汚れのない記憶をたくさんたくはへることがお出來になつて
ふでさきにてたがやたる收入しふにふきはめて僅少きんせうにして、みづかひ、みづかるにいまらざれども、らざるうちにもそれをたくはへて、もつ子孫しそんつたへるといふ、其子そのこいまいのである。
まち小學校せうがつかう校長かうちやうをしてゐた彼女かのぢよをつとは、一年間ねんかんはいんで、そして二人ふたり子供こどもわかつま手許てもとのこしたまゝんでいつた。のこつたものは彼女かのぢよおも責任せきと、ごくわづかなたくはへとだけであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
さうするうちに秋も更けて、丁度中頃なかごろになりましたから、冬の間に喰べるものをたくはへなくてはなりません。そこである日天気もいゝので、近くの野をうたひながら、あちこち飛びまはつてをりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ます/\けてつてた。いへうちには一くわいおきたくはへてはなかつた。枕元まくらもと近所きんじよ人々ひと/″\勘次かんじとおつぎのむまでは身體からだうごかすことも出來できないで凝然ぢつつめたいふところあたゝめてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うち女中ぢよちうなさけで。……あへ女中ぢよちうなさけふ。——さい臺所だいどころから葡萄酒ぶだうしゆ二罎にびん持出もちだすとふにいたつては生命いのちがけである。けちにたくはへた正宗まさむね臺所だいどころみなながれた。葡萄酒ぶだうしゆ安値やすいのだが、厚意こゝろざし高價たかい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
されど酒は只だ一種ひとくさならではたくはへ侍らずと笑ひつゝ答ふ。
門番の左五兵衞を呼出すのに一ト骨を折つた上、その口を開かせるのに、老母加世は、たくはへの半分を投出さなければなりませんでした。
にぶる時はたくはへたるをもつてみづからぐ。此道具だうぐけものかはを以てさやとなす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
おされ其方最初さいしよ九助江戸奉公中に百八十兩と云大金をたくはへたと有が右は如何樣の儀で貯しぞと申さるゝに藤八其儀うけたまはりし處江戸駿河するが町の町内抱へ番人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人に言はせたら、今おれたくはへたかねは、高が一人の女の宮に換へる価はあるとふだらう。俺には無い! 第一かねなどを持つてゐるやうな気持さへんぢやないか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
石斧製造いしおのせいざう必要ひつえうなる砂及び水は各々おの/\適宜てきたうなる大さの土器中にたくはへられしものと想像さうざうせらる。(續出)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
もつと至極しごくの事で、他所ほかの水はびんたくはへて持ち寄りをしたのだから、時間ときが経つて死水しにみづになつてゐる。加茂川のはたてだけに水がきてゐる。美味いに不思議はない筈だ。
小生の古つゞらにたくはふる処は僅にスコツチの背広が一りやう、其れも九年前にこしらへたれば窮屈なることおびたゞしく、居敷ゐしきのあたり雑巾ざふきんの如くにさゝれて、白昼には市中をあるけぬ代物しろもの
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
そのために、若葉わかばをふいてから次第しだい丈夫じようぶにかため、なつさかりをさいはひに、どん/\太陽たいようひかりともはたらいて、あき紅葉もみぢをする支度したくや、ふゆてもこまらない、養分ようぶんたくはへをするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
中は贅を盡して居りますが、至つて簡單で明るくて、贋金にせがね等を造る場所があらうとも思へず、そんなものをたくはへて置く樣子もありません。
ふきつゝはなしかくれば長庵はわざと目をぬぐひ涙に聲をくもらせてひんの病は是非もなし世の成行なりゆき斷念あきらめよ我とてはたくはへ金は有ざれども融通ゆうづうさへ成事なら用立ようだつ遣度やりたしと手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
容器の用は必しも飮食品いんしよくひんたくはふるに在らず、時としては手箱のようをもべんじたるなるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そりは作りやすき物ゆゑ、おほかたは農商のうしやう家毎いへごとに是をたくはふ。さればのするものによりて大小品々あれども作りやうは皆同じやうなり、名も又おなし。たゞ大なるを里俗に修羅しゆらといふ、大石大木をのするなり。
さうかと言つて、たくはへも路用もあるわけはなく、一人の妹を、江戸へ留め置くことも、もう一度濱松へ歸す當てもございません
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
そりは作りやすき物ゆゑ、おほかたは農商のうしやう家毎いへごとに是をたくはふ。さればのするものによりて大小品々あれども作りやうは皆同じやうなり、名も又おなし。たゞ大なるを里俗に修羅しゆらといふ、大石大木をのするなり。
清太郎さんは、この家から飛び出して、私と一緒に世帶を持つつもりでしたが、借金こそあれ、一文のたくはへもございません。
大泥棒の妹と知れると、何處でも三日と置いてはくれません。三月の間に五軒も越して歩いて少しばかりのたくはへも費ひ果し、身でも投げなきア、乞食を
一應も二應もつた家で、庭の掃除さうぢもよく行屆き、向うの方には銘木めいぼくたくはへて置く物置やら土藏やら、滅多に開けたことのない門などが見えてをります。
「不思議なことがあるものだよ、私も福島家には三年五年食ひつなぐ金があるものと思つて居たが、主人が死んで見ると本當に百のたくはへもないことが判つた」
甚六郎の浪宅は、ほんの二た間、めるやうに搜しましたが、三千兩はおろか、三兩のたくはへもありません。
阿星右太五郎はなか/\の富をたくはへ、高い利子でそれを運用して、氣樂な生活をしてゐる浪人でしたが、そんな蓄財癖が、この人を浪人にさせたのだといふ噂も
日雇取ひようとりの子で金を目當てにさらはれる筈もなく、お新の母親のお豊は武家ぶけの後家で、少しはたくはへもあるやうですが、長い間賃仕事をして、これも細々とした暮しです。
醫者の藥局にはそんな猛毒をたくはへてゐるといふことは、當時の常識としては許さるべくもないことで、將軍の脈まで見ようといふ流行はやり醫者に取つては、容易ならぬことだつたのです。
少しのたくはへもございますが、三代前の主人が、公儀の冥加みやうが金の、際限もない御申付けをおそれ、一萬兩にも上る小判を、何處かに隱したに違ひないといふ、不思議な噂が世上に傳はつて居ります。
母屋おもやから廊下傳ひに續いて、其處にはおびたゞしい金銀と、數代にわたつてたくはへた骨董こつとう類が入れてあるのですが、三重の扉を開くとムツと腥氣せいきが漂つて、一歩踏み込んだ孫三郎も、思はず足を淀ませました。