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茫然
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ばうぜん
ふりがな文庫
“
茫然
(
ばうぜん
)” の例文
我家の庭に蝿を見るは毎年五月初旬なるを思ひ、
茫然
(
ばうぜん
)
とこの蝿を
見守
(
みまも
)
ること多時、僕の病体、五月に至らば果して旧に復するや否や。
病中雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私
(
わたし
)
は
雪籠
(
ゆきごも
)
りの
許
(
ゆるし
)
を
受
(
う
)
けようとして、たど/\と
近
(
ちか
)
づきましたが、
扉
(
とびら
)
のしまつた
中
(
なか
)
の
樣子
(
やうす
)
を、
硝子窓越
(
がらすまどごし
)
に、ふと
見
(
み
)
て
茫然
(
ばうぜん
)
と
立
(
た
)
ちました。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は
石板
(
せきばん
)
を手にしてむづかしい
割算
(
わりざん
)
の答を出すのに困つてゐたが、
茫然
(
ばうぜん
)
と窓を眺めた私の眼に、ちやうどそこを通り過ぎる人が見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
細君は大時計の下に腰掛けて
茫然
(
ばうぜん
)
と眺め沈んで居る、弁護士は人々の間をあちこちと歩いて居る、丑松は蓮太郎の傍を離れないで
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
殘念
(
ざんねん
)
でならぬので、
自分
(
じぶん
)
の
持場
(
もちば
)
を一
生懸命
(
しやうけんめい
)
に
掘
(
ほ
)
つたけれど、
何
(
なに
)
も
出
(
で
)
ない。
幻子
(
げんし
)
の
大成功
(
だいせいかう
)
に
引替
(
ひきか
)
へて
大失敗
(
だいしつぱい
)
。
活
(
くわつ
)
望
(
ぼう
)
二
子
(
し
)
も
茫然
(
ばうぜん
)
として
了
(
しま
)
つた。
探検実記 地中の秘密:02 権現台の懐古
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
▼ もっと見る
開いて見れば不思議にも
文字
(
もんじ
)
は
消
(
き
)
えて
唯
(
たゞ
)
の白紙ゆゑ這は如何せし事成かと千太郎は
暫時
(
しばし
)
惘
(
あき
)
れ
果
(
はて
)
茫然
(
ばうぜん
)
として居たりしが我と我が心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
世間
(
せけん
)
は
容赦
(
ようしや
)
なく
彼等
(
かれら
)
に
徳義上
(
とくぎじやう
)
の
罪
(
つみ
)
を
脊負
(
しよは
)
した。
然
(
しか
)
し
彼等
(
かれら
)
自身
(
じしん
)
は
徳義上
(
とくぎじやう
)
の
良心
(
りやうしん
)
に
責
(
せ
)
められる
前
(
まへ
)
に、
一旦
(
いつたん
)
茫然
(
ばうぜん
)
として、
彼等
(
かれら
)
の
頭
(
あたま
)
が
確
(
たしか
)
であるかを
疑
(
うたが
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
さういふ
処
(
ところ
)
は
拠
(
よんどころ
)
なく
捨
(
すて
)
置いていつか分る時もあらうと
茫然
(
ばうぜん
)
と
迂遠
(
うゑん
)
な区域に
止
(
とど
)
め
置
(
おい
)
て、別段
苦
(
くるしみ
)
もいたしませんかつた。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
『
日
(
ひ
)
が
今
(
いま
)
昇
(
のぼ
)
るのを
見
(
み
)
なさい、
何
(
なん
)
と
神々
(
かう/″\
)
しい
景色
(
けしき
)
ではないか』と
優
(
やさ
)
しく
言葉
(
ことば
)
をかけるまで、
若者
(
わかもの
)
は
何
(
なに
)
を
思
(
おも
)
ふ
暇
(
ひま
)
もなく、ただ
茫然
(
ばうぜん
)
と
老人
(
らうじん
)
の
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たのです。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
暫
(
しば
)
らく気を失つた様になつて、
只
(
たゞ
)
茫然
(
ばうぜん
)
としてゐたが、我にかへつて四囲を見渡せば、我が松林は今や夕日を受けて、その緑は常にもまして美しく眺められた。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
或時
(
あるとき
)
はデレリ
茫然
(
ばうぜん
)
としてお
芋
(
いも
)
の
煮
(
に
)
えたも
御存
(
ごぞん
)
じなきお
目出
(
めで
)
たき者は
当世
(
たうせう
)
の
文学者
(
ぶんがくしや
)
を
置
(
お
)
いて
誰
(
た
)
ぞや。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
あれ以来、娘の
茫然
(
ばうぜん
)
とした無口にわたしは
手古擦
(
てこず
)
つてゐる。——娘も婆やもわたしを敬遠して、その癖言ひ分ありげな様子を見せてゐる。その態度がわたしに
堪
(
こら
)
へられなかつた。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
流石
(
さすが
)
に
氣根
(
きこん
)
も
竭果
(
つきは
)
てけん
茫然
(
ばうぜん
)
として
立
(
たち
)
つくす
折
(
をり
)
しも
最少
(
もすこ
)
し
參
(
まゐ
)
ると
御座
(
ござ
)
いませうと
話
(
はな
)
し
聲
(
ごゑ
)
して
黒
(
くろ
)
き
影
(
かげ
)
目
(
め
)
に
映
(
うつ
)
りぬ、
天
(
てん
)
の
與
(
あた
)
へ
人
(
ひと
)
こそ
來
(
き
)
つれ
外
(
はづ
)
すまじと
勇
(
いさ
)
み
立
(
たつ
)
て
進
(
すゝ
)
み
寄
(
よ
)
ればはて
何
(
なん
)
とせん
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
火の
餘燼
(
よぢん
)
と今出たばかりの月光に照されて、母娘巡禮の泣き濡れた姿と、平次の顏を伏し拜み伏し拜み行くのを、何が何やらわけもわからず、八五郎は
茫然
(
ばうぜん
)
として見送つて居るのでした。
銭形平次捕物控:250 母娘巡礼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただ
茫然
(
ばうぜん
)
と、
迷
(
まど
)
はしき「愛」の
衢
(
ちまた
)
にひとり立つ。
ありとあらゆるわが思
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
みたばかりの死に
茫然
(
ばうぜん
)
として
死別の翌日
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
金花は
眩
(
まばゆ
)
い眼をしばたたいて、
茫然
(
ばうぜん
)
とあたりを見まはしながら、暫くは取り乱した寝台の上に、寒さうな横坐りを改めなかつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「よう。」と
反
(
そ
)
つて、
茫然
(
ばうぜん
)
として
立
(
た
)
つた。が、ちよこ/\と
衣紋繕
(
えもんづくろ
)
ひをして、
其
(
そ
)
の
車
(
くるま
)
を
尾
(
つ
)
けはじめる。と
婦
(
たぼ
)
も
心着
(
こゝろづ
)
いたか
一寸々々
(
ちよい/\
)
此方
(
こなた
)
を
振返
(
ふりかへ
)
る。
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
余
(
よ
)
は
死
(
し
)
せるにあらぬかといふ、
夢幻
(
むげん
)
の
境
(
きやう
)
にさまよひ、
茫然
(
ばうぜん
)
として
動
(
うご
)
かずに
居
(
ゐ
)
る
後
(
うしろ
)
から、
突然
(
とつぜん
)
、一
箇
(
こ
)
の
黒影
(
くろかげ
)
が
出現
(
しゆつげん
)
した。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
摚
(
どう
)
と音して牛の身体が板敷の上へ横に成つたは、足と足とが引締められたからである。持主は
茫然
(
ばうぜん
)
として立つた。丑松も考深い目付をして眺め沈んで居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
失ひたる如く只
茫然
(
ばうぜん
)
として居たりけり然ば段々と打ち續きたる
冗費
(
ものいり
)
に今は
家藏
(
いへくら
)
も云に及ばず假令家財雜具迄も
賣拂
(
うりはら
)
へばとて
勿々
(
なか/\
)
借金
(
しやくきん
)
の方に引足ず母子倶々種々に心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
煙草
(
たばこ
)
を
喫
(
すつ
)
て
見
(
み
)
たり、
自分
(
じぶん
)
が
折
(
を
)
り折り
話
(
はな
)
しかけても
只
(
た
)
だ『ハア』『そう』と
答
(
こた
)
へらるゝだけで、
沈々
(
ちん/\
)
默々
(
もく/\
)
、
空々
(
くう/\
)
漠々
(
ばく/\
)
、三日でも
斯
(
か
)
うして
待
(
ま
)
ちますよといはぬ
計
(
ばか
)
り、
悠然
(
いうぜん
)
、
泰然
(
たいぜん
)
、
茫然
(
ばうぜん
)
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
と
惱
(
なや
)
ましげにて
子猫
(
こねこ
)
のヂヤレるは
見
(
み
)
もやらで
庭
(
には
)
を
眺
(
なが
)
めて
茫然
(
ばうぜん
)
たり
孃
(
じやう
)
さま
今日
(
けふ
)
もお
不快
(
こゝろわるう
)
御坐
(
ござ
)
いますか
否
(
い
)
や
左樣
(
さう
)
も
無
(
な
)
けれど
何
(
ど
)
うも
此處
(
こゝ
)
がと
押
(
お
)
して
見
(
み
)
する
胸
(
むね
)
の
中
(
うち
)
には
何
(
なに
)
がありや
思
(
おも
)
ふ
思
(
おも
)
ひを
知
(
し
)
られじとか
詞
(
ことば
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
二人は暫く經つて
漸
(
やうや
)
く我に返りました。萬七と清吉はお谷婆さんに繩打つて引立てた後、次郎右衞門始め奉公人達一同、たゞ氣拔けたやうに
茫然
(
ばうぜん
)
としてゐる中を、お秀の泣聲が絶々に縫つてをります。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
茫然
(
ばうぜん
)
としぬ、……涙しぬ。
夏と私
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
彼は
領巾
(
ひれ
)
をたまさぐりながら、
茫然
(
ばうぜん
)
と室の中に
佇
(
たたず
)
んでゐた。すると眼が慣れたせゐか、だんだんあたりが思つたより、薄明く見えるやうになつた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
……
余
(
あま
)
りの
仕儀
(
しぎ
)
に
唯
(
たゞ
)
茫然
(
ばうぜん
)
として、
果
(
はて
)
は
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
したが、いや/\、
爰
(
こゝ
)
に
形
(
かたち
)
づくられた
未製品
(
みせいひん
)
は、
其
(
そ
)
の
容
(
かたち
)
半
(
なか
)
ばにして、
早
(
はや
)
くも
何処
(
どこ
)
にか
破綻
(
はたん
)
を
生
(
しやう
)
じて、
我
(
わ
)
が
作
(
さく
)
を
欲
(
ほつ
)
するものゝ
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
斯う自分で自分に尋ねた時は、丑松はもう
茫然
(
ばうぜん
)
として
了
(
しま
)
つて、其答を考へることが出来なかつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
切害せし證據
假初
(
かりそめ
)
にも將軍家の御落胤に有べからざる
凶相
(
きようさう
)
なり
僞物
(
にせもの
)
と申せしがよも
誤
(
あやま
)
りで
厶
(
ござ
)
るかと席を
叩
(
たゝい
)
て申ける天一坊始め皆々口を
閉
(
とぢ
)
て
茫然
(
ばうぜん
)
たりしが大膳
堪
(
こら
)
へ兼
御墨付
(
おすみつき
)
と御
短刀
(
たんたう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
き
町
(
まち
)
の
片角
(
かたかど
)
に
車夫
(
しやふ
)
は
茫然
(
ばうぜん
)
と
車
(
くるま
)
を
控
(
ひか
)
へて
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
たゞ
茫然
(
ばうぜん
)
と眺めて居ります。
銭形平次捕物控:198 狼の牙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
横町
(
よこちやう
)
の
道
(
みち
)
の
兩側
(
りやうがは
)
は、
荷
(
に
)
と
人
(
ひと
)
と、
兩側
(
りやうがは
)
二列
(
ふたならび
)
の
人
(
ひと
)
のたゝずまひである。
私
(
わたし
)
たちより、もつと
火
(
ひ
)
に
近
(
ちか
)
いのが
先
(
さき
)
んじて
此
(
こ
)
の
町内
(
ちやうない
)
へ
避難
(
ひなん
)
したので、……
皆
(
みな
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
火
(
ひ
)
の
手
(
て
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
る。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
編輯者も作家も声を出す事
能
(
あた
)
はず、
茫然
(
ばうぜん
)
と覆面の人を見守るのみ。
売文問答
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
予は
茫然
(
ばうぜん
)
として立ちたりけるが、想ふに藪の中に
住居
(
すま
)
へるは、狐か狸か其
類
(
るゐ
)
ならむ。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
恐
(
おそ
)
ろしいより、
夢
(
ゆめ
)
と
知
(
し
)
れて、
嬉
(
うれ
)
しさが
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
つた。
暫時
(
しばし
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
居
(
ゐ
)
たが、
膚脱
(
はだぬ
)
ぎに
成
(
な
)
つて
大汗
(
おほあせ
)
をしつとり
拭
(
ふ
)
いた、
其
(
そ
)
の
手拭
(
てぬぐひ
)
で
向
(
むか
)
う
顱卷
(
はちまき
)
をうんと
緊
(
し
)
めて、
氣
(
き
)
を
確乎
(
しつか
)
と
持直
(
もちなほ
)
して、すた/\と
歩行出
(
あるきだ
)
す。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
恐
(
おそろ
)
しいよりも、
夢
(
ゆめ
)
と
知
(
し
)
れて
嬉
(
うれ
)
しさが
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
つた。
暫時
(
しばらく
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
居
(
ゐ
)
た。が、
膚脱
(
はだぬ
)
ぎに
成
(
な
)
つて
冷汗
(
ひやあせ
)
をしつとり
拭
(
ふ
)
いた。
其
(
そ
)
の
手拭
(
てぬぐひ
)
を
向
(
むか
)
う
顱卷
(
はちまき
)
、うんと
緊
(
し
)
めて
氣
(
き
)
を
確乎
(
しつかり
)
と
持直
(
もちなほ
)
して、すた/\と
歩行出
(
あるきだ
)
した。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
(
又
(
また
)
……
遣直
(
やりなほ
)
しぢや。)と
呟
(
つぶや
)
きながら、
其
(
そ
)
の
蚤
(
のみ
)
の
巣
(
す
)
をぶら
下
(
さ
)
げると、
私
(
わたし
)
が
茫然
(
ばうぜん
)
とした
間
(
あひだ
)
に、のそのそ、と
越中褌
(
ゑつちうふんどし
)
の
灸
(
きう
)
のあとの
有
(
あ
)
る
尻
(
しり
)
を
見
(
み
)
せて、そして、やがて、
及腰
(
およびごし
)
の
祠
(
ほこら
)
の
狐格子
(
きつねがうし
)
を
覗
(
のぞ
)
くのが
見
(
み
)
えた。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
茫
漢検1級
部首:⾋
9画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“茫然”で始まる語句
茫然自失
茫然飛入老婆房