たゝ)” の例文
山家やまがあたりにむものが、邸中やしきぢう座敷ざしきまでおほききのこいくつともなくたゝるのにこうじて、大峰おほみね葛城かつらぎわたつた知音ちいん山伏やまぶしたのんでると
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かゝることばを山にてつかはざれば山神のたゝりたまふといふはうけがたけれど、神の㕝は人慮じんりよをもてかろ/\しくしゆべからざる物をや。
「人聽きの惡いことをいふな、——お粂の口から聽いただけのことでも、俵屋にたゝつた惡企わるだくみの底が深いやうな氣がしてならない」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「風呂場の踏石なア、あれがたゝつてるんやさうな。……千代さんがさういうてた。」と、定吉はお駒の顏を覗きながら言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それかられがたゝりはしないか/\といふ気病きやみで、いまいふ神経病しんけいびやうとかなんとかふのだらうが、二代目はそれを気病きやみにしてつひちがつた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでなくても殿様は地獄に堕ちていらっしゃるかも知れないのに、畜生塚の亡霊達がたゝっていた日には、尚更お浮かびになれないであろう。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
初めければこれまた所々しよ/\の屋敷に出入もふえ段々だん/\と勝手も能成よくなり凡夫ぼんぷさかんなるときは神もたゝらずといふことむべなるかな各自仕合能光陰つきひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれ依然いぜんとして無能むのう無力むりよくざされたとびらまへのこされた。かれ平生へいぜい自分じぶん分別ふんべつ便たよりきてた。その分別ふんべついまかれたゝつたのを口惜くちをしおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あなたに會はない前に、私はこの場所のたゝりの話を、あなたにはすべて、かくしておくやうにと皆に命じておいたのです。
さはらぬ人にたゝりはない、おのれの気持を清浄に保ち、怪我けがのないやうにするには、孤独をえらぶよりないと考へた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
みのるの手に百圓の紙幣さつが十枚載せられたのはそれから五日と經たないうちであつた。二人の上に癌腫の樣にたゝつてゐた經濟の苦しみが初めてこれで救はれた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
伯父といふものは借金かりを拵へたり、恋病こひやまひつかれたり、猫にたゝられたりするをひにとつては、少くとも一人は無くてならない実用品なのである。伯父は言つた。
あゝ、てん飽迄あくまで我等われらたゝるのかと、こゝろ焦立いらだて、藻掻もがいたが、如何いかんとも詮方せんかたい。
立つ前に江の浦あたりまで行って来る筈だったが、皆よいりがたゝって殊に三輪さんが寝つきの悪い程度で床離れが悪かった為めに、僕達は朝御飯もソコ/\に沼津駅へ駆けつけた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さても/\のかはやう我身わがみ嫁入よめいりのうわさきこそめころから、やけあそびのそこぬけさわぎ、高坂かうさか息子むすこまる人間にんげんかわつたやうな、でもさしたか、たゝりでもあるか、よもや只事たゞごとではいと其頃そのころきしが
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たくへくれば、おいもうとさんは大抵たいてい場合ばあひ玄関外げんくわんそとたしておくやうです。家内かないもいくらかおはなしうかゞつてるさうですが、うつかりしたことへば、たゝりがおそろしいんでせう、あまくちかれないさうで。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「どうですな。新聞にたゝられた御病人は。」
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
惡いものなら惡いもののやうに、書いた者を詮議して、後のたゝりのないやうにするのが、この石川孫三郎の勤めと申すものであらう
時平の子たちや孫たちが天神のたゝりと云うことを神経に痛んで、始終安き心地もなかったことは、保忠の例を見ても察しられるが、敦忠もまた
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あきらかな世の中でございますが、昔は幽霊が出るのはたゝりがあるからだうらみの一念三世さんぜに伝わると申す因縁話を度々たび/″\承まわりました事がございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かんさり玉ひしのち水旱風雷すゐかんふうらいの天へんしば/\ありて人の心安からず。是ぞ 菅公のたゝりなるらんなど風説しけるとかや。
あやしみて或博士あるはかせうらなはするに日外いつぞやつみなくして殺されたる嫁のたゝり成んと云ければ鎭臺には大に駭かれつかたてて是をまつり訴へたる娘を罪に行ひさきの鎭臺の官を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴方あなたひとたいしてまないことをしたおぼえがある。そのつみたゝつてゐるから、子供こどもけつしてそだたない」とつた。御米およねこの一言いちげん心臟しんざう射拔いぬかれるおもひがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると船頭共せんどうどもが、「恁麽こんな惡僧あくそうつてるから龍神りうじんたゝるのにちがひない、はやうみなか投込なげこんで、此方人等こちとらたすからう。」とつてたかつて文覺もんがく手籠てごめにしようとする。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「上の雪隱せんちと言ひ、風呂場の踏石ふみいしと言ひ、この家にはたゝのあるもんが多い。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
むかしから芸術の神様はやきもち焼で、二心ふたごころを持つたものは屹度たゝられると言ひ伝へてゐる。だが、世の中には、芸術家をたぶらかさうと、態々わざ/\係蹄わなをこしらへて待つてゐるのも少くない。
伊太利イタリーうまれの年老としおいたるをんなが、その出帆しゆつぱんをとゞめんとて、しきりに、だの、こくだの、黄金わうごん眞珠しんじゆたゝりだのと、色々いろ/\奇怪きくわいなることば繰返くりかへしたことがある、無論むろん其時そのとき無※ばかことわら
「はあ、小説を書くのがたゝったのかと思いまして……」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さはらぬ神にたゝりなし』といつて、その頃の人に共通の逃避的たうひてきな心持で、平次は殊勝らしく部屋の隅つこに小さくなつたのです。
早く縁を切らなければ三藏のうちたゝると云ったが、さては兄貴が生れ変って来たのか、たゞしは又祟りでう云う小児こどもが生れた事か、うも不思議な事だ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かんさり玉ひしのち水旱風雷すゐかんふうらいの天へんしば/\ありて人の心安からず。是ぞ 菅公のたゝりなるらんなど風説しけるとかや。
彼女にすさまじい熱情を注いだ男たちが次々に死に、左大臣の一家一門が菅丞相のたゝりに依って一人々々たおれ、最後にいとし子の敦忠までが取られて行ったのを見ては
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども一度耳に付いた此不可思議な音は、それが續いて自分の鼓膜に訴へる限り、妙に神經にたゝつて、何うしても忘れる譯に行かなかつた。あたりはしんとして靜かである。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不斷ふだんは、あまり評判ひやうばんのよくないやつで、肩車かたぐるま二十疋にじつぴき三十疋さんじつぴき狼立おほかみだち突立つツたつて、それが火柱ひばしらるの、三聲みこゑつゞけて、きち/\となくとたゝるの、みちるとわるいのとふ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
前御城代ぜんごじやうだい山城守殿やましろのかみどの以來いらい大鹽おほしほたゝりで、當城たうじやうにはろくなことがないな。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
偶然ぐうぜんにもふね惡魔あくま御自分ごじぶんたゝつたものであらうか。
したばかりに、後でどんなたゝりが來るか。それが怖くなつて、お内儀さんの姿が見えなくなると、直ぐ逃げ出してしまひました
予ハ昨日一日ノ無理ナ活動ガたゝッテ、頸ノ周リ、肩、腰、等々ノ痛ミガ激シク、昨夜モ夜ッピテ安眠出来ナカッタノデ、再ビアダリン三錠トアトラキシン三錠ヲ飲ミ
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此様こん顔形かおかたちになると云うのも、やっぱり豐志賀がたゝしょうを引いて、飽くまでもおれうらむ事か、アヽ飛んだ処へ縁付いて来た、と新吉が思いますると、途端に、ざら/\と云う
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
このゆゑに文字もじの用ある時は他の村の者にたのみて書用しよようべんず。又此村の子どもなど江戸土産みやげとて錦絵をもらひたる中に、天満宮の絵あればかならず神のたゝりのしるしありし事度々なりしとぞ。
それをおみつは十二やそこらで、や月々の不淨ふじやうを見るさうなと言ひ出したものがあつて、さう言へばさうらしいなア、なぞと合槌あひづちを打つものも現はれ、けがれた娘を神前に出したたゝりは恐ろしい
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「そんなことだらうな。お秀の方に未練があるが、お千勢にからかつたのがたゝつて、お千勢の母親が手を引かせないやうに仕向けたんだらう」
このゆゑに文字もじの用ある時は他の村の者にたのみて書用しよようべんず。又此村の子どもなど江戸土産みやげとて錦絵をもらひたる中に、天満宮の絵あればかならず神のたゝりのしるしありし事度々なりしとぞ。
三ヶ年の間又作の行方ゆくえが知れませんから、春見は心配で寝ても寝付かれませんから、悪い事は致さぬものでございますが、凡夫ぼんぷ盛んに神たゝりなしで、悪運強く、する事なす事儲かるばかりで
「變なことになりましたよ、神樂坂上の易者えきしやが、あの嫁は家にたゝると言つたさうですが、嘘ぢやありませんね。女の綺麗過ぎるのも良し惡しで」
何しろ口惜くやしくてたゝる幽霊ではなく、たゞ恋しい/\と思う幽霊で、三も四世も前から、ある女がお前を思うて生きかわり死にかわり、かたち種々いろ/\に変えて附纒つきまとうてるゆえ、のががたい悪因縁があり
と言つたところで、もう後の祭り、故意か過ちか、兎に角、又左衞門に大怪我をさした當人が、後のたゝりを恐れて、隱して了つたことだけは確かです。
成程なるほど是真翁ぜしんをうの話のとほたゝつたのだなと思ひあたりました。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
平次は佐野喜のお神さんが、春の火事で燒け死んだをんな共のたゝりで自殺したといふ噂のあつたのを思ひ出しました。
「いえ、私の申すことは、これで皆んなでございます。どうぞ朝田屋にたゝつてゐる野郎を一日も早く、親分の手で縛つて下さいまし、それぢや親分さん」