氣分きぶん)” の例文
新字:気分
その二百年にひやくねんあまりのあひだに、だん/\うたといふものゝ、かういふものでなければならないといふ、漠然ばくぜんとした氣分きぶん出來できました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ヂュリ ほんにどくぢゃ、氣分きぶんわるうてはなァ。したが、乳母うば乳母うばや、乳母うばいなう、何卒どうぞうてたも、戀人こひゞとなん被言おッしゃった?
と、おたがひ微醺びくんびてへんはづつた氣分きぶん黄包車ワンポイソオり、ふたゝ四馬路スマロ大通おほどほりたのはもうよるの一ぎだつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
午後ごごれた所爲せゐか、あさくらべると仕事しごとすこ果取はかどつた。しか二人ふたり氣分きぶん飯前めしまへよりもかへつて縁遠えんどほくなつた。ことにさむ天氣てんき二人ふたりあたまこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
トロリとした鶴見つるみ神奈川かながはぎて平沼ひらぬまめた。わづかの假寢うたゝねではあるが、それでも氣分きぶんがサツパリして多少いくら元氣げんきいたのでこりずまに義母おつかさん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うかしたかと氣遣きづかひてへば、にはか氣分きぶんすぐれませぬ、わたし向島むかふじまくのはめて、此處こゝからぐにかへりたいとおもひます、貴郎あなたはゆるりと御覽ごらんなりませ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三日目みつかめ午過ひるすぎ、やれかゆろの、おかう/\をこまかくはやせの、と病人びやうにんが、何故なぜ一倍いちばい氣分きぶんわるいと、午飯おひるべないから、打棄うつちやつてはかれない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あめこそは、さても眞面目まじめに、しつとりと人の氣分きぶんを落ちつかせ、石の心も浮きあげてつめたい光を投げかける。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
うかゞふに折節をりふし母は氣分きぶん宜げにすや/\と寢入たる樣子やうすなれば是さいはひと悦びつゝ諏訪町より田原町迄とほき道にも有ねばは暮たれどもよひに一走りと行燈あんどうともせんじ上たる藥を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝろうちでは、そんなことをしてゐる寒山かんざん拾得じつとく文殊もんじゆ普賢ふげんなら、とらつた豐干ぶかんはなんだらうなどと、田舍者いなかもの芝居しばゐて、どのやくがどの俳優はいいうかとおもまどときのやうな氣分きぶんになつてゐるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
このたい樹木じゆもくは、櫧帶かしたいといふほどかし、しひなど常緑濶葉樹じようりよくかつようじゆがおもにそだち、海岸かいがん潮風しほかぜつよ砂地すなじには、よくくろまつがえ、南部なんぶにはくすのきがおほえて暖國的だんこくてき氣分きぶんをたゞよはせてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
紫陽花あぢさゐはなのだん/\調とゝのつてくありさまが、よくんであります。そのうへに、いかにも紫陽花あぢさゐてきした氣分きぶんてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
が、惡戯いたづら氣分きぶんになつて、をつとかなかつた。そして、なほもはちからだにつつきかかると、すぐくちばし松葉まつばみついた。不思議ふしぎにあたりがしづかだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
宗助そうすけ苦笑くせうしながら窓硝子まどがらすはなれてまたあるしたが、それから半町はんちやうほどあいだなんだかつまらないやう氣分きぶんがして、徃來わうらいにも店先みせさきにも格段かくだん注意ちゆういはらはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
氣分きぶんすぐれてよきとき三歳兒みつごのやうに父母ちゝはゝひざねぶるか、白紙はくしつて姉樣あねさまのおつくり餘念よねんなく、ものへばにこ/\と打笑うちゑみてたゞはい/\と意味いみもなき返事へんじをする温順おとなしさも
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左樣さうなんかねえ、年紀としせゐもあらう、ひとツは氣分きぶんだね、おまへさん、そんなにいやがるものを無理むりべさせないはういよ、心持こゝろもちわるくすりや身體からだのたしにもなんにもならないわねえ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
甲樂人 いや、滅相めっさうな、そんな氣分きぶんぢゃござりませぬ。
亭主はきゝて夫は/\先何より重疊ちようでふなり而て御食事しよくじなどは如何やと云ふにお花は食事も氣分きぶんき折には隨分ずゐぶんたべ候が氣分のふさぐときは無理むりにもたべられぬと申て溜息ためいきばかり吐居つきをり兎角とかく果敢々々敷はか/\しくしるしも見えず實にこまり入候とほろりとこぼす一しづく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これを知識ちしきうへあそびといひます。それとゝもに、氣分きぶんすこしもともなはないのですから、散文的さんぶんてきうたといはねばなりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
大丈夫だいぢやうぶよ」とつた。このこたへとき宗助そうすけなほこと安心あんしん出來できなくなつた。ところ不思議ふしぎにも、御米およね氣分きぶんは、小六ころく引越ひつこしててから、ずつと引立ひきたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのそらあかるみをうつみづや、處處ところどころ雜木林ざふきばやしかげ蒼黒あをぐろよるやみなかあがつてした。わたしはそれをぢつと見詰みつめてゐるうちに、なんとなく感傷的かんしやうてき氣分きぶんちてた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
勸めて看病かんびやう暫時しばし油斷ゆだん有ね共如何成事にや友次郎が腫物しゆもつは元の如くにて一かうくちあかいたみは少づつゆるむ樣なれども兎角に氣分きぶんよろしからずなやみ居けるぞいたましや友次郎も最早日付にしても江戸へつかるゝ處迄て居ながらなさけなき此病氣びやうきと心のみはやれども其甲斐かひなく妻のお花も夫の心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)