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この小説は、「健康道場」と称するる療養所で病いと闘っている二十歳の男の子から、その親友にてた手紙の形式になっている。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
どうでしょう、お手間は取らせない積りですが少し付き合って戴けますまいか。私の方は、る個人の身元に就いて立ち入ったことを
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ところがその結果を見ると、アルファ線の中のる粒子はほとんど後戻りをする程に著しく曲げられることのあるのがわかったのでした。
ロード・ラザフォード (新字新仮名) / 石原純(著)
きことにしてかねやらんせうになれ行々ゆく/\つまにもせんと口惜くちをしきことかぎくにつけてもきみさまのことがなつかしくにまぎれてくに
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
青笹村大字糠前ぬかのまえの長者の娘、ふと物に取り隠されて年久しくなりしに、同じ村の何某という猟師りょうしる日山に入りて一人の女にう。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
るときれは私の大失策、或る私が二階に寝て居たら、下から女の声で福澤さん/\と呼ぶ。私は夕方酒をのんで今寝たばかり。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
昔、る大きな山のふもとに小さなお寺がありました。小さな和尚さんと、小さな小僧とたつた二人さみしくそこに暮してをりました。
豆小僧の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
東小門外の駐在所で、る晩巡査が一人机に向っていると、急に恐ろしい音を立ててガリガリと入口の硝子ガラス戸を引掻くものがある。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そういうときに、る日のこと、台所へちょっと顔を出したことがある。そしたらその夫人が、晩餐のサラダをせっせとつくっていた。
サラダの謎 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
十年前、私はる出来事のために私の神経の一部分の破綻はたんを招いたことがありました。私の神経がそのために随分いたんでしまいました。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかれどもこれら皆空想に属す、実行するの余地あるに非ず。中につきて最も実行しやすき者を言はば生物学中る一部の研究か。
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
る正月初めの一日だつた。私は二日ほど家をあけた後で、夕方になつてから、ぼんやり家へ帰つた。云ふ迄もなく母は不機嫌ふきげんだつた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
また維新の際にもる米人のごとき、もしも政府において五十万ドル支出ししゅつせんには三せきの船をつくりこれに水雷を装置そうちしててきに当るべし
る霊は、理想型の人間を造るべく、自から進んで現世にくだることもあるが、これは高級霊にとりて、特に興味ある仕事である。
うしをたべてしまった椿つばきにも、はなが三つ四ついたじぶんの海蔵かいぞうさんは半田はんだまちんでいる地主じぬしいえへやっていきました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
騎兵大隊長きへいだいたいちやう夫人ふじん變者かはりものがあつて、いつでも士官しくわんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゆう案内者あんないしやもなく騎馬きばく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
る年の冬、その老医師の自宅が留守中に火事を起したことや、しかし村の者はだれ一人それを消し止めようとはしなかったことや
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
源太はすずき釣りの名人で、どんな漁師も鱸釣りでは彼にかなわなかった。る年のこと某県の知事が来て、源太の舟で鱸釣りをした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
またその内容ないよう古今ここんわたり、顕幽けんゆうまたがり、また部分ぶぶんは一般的ぱんてきまた部分ぶぶん個人的こじんてきった具合ぐあいに、随分ずいぶんまちまちにみだれてります。
あらためてこゝふ。意味いみおいての大怪窟だいくわいくつが、學術がくじゆつひかり如何どうらされるであらうか。ふか興味きようみもつ此大發掘このだいはつくつむかへざるをない。
そのうち上座じやうざざう食事しよくじそなへていて、自分じぶんつて一しよにべてゐるのを見付みつけられましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
当面の雲行を「る方法で」乗切りさえすれば、飜然として一時に信用は奪い返せるはずだという如き自負に安んじている傾きであるが
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
ねこだとて王樣わうさまはいして差支さしつかへない』とあいちやんがひました。『わたし書物しよもつでそれをみました、何處どこであつたかおぼえてませんが』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ドイツのある書店にる書物を注文したらまもなく手紙をよこして、その本はアメリカの某博物館で出版した非売品であるが
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そこで突然とつぜんあたまに浮んだ憶測おくそくは、あまりにも生々しく、あまりにも異様なものだったので、わたしはどだい受付ける勇気もなかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
る裏町にある小橋こばしの四方を雑多な形の旧いすゝばんだ家が囲んで、橋の欄干の上に十人ばかり腰を掛けて長い釣竿を差出した光景が面白かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
私の知人であるるキリスト信者の若夫婦の家庭に初めての女児が出産したが、分娩された嬰児は一眼異常で失明していた。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
お倉さんは亭主やど飾屋かざりみせの株を買せるからと云い老人に大変な無心を言て来たのです、すると老人は一も二も無く跳附はねつけ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
私はこの言葉によって何を求めていたか。必ずしも口辺に浮んだ微笑のみではない。精神のる健全な姿を求めていたのだ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
さてこの夫婦ふうふうちまえにわに、一ぽん杜松としょうがありました。ふゆのことでしたが、おかみさんはこのしたで、林檎りんごかわいていました。
隣人はあざけるような語気で云った。る特定の人か事かを嘲けるのではなく、自分自身をもひっくるめた社会全体を嘲けるようなものであった。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
そして、それらは不思議に一日ずつふくれ行き、一日ずつ積みかさなって行くる重たさがのしかかって行くことだった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
クリストフは空気中にる危険をぎ取っていた。しかし彼は眩暈めまいがしていた。通過してきた危機のために弱っていて、抵抗する力がなかった。
先日も料理試験のため妹と一所にる西洋料理屋へ行った時きすのフライが出たから給仕に箸を一膳ずつ貸してくれといったら妙な顔をしていた。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何かしら恋愛以上のるものが潜んでいるに違いないことが感じられる……その心理の正体が突き止めて見たくなった。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はそれぎり暗そうなこの雲の影を忘れてしまった。ゆくりなくまたそれを思い出させられたのは、小春こはるの尽きるにのないる晩の事であった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうも、このごろ父親の様子が、変だ変だと思っているうち、る夕方、剣術の道場から、何気なく帰って見ると、家の中がざわついているのさ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
づばけものとはどういふものであるかといふに、元來ぐわんらい宗教的信念しうけうてきしんねんまた迷信めいしんからつくされたものであつて、理想的りさうてきまた空想的くうさうてき形象けいしやう假想かさう
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
呑気者のんきもののすることは違つたものだ。今に自分も犬と一緒に腹をかすやうになるまでさ。」とる者は言ひました。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
そして運動のための散歩の途上で、る日偶然、私の風変りな旅行癖を満足させ得る、一つの新しい方法を発見した。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
る時は、ごはんの代りに甘薯いもを食べたり、貰つたくりをゆでて、純子ちやんにはやはらかくんで、口うつしに食べさしたりしたこともありました。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
子供らがさけんでばらばら走って来て童子にびたりなぐさめたりいたしました。る子は前掛まえかけの衣嚢かくしからした無花果いちじくを出してろうといたしました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そこが僕のつけ目なんだよ。その都会人の中に二分間も息のつづくやつがいたらどうだろう。る場合には大へん役に立つかもしれんじゃないか」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし今度の場合のやうにる若い男が娘を見初みそめて、それを自身の両親に打明けて、さて話の第一歩が当方に向けられたといふやうな成立の婚約は
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
天気のいい、秋のる朝のこと、タングルウッドという田舎のお屋敷の玄関先に、の高い青年を取りかこんで、愉快な子供達の一群が集まっていた。
夜明けて後男共は今暁こんぎょう死犢しとくを食料にせんことを請求してきた。全くる故障より起った早産で母牛も壮健であるのだから食うても少しも差支さしつかえはない。
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
る一學生がくせい横濱よこはままできましたが、ばんつてもかへりませんから、心配しんぱいして電報でんぱうもて消息せうそくあはせました。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
る日の夕方、権八と私は一緒に仕事から帰つた。街を歩きながら彼はいつもの調子で私に知つたかぶりを始めた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
さうして、まあところへ、しかるべきうちむで、にはには燈籠とうろうなり、手水鉢てうづばちも、一寸ちよつとしたものがあらうといふ、一寸ちよつと氣取きどつた鳥屋とりやといふことはなしきまつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この馬鹿七は平生へいぜいから、狸山へ行つて一度その狸の腹鼓を聞いて見たいものだ、狸の踊る様子を見てやりたいものだと言つてゐましたが、る日の夕暮に
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)