しゃく)” の例文
もっともやま一つせば、ゆきらないのに、こちらは、ゆきが四しゃくも五しゃくもあるのだから、まったく自然しぜん現象げんしょうばかりは奇妙きみょうなものだ。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
見ると、間のふすまが二しゃくばかりいて、そこにKの黒い影が立っています。そうして彼の室にはよいの通りまだ燈火あかりいているのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おうッ」と力をふりしぼって、忍剣の手からのびた四しゃく余寸よすんの鉄杖が、パシリーッと、槍の千だんを二つにおって、天空へまきあげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしだんずることも出來でけうずれ、このやうに頭髮かみのけ掻毟かきむしって、ま此樣このやう地上ぢびたたふれて、まだらぬ墓穴はかあなしゃくることも出來でけうずれ!
やがて、看護婦は、ガーゼで覆われた、長径二しゃくばかりの、楕円形の琺瑯ほうろう鉄器製の盆を捧げてはいって来た。それを見た患者は
肉腫 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
一寸法師は、目の前のぞうふくろのすそをめくりました。一しゃくほど象の鼻の先があらわれると、一寸法師はそれへ片手かたてけました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
にわいたえんばな——金魚鉢きんぎょばちから六しゃくほどのへだたりがあつたが、そのえんばなにウィスキイのかくびんと、九たにらしいさかずきが二つおいてあつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
宮殿の横に、高さ三百しゃくの塔が立っていました。大きな河の流れや森を見下ろして、空高くそびえた、実に見事な塔でした。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
といいながら、一りますとせいが一しゃくのび、二りますと三じゃくのび、三めには六しゃくちかいりっぱな大男おおおとこになりました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ウロコヲカズイテ生出おいいでた、たけしゃくの鬼が出ようかと、あせを流して聞いている内、月チト暗カリケル処ニテ、仁右衛門が出て行った。まず、よし。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨年祖母が亡くなって、その供養のためといって作った観音像などは一しゃくすんばかりもあって、余り面白い出来なのでちょっと驚いた位である。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
けわしいがけ中腹ちゅうふくを走っている列車は、それと同時どうじすうしゃくの下にいわをかんでいる激流げきりゅうに、墜落ついらくするよりほかはない。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
それは身長六しゃくを超えるかと思われる巨人おおおとこであった。顔が馬のように長くて、皮膚の色は瀬戸物のように生白かった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あれは何号といふのでせうか、四しゃくに三尺ほどの横長の絵でした。前景にはせこけて骨ばつた男の裸体が、長々と画面いつぱいに横たはつてゐます。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
そこでおそろしいのは空気のくさることだ……水はもう一しゃく(約三〇センチ)も上がっては来ない。鉱山こうざんの中は水でいっぱいになっているにちがいない
ほかに高さ五しゃくほどの銅人どうじんが数十も立っていて、いずれも朱衣、大冠、剣を執って整列し、そのうしろの石壁には殿中将軍とか、侍郎常侍とか彫刻してある。
その百姓は深い所にはいって、頭の上に六しゃくも土のある様子ようすはまるで墓のあなの底にでもいるようでした。
えんえんともえあがる猛火もうかに、三じゃく青竜刀せいりゅうとうをあおくかがやかし、ゆくてに立った六しゃくゆたかの明兵みんぺいがあった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
しゃくに足らぬ男にも、六しゃくちかい大兵だいひょうにも、一たんの反物をもって不足もしなければあまりもせぬ。もっとも仕立の方法によりてはいかようにもなし得られる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
まつろう不承無承ふしょうぶしょうに、雨戸あまど心張棒しんばりぼうをかうと、九しゃくけんうちなかふたた元通もとどおりのよる世界せかいかわってった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其芽それがだんだん大きくなって枝に枝を生じ、その枝が成長して九月頃になると全く成長の極に達するのです。最も大なる宝鹿ほうろくの角はその長さが一じょうしゃく程ある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
昔のことですから、むろんメートルではなく、しゃくけんですが、間にすると、六十間は百メートル以上ですから、これは少し遠すぎるような気がします。やはり尺でしょう。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
主人は、爺さんがあまりこの鎧にみとれていたものですから、ひどく気の毒になったとみえて、たなの上から、その鎧にそっくりなのをつけた一しゃくばかりの武者人形むしゃにんぎょうをおろしてきて
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
とものマストは二日まえに吹き折られて、その根元ねもとだけが四しゃくばかり、甲板かんぱんにのこっている、たのむはただ前方のマストだけである、しかもこのマストの運命は眼前がんぜんにせまっている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
天皇はお身のたけが九しゃく二寸五、お歯のながさが一すんはばが二おありになりました。そのお歯は上下とも同じようによくおそろいになって、ちょうど玉をつないだようにおきれいでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ほこえたような沢山たくさんきば……どう周囲まわりは二しゃくくらい身長みのたけは三げんあまり……そうったおおきな、神々こうごうしいお姿すがたが、どっと飛沫しぶき全身ぜんしんびつつ、いかにも悠々ゆうゆうたる態度たいどで、巌角いわかどつたわって
ラプンツェルは黄金きんばしたような、ながい、うつくしい、頭髪かみってました。魔女まじょこえこえると、少女むすめぐに自分じぶんんだかみほどいて、まど折釘おれくぎきつけて、四十しゃくしたまでらします。
びっこをひきながら、草むらよりころげだしたのは竹童ちくどうである。地上二、三十しゃくのところまできて、ふいにわしくちばしからはなされたのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あきのころには、一しゃくばかりになりました。それだのに、ふゆになってゆきると、そのもとかられてしまいました。
一本のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一間いっけんちょっと、深さ四しゃくくらいの小さいウインドーであったが、出来たときは、非常に珍しがられて、付近の村の人が見に来たくらいであった。
私の生まれた家 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
の少しくぼみのあるあたりを掘るのに、一鍬ひとくわ二鍬ふたくわ三鍬みくわまでもなく、がばと崩れて五六しゃく、下に空洞うつろいたと思へ。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しゃく二十尺ほどもいきなり飛び上がるばかりでなく、飛び下りる方になると、七八十尺の高い所からでも平気で飛んで、すっくとつっ立ってるのです。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
船長おやじはやっと吃驚びっくりしたらしく首を縮めた。無言のまま六しゃく豊かの長身をニューとこっちへ向けて紅茶を受取った。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
相手の人にお世辞せじを述べるか、あるいはみだりに自分を卑下ひげして、なさずともよいお辞儀じぎをなし、みずから五しゃくすん体躯からだを四尺三尺にちぢめ、それでも不足すれば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
つてみると、しゃくすんほどの瀬戸せとはちが、にわつちにいけてあつて、そのはちは、からつぽだけれど、みずだけはつてあるし、ぐるりに、しろすなをきれいにまいてあつて
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
財布さいふはなかった。が、おおかたさらしの六しゃくにくるんだぜにを、うちぶところからさぐっているのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そばへ寄って確かに見た者もございませんが、羽をひろげると八しゃく以上はあるだろうという噂で……。それを二度ながら撃ち損じましたのは、まことに残念に存じます。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その幅はわずか一、二しゃくしかないのですから、手もなく往来に敷いてある帯の上を踏んで向うへ越すのと同じ事です。行く人はみんな一列になってそろそろ通り抜けます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
八幡太郎はちまんたろうゆみ名人めいじんでしたけれど、人並ひとなみとちがったつよゆみくということはなかったのですが、為朝ためともせいたかさが七しゃくもあって、ちからつよい上に、うで人並ひとなみよりなが
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしは高さ七しゃく(約二メートル)、はば三、四尺(約〇・九〜一・二メートル)のかわいらしい船室を一つ当てがわれた。それはなんというふしぎな部屋へやにおもわれたであろう。
まず寛正かんしょうの六年秋には、忘れも致しません九月十三日の夜の刻ごろ、その大いさ七八しゃくもあろうかと見える赤い光り物が、坤方ひつじさるより艮方うしとらへ、風雷のように飛び渡って、虚空こくうは鳴動
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
マーキュ おゝ、ても𢌞まはるわ、すんからしゃくびる莫大小口めりやすぐちとは足下おぬしくちぢゃ。
草の中を一しゃくばかりの小川が流れていたりした。所々には小高い丘もあった。
毒草 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
清兵衛のかぶった椎形しいがたかぶとの八幡座まんざをきったが兜がよかったので、傷は受けなかったものの、六しゃくの大男の一げきに、ズーンとこたえ、目はくらくらとくらみ、思わずひざをついたところを
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
早速何かといって尋ねますと彼獣あれはチベット語に「ドンヤク」とて山ヤクという非常に恐ろしいもので大きさは通常のヤクの二倍半あるいは三倍、背の高さはおよそ七しゃく、しかし象ほどはない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
第十二代景行天皇けいこうてんのうは、お身のたけが一じょうすん、おひざから下が四しゃく一寸もおありになるほどの、偉大なお体格でいらっしゃいました。それからお子さまも、すべてで八十人もお生まれになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
天野刑部あまのぎょうぶ月山流げつざんりゅう達者たっしゃとて、刃渡はわたり一しゃくすん鉈薙刀なたなぎなたをふるってりゅうりゅうとせまり、佐分利五郎次さぶりごろうじは陣刀せんせんとりつけてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく、たびから、やってくる芸人げいにんが、月琴げっきんや、バイオリンや、しゃく八などをらして、むらにはいってくることがありました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
あけて見たら、一しゃくすんかくくらいのくしゃくしゃになった紙片に淡彩の墨絵を描いたものがはいっていた。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
何と、お行者ぎょうじゃ、未熟なれども、羽黒の小法師こほうし、六しゃくや一じょうながむしに恐れるのでない。こゝがだ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)