小枝こえだ)” の例文
はるかぜは、青々あおあおれたそらわたっていました。そして木々きぎ小枝こえだは、かぜかれて、なにかたのしそうに小唄こうたをうたっていたのです。
さまざまな生い立ち (新字新仮名) / 小川未明(著)
一二月いちにがつころのような小枝こえだに、黄色きいろはなけたり、また蝋梅ろうばいのようにもっとはやゆきなかかをりたかくほこるものもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
其処そこからりるのだとおもはれる、まつほそくツて度外どはづれにせいたかいひよろ/\したおよそ五六けんうへまでは小枝こえだ一ツもないのがある。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もう一時間あまりも「歎異抄たんにしょう」の一句一句を念入りに味わっていたが、そとをのぞいて、いつもと同じかえで小枝こえだの、それも二寸とはちがわない位置に
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そこで、ヘンゼルとグレーテルは、小枝こえだを山ほどもたくさんあつめてきました。小枝の山に火がついて、ぱあっともえあがると、おかみさんがいいました。
とら勾引かどはかさんとなす事ぞと寢ぼけ眼に立上りおのれ曲者くせもののがさじと聲を知るべに打掛れば彼の曲者くせものは驚きながら見付られては後日のさまたげムヽと點頭うなづき傍邊かたへに落し松の小枝こえだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ蒿雀あをじふゆはるわきまへぬやうに、あたゝかい日南ひなたから隱氣いんきたけはやしもとめてひく小枝こえだわたつて下手へたきやうをして、さうして猶且やつぱり日南ひなたつちをぴよん/\とねた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
じょうじょうへ花売りにでる大原女おはらめが、散りこぼしていったのであろう、道のところどころに、連翹れんぎょうの花や、白桃しろもも小枝こえだが、牛車ぎゅうしゃのわだちにもひかれずに、おちている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われらずあいちやんは小枝こえだきれぱしひろげ、それをいぬころのはうしてやると、いぬころはたゞちに四ッあしそろへてくうあがりさま、よろこいさんで其枝そのえだえつきました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
波紋はもん次第しだいおおきくびたささやかななみを、小枝こえださきでかきせながら、じっとみずおも見詰みつめていたのは、四十五のとしよりは十ねんわかえる、五しゃくたない小作こづくりの春信はるのぶであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
丁度あの夕方の小枝こえだに集まるがやがやとした鳥の声が沈まって行って一番最後に残るものはただ一つの小鳥の声であったという歌の文句のように、泣いたり笑ったりしたことも沈まって行って
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
水枝みづえ小枝こえだにみちわたる「春」をまなびて、わが戀よ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
小枝こえだのなかの
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
また、まち並木なみきは、たいていちつくしてしまって、くろ小枝こえださきあおそらしたこまかく、あみのようにいてえていました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おとうさん、それじゃ、おとうさんがかえっていらっしゃるとき、いちばんさきにおとうさんのぼうしにさわった木の小枝こえだを、おってきてちょうだい。」
この歸途かへりに、公園こうゑんしたで、小枝こえだくびをうなだれた、洋傘パラソルたゝんだばかり、バスケツトひとたない、薄色うすいろふくけた、中年ちうねん華奢きやしや西洋婦人せいやうふじんた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いゝ加減かげんおほきくなつたならみなつくしてるので、その小枝こえだとほしてくぼんだやのむねえる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
われらずあいちやんは小枝こえだきれぱしひろげ、それをいぬころのはうしてやりました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
水枝みづえ小枝こえだにみちわたる「春」をまなびて、わが恋よ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
春は小枝こえだのたゝずまひ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
灰かぶりはおとうさんにおれいをいって、おかあさんのおはかのところへいき、その小枝こえだをお墓の上にうえました。
ふたりは、おかりかけていました。みずのようなそらに、のない小枝こえだが、うつくしくじっていました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しぐれは、いまのまにんで、薄日うすびがさす……かへで小枝こえだのこつた、五葉いつはばかり、もみぢのぬれいろうつくしい。こぼれてるのはをしい。ばせば、せまにはで、すぐとゞく。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
黄色きいろじゆくするうめ小枝こえだくるしめて蚜蟲あぶらむし滅亡めつばうしてしまほど霖雨りんうあきれもしないでつゞく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はるびよりの、あたたかなでした。はたけなか古墳こふんのかたわらには、一ぽんのかきのがありましたが、小枝こえだにのびた、つやつやしい若葉わかばは、かぜにふかれてひかっていました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、とある青あおとした木立こだちに、さしかかりました。すると、一本のハシバミの小枝こえだにぶっつかって、ぼうしがおちてしまいました。そこで、おとうさんはその枝をおって、もってかえりました。
ふといたまど横向よこむきにつて、ほつれ白々しろ/″\としたゆびくと、あのはなつよかをつた、とおもふとみどり黒髮くろかみに、おなしろはな小枝こえだきたるうてな湧立わきたしべゆるがして、びんづらしてたのである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はたして、乞食こじき親子おやこは、ぶなのもとできました。あおけむりが、みきつたい、小枝こえだけて、えた、よくふききよめたガラスりのようなそらのぼってゆきました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなは、あののち、じきに、情無じょうなしのかぜにもぎとられてしまいました。」と、こたえました。そして、むべのつるが、しっかりとれた小枝こえだにぎっているのをて、しじゅうからは
谷間のしじゅうから (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうち、だんだん木々きぎ小枝こえだにも、生気せいきのみなぎるのがかんじられ、こおりのように、つめたくはりつめたくろくもが、あわただしく、うごきはじめて、ふゆっていくのがわかりました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そばに、雑木林ぞうきばやしがあって、そのちた小枝こえだかぜすっているのでした。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、かわいそうな小枝こえだが、したながれにちてしまわないうちに、いそいでらえたのでした。いや、あのかわいらしい小枝こえだが、わたしにすがったのでした。どうして、これがはなせましょう?
谷間のしじゅうから (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかい、いすかはしっかりと、小枝こえだにつかまって、みみかたむけていていたが
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちいさなにわにさえ、すくすくとして、かぜにその小枝こえだかせたのです。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、このまつが、すこしばかりもとのうえに、自分じぶん小枝こえだかげつくられるほどになったとき、その存在そんざいみとめてくれたのは、そらをゆくくもでもなければまた小鳥ことりたちでもありませんでした。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)