かた)” の例文
きよちゃん、自転車じてんしゃはしりっこをしようか。」と、とくちゃんがいいました。二人ふたりおなじようなかたの、あか自転車じてんしゃっていました。
父親と自転車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
却々なかなか大きな犬らしい足跡だから、人間が四つん這いになって、犬の足をしたかたで、こんな跡をつけたと考えることは不可能ではない。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なにかの物あたりであろうというので、まずかたのごとき手当てを施したが、由松は手足が痙攣けいれんして、それから半晌はんときばかりの後に息を引き取った。
然しながらが造ったかたとらわれ易いのが人の弱点である。執着は常に力であるが、執着は終に死である。宇宙は生きて居る。人間は生きて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし、世界中せかいじゆうどこにもあるこのまるつかほかに、日本につぽんでは他國たこくることの出來できない一種いつしゆかたつかつくられたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
源三郎様が道場の当主にお直りになろうという瀬戸際……どうしても先方では、判定がなくては立ちあいせぬと申しておりますので、ホンのかただけ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いづれがさき出来できたか、穿鑿せんさくおよばぬが、怪力くわいりき盲人まうじん物語ものがたりが二ツある。おなはなしかたかはつて、一ツは講釈師かうしやくしいたにかけて、のん/\づい/\とあらはす。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
正岡子規とか国木田独歩とかを一つのかた看做みなせば、高山樗牛ちよぎうとか綱島梁川つなしまりやうせんとかは又一つの型のやうに思はれる。
結核症 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
が、畢竟ひつけうそれもまた名人上手とかいふ風な古來の形しきが當ぜん作り出すかたとらはれた觀念くわんねんと見られぬ事もない。
しかし普通ふつうひとは、文學ぶんがくうへではやはりむかしのまゝのかたどほりにつくつてゐるにかゝはらず、すぐれたひとは、その時代じだいひとらしいで、ものかんじるものであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
通常これを標準、規範、かたなどと訳しているけれども、この訳語にては他の文字と混同するおそれがあるから、僕は原語げんごのままにノルムという字をもちいたいと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なやましいばかりの羞恥しゅうちと、人に屈辱くつじょくあたえるきりで、なんやくにも立たぬかたばかりの手続てつづきをいきどお気持きもち、そのかげからおどりあがらんばかりのよろこびが、かれの心をつらぬいた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
君ので給ふ像を石膏に寫したるをば、我も見き。姫。否、われは石膏のかたばかり整はざるものはなしと思へり。石膏の顏は死顏なり。大理石には命あり靈あり。
「そう頭から自分のこしらえたかたで、ひとを評価する気ならそれまでだ。僕には弁解の必要がないだけだから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……とうとうたる太鼓たいこ……かたのごとき黄母衣きほろ赤母衣あかほろ白母衣しろほろ伝令でんれいが、番外ばんがいの五番試合じあい各所かくしょひかじょへふれて、にじのように試合場しあいじょうのまわりを一じゅんする……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私ははじめは粘土ねんどでそのかたをとろうと思いました。一人がその青い粘土もって来たのでしたが、蹄の痕があんまり深過ふかすぎるので、どうもうまくいきませんでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼等はかたをクルーニの僧の用ゐるものにとりたるころもを着、目の前まで垂れし帽をかぶれり 六一—六三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
阿久はもと下谷したやの芸者で、めてから私の世話になって二年の後、かたばかりの式を行って内縁の妻となったのである。右隣りが電話のボタンをこしらえる職人、左隣がブリキ職。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おんなの一しょう大事だいじはいうまでもなく結婚けっこんでございまして、それが幸不幸こうふこう運不運うんふうんおおきな岐路わかれみちとなるのでございますが、わたくしとてもそのかたからはずれるわけにはまいりませんでした。
思いがけなく、ふるかたではあるが宇宙艇が手に入ったので、地球へ帰る一縷いちるの望みができてきた。調べてみると、何というさいわいだろう。燃料はかなり十分にたくわえられていた。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おこのがひるといわず夜といわず、ひそかににらんだとどのつまりは、ひとり四畳半じょうはん立籠たてこもって、おせんのかたにうきをやつす、良人おっとむねきつけたおびが、春信はるのぶえがくところの
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それが煮えたら火からおろして少し冷まして小さいコップ位なブリキのカップというかたがありますからその中へ最初は少しばかり今のゼリーをいで前の舌をよい加減に入れて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「さっき、土地の者が電気をかけていたのでにらみつけてやったが、まだかたを見ずだよ」
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
夫婦ふうふがやつてて、かたどほり各人かくじん紹介せうかいされたがかれ御多分ごたぶんれずおしであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あしたにもさっそく、このかたで、じぶんもこしらえさせてみよう、と考えていました。
「十手捕縄じゃ——そんな事を言っちゃ悪いが、後口あとくちのよくねえことがあります。彦兵衛が一世一代、身体を張ってきっとかたをつけます。こいつはあっしに任しておくんなさいまし」
わたしなどの若いころには、どの地方へ旅行して見ても、瓦を焼くけむりの見られないところはなかった。燃料はたいてい松の枯枝かれえだで、土はそこいらの粘土ねんどを持ってきて、水でこねてかたにとった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あぜは畔田は田のかたにつもりたりおもしろの雪やおもしろの雪や
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「心得たり、若先生のかたを」
茶店といつてもかたばかりのもので、大きいえのきした差掛さしかけ同様の店をこしらへて、往来ゆききの旅人を休ませてゐた。店には秋らしい柿や栗がならべてあつた。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ヨーロッパの地中海ちちゆうかいにあるマルタとうおほきないしはか、あれはどるめんがだん/\進歩しんぽして複雜ふくざつかたになつたもので、ずいぶんめづらしいものゝひとつであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「吾父は農夫なり」と神の愛子は云ったが、実際神は一大農夫で、百姓は其かたを無意識にやって居るのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いく先などをかたばかりにしらべていったが、これは師範代各務房之丞が引き受けて、金比羅詣こんぴらまいりの途中でござると開きなおり、見事にお茶らかして追い返してしまう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
河べりに近いうちでは、糸やあさをさらしていた。そのとなりでは染物そめものをしている。また一けんでは鹿皮しかがわをなめし、小桜模様こざくらもよう菖蒲紋しょうぶもん、そんなかたおきをしているうちもあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、お前様めえさま手際てぎはでは、昨夜ゆふべつくげて、お天守てんしゆつてござつた木像もくざうも、矢張やつぱりおなかたではねえだか。……寸法すんぽふおなじでもあしすぢつてらぬか、それでは跛足びつこぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たいわたしは、このころりう行のいはゆる藝術寫眞げいじゆつしやしんには、何の感興かんけうも持たない。あのへん氣取きとつた、いかにもおもはせぶりな、しかも一しゆかたにはまつた印畫いんぐわのとこがいゝといふのであらう?
赤彦君は暫くして極く静かに、『伴先生は毎日て下さるが斎藤君は久しぶりだから、どうか見て呉れたまへ』と云つた。僕は伴さんから聴診器を借りてかたのごとくに診察をした。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
佐野との会見はかたのごとく済んだ。母も兄も岡田に礼を述べていた。岡田の帰った後でも両方共佐野の批評はしなかった。もう事が極って批評をする余地がないというようにも取れた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これでも、あたし、古いかたの女よ。帰ったら、いいママになりますわ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
巧妙こうめうなハムレツトの一ふし黙劇もくげきがはじまつた。それは素人しろうととはおもはれないしつかりしたかたにはまつたものらしかつた。多分たぶん英国えいこくあたりのハムレツト役者やくしやのそれをつたものだらうとわたし想像そうぞうした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
たぼもつやめく髪のかた、つんとすねたり、かもじ屋に
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
先ず鉄道線路を踏切って、伏古古潭ふしここたんの教授所を見る。代用小学校である。かたの如き草葺くさぶきの小屋、子供は最早帰って、田村たむら恰人まさとと云う五十余の先生が一人居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かたのごとくに参詣をすませたが、ちょうど今が人の出潮でしおとみえて、仁王門と二天門の両方からうしおのように押し込んで来るので、帰り路はいよいよ難儀であった。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
模樣もようはたいていなはむしろかたしつけそのうへ曲線きよくせん渦卷うづまきだとか、それに類似るいじ模樣もようがつけてありますが、ときには突出とつしゆつしたおびのような裝飾そうしよくをつけたものもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
りいでしかた
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのかた
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)