トップ
>
表
>
おもて
ふりがな文庫
“
表
(
おもて
)” の例文
それからまもなく、
表
(
おもて
)
に自動車のとまる音がして、小林少年が、手に小型のトランクをさげて、書生に案内されてはいってきました。
大金塊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
毛利
右馬頭
(
うまのかみ
)
元就、正頼と一味し、当城へも加勢を入れ候。加勢の大将は
某
(
それがし
)
なり、元就自身は、芸州神領
表
(
おもて
)
へ討出で、桜尾、銀山の古城を
厳島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
此女
(
このをんな
)
は
国
(
くに
)
から
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのではない、
江戸
(
えど
)
で
持
(
も
)
つた
女
(
をんな
)
か知れない、それは
判然
(
はつきり
)
分
(
わか
)
らないが、
何
(
なに
)
しろ
薄情
(
はくじやう
)
の
女
(
をんな
)
だから
亭主
(
ていしゆ
)
を
表
(
おもて
)
へ
突
(
つ
)
き出す。
塩原多助旅日記
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何
(
なに
)
として
今日
(
けふ
)
はと
頸
(
うなじ
)
を
延
(
の
)
ばす
心
(
こゝろ
)
は
同
(
おな
)
じ
表
(
おもて
)
のお
高
(
たか
)
も
路次口
(
ろじぐち
)
顧
(
かへり
)
みつ
家内
(
かない
)
を
覗
(
のぞ
)
きつ
芳
(
よし
)
さまはどうでもお
留守
(
るす
)
らしく
御相談
(
ごさうだん
)
すること
山
(
やま
)
ほどあるを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
現在犬に
怪
(
あやし
)
まれているんです……漁師村を
表
(
おもて
)
に、この松原を裏にして、別荘があって、時々ピアノが聞えたんで、聞きに来た事もある。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
千々岩
君
(
さん
)
も悪い、悪いがそこをねエ若旦那。こんな事が
表
(
おもて
)
ざたになって見ると、千々岩
君
(
さん
)
の立身もこれぎりになりますから。ねエ若旦那
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それから三千代の
来
(
く
)
る迄、代助はどんな風に
時
(
とき
)
を
過
(
すご
)
したか、殆んど知らなかつた。
表
(
おもて
)
に女の声がした
時
(
とき
)
、彼は
胸
(
むね
)
に
一鼓動
(
いつこどう
)
を感じた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
尋ね出して
夫
(
をつと
)
道十郎殿の惡名を
雪
(
すゝ
)
がせん者をと夫より心を定め
赤坂
(
あかさか
)
傳馬町
(
でんまちやう
)
へと引取られ同町にて
表
(
おもて
)
ながらも
最
(
いと
)
狹
(
せま
)
き
孫店
(
まごだな
)
を
借受
(
かりうけ
)
爰に
雨露
(
うろ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「——ありがとうございました。して、これから
大久保
(
おおくぼ
)
さまのご
本殿
(
ほんでん
)
か、お
表
(
おもて
)
へまいるには、どこに
降
(
お
)
り口がありましょうか……」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのために、うちわの
絵
(
え
)
の
描
(
か
)
いてある
表
(
おもて
)
が、
赤黒
(
あかぐろ
)
く
焦
(
こ
)
げてしまったのです。そして、
正
(
しょう
)
ちゃんのお
母
(
かあ
)
さんも
焦
(
こ
)
げてしまいました。
遠方の母
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
船は二枚棚につくり、上棚の内部を、
表
(
おもて
)
の
間
(
ま
)
、胴の間、
※
(
はざま
)
の間、
艫
(
とも
)
の間の四つに区切り、胴の間は役人溜りで弓矢鉄砲などもおいてある。
顎十郎捕物帳:13 遠島船
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
表
(
おもて
)
二階を借りている伊東さんというカフェーの
女給
(
じょきゅう
)
が
襟垢
(
えりあか
)
と
白粉
(
おしろい
)
とでべたべたになった
素袷
(
すあわせ
)
の
寐衣
(
ねまき
)
に羽織を
引
(
ひっ
)
かけ、廊下から内を
覗
(
のぞ
)
いて
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お
品
(
しな
)
が
表
(
おもて
)
の
大戸
(
おほど
)
を
開
(
あ
)
けさせた
時
(
とき
)
は
日
(
ひ
)
がきら/\と
東隣
(
ひがしどなり
)
の
森
(
もり
)
越
(
ご
)
しに
庭
(
には
)
へ
射
(
さ
)
し
掛
(
か
)
けてきつかりと
日蔭
(
ひかげ
)
を
限
(
かぎ
)
つて
解
(
と
)
け
殘
(
のこ
)
つた
霜
(
しも
)
が
白
(
しろ
)
く
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
この
辺
(
へん
)
から西方
雲煙
(
うんえん
)
の
表
(
おもて
)
に
夕陽
(
せきよう
)
の残光を受けて立つ日本アルプスの
重畳
(
じゅうじょう
)
は実に雄麗壮大の眺めであった。濃霧の中を冒して渋温泉へ下る。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
表
(
おもて
)
書きは全部漢字で書くのが得意で、
金釘流
(
かなくぎりゅう
)
の大小いろいろまじった字であるが、とにかく配達にはことかかないような漢字を書いていた。
日本のこころ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
私は従弟にあたる
仁
(
ひとし
)
という二つ年下の子にあてた手紙を半紙に書いて、折り畳んで
表
(
おもて
)
に「いとこのひとしちゃんへ」と書いた。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
おゆうが帰って来たとき、お島は自分の寝床へ帰って、
表
(
おもて
)
の様子に気を配りながら、まんじりともせず疲れた体を
横
(
よこた
)
えていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
今日は子供部屋の畳を取りかえると云って中庭中に、台を持ち出してひどい風に吹かれながら縫いなおしの
表
(
おもて
)
をさして居た。
通り雨
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この市に住んで醤油の行商をしていた男、留守の家には女房が一人で、或る日の火ともしごろに
表
(
おもて
)
の戸をあけてこの女が外に出て立っている。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私は彼女が
家
(
うち
)
にいないと云うことを確かめるために、二階にかけ上がりました。私は二階にかけ
上
(
あが
)
りながら、偶然に窓から
表
(
おもて
)
をチラッと見ました。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
父
(
とう
)
さんがお
家
(
うち
)
の
表
(
おもて
)
に
出
(
で
)
て
遊
(
あそ
)
んで
居
(
を
)
りますと、
何時
(
いつ
)
でも
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
から
降
(
お
)
りて
來
(
き
)
て一
緒
(
しよ
)
に
成
(
な
)
るのは、この三
郎
(
らう
)
さんでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
たとえ思想は絶対的であっても、これを言葉に発するときには、思想の上も下も、前も後も、
表
(
おもて
)
も
裏
(
うら
)
も、ことごとく同時に言い現すことは出来ぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
夫婦と覺しき
男女
(
なんによ
)
、
表
(
おもて
)
をのみ飾りたる衣を
纏
(
まと
)
ひて板敷の上に立ちたるが、客を
喚
(
よ
)
ぶことの忙しさに、聲は全く
嗄
(
か
)
れたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
如何
(
どう
)
でも
為
(
し
)
ましょうと
云
(
いっ
)
て、ソレカラ
私儀
(
わたくしぎ
)
大阪
表
(
おもて
)
緒方
洪庵
(
こうあん
)
の
許
(
もと
)
に砲術修業に
罷越
(
まかりこ
)
したい
云々
(
うんぬん
)
と願書を出して
聞済
(
ききずみ
)
になって、大阪に出ることになった。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
街道にはもう
往来
(
おうらい
)
も絶えた。
表
(
おもて
)
もうす暗くなつた。亭主もいよ/\思ひ切つて店を仕舞はうとするところへ、いつもの女の影が店のまへにあらはれた。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「江戸
表
(
おもて
)
から、取調べの役人がまいられて、この証拠の菅笠を御見付けになったが、それ——この黒い所は血じゃ」
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
一、百韻は
初折
(
しょおり
)
表
(
おもて
)
八句裏十四句、二の折表十四句裏十四句、三の折表十四句裏十四句、四の折表十四句裏八句なり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
緑色に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
った小天地、白い帆かけ舟が一つ中にともした
生命
(
いのち
)
の火のつゞく限りいつまでもと其
表
(
おもて
)
を
駛
(
はし
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
備後
(
びんご
)
の国に入れば、もう広島県であります。備後といえばすぐ「
備後表
(
びんごおもて
)
」や「
備後絣
(
びんごがすり
)
」の名が浮びます。
表
(
おもて
)
とは畳表のことで、良質を以て名が聞えます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
この基本訓練がすんで、むしろこれはむずかしいものだということがわかる時があって、
表
(
おもて
)
芸に入るのである。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
通りに大きな鉄の門があつて、一直線に広い石の
路次
(
ろじ
)
がある。夜はその片側に
灯
(
ひ
)
が一つ
点
(
とも
)
る。
路次
(
ろじ
)
の上には何階建てかの
表
(
おもて
)
の家があることは云ふ迄もない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
たぶん
退
(
ひ
)
けのおそい駅員が
表
(
おもて
)
を通るのだろう。それも、ゆっくり自分の家に帰って行く途中に違いない。まさか
泥坊
(
どろぼう
)
をしに庭の塀を
攀
(
よ
)
じ登っているのではあるまい。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
うち
中
(
じゅう
)
たずね
回
(
まわ
)
っても、
裏
(
うら
)
から
表
(
おもて
)
へと
探
(
さが
)
し
回
(
まわ
)
っても、もうどこにも
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
の
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えませんでした。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
ただ
厭
(
いと
)
ふにはゆるは
彼方
(
あなた
)
の親切にて、ふた親のゆるしし交際の
表
(
おもて
)
、かひな借さるることもあれど、唯二人になりたるときは、家も園もゆくかたもなう
鬱陶
(
いぶ
)
せく覚えて
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
酒場
(
さかば
)
じゅうの
者
(
もの
)
が色を
失
(
うしな
)
ってさわぎたてた。ちょうどきあわせていた
警官
(
けいかん
)
は、さすがにほかの者たちよりは落ちついており、すぐに
表
(
おもて
)
のドアをしっかりとしめてやった。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
この豪邁なる感傷の歌を声高く歌って、暮れ行く海の
表
(
おもて
)
をながめている時、不意に潮が満ちて来て、その足もとを洗ったものですから、茂太郎が、あっ! と驚きました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何年か
表
(
おもて
)
がえをしたことのない、真黒くなって処どころに穴のあいた畳のことを考えてみた。
藤の瓔珞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
藤澤へ來ると、相模屋といふ茶店の
表
(
おもて
)
通に五六人の人が立つて騷いで居るぢやありませんか。
銭形平次捕物控:305 美しき獲物
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ふと
繪葉書屋
(
ゑはがきや
)
の
表
(
おもて
)
につり出した
硝子張
(
がらすば
)
りの
額
(
がく
)
の中に
見
(
み
)
るともない
眼
(
め
)
をとめると、それはみんななにがし
劇場
(
げきぢやう
)
の
女優
(
ぢよいう
)
の繪葉書で、どれもこれもかね/″\
見馴
(
みな
)
れた
素顏
(
すがほ
)
のでした。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
毎日それらの話が見て来たように伝えられたが、二十六日の日に、内府殿が秀頼様へ御挨拶のため大坂
表
(
おもて
)
へ御出ましになり、それと共に父も大坂へ送られたことが知れて来た。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ふと
表
(
おもて
)
の
河岸
(
かわぎし
)
でカーンカーンと岩を
叩
(
たた
)
く音がした。二人はぎょっとして聞き耳をたてた。
十六日
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一円紙幣で百枚!
全然
(
まるで
)
注文したよう。これを数える手はふるえ、数え終って自分は
洋燈
(
ランプ
)
の火を
熟
(
じっ
)
と見つめた。直ぐこれを明日銀行に預けて帳簿の
表
(
おもて
)
を飾ろうと
決定
(
きめ
)
たのである。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
縱令
(
よし
)
天保の法度が出なかつたとした所で、よしまたその爲めに
表
(
おもて
)
を質素にし裏を贅澤にすると云ふ樣な傾向にならなかつたとした所で、派手な冬の衣裳は周圍と調和せぬのである。
海郷風物記
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
要吉の
仕事
(
しごと
)
の第一は、
毎朝
(
まいあさ
)
、まっさきに
起
(
お
)
きて、
表
(
おもて
)
の重たい
雨戸
(
あまど
)
をくりあけると、年上の
番頭
(
ばんとう
)
さんを
手伝
(
てつだ
)
って、店さきへもちだしたえんだいの上に、いろんなくだものを、きれいに
水菓子屋の要吉
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
が食事が済んで、肩を並べて
表
(
おもて
)
へ出ると——すぐもう冗談まじりの気軽な会話が始まった。どこへ行こうと何の話をしようとどうでも結構な、
閑
(
ひま
)
で何不足ない連中のやるあれである。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ところが、七回の
表
(
おもて
)
に、いっきょ、その二点を取りかえされ、同点に追いこまれてしまった。こうなると、
R
(
アール
)
クラブの
選手
(
せんしゅ
)
たちは、追われる者の心ぼそさを感じないわけにはいかない。
星野くんの二塁打
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
舟の
表
(
おもて
)
の
間
(
ま
)
の屋根のように葺くのでありますから、まことに具合好く、
長四畳
(
ながよじょう
)
の
室
(
へや
)
の天井のように引いてしまえば、苫は十分に日も雨も防ぎますから、ちゃんと座敷のようになるので
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
幸子は一人
表
(
おもて
)
の
間
(
ま
)
の
格子
(
こうし
)
の
桟
(
さん
)
を両手で握ってごとごと
揺
(
ゆす
)
っていた。彼女は二つだ。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
もしなおかかる者をして囚徒を取り締らしめんには、囚徒は常に軽蔑を以て取締りを迎え、
表
(
おもて
)
に謹慎を表して
陰
(
いん
)
に舌を吐かんとす、これをしも、改化遷善を勧諭する良法となすべきやは。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
俺とか君とか鈴木とか、
表
(
おもて
)
に出てしまった人間なんて、チットも恐ろしくない。これからは顔の知られない奴だって。
彼奴
(
きゃつ
)
等だって、ちァんと俺たちの運動の方向をつかんだ云い方をするよ。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
表
常用漢字
小3
部首:⾐
8画
“表”を含む語句
表面
表情
表書
表紙
表現
表象
表通
表裏
献立表
表皮
表白
華表
代表
表題
表示
表徴
表向
裏表
表店
表札
...