かわ)” の例文
旧字:
とにかく相手は学界でも特に有名なかわものなんだから、君の美貌びぼうと、例のサービスとを武器として、なんとか記事にしてきて貰いたい。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其内奥さんは何か用事で一寸内地へ帰られました。奥さんが内地へ帰られてから、二週間程経つと、如何どうも妻の容子ようすかわって来ました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小幡民部こばたみんぶはあいかわらずいたって無表情むひょうじょうにながめているし、伊那丸いなまる冷静れいせいなること、すこしもかわっていなかったが、うるさいのは竹童ちくどう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平野の打続く衛の風景とはおよことかわった・山勝ちのこうの都に、侘しい三年の月日を送った後、太子は遥かに父衛侯のを聞いた。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そんな折の氏の家庭こそ平常とは打ってかわって実に陽気で愉快ゆかいです。その間などにあって、氏に一味ひとあじの「如才じょさいなさ」がいます。
それから少時しばらくのち私達わたくしたちはまるでうまかわったような、にもうれしい、ほがらかな気分きぶんになって、みぎひだりとにたもとわかったことでございました。
しかし夕方になってもやはり何のかわったことも見つけられなかった。この時もうこの邸へあつまってきた多くの新聞記者に向って
「すぐ来るがら。」と云いながら達二たつじは鳥を見ましたら、鳥はいつか、萌黄色もえぎいろ生菓子なまがしかわっていました。やっぱりゆめでした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかもその顔は、かつて一度も見たことのない顔である。また、これとはかわって、毎晩、恐ろしい男の顔を見る友人があった。
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
とものものは、まだいったばかりの二、三にちは、かわわってよろしゅうごさいましたけれど、じきにさびしくなってたまらなくなりました。
町のお姫さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
およそ一年ばかりも経つうちに、ある日アノ窓のそばまで行くと、急に顔色がかわってパッタリ倒れたまま死んでしまったそうです。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はて腑甲斐ふがいなき此身おしからずエヽ木曾川の逆巻さかまく水に命を洗ってお辰見ざりし前に生れかわりたしと血相かわ夜半よわもありし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
春重はるしげかわものだってこたァ、いつも師匠ししょうがいってるじゃねえか。いまさらかわものぐれえに、おどろくおめえでもなかろうによ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
成程なるほどときれば監獄かんごくや、瘋癲病院ふうてんびょういんはいされて、正義せいぎ貴方あなた有仰おっしゃとおかちめるでしょう、しかし生活せいかつ実際じっさいがそれでかわるものではありません。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
電話で、新道のある茶屋へ、宮歳の消息を聞合せると、ぶらぶら病で寝ていたが、昨日急に、へんかわって世を去った。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つかわものの人形師を教えてくれないかとうと、先方せんぽうは電話口で、エヘヘヘヘヘと気味わるく笑った。
悪霊物語 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たしかに人間はかわるものだが、それはべつに進歩を意味しないし、他人になるということでもない。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
一枚半ほどの手紙を書き終った時、パット世界がかわるほど美くしい色に電気がついた。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
貯金ちょきんだけをたのしみに、倹約けんやくにくらしているような人だから、人のいやがるこのふべんなみさきの村へきたのも、つきあいがなくてよいと、じぶんからの希望であったというかわだねだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
彼は男のあとを見え隠れにここまでいて来て、また見たくもない唐物屋の店先に飾ってある新柄しんがら襟飾ネクタイだの、絹帽シルクハットだの、かわじま膝掛ひざかけだのをのぞき込みながら、こう遠慮をするようでは
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちあきて、もりはオレンジいろ黄金色おうごんいろかわってました。そして、だんだんふゆちかづいて、それがると、さむかぜがその落葉おちばをつかまえてつめた空中くうちゅうげるのでした。
戦争にかわえがあったら、お目にかかりたいものだが、しかし拙者は変り栄えがないと会得しているから、戦争来たれなどと武者ぶるいはしない。しかし戦火と地を争う愚はしないだけのことだ。
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「そういえば南条さんもかわんなすつたねえ」
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
あいかわらず極端説。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いままでの明るい青いそらががらんとしたまっくらなあなのようなものにかわってしまってそのそこで黄いろな火がどんどんえているようでした。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
女人禁制にょにんきんせい土地柄とちがら格別かくべつのおもてなしとてできもうさぬ。ただいささか人間離にんげんばなれのした、一ぷうかわっているところがこの世界せかい御馳走ごちそうで……。』
が、としわかいし、げい達者たっしゃであるところから、作者さくしゃ中村重助なかむらじゅうすけしきりにかたれて、なに目先めさきかわった狂言きょうげんを、させてやりたいとのこころであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
小使こづかいのニキタはあいかわらず、雑具がらくたつかうえころがっていたのであるが、院長いんちょうはいってたのに吃驚びっくりして跳起はねおきた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
不相変主我的しゅがてきだと非難した者も少なくありませんでした。一風いっぷうかわった天才の気まぐれと笑ったのは、まだよい方かも知れません。先生もつらかったでしょう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こういう一種の恍惚感こうこつかんひたって私はまた、茶店ちゃみせの美少年の前を手を振って通り、家の中二階へ戻る。私は自分が人とかわっているのにときどきは死にくなった。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
仰っしゃるにも、大義と国体です。権現さまの幾多のお子お孫たちのうちにも、たったひと方、とんでもないかわだねをおのこしになった——と申すしかございません
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕の大学の理科にかわだね友江田ともえだ先生というのがある、と言えばみなさんのうちには、「ウン、あの統計狂の友江田さんか!」とうなずかれる方も少くあるまいと思うが、あの統計狂の一党に
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
 水が来なくなって下田の代掻しろかきができなくなってから今日で恰度ちょうど十二日雨がらない。いったいそらがどうかわったのだろう。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うしろからしのぶようにしていておとこは、そういいながらおもむろに頬冠ほおかぶりをとったが、それは春信はるのぶ弟子でしうちでも、かわものとおっている春重はるしげだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これからのそなたの生活せいかつは、現世げんせのそれとはすっかりおもむきかわるから一はやくそのつもりになってもらわねばならぬ。
二人のおもいは宗教の神秘性にまでたかめられている。おそらく生をえ死を更えてもかわるまい。だが、ふとしたことから、私は現実のおまえに気付かせられることがある。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その院長いんちょうアンドレイ、エヒミチは自分じぶん周囲まわりもの様子ようすの、ガラリとかわったことをようやみとめた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
奈良は奠都てんと千百年祭で、町は球燈きゅうとう、見せ物、人の顔と声とで一ぱいであった。往年おうねんとまった猿沢池さるさわのいけの三景楼に往ったら、主がかわって、名も新猫館しんねこかんと妙なものにけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
宮内はうしろへ身をされて、あやうくそとの葭簀よしずにつまずきかけたが、そこまでしのんでいたかれの顔色がサッと、するどくかわったなと思うと、かかとをこらえてひねりごし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその仕事をまじめにしているともう考えることも考えることもみんなじみな、そうだ、じみというよりはやぼな所謂いわゆる田舎臭いなかくさいものにかわってしまう。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
氏は、一度信ずるや、自分の本業などは忘れて、只管ひたすら深く、その方へ這入はいって行きました。氏の愛読書は、聖書と、東西の聖者の著書や、宗教的文学書とかわりました。
菊亭晴季公きくていはるすえこうにも、いつも、おかわりなくおらしであるか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどもそのとき空は天河石てんがせきからあやしい葡萄瑪瑙ぶどうめのういたかわりその天人の翔ける姿すがたをもう私は見ませんでした。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かの女は駒下駄こまげたをひっくり返えした。町会で敷いた道路の敷石しきいしが、一つは角を土からにょっきりと立て、一つは反対にのめり込ませ、でこぼこな醜態しゅうたいかわっているのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
けれども、たよりのないことは、みちのはばが五すんぐらいになったり、また三じゃくぐらいにかわったり、おまけに何だかぐるっとまわっているように思われました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
母は単純に病気だということに決めてしまって、私のかわった症状しょうじょうに興味を持って介抱かいほうした。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ところがどうも仕方しかたないことは、わたくしたちのイギリス海岸かいがんでは、川の水からよほどはなれた処に、半分石炭せきたんかわった大きな木の根株ねかぶが、その根を泥岩でいがんの中に
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして反射神経でありあわせなラブレターの書式など、実にうまくなりましたこと。しかしほんとうの恋をする女があるということは物論もちろん昔も今も決してかわろうはずはありません。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
気がついて見るとほんとうにタネリは大きな一ぴきのかにかわっていたのです。それは自分の両手りょうてをひろげて見ると両側りょうがわに八本になってびることでわかりました。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いものやい着物についてもいつか考え込んでる。だが、ぐ気がかわって眼の前の売地のふだの前に立ちどまって自分のわずかな貯金とくらべて価格を考えても見たりする。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)