すゞ)” の例文
油煙ゆえんがぼうつとあがるカンテラのひかりがさういふすべてをすゞしくせてる。ことつた西瓜すゐくわあかきれちひさなみせだい一のかざりである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ねやこゑもなく、すゞしいばかりぱち/\させて、かねきこえぬのを、いたづらゆびる、寂々しん/\とした板戸いたどそとに、ばさりと物音ものおと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昨夜さくやも、一昨夜いつさくやも、夕食ゆふしよくてゝのち部室へやまど開放あけはなして、うみからおくすゞしきかぜかれながら、さま/″\の雜談ざつだんふけるのがれいであつた。
隣家となりける遲咲おそざききのはなみやこめづらしき垣根かきねゆきの、すゞしげなりしをおもいづるとともに、つき見合みあはせしはなまゆはぢてそむけしえりあしうつくしさ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うけたまはり候へば此廓このさとの火宅を今日しも御放おはなれ候てすゞしき方へ御根引おねびきはな珍敷めづらしき新枕にひまくら御羨敷おうらやましきは物かはことに殿にはそもじ樣はつち陰陽いんやうを起しやうやうにして一しやうやしなふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
道子みちこきやくよりもはやてゐるものをぬぎながら、枕元まくらもとまど硝子障子がらすしやうじをあけ、「こゝのうちすゞしいでせう。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
むかかわではSH夫人ふじんらしい、ちら/\うごほしのやうなきわめてすゞしいひとが、無邪気むじやき表情へうぜうをしてゐるのがについた。わたくしわきにゐるお転婆てんばさんが彼女かのじよめてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
すゞめが四五で、すゞしい樹蔭こかげにあそんでゐると、そこへからすがどこからかんでました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そらさはやかれて、とほ木立こだちそらせつするあたり見渡みわたされるすゞしい日和ひより
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そしてそれは夕方ゆふがたかぜすゞしくなるころまでつづきました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
れがすゞしいなつをんなをとこときには毎日まいにちあせよごやすいさうしてかざりでなければらぬ手拭てぬぐひ洗濯せんたくひまどるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何故なぜでもいけませぬ、わたしわがまゝゆゑまをすまいとおもときうしてもやでござんすとて、ついとつてゑんがはへいづるに、くもなきそらつきかげすゞしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
印度洋インドやうちう氣※きかうほど變化へんくわはげしいものはない、いまは五ぐわつ中旬ちうじゆんすゞしいときじつ心地こゝちよきほどすゞしいが、あつとき日本につぽん暑中しよちうよりも一そうあついのである。
往来わうらいの片側に長くつゞいた土塀どべいからこんもりと枝をのばした繁りのかげがいかにもすゞしさうに思はれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
蒸暑むしあつうちにもすべてがみづやうつきひかりびてすゞしい微風びふうつちれてわたつた。おつぎはうすからもち拗切ねぢきつて茗荷めうがせてひとつ/\ぜんならべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
首筋くびすぢうすかつたとなほぞいひける、單衣ひとへ水色友仙みづいろゆうぜんすゞしげに、白茶金しらちやきんらんの丸帶まるおびすこはゞせまいをむすばせて、庭石にはいし下駄げだなほすまでときうつりぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やうやたかく、かぜすゞしく、ふね進行すゝみのやうである。わたくし甲板かんぱん安樂倚子あんらくゐすをよせて倩々つら/\かんがへた。
「ぢや、ストリツプはみんなさうね。あつときすゞしくつていゝわ。さア、あんたもおぬぎなさいよ。」と道子みちこをとこのぬぎかけるワイシヤツをうしろからつだつてきはがした。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
えうなきむねいためけん、おろかしさよと一人ひとりみして、竹椽ちくえんのはしにあしやすめぬ、晩風ばんぷうすゞしくたもとかよひて、そらとびかふ蝙蝠かはほりのかげ二つ三つ、それすらやうやえずなりゆく
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人家じんか軒下のきした路地口ろぢぐちには話しながらすゞんでゐる人の浴衣ゆかた薄暗うすぐら軒燈けんとうの光に際立きはだつて白く見えながら、あたりは一体にひつそりして何処どこかで犬のえる声と赤児あかごのなく声がきこえる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
うちうめかれしをお出入でいり槖駝師たくだしそれなるものうけたまはりて、拙郎やつがれ谷中やなか茅屋ぼうおくせきれしみづ風流みやびやかなるはきものから、紅塵千丈こうじんせんぢやう市中まちなかならねばすゞしきかげもすこしはあり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
門口かどぐちやなぎのある新しい二階からは三味線しやみせんきこえて、水に添ふ低い小家こいへ格子戸外かうしどそとには裸体はだか亭主ていしゆすゞみに出はじめた。長吉ちやうきちはもう来る時分じぶんであらうと思つて一心いつしんに橋むかうをながめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)