ぐさ)” の例文
ロレ いや、そのことば鋭鋒きっさきふせ甲胄よろひおまさう。逆境ぎゃくきゃうあまちゝぢゃと哲學てつがくこそはひとこゝろなぐさぐさぢゃ、よしや追放つゐはうとならうと。
かはつてかへつてたのはくま膏薬かうやく伝次郎でんじらう、やちぐさんだかさかむたぬき毛皮けがはそでなしをて、糧切まぎりふぢづるでさや出来できてゐる。
その簡単かんたんさまは、太古たいこ移住民族いじゅうみんぞくのごとく、またかぜただよぐさにもて、今日きょうは、ひがしへ、明日あすは、みなみへと、いうふうでありました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かの『即興詩人』『月草つきぐさ』『かげぐさ』の如き森先生が著書とまた『最近海外文芸論』の如き上田先生が著述との感化に外ならざればなり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
振り返ってみると、しのぐさった薄色の狩衣かりぎぬに、太刀を横たえ、頭巾をかぶり、さらに頭巾の上から大笠をかぶっている旅人であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女のぐさはほとんどでたらめに近かった。けれどもそれを口にする気持からいうと、全くの真剣沙汰しんけんざたと何のことなるところはなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「だまれ。僕なんか殺されて一向さしつかえないとは、何というぐさだ。おせっかいにもほどがある、何というあきれた——」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ああありがたい。いっそもっとおそばによって、よくお顔を拝んどきゃよかったよ。ねえ、お爺さん、この話は孫子の代までかたぐさだねえ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この神仙体の句はその後村上霽月君にも勧めて、出来上った三人の句を雑誌『めざましぐさ』に出したことなどがあった。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
海蔵かいぞうさんはくるしそうにわらって、そとてゆきました。そして、みぞのふちで、かやつりぐさって、かえるをつっていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ひるた、さか砂道すなみちには、あをすすき、蚊帳かやつりぐさに、しろかほの、はま晝顏ひるがほぶたを薄紅うすべにそめたのなどが、まつをたよりに、ちらちらと、幾人いくたりはなをそろへていた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼の著として伝わっている『仮名性理かなせいり』あるいは『千代ちよもとぐさ』は、平易に儒教道徳を説いたものであるが、しかし実は、彼の著書であるかどうか不明のものである。
これらは大方おほかたしか今年ことし六ツになるをんなのわたしたちの玲子れいこ——千ぐさは、まだやつとだい一のお誕生たんじやうがきたばかりで、なんにわかりません——に、よひくち寐床ねどこのなかなどで
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
私十一ばかりにて鴎外おうがい様の『しがらみ草紙』、星川様と申す方の何やら評論など分らずながら読みならひ、十三、四にて『めざましぐさ』、『文学界』など買はせをり候頃
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
顔は茶色でそれを囲つたかつらの葉は萌黄もえぎの塗りは灰色がかつたお納戸なんどである。塀はわざとらしく庭の中から伸び余つた蔓ぐさであつさりと緑の房を掛けさせてあるのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「しかしその人の頭は? 多分どつちかと云ふと愚鈍な方なんだらう? 云つてゐることは、當り前でも、あなたはその云ひぐさを聞くと、肩をすくめるやうなんだらう?」
甘酢っぱい言いぐさだがその頃の味を思うと、フルーツ全盛の現代は、真に恵まれたるかな。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
冗談じょうだんじゃねえ。おせんのつめが、んでほどれるもんか、おめえもひと好過よすぎるぜ。春重はるしげだまされて、気味きみわるいのおそろしいのと、あたまかかえてかえってくるなんざ、おわらぐさだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
膳の上の食品を罵倒ばとうする敬蔵のぐさだが、ひょっとすると、それが辛辣しんらつな事実で父娘の身の上の現実ともなりかねない今日この頃では、敬蔵もうっかり自分の言葉癖ことばぐせは出しにくかった。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何人か心あってしたこと、心なくてはできない手向たむぐさ、念が入り過ぎている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところが、なんでも久米正雄夫人くめまさをふじん自身じしん懷姙中くわいにんちう運勢うんせい素晴すばらしかつたことはいまでも鎌倉猛者連かまくらもされんかたぐさになつてゐるくらゐださうだが、ふところはいつてふとるといふ八卦はつけでもあらうか? 少少せうせううがちぎてゐて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
苅られずにわれの生かされ眺るもののゑのころぐさの穂はそよぎたり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
影にそよぐしにびとぐさのやうになまぐさく
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
人皆のうらやみぐさとし給ふに
あはれ今 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
びつくりぐさではないけれど
忘れなぐさもいちじろかりし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
森のにきみかげぐさ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
御者台ぎょしゃだいを背中に背負しょってる手代は、位地いちの関係から少しも風を受けないので、このぐさは何となく小賢こざかしく津田の耳に響いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……願うらくはただ、努めて先帝の御徳おんとくを汚さぬよう、蜀帝国の最期として、世のわらぐさにならぬよう、それのみを祈りまする
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のことを下拙げせつなどと、これが七、八つの子供の言いぐさですからイヤどうも顔負けです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ゆうべ吉原よしわらかれた捨鉢すてばちなのが、かえりの駄賃だちんに、朱羅宇しゅらう煙管きせる背筋せすじしのばせて、可愛かわいいおせんにやろうなんぞと、んだ親切しんせつなおわらぐさも、かずあるきゃくなかにもめずらしくなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
前栽せんざい強物つはものの、はないたゞき、蔓手綱つるたづな威毛をどしげをさばき、よそほひにむらさきそめなどしたのが、なつ陽炎かげろふ幻影まぼろしあらはすばかり、こゑかして、大路おほぢ小路こうぢつたのも中頃なかごろで、やがて月見草つきみさうまつよひぐさ
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると、みんなは、われもわれもと、猫柳ねこやなぎをはじめ、ももや、まつや、たんぽぽや、れんげそうや、なかにはペンペンぐさまでとってかねにささげた。かねはそれらのはなでうずまってしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ぐさかもの上に並んだ積藁わらによからは紫の陽炎かげろふが立つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
影にそよぐしにびとぐさのやうになまぐさく
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
二番ぐさ取りも果さず穂にいでて 去来きょらい
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
君が心のやどりぐさ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
わすれなぐさ
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そりゃ男のぐさだろう。女は一眼見ても、すぐ何かいうじゃないか。またよくうまい事を云うじゃないか。それを
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
命松丸もそれはよいしのぐさともなり、またあれほどなお人の文字をもったいないことだとも考えて、ならびおかや吉田山の旧草庵の物をていねいに剥がして、やがて今川了俊の手もとへとどけた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兩方りやうはうのふちをはさんで、雜草ざつさう植込うゑこんだのが、やがて、蚊帳かやつりぐさになり、露草つゆくさになり、紅蓼べにたでになつて、なつのはじめから、朝露あさつゆ夕露ゆふつゆ、……よる姿すがたかくれても、つきおもかげいろ宿やどして、むしこゑさへ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし前にも申した通り、あなたと私とはまるで専門が違いますので、私の筆にする事が、時によると変に物識ものしりめいた余計よけいぐさのように、あなたの眼に映るかも知れません。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
決して世のわらぐさとなるような敗北ではなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何事なにごともわすれぐさまをしますな。」
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)