おこ)” の例文
旧字:
永「七兵衞さんは知るまいが、金を貸すもお前故だ、是まで出家をげても、お前を見てわしは煩悩がおこって出家は遂げられませんぜ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
少なくとも仏教の根本目的は「我等と衆生しゅじょうと、皆共に仏道をじょうぜん」ということです。「同じく菩提ぼだい心をおこして、浄土へ往生せん」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
八二老衲らうなふもしこの鬼を八三教化けうげして本源もとの心にかへらしめなば、こよひのあるじむくひともなりなんかしと、たふときこころざしをおこし給ふ。
父藤原豊成朝臣、亡父贈太政大臣七年の忌みに当る日に志をおこして、書き綴つた「仏本伝来記」を、二年目の天平十八年に、元興寺ぐわんこうじへ納めた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
方角も吉里の室、距離とおさもそのくらいのところに上草履の音がおこッて、「平田さん、お待ちなさいよ」と、お梅の声で呼びかけて追いかける様子である。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
「時に、ラムのやからブジ人バラケルの子エリフ、大なる怒りをおこせり、ヨブ神の前におのれを正しとするによりて、彼はヨブに向かいて怒りを発せり。」
末文に至り中にも智恵の浅き故に五のやまいおこると言うは、智恵浅きが故に智恵浅しと言うに異ならず、前後文を成さずと雖も、文字上の細論はしばら
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
千人斬ろうと思い立ったのだそうである。抽斎はこの事を聞くに及んで、歎息してまなかった。そして自分は医薬を以て千人を救おうというがんおこした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「兎は励みの心をおこして、……耳は高く𤹪くぐせにして、目は大きく前の足短く、尻の穴は大きく開いて、東西南北求め歩けども、更に求め得たるものなし……」
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
嬢々おつかさんはたつた此間こないだ無くなりました。ニユウ、イングランドから来た旅商人と喧嘩をして、余りおこつたので、卒中とかいふ病をおこしたのだといふことです。」
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
けれど、そのときすでに、身に病のおこってきた予感は、孔明自身が誰よりもよくさとっていたにちがいない。間もなく彼の容態は常ならぬもののように見えた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おまえさんどうもお強い。よく血の道がおこりませんね。平気なものだ、女丈夫おとこまさりだ。わたしなんぞはからきし意気地いくじはない。それもそのはずかい、もう五十八だもの」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立ながらあごに手伝はせての袖畳み小早く室隅すみの方に其儘さし置き、火鉢の傍へ直また戻つて火急たちまち鉄瓶に松虫の音をおこさせ、むづと大胡坐かき込み居る男の顔を一寸見しなに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
子あるまゝを塩引にしたるを子籠ここもりといふ、古へのすはよりといひしも是ならんか。本草にさけあぢはひうま微温やはらかどくなし、主治きゝみちうちあたゝさかんにす、多くくらへばたんおこすといへり。
『まあ、瀬川君なぞは聞かない方がいゝよ——聞けばた病気がおこるにきまつてるから。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
またもとの俗骨ぞくこつにかへり、われも詩を作ることを知りたるならば、へたながらも和韻わゐんと出かけて、先生をおどろかしたらんものをとまけだましひ、人うらやみ、出来できことをコヂつけたがる持前もちまへ道楽だうらくおこりて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
低くおこりて物にさへぎられたれば、何の火ともわきまへ難くて、その迸発ほとばしりあかけむれる中に、母家もやと土蔵との影はおぼろあらはるるともなく奪はれて、またたくばかりに消失せしは、風の強きに吹敷れたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「未甘冷淡作生涯。月榭花台発興奇。一種風流吾最愛。南朝人物晩唐詩。」〔未ダ甘ンゼズ冷淡モテ生涯トスヲ/月榭花台興ヲおこシテ奇/一種ノ風流吾ハ最モ愛ス/南朝ノ人物晩唐ノ詩〕と言っている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「げに親子の情二人が間におこらば源叔父が行末いくすえ楽しかるべし。紀州とても人の子なり、源叔父の帰り遅しとかどに待つようなりなば涙流すものは源叔父のみかは」つまなる老人おきな取繕とりつくろいげにいうも真意なきにあらず。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
されど世にあらせ給ふほどは孝信かうしんをまもりて、六〇ゆめいろにも出さざりしを、かくれさせ給ひてはいつまでありなんと、たけきこころざしをおこせしなり。
いかなる嘲笑も慢罵まんばも攻撃をも、一切超越せねば、決して新しい仕事はできないのです。新奇な運動はおこせないのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
後から参ると云うので、病身で時々癪がおこると云うが、その持病を癒そう為に伊香保へ来て居たのだが、貴方に一寸ちょっと岡惚れでしょう、新造しんぞうがサ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの病気のおこりましたのは内だったんですけれど、こんな稼業でしょう、少しは身体からだを動かしてもいいと、お医師いしゃがおっしゃいましてから、すぐ川崎の方へ……あの
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その頃は、称讃浄土摂受経しようさんじやうどせふじゆきやうを千部写さうとの願をおこして居た時であつた。其がはかどらない。何時までも進まない。茫とした耳に、此世話よばなしが紛れ入つて来たのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
小万はにっこり笑ッて、「あんまりひどい目に会わせておくれでないよ、虫がおこると困るからね」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
わたくしはこれを読んで、乞児こつじも猶古銭を乞ふとはいかなる事を謂ふかと云ふ好奇心をおこした。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
今考えてもひやりとするような突き詰めた考えもおこさないでは無かったが、待てよ、あわてるところで無い、と思案に思案して生きは生きたが、女とはとうとう別れてしまった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
中にも智恵の浅き故に五の疾もおこる。女は陰性也。陰は夜にて暗し。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その立てる二三歩の前は直行が遺骨をおこせし所なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
というのは、いうまでもなく大乗仏教の精神は、われらと衆生と皆共に仏道をじょうぜんということです。同じく菩提心をおこして浄土へ往生することです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
と云われるのが嬉しく思いまして、しげ/\通いましたが、又市も馬鹿でない男でございますから、しまいには癇癪をおこして、藤助とうすけという若者わかいものを呼んで居ります。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一二二けんぞくのなすところ、人のさいはひを見てはうつしてわざはひとし、世のをさまるを見てはみだれおこさしむ。
戯言じょうだんは戯言だが、さッきから大分紛雑もめてるじゃアないか。あんまり疳癪をおこさないがいいよ」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
生じ易きは魔の縁なり、おもひほしいまゝにすれば直におこり、念を正しうするも猶起らんとす。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
水源みなもと岩井沼いはゐぬまおこすとふ、浦川うらかはながれすゑが、ひろつてうみそゝところちかかつた。旅館りよくわんてまだいくほどもないところに——みちそばに、切立きつたてた、けづつた、おほきいはほの、矗々すくつのをた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
郎女いらつめには、いつか小耳にはさんだ其話が、その後、何時までも消えて行かなかった。その頃ちょうど、称讃浄土仏摂受経しょうさんじょうどぶつしょうじゅぎょうを、千部写そうとの願をおこして居た時であった。其が、はかどらぬ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
他の時なればうるさき混雑こんざつやと人をいとおこるべきに、ただうれしくてこらへられず、車をりて人のすまゝに押されて、言問団子ことゝひだんごの前まではきしが、待合まちあはす社員友人の何処いづこにあるや知られず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
其保養を厚うし其感情を和らげ、仮初にも不愉快の年をおこさしむることなきよう心を用う可し。殊に老人は多年の経験もあることなれば、万事に付き妨げなき限りは打明けて語り打明けて相談す可し。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そゞろにおこりし悪心より人を殺した天罰覿面てんばつてきめんかゝる最後をげるというも自業自得じごうじとく我身わがみかえってこゝろよきも、只不憫ふびんな事は娘なり、血縁にあらねば重二郎どの
窃かに心を寄せるのが「内通」であり、利を啗わせて事をおこさせるのが「嘱賂そくろを飼う」のであり、まだ表面には何の事も無くても他領他国へ対して計略を廻らすのが「陰謀」である。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すると、直き傍で急に泣声がおこったのです。見ますとね、先刻の何人だれでも呪いそうな彼の可怖い眼の方が、隣の列車の窓につかまって泣いてらッしゃるのでした、多くの人目も羞じないで。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
水源みなもとを、岩井いはゐ大沼おほぬまおこすとふ、浦川うらかはけたはしわたつたころである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一 嫉妬の心努〻ゆめゆめおこすべからず。男婬乱なればいさむべし。いかりうらむべからず。ねたみ甚しければ其気色言葉も恐敷すさまじくして、却て夫にうとまれ見限らるゝ物なり。若し夫不義あやまちあらば我色をやわらげ声をやわらかにして諫べし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
父藤原豊成朝臣、亡父贈太政大臣七年の忌みに当る日に志をおこして、書き綴った「仏本伝来記」を、其後二年立って、元興寺へ納めた。飛鳥以来、藤原氏とも関係の深かった寺なり、本尊なのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ハテ恵比寿麦酒ゑびすびーる会社長くわいしやちやうで、日本にほん御用達ごようたしおこりは、蛭子ひるこかみが始めて神武天皇じんむてんのうへ戦争の時弓矢ゆみやさけ兵糧ひやうろう差上さしあげたのが、御用ごようつとめたのが恵比須えびすかみであるからさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火鉢のそばへすぐまたもどってたちまち鉄瓶に松虫のおこさせ、むずと大胡坐おおあぐらかき込み居る男の顔をちょっと見しなに、日は暖かでも風が冷たく途中は随分ひえましたろ、一瓶ひとつ煖酒つけましょか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
このうちとどまりて憂目うきめを見るは、三人みたり婦女おんな厄介やっかい盲人めしいとのみ。婦女等おんなたちは船の動くととも船暈せんうんおこして、かつき、かつうめき、正体無く領伏ひれふしたる髪のみだれ汚穢けがれものまみらして、半死半生の間に苦悶せり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜になればお賤の処へしけ込んでおり、お前が塩梅が悪くっても、子供が虫がおこっても薬一服呑ませる了簡りょうけんもない不人情な新吉、金をれば手が切れるから手を切ってしまえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
弱きには怨恨うらみを抱かしめ強きにはいかりをおこさしめ、やがて東に西に黒雲狂ひ立つ世とならしめて、北に南に真鉄まがねの光のきらめきちがふ時を来し、憎しとおもふ人〻に朕が辛かりしほどを見するまで
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)