あたゝ)” の例文
かうしてはやしなか空氣くうきは、つねはやしそとくらべて、晝間ちゆうかんすゞしく、夜間やかんあたゝかで、したがつてひるよるとで氣温きおんきゆうかはることをやはらげます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
多分、もしか私があたゝかい家庭と、やさしい兩親の側を離れたばかりだつたら、これこそ何よりも強く別離を悲しむ時間なのだらう。
葉末はずゑにおくつゆほどもらずわらふてらすはるもまだかぜさむき二月なかうめんと夕暮ゆふぐれ摩利支天まりしてん縁日ゑんにちつらぬるそであたゝかげに。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それだのにおなゆきいたゞいたこゝのひさしは、彼女かのぢよにそのつたこゝろあたゝめられて、いましげもなくあいしづくしたゝらしてゐるのだ。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
香は天つ風の烈しく吹くにもされず、色は白璧を削りたればとてかくはあらじと思はるゝまで潔きが中に猶あたゝかげなるおもむきさへあり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ラヴェンナはいまも過ぬる幾年いくとせとかはらじ、ポレンタの鷲これをあたゝめ、その翼をもてさらにチェルヴィアを覆ふ 四〇—四二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
とりがとまりにくところはです。子供こどもつめたいからだをあたゝめにくところは、うちのものゝかほられる炬燵こたつです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それから二三分はまつたく静かになつた。部屋は煖炉だんろあたゝめてある。今日けふ外面そとでも、さう寒くはない。かぜは死に尽した。れたおとなく冬のつゝまれて立つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さんぬるとし中泉なかいづみから中尊寺ちうそんじまうでた六ぐわつのはじめには、細流さいりうかげ宿やどして、山吹やまぶきはなの、かたかひきざめるがごといたのをた。かれつめた黄金わうごんである。これあたゝかき瑠璃るりである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子あるまゝを塩引にしたるを子籠ここもりといふ、古へのすはよりといひしも是ならんか。本草にさけあぢはひうま微温やはらかどくなし、主治きゝみちうちあたゝさかんにす、多くくらへばたんおこすといへり。
心臓肺臓などがあたゝまるので、こんな嬉しいことはありません、時にお茶代の礼に来ましたか
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乳母うばめに、じゃうえてゐたら、わかあたゝかいがあったら、テニスのたまのやうに、わし吩咐いひつくるやいな戀人こひゞととこんでき、また戀人こひゞと返辭へんじともわし手元てもと飛返とびかへってつらうもの。
必然ひつぜんあく」を解釋かいしやくして遊歩塲いうほぢやう一少女いつせうぢよ點出てんしゆつしかの癖漢へきかん正義せいぎ狂欲きやうよくするじやうえがき、あるひ故郷こきやうにありしときのあたゝかきゆめせしめ、生活せいくわつ苦戰塲くせんぢやうりて朋友はうゆう一身いつしんだんずるところあり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
われは日頃ひごろ約翰様ヨハネさま帰依信仰きえしんかうしてゐる。此御方このおかたもやはり浮浪ふらうにあらせられて、接続つゞきいお言葉ことばまをされたではいか。さぞかしあたゝかいお言葉ことばであつたらう。さうへば、今年ことしはるじつ温和をんわだ。
「早くブチまけなよ、あたゝめておくほどの話ぢやあるまい」
主個の老人らうじん押禁おしとゞめ彌生と言ど未だ寒きに冷酒れいしゆ身體からだどくなればツイあたゝめて差上んと娘に吩咐いひつけ温めさせ料理は御持參ごぢさんなされたれば此方で馳走ちそう爲樣しやうもなし責て新漬しんづけ香物かうのものなりともと言へば娘は心得こゝろえて出して與ふる饗應振もてなしぶり此方は主個に酒盞さかづき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これを終へてから、私はまだ暫くぐづ/\してゐた。露がりたので花の群はとりわけ甘い香を放つて、非常にあたゝかくなごやかな、こゝろよい夕暮であつた。
らないおばあさんはかけによらないやさしい人でして、學校通がくかうかよひをする生徒せいとがかじかんだをしてましたら、それをおばあさんは自分じぶんあたゝめてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
森林しんりんでおほはれてゐる土地とちは、日光につこう枝葉えだはさへぎられて、地面じめんあたゝめることがすくないのと、もうひとつは、日光につこう直射ちよくしやによつてめん水分すいぶん蒸發じようはつするときに、多量たりよう潜熱せんねつ必要ひつようとします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
人肌ひとはだにてあたゝむはもつともよし)手足てあしこゞえたるもつよ湯火たうくわにてあたゝむれば、陽気やうきいたれば灼傷やけどのごとくはれ、つひにくさりゆびをおとす、百やくこうなし。これが見たる所をしるして人にしめす。
醫者いしや芥子からし局部きよくぶことと、あし濕布しつぷあたゝめることと、それからあたまこほりひやこととを、應急おうきふ手段しゆだんとして宗助そうすけ注意ちゆういした。さうして自分じぶん芥子からしいて、御米およねかたからくびけてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
口移しに水をふくませ、お竹を□□めてわが肌のあたゝかみで暖めて居ります内に、雪はぱったり止み、雲が切れて十四の月が段々と差昇ってまいる内に、雪明りと月光つきあかりとで熟々つく/″\お竹の顔を見ますと
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
停車場ステーシヨンぜにつた饂飩うどんあたゝいだくのだとはおもはれない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つちは固く、空氣は靜かで、私の行く路には人一人ゐなかつた。私は、身體があたゝかになるまで、急ぎ足に歩いた。