まくら)” の例文
病人のもとで看病の手伝いなどをしているうちに、師走のみじかい日はいつしか暮れてしまって、大野屋の店の煤掃きも片付いた。
影を踏まれた女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
好い塩梅に眠ったらしい悦子の寝息をうかがいながら起きて、もとの電灯のスタンドの横に置いてあるさっきの帳面を開けて見た。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
同伴の日本人の誰彼れは驚いて介抱して直ぐ下宿に連れて戻ったが、これが病みつきとなって終に再びが上らなくなってしまった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「考えることもなんにもない。殿様と家来がをならべて討ち死にしたんじゃざまはないぜ。それこそ花岡伯爵家の名誉にかかわる」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
女郎屋ふわけにはかず、まゝよとこんなはさてれたもので、根笹けて、にころりとたが、如何にも
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれど、ついに文雄はなおりませんでした。もとにすわって、心配そうに自分つめている、だちの良吉をじっと
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
クリストフは、寝台の上につみ重なってるや、オリヴィエの疲れた顔をながめた。暗闇の中でもがいてるその姿が眼の前に浮かんだ。
主君である人の、にしてをながめたつき、髪のこぼれかかった額つきが貴女らしくで、西の対の夫人によく似ていた。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
章一は羽織と袴をとって単衣を脱ぐと女はを持って来た。しかし、章一は女の眼の下のの深い肉の落ちた顔が気になっていた。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
家の内には左衛門、お兼、松若三人を並べて寝ている。戸の外には親鸞石を枕にして寝ている。良寛、慈円雪の上にて語りいる。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
嬋娟たる花のばせ、耳の穴をくじりて一笑すれば天井から鼠が落ち、のほつれを掻き立ててのとがをめば二階から人が落ちる。
かもはなにも知らずに熟睡していたが、揺り起こされてみると、夜が明けてい、自分が座蒲団にごろ寝をしていることに気づいた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
を並べて寝た人たちの中で葉子は床の間に近いいちばんに寝かされたが、どうしたかげんでか気味が悪くてたまらなくなり出した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
のうちゃん。たとえ一さずとも、あたしゃおまえの女房だぞえ。これ、もうしちゃん。返事のないのは、不承知かえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
に押しつけた耳に響く律動的なザックザックと物をきざむような脈管の血液の音が、注意すればするほど異常に大きく強く響いてくる。
病院の夜明けの物音 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
爺はゆうべ消し忘れたもとの置ランプを見ますと、いつの間にかは消えてゐました。爺は手をのばして、ランプを揺つて見ました。
天童 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
もとには見舞いの電報や、たくさんの手紙がありました。ブドリのからだじゅうは痛くて熱く、動くことができませんでした。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この最後の一首は、磯辺病院でせられたもとの、手帳に書きのこされてあったというが、末の句をなさずかれたのだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
土地によっては千度参りの人たちは、の前に立って大きなの声をあげる。それが病人のもとまでこえてくることもしばしばある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
のつよきなればぐるしさえがたうて、小抱卷仮初にふしひしを、小間づかひのよりほか、えてあらざりき。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
階下でも多吉夫婦がおそくまで起きていると見えて、二人の話し声がぼそぼそ聞こえる。彼はの上で、郷里の方の街道を胸に浮かべた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それと共に、わずか十日とはたたぬ先夜の事がもう一月も二月も前のような気がして、それ以来長らくについていたような心持もした。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昨夜の収めざるの内に貫一は着のまま打仆れて、夜着掻巻蹴放し、うじてその幾度置易られしせたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
目がさめたとき、もとの時計は十一時をまわっていた。——腹のあたりが空虚すぎて、もう、どうにもることができない。
待っている女 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
それが毎朝、カフェーとパンを私のもとへ運んだり部屋の掃除に来たりした、随分よく働く女でかなり親切にもしてくれた。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
門の外までお見送りして、それから、夢中で引返してお座敷のお母さまのもとにり、何事も無かったように笑いかけると、お母さまは
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
動物園のを抜け出した野獣みたいなやつが、ノソノソ町を歩いていたのでは、東京じゅうの人がを高くして寝ることができないわけだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
からしてへると、それはあるきないものがから自分達てゐる座敷がりちたとしかはれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女兒しき介抱にみし武左衞門てすや/\と眠りし容子にお光は長息夜具打掛て退に在し硯箱を出して墨を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自然と人事との交錯する光景の描写の不思議にうまいのは、「源氏」「」「大鏡」などの、平安朝ものに見られるのだ。
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
の空気を引き寄せて、善平は身を横にしながら、そうしたところを綱雄に見せてやりたいものだ。となおも冷かし顔。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
浴衣のつぎはぎで出来た蒲団ではあったが、——母はこの蒲団を送ってくれるについては一ツでよいかと聞いてよこした。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
はまだ隙間からりのしたばかりにめた。げてたががしく/\とむやうでいつになくかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
 砂川に出で涼みてをれば涼しくもあり、かつは余り砂川の清らさにをかりてこの河原表の砂の上に寐転びたしとの意にて軽妙なる句なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
落ちるといってもけっして卑怯でも不義でもない。かえって、砦をにして斬り死するより、立派なつとめをはたすんです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして自分のもとの懐中時計を取ろうとして、しきりにその手を動かしている。しかしその手は鉄のように重いのだ。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
血溜りの中にあふむいて、踏みはだけたやうな姿、に乘せたの不行儀さなど、平次は細かに見てをりましたがやがて
の一方かれら一人一人の眼の前では、労働者たちがひどい物を食い、一部屋に三十人四十人と、もしないで寝ている。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
時に切れなどを汚すことがあるとそれも注意して取りかえたが、それでも例の血なま臭い匂いは常に室内に充ちていた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ても角ても叶はぬ命ならば、御所のにして、魚山夜嵐を吹かせてこそ、りてもしき天晴名門末路なれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
笑いながらべにすわるは、父の山木と母なり。娘はさすがにあわてて写真を押し隠し、起きもされず寝もされずといわんがごとく横になりおる。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
いったいあの人のどこがそんなに女をきつけるのであろう。お高は、磯五の顔を思い出そうとして、の上で、眼をつぶった。そして、いった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また、鼻歌の声が、油しめの音のような呻吟の声と一つになった。とたれか、猪熊もとで、つばをはきながら、こう言ったものがある。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
花を奪われた世界を考えてみても恐ろしい。病める人のべに非常な慰安をもたらし、疲れた人々のの世界に喜悦の光をもたらすものではないか。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
背後を青森行の汽車が通る。の下で、陸奥湾緑玉潮がぴた/\う。西には青森の人煙す可く、其津軽富士の岩木山が小さく見えて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたしはいくらか裏切られたようないやな気持ちでもとの電灯を消して床に就いた。身体が休まるにつれて、わたしの気持ちは穏やかになってきた。
謎の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「ああ。がしいらであったぞ。月のおもしろさはこれからじゃ。またでもいて聞かせい」こう言って、甘利は若衆のにして横になった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蚊帳の外のランプに照らされた清三の顔は蒼白かった。がたえず出た。熱が少し出てきたと言って、もとに持って来ておいた水で頓服剤を飲んだ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
庸三は床の黒柿にしてしばらく頭を休めていたが、するうち葉子と瑠美子との次ぎの間の話し声を夢幻に聞きながらうとうと眠ってしまった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
やがてとうとうわたしは立ち上がって、爪先だちでベッドに歩み寄り、着替えもせずに、そっと頭をにのせた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)