)” の例文
ときかね校庭かうていやしなはれて、嚮導きやうだうつたいぬの、ぢてみづかころしたともひ、しからずとふのが——こゝにあらはれたのでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おそらく、二人ふたり若者わかものは、そのこえいたであろうけれど、自分じぶん意地悪いじわるさをこころじたのか、こちらをずにいってしまいました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
恐ろしさのあまり、わたしはナイフを草むらに落してしまったが、それをさがすどころではなかった。ずかしくてならなかったのだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「まあ、お嫁合よめあわせをするといったら、さすがにずかしがって、ていくだろうとおもったら、どこまでずうずうしい女なのだろう。」
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「まあ、いずれにしても、たしかにわしらは、この家で、ケモノにきかれても、人にきかれてもずかしいことをしていたんだ。」
うはさがきか、あるひ事實じじつきか——それはとにかくがさしたのだと彼女かのぢよはあとでぢつゝかたつた——もなく彼女かのぢよ二人ふたり子供こどもとも
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
うれしいような、ずかしいような、それでいて憤慨ふんがいしたいような、変にこんがらかった感情が、かれの胸の中に渦を巻いていたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
仲違なかたがいをしている人たちが前に歩みでて、まずずかしめを受けた者が相手の悪いことを即興そっきょうの歌にして、大胆だいたんにあざけって言いたてました。
たれおも怪我人けがにんはこばれたのだと勘次かんじぐにさとつてさうしてなんだか悚然ぞつとした。かれ業々げふ/\しい自分じぶん扮裝いでたちぢて躊躇ちうちよしつゝ案内あんないうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
また鈍根どんこんの子弟をじしめて、小禽しょうきんといえども芸道の秘事を解するにあらずや汝人間に生れながら鳥類にもおとれりと叱咜しったすることしばしばなりき
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここで繰り返していうのもおずかしい訳ですが、私はその時、君などの講義をありがたがって聴く生徒がどこの国にいるものかと申したのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし新らしい観念イデエや人に色目も使はぬと云ふことは退屈そのものの証拠である。同時に又僕のづるところである。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然れども、余が議員たるの位置よりしてこれを言えば、暗々裏に学生諸君を誘導してこれを我党に入るるが如き、卑怯の挙動あるをず(大喝采)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
その後当分の間、邯鄲の都では、画家は絵筆をかくし、楽人はしつげんを断ち、工匠こうしょう規矩きくを手にするのをじたということである。(昭和十七年十二月)
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「やい蛾次公がじこう! よくもおのれは、この竹童を、さんざんにずかしめたな。うぬッ、どうするかおぼえていろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに伯夷はくい叔齊しゆくせいこれぢ、しう(三四)ぞくくらはず、首陽山しゆやうざんかくれ、つてこれくらふ。ゑてまさせんとするにおよんでうたつくる。いは
「それはそうですよ。お前はもう立派りっぱな人になったんだから、りすなんかずかしいのです。ですからよく気をつけてあとでわらわれないようにするんですよ」
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ところが、さきにもいつたとほり、古今集こきんしゆうのよみびとらずのうたのうち、すぐれたものがおほいので、これなどはどこへしてもづかしくない立派りつぱうたであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あなたは、先頃の明るさにひきかえ、一夜の中に、みにくく、年老としとって、なにか人目をじ、泣いたあとのような赤い眼と手にしわくちゃの手巾ハンカチを持っていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
れははづかしさにおもてあかみて此膝これなるふみとりかくすべきか、づるはこゝろやましければなり、なにかはかくさん。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だもんで、やつはずかしがって、あんなにえりまきやオーバーをしっかり身につけて、かくしてるんだよ
わたしがふりかえるたびに、うなずいてみせるのでした。じつは、わたしは、あんなにふるえあがったのが、今ではなんだかマレイにすこしずかしくなりました。
この冒頭ぼうとうに話した米人のおのれの一家のよろしきをはかるごときは、人に対して何のずるところもない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は、急にずかしさがこみあげて来た。そこで、彼は下に落ちていた中国服をとりあげると、ほこりをはらって、タキシードの上から着た。そして、あわててえりを合わせた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
〔譯〕賢者はぼつするにのぞみ、まさに然るべきを見て、以てぶんと爲し、死をおそるゝをぢて、死をやすんずるをこひねがふ、故に神氣しんきみだれず。又遺訓いくんあり、以てちやうそびやかすに足る。
このなつかしさに対しては、去年の夏からたがいに許し合っている水泳場近くの薄給はっきゅう会社員の息子むすこかおる少年との小鳥のような肉体のたわむれはおかしくて、おもい出すさえじを感ずる。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
働くことしか目的もくてきがないようなこの寒村の子どもたちと、どのようにしてつながってゆくかを思うとき、一本松をながめてなみだぐんだ感傷かんしょうは、ずかしさでしか考えられない。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
山へ登って、はぎの株のかげへ寝ころんでいたら、体操の先生のように髪を長くした男が、おうめさんと云う米屋の娘と遊んでいた。ずかしい事だと思ったのか私は山を降りた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あなたの抱いてゐる同情は、法に合つてもゐないし、きよらかでもない。そんなものは、もうとつくに潰してしまつてゐるべきだつたのです。今そのことを引き出すのをづべきですよ。
致してりし所ろマア/\此所へコレ娘何を迂濶うつかり致してをるお茶を上ぬか如何ぞやと待遇振もてなしぶりあつき程此方こなたはいよ/\こゝろ言出惡いひいでにく背後そびらにはあせするばかりに在りたるが斯てははてじと口を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
………口にするもづるやうなそんな噂を立てられるところを見ると、つまり私の教育家としての信任の無いのでせう。さう諦めるより外仕方がありません。然し何うも諦められません。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
混用こんようしている、たとえかれらがぼくを侮辱したところが、それは小さな私事なのだ。私事のためにかれらに難儀なんぎをかけることはずべきことだ、ぼくは連盟の大統領の職責から命じるのだ
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
伯父の血をひいた余とても御多分にれぬ。八年前の秋、此万碧楼に泊った余は、霜枯時しもがれどきの客で過分の扱いを受け、紫縮緬むらさきちりめんの夜具など出された。御馳走ごちそうも伯父の甥たるにじざる程食うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
花前は一めんあわれむべき人間には相違そういないが、主人も花前を見るにつけ、みずからかえりみると、確信かくしんなきわが生活の、精神上せいしんじょうにその日暮ひぐらしであるずかしさをうち消すことができなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ずかしいので、彼は、手品師の芸当よろしく、足を水の中へ突っ込む。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
その本国のわがくにでは、たいした会もないのはまことにずかしい次第しだいであるから、大いに奮起ふんきして、世界に負けないようなハナショウブ学会を設立すべきである、と私は提唱ていしょうするに躊躇ちゅうちょしない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ずかしいことはありません。昔なら君公御馬前の功名です」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大山津見おおやまつみじ入って、使いをもってこう申しあげました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
人にぢ神には恥ぢず初詣はつもうで
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
かざとぼしぢて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「へい、へい、おめずらしいということにかけては、どこへしたってずかしいことはありません。」と、鳥屋とりや主人しゅじんこたえました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
心臓は今にも割れそうにおどっていた。わたしはひどくずかしく、またひどく愉快ゆかいだった。わたしはまだ身に覚えのないほどの興奮を感じた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ニールスはおなかがいっぱいになりますと、ちょっとずかしくなりました。とうとう、なまの魚をたべてしまったのです。
そうしたらいくらずうずうしいはちかつぎでも、みっともない姿すがたじて、お嫁合よめあわせのせきに出るまでもなく、自分じぶんからして行くでしょう。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「へえ」勘次かんじ佛曉あけがたのことをどうしてか内儀かみさんがまだらぬらしいのでほつといきをついたがまた自分じぶんからぢて、簡單かんたん瞹昧あいまいういつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれはいくぶんじらいながら、同時にいくぶんの自負心をもって、道江の問題に対して自分のとった態度を説明しながら、いっさいを告白した。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
お秀は兄の弱点が自分のために一皮ずつ赤裸あかはだかにされて行くので、しまいに彼はじ入って、黙り込むのだとばかり考えたらしく、なお猛烈に進んだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは、好意かうい感謝かんしやしながら、ちおもりのしたよくぢて、やせたつゑをついて、うつむいて歩行あるした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
拙者せっしゃの考えでは、小太郎山こたろうざんかたきにうばわれたことを、じぶんひとりの責任せきにんのように感じて、それを深くじ、どこぞへ姿すがたをかくしたのであろうと思う」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この話は我国に多かった奉教人ほうきょうにんの受難のうちでも、最もずべきつまずきとして、後代に伝えられた物語である。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)