“御免(ごめん)” の例文
御免(ごめん)を蒙(こうむ)ってまた床に潜り込んでいたら、一時間ばかりしてまた電話が来て「今のはデマだったそうだから」という話で鳧(けり)がついた。
流言蜚語 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
で、「眞平(まつぴら)御免(ごめん)なさい。」と言(い)ふと、又(また)ひよろ/\とそれを背負(しよ)つて歩(ある)く。然(さ)うすると、その背後(うしろ)で、娘(むすめ)は、クツクツクツクツ笑(わら)ふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
万一この脚の見つかった日には会社も必ず半三郎を馘首(かくしゅ)してしまうのに違いない。同僚(どうりょう)も今後の交際は御免(ごめん)を蒙(こうむ)るのにきまっている。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おまけに午後八時頃からいよ/\雨になつたので、わたしは諸君よりも一足先へ御免(ごめん)を蒙(こうむ)ることにして、十時近い頃にそこを出た。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「僕は宇宙の墓地に行きつく前に、本艇から下ろしてもらいます。これ以上、不信きわまる艇長と運命を共にすることは御免(ごめん)蒙(こうむ)りたい」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まるでもう馬車馬だ! あいつは完全に気が触れてるんだ! 僕は気違いと一緒にこんなことをするのはまっぴら御免(ごめん)だ! お断りだ!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「御給仕(おきゅうじ)をしてもらおうかね。」と言って茶碗(ちゃわん)を出すと、派出婦は別に気まりのわるい様子もせず、「お盆を忘れましたから御免(ごめん)下さい。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この二つの文学を詳(くわ)しく説明すればそれだけで大分時間が経ちますから、まあ誰も知っているぐらいの説明で御免(ごめん)を蒙(こうむ)って
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
か憂(うれ)へん又(また)誰(たれ)をか恨(うら)むる所もなし拙者(せつしや)は少々認(したゝ)め物あれば御免(ごめん)あれ貴殿は緩々(ゆる/\)御咄(おはな)し成るべしと云ひつゝ其身は机(つくゑ)に懸(かゝ)りけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御免(ごめん)なさい。「ハイ。「扨(さて)誠にどうもモウ此度(このたび)は御苦労様(ごくらうさま)のことでございます、実(じつ)に何(ど)うも云(い)ひやうのない貴方(あなた)は冥加至極(みやうがしごく)のお身(み)の上(うへ)でげすな。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さア、何卒(どうぞ)是れへ」とお加女が座をいざりて上座を譲らんとするを「ヤ、床の置物は御免(ごめん)蒙(かう)むらう」と、客は却(かへつ)て梅子の座側に近づかんとす
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
前足(まへあし)を舐(な)めたり、顏(かほ)を洗(あら)つたりしてゐるの——飼(か)つて見(み)れば可愛(かあい)いものよ——鼠捕(ねずみと)りの名人(めいじん)だわ——オヤ、御免(ごめん)よ!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
『モー結構(けっこう)でございます。』覚(おぼ)えずそう言(い)って御免(ごめん)を蒙(こうむ)って了(しま)いましたが、この事(こと)は大(たい)へん私(わたくし)の心(こころ)を落(おち)つかせるのに効能(ききめ)があったようでございました。
轎夫(きょうふ)が分からぬことをいって賃銭(ちんせん)を強請(ねだ)ったり、この旦那(だんな)は重いとか、荷(に)が多いとか、轎(かご)の中で動いて困るとか、雨が降るとか、橋がないから御免(ごめん)とか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
太郎樣(たらうさま)への朝參(あさまゐ)りは母(かゝ)さんが代理(だいり)してやれば御免(ごめん)こふむれとありしに、いゑ/\姉(ねえ)さんの繁昌(はんじよう)するやうにと私(わたし)が願(ぐわん)をかけたのなれば、參(まゐ)らねば氣(き)が濟(す)まぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいも変わらぬ天下御免(ごめん)の乞食姿、六尺近い体躯に貧乏徳利(びんぼうどくり)をぶらさげて、大髻(おおたぶさ)を藁(わら)で束ねたいでたちのまま。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けい 御免(ごめん)なさい。御免なさい。私、私、持ってくつもりなんかなかったのよ。ただ、こんな綺れいな櫛自分でさしてみたらどんなにいいだろうと思って……。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
女はサイダーの瓶を取り上げて、『御免(ごめん)やす』と、お光に注(つ)いだが、鍋のグツ/\と煑上つたのを見ると
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
小僧(こぞう)の粗相(そそう)は番頭(ばんとう)の粗相(そそう)、手前(てまえ)から、どのようにもおわびはいたしましょうから、御勘弁(ごかんべん)願(ねが)えるものでございましたら、この幸兵衛(こうべえ)に御免(ごめん)じ下(くだ)さいまして。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「はい、かしこまりました。お預けいたすでござりましょう。では、御免(ごめん)こうむって、支度を——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
四天王寺の日除地(ひよけち)、この間までの桃畑が、掛け小屋(ごや)御免(ごめん)で、道頓堀(どうとんぼり)を掬(すく)ってきたような雑閙(ざっとう)だ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしながら私は今日これで御免(ごめん)をこうむって山を降(くだ)ろうと思います。それで来年またふたたびどこかでお目にかかるときまでには少くとも幾何(いくばく)の遺物を貯えておきたい。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
この方法によりさえすれば、大正の聖代(せいだい)にこの私丈けは、謂わば斬捨て御免(ごめん)も同様なのです。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
耕地も少なく、農業も難渋で、そうかと言って塗り物渡世の材料も手に入れがたいところでは、「御免(ごめん)の檜物(ひもの)」と称(とな)えて、毎年千数百駄(だ)ずつの檜木を申し受けている村もある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おおおお可哀(かあい)そうに何処(どこ)を。本当に悪い兄さんですね。あらこんなに眼の下を蚯蚓(みみず)ばれにして兄さん、御免(ごめん)なさいと仰有(おっしゃ)いまし。仰有らないとお母さんにいいつけますよ。さ」
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あら、御免(ごめん)よ。じゃ、もう星の事なんか言いませんよ。ねえ、御免よ。御免よってば。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この県にある色々の産物の中で主なるものを三つ四つ挙げることに致しましょう。一つは高知や御免(ごめん)のような町々で出来る金物であります。一つは世に聞えている土佐紙であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
手前(てまへ)は姫(ひい)さまが御親類(ごしんるゐ)がたのお廟所(たまや)へ入(い)らせらるゝを見(み)るや否(いな)や、驛馬(はやうま)に飛乘(とびの)ってお知(し)らせに參(まゐ)りました。此樣(このやう)な惡(あ)しいお使(つかひ)も命置(おほせお)かせられた役目(やくめ)ゆゑでござります、御免(ごめん)なされませい。
「別(べつ)によい器量(きりよう)でもありませぬから、お使(つか)ひに逢(あ)ふことは御免(ごめん)を蒙(かうむ)ります」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
「それはそれは、遅くなって御免(ごめん)なさい、何しろこんな所へ居なすっちゃ、身体(からだ)に悪(わ)るいから私が背負(しょ)って行って家(うち)へ帰りましょう」と云(いい)ながら、手に持っていた、薬瓶(くすりびん)をその岩の上に置いて
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
バターを美味(おいし)いという人でもチースは御免(ごめん)だという方が多うございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
硯友社(けんいうしや)の沿革(えんかく)に就(つ)いては、他日(たじつ)頗(すこぶ)る詳(くは)しく説(と)く心得(こゝろえ)で茲(こゝ)には纔(わづか)に機関雑誌(きくわんざつし)の変遷(へんせん)を略叙(りやくじよ)したので、それも一向(いつかう)要領(えうりやう)を得(え)ませんが、お話を為(す)る用意が無かつたのですから、這麼(こんな)事(こと)で御免(ごめん)を蒙(かふむ)ります
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分(じぶん)は先(ま)づ押(おし)ずしなるものを一つ摘(つま)んで見(み)たが酢(す)が利(き)き過(す)ぎてとても喰(く)へぬのでお止(や)めにして更(さら)に辨當(べんたう)の一隅(ぐう)に箸(はし)を着(つ)けて見(み)たがポロ/\飯(めし)で病人(びやうにん)に大毒(だいどく)と悟(さと)り、これも御免(ごめん)を被(かうむ)り、元來(ぐわんらい)小食(せうしよく)の自分(じぶん)
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「あなた、長い間、ほんとに済まなかったわ。御免(ごめん)してね。」
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
いや御免(ごめん)ください、わたくしは
鸚鵡:(フランス) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「もう御免(ごめん)です」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「御免(ごめん)。御免」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「御免(ごめん)よ」
朝八時に稚内(わっかない)を立って、夕方の四時に大泊(おおどまり)〔コルサコフ〕に着くまでの間、私は御免(ごめん)を蒙(こうむ)って、ベッドの中にもぐり込んでいた。
ツンドラへの旅 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
箱根を出る時兄さんは「二度とこんな所は御免(ごめん)だ」と云いました。今まで通って来たうちで、兄さんの気に入った所はまだ一カ所もありません。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もつと書きたい事もないではないが、何しろ原稿を受け取りに来た人が、玄関に待つてゐる始末(しまつ)だから、今度はまづこの辺(へん)で御免(ごめん)を蒙(かうむ)る事にする。
西洋画のやうな日本画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「度々(たび/\)で濟(す)みません。——御免(ごめん)なさいましよ。」と、やつと佛壇(ぶつだん)へ納(をさ)めたばかりの位牌(ゐはい)を、内中(うちぢう)で、此(これ)ばかりは金色(こんじき)に、キラリと風呂敷(ふろしき)に包(つゝ)む時(とき)
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
へい入(い)らつしやいまし、小僧(こぞう)やお茶(ちや)を、サ何卒(どうぞ)此方(こちら)へお掛(か)け遊ばして、今日(こんにち)は誠に好(よ)いお天気になりました、何卒(どうぞ)之(これ)へ。婦人「はい、御免(ごめん)なさいよ。 ...
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「わしは反対じゃ。わしは理科大学の地質学講座を持っている真鍋(まなべ)じゃ。探偵のお伴は御免(ごめん)じゃ。皆下りてくれんか。この車はわしが契約しとるのでな」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「じゃ御免(ごめん)なさいまし。」とかみさんの方へ何とつかず挨拶(あいさつ)をしてお照は兼太郎につづいて梯子段を上った。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
正太(しようた)はかけ寄(よ)りて袂(たもと)を押(おさ)へ、美登利(みどり)さん昨夕(ゆふべ)は御免(ごめん)よと突然(だしぬけ)にあやまれば、何(なに)もお前(まへ)に謝罪(わび)られる事(こと)は無(な)い。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この場合に臨みなお譲らせようとするものもあれば、断然御免(ごめん)を蒙(こうむ)って、あべこべに溝(みぞ)に叩き込むのが至当である。しかしてこの場合にいたり真の強(つよ)みが発揮される。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
前回(ぜんかい)の竜宮行(りゅうぐうゆき)のお話(はなし)は何(なん)となく自分(じぶん)にも気乗(きの)りがいたしましたが、今度(こんど)はドーも億劫(おっくう)で、気(き)おくれがして、成(な)ろうことなら御免(ごめん)を蒙(こうむ)りたいように感(かん)じられてなりませぬ。
賛五郎は、そう云い放つと、酔(よ)いに耐えないように、御免(ごめん)といいながら横になってしまった。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)