廊下ろうか)” の例文
かねると、生徒せいとらは、さきあらそって廊下ろうかからそとへとかけしました。そのとき、りょう一は、先生せんせい教員室きょういんしつへいかれるあとったのです。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
送って廊下ろうかへ出ると、妹は「ねえはんの苦労はお父さんもこの頃よう知ったはりまっせ。よう尽してくれとる、こない言うたはります」
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
二人は戸をして、なかへ入りました。そこはすぐ廊下ろうかになっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。
注文の多い料理店 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
るりをしきつめたみちをとおって、さんごでかざった玄関げんかんはいって、めのうでかためた廊下ろうかつたわって、おくおく大広間おおひろまへとおりました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかしぐっと胆力たんりょくをすえて、本堂の中へ入ってみた。そして中の様子をくまなく調しらべた。それから廊下ろうかつづきの庫裡くりの方へ入って行った。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ぼくは二階の廊下ろうかを歩き、屋上の露台ろだいのほうへ登って行きました。眼の下には、するどバウをした滑席艇スライデングシェルがぎっしり横木につまっています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そのまた円形は廊下ろうかほどの幅をぐるりと周囲へ余したまま、白い大理石の欄干越らんかんごしにずっと下の玄関をのぞかれるように出来上っていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だが、長い廊下ろうかのいちばんおくのへやだけは見せてやってはくれるな。あのなかには、きんのお城の王女おうじょの絵がしまってあるのだ。
あっと思うひまもなく、ホールは、なにものともしれぬつよい力に、どんとむねをつかれ、ひとおしに廊下ろうかにつきだされてしまった。
やがて中佐は、荒田老と鈴田のあとについて、ふきあげた板張りの廊下ろうかに長靴の拍車はくしゃの音をひびかせながら、塾長室のほうに歩きだした。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
佐助を呼んで下されと云うのを無理にさえぎ手水ちょうずならばわいが附いて行ったげると廊下ろうかへ連れて出て手をにぎったか何かであろう
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
気転きてんよくたった小姓こしょう藤巻石弥ふじまきいしや、ふと廊下ろうかへでるとこは何者? 評定ひょうじょう袖部屋そでべやへじッとしゃがみこんでいる黒衣こくいの人間。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
便所へゆくために暗い廊下ろうかを歩いてゆくと正面の帽子かけに、コール天の小さい俵的の帽子のかかっているのが眼についた。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
いいお天気で、からりと日が照っていたから、この間中あいだじゅう湿気払しっけばらいだと見えて、本堂も廊下ろうかも明っ放し……でだれも居ない。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余は廊下ろうかづたいに書院に往って、障子の外にたたずんだ。蓄音器が歌うのではない。田圃向たんぼむこうのお琴婆さんが歌うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はじめに、みんなは、床下の長い廊下ろうかにはいりました。そこは、指ぬきに乗って、やっと通れるくらいの高さでした。
「そんなことなら、ぞうさないじゃございませんか。」と、アラジンはこともなげに言ってランプをおろして、廊下ろうかへ出てあのおばけを呼びました。
女中が二人、書生が一人、老僕ろうぼくが一人、他に抱車夫かかえしゃふが一人という大家族であったので、家も相当に広く、間数がいくつもあって廊下ろうか続きになっていた。
この石室せきしつつくかた西洋せいようの『どるめん』あるひは『いし廊下ろうか』といふものに非常ひじようてゐますけれども、日本につぽんのは西洋せいようのものゝようにふるいものではなく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すぐ床から起きてそっとこの廊下ろうかの戸を開けると、その時あの大広間の境になっている戸がさっと開いて一人の男が現われ、そいつが私に飛びつくや否や
室内しつないにて前記ぜんきごと條件じようけん場所ばしよもなく、また廊下ろうか居合ゐあはせて、兩側りようがは張壁はりかべからの墜落物ついらくぶつはさちせられさうな場合ばあひおいては、しつ出入口でいりぐち枠構わくがまへが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
われるままにわたくし小娘こむすめみちびかれて、御殿ごてんながなが廊下ろうか幾曲いくまがり、ずっとおくまれる案内あんないされました。
玄関げんかんの出入口と書いてある硝子戸ガラスどを引くと寄宿舎のように長い廊下ろうかが一本横につらぬいていて、それに並行へいこうして、六じょうの部屋が三ツ、鳥の箱のように並んでいる。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
廊下ろうかまがかどのところで、正吉は大人の人に、はちあわせをした。誰かと思えば、それはあい色の仕事服を着て、青写真を小脇に抱えているカコ技師であった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不思議ふしぎ沈黙ちんもくつづいた。とうさんでさえそれをかすことが出来できなかった。ただただとうさんはだまって、袖子そでこている部屋へやそと廊下ろうかったりたりした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
室内しつないわず、廊下ろうかわず、にわわず、なんともわれぬ臭気しゅうきはないて、呼吸いきをするさえくるしいほど
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日露戦争の出征しゅっせい軍歌を、くりかえしくりかえし歌っては、庭を巡回じゅんかいしてました、その一回の起点が丁度ちょうど私達の立って見て居る廊下ろうか堅牢けんろう硝子ガラスとびらの前なのです。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
四邊あたり部室へやでは甲乙たれかれかたこゑかまびすしく、廊下ろうかはしひと足音あしおともたゞならずはやい、濱島はまじまむかしから沈着ちんちやくひとで、何事なにごとにも平然へいぜんかまへてるからそれとはわからぬが
と、ふと私は、廊下ろうかに荒々しいスリッパの足音をききつけた。そして何気なくその方に眼を向けると、瀬川が玄の部屋の入口にまで来て立ち止まって私に言った。
また、屋根裏部屋やねうらべやには二のフクロウが住んでいましたし、廊下ろうかにはコウモリがぶらさがっていました。台所のかまどには、年とったネコが一ぴき住んでいました。
そこにはきれいな箒目ほうきめを縦横にしるした白砂で埋まった四角な広い庭があり、それをとり囲んで二方にはすっきりとした廊下ろうかの半ば白い腰障子こししょうじが並んでいたのでした。
薄ボンヤリした常夜燈じょうやとうを便りに廊下ろうか一曲ひとまがりすると、そこに福田氏の寝室なり書斎なりのドアがある。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
背中せなかぱい汚泥はねわすれたように、廊下ろうか暖簾口のれんぐち地駄じだんで、おのが合羽かっぱをむしりっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、いうと、廊下ろうかの方へ、ノソリノソリと出ていった。どうしたのか、ぼくにくってかからない。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
ランプはすでに消してあるから、暗くてどこに何が居るか判然とわからないが、人気ひとけのあるとないとは様子でも知れる。長く東から西へつらぬいた廊下ろうかにはねずみぴきかくれていない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人の顔さえ見ればずこういうのが此頃このごろ挨拶あいさつになってしまった。廊下ろうかや風呂場で出逢う逗留の客も、三度の膳を運んで来る旅館の女中たちも、毎日この同じ挨拶を繰返している。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
土淵村大字飯豊いいで今淵いまぶち勘十郎という人の家にては、近きころ高等女学校にいる娘の休暇にて帰りてありしが、或る日廊下ろうかにてはたとザシキワラシに行きい大いに驚きしことあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
全然、だれにもまだことの真相は分かっていないらしく、火鉢ひばちによりあって、だまっていたが、始業のベルでようやく生きかえったように、廊下ろうかへ出た。田村先生とかたをならべると
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
貴老あなたのお家はお客座敷が南向きになって北の方は廊下ろうかへだてて中庭がありますね。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
僕が各教場を通って廊下ろうかに出て、玄関げんかんの側をあゆんで来ると、ちらりと眼にうつったものは、分館の玄関のわきに一台の人力車の傍に立っている車挽くるまひきと、これをへだつること一間ばかり傍に
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし私は最初のうちはその少女を、唯、そんな風に私の窓からだの、あるいは廊下ろうかなどでひょっくりれちがいざま、目と目とを合わせないようにして、そっとぬすみ見ていたきりであった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
と二人は利害が一致したので、先刻さっき廊下ろうかを仲よしになって通った。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
廊下ろうかのほうからこの部屋へ、ぽっと、一どうの明りがさしてきて
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そしてにんじんを廊下ろうかのとっぱなまで送って行く。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
きみたちのはべっとりと廊下ろうか
最後さいごったのはたしか四五月頃しごがつごろでしたか、新橋演舞場しんばしえんぶじょう廊下ろうかたれうしろからぼくぶのでふりかえっててもしばらたれだかわからなかった。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて乙姫おとひめさまについて、浦島はずんずんおくへとおって行きました。めのうの天井てんじょうにさんごの柱、廊下ろうかにはるりがしきつめてありました。
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あるのこと、おさくが、廊下ろうかのそうじをしていると、ぼっちゃんのほうのしつで、電球でんきゅう破裂はれつしたときのような、すさまじいおとがしました。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これは、いったい、どうしたってことなんだ。どこのどいつがおれのむねをついて、廊下ろうかにほうりだしやがったというのだ……」
書かれた学生は、いかにも気がかりらしく、そっと肩をすぼめて廊下ろうかまで出て、友達に読んでもらって、よろこんだり泣いたりするのでした。