辨當べんたう)” の例文
ざつみづけて、ぐいとしぼつて、醤油しやうゆ掻𢌞かきまはせばぐにべられる。……わたしたち小學校せうがくかうかよ時分じぶんに、辨當べんたうさいが、よくこれだつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つれて參りますと主個あるじに言てにはかの支度辨當べんたうつゝ吹筒すゐづつげ和吉を呼で今日は吾儕わしが花見に行なれば辨當を脊負しよひともをしてと言ば和吉はかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
頸筋くびすぢぶたこゑまでがそれらしい老人らうじん辨當べんたうをむしやつき、すこ上方辯かみがたべんぜた五十幾歳位いくさいぐらゐ老婦人らうふじんはすしを頬張ほゝばりはじめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
えらねえぞ仕事しごとりや毎日まえんちかうだ」勘次かんじ梅干うめぼしすこしづゝらした。辨當べんたうきてから勘次かんじいわしをおつぎへはさんでやつた。さうして自分じぶんでも一くちたべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とほむかしに、燒肉ビフステーキすこぎてるからと怒鳴どなつて、肉叉フオークもつけずにいぬはせてしまつた一件いつけんや、「サンドウイツチ」は職工しよくにん辨當べんたう御坐ござるなどゝ贅澤ぜいたくつて
七つのとしより實家じつかひんすくはれて、うまれしまゝなれば素跣足すはだししりきり半纒ばんてん田圃たんぼ辨當べんたうもちはこびなど、まつのひでを燈火ともしびにかへて草鞋わらんじうちながら馬士歌まごうたでもうたふべかりし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かつてボズさんと辨當べんたうべたことのある、ひらたいはまでると、流石さすがぼくつかれてしまつた。もとよりすこしもない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いや、そんなことより、力餅ちからもちさへはぬ二人ふたりが、辨當べんたうのうまさうなのに、ごくりと一所いつしよをのんでおなかいてたまらない。……船頭おやぢさい糠鰊こぬかにしんで。……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つれ王子へ花見にゆくつもりで辨當べんたうなぞも容易ようい致し參りましたれどはや草臥くたびれ殊にははらすきしより茲等こゝらで開いて一ぱいと思へど通に掛茶屋も有ねばじつこうじてをりしが只今たゞいま水をいたゞいたを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おれめしでもはうかえ」勘次かんじ風呂敷包ふろしきづゝみから辨當べんたうのこりしてつめたいまゝぷす/\とかぢつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
伯父おぢさまよろんでくだされ、つとめにくゝも御座ござんせぬ、此巾着このきんちやく半襟はんゑりもみないたゞものゑり質素じみなれば伯母おばさまけてくだされ、巾着きんちやくすこなりへて三すけがお辨當べんたうふくろ丁度てうどいやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大船おほふなくや老夫婦としよりふうふ逸早いちはやおしずしと辨當べんたうひこんだのを自分じぶんその眞似まねをしておなじものをもとめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
すし、お辨當べんたうたひめしの聲々こゑ/″\いさましく、名古屋なごやにてまつたけて、室内しつないいさゝくつろぎ、あたゝかにまどかゞやく。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
退しりぞおくへ至り偖斯々と夫婦にはなせば二人は息子せがれ孝心かうしんめ又忠兵衞をねぎらひて明日あすの支度にかくと心をらうすは世の中のすべての親のじやう成可し斯て其翌日に成しかばあさより辨當べんたうなど製造こしらへて之を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
工事こうじ箇所かしよへは廿もあつた。勘次かんじけばすぐぜにになるとおもつたのでやうやく一ゑんばかりの財布さいふふところにした。辨當べんたうをうんと背負しよつたので目的地もくてきちへつくまでは渡錢わたしせんほかには一せんらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すこしもはや此樣このやう古洋服ふるやうふくにお辨當べんたうさげることをやめて、みちくにひとふりかへるほど立派りつぱのおひとつてくだされ、わたしたけかはづゝみつてくださる眞實しんじつらば、お役處やくしよがへりに夜學やがくなりなんなりして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところ汽船きせんは——うそだの、裏切うらぎつたのと、生意氣なまいきことふな。直江津なほえつまで、一人前いちにんまへ九錢也きうせんなり。……明治二十六七年頃めいぢにじふろくしちねんごろこととこそいへ、それで、午餉ひる辨當べんたうをくれたのである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分じぶんおしずしなるものを一つつまんでたがぎてとてもへぬのでおめにしてさら辨當べんたうの一ぐうはしけてたがポロ/\めし病人びやうにん大毒だいどくさとり、これも御免ごめんかうむり、元來ぐわんらい小食せうしよく自分じぶん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
長野ながの辨當べんたうつたときなさけなかつた。はす人參にんじんくさ牛肉ぎうにくさかなふのが生燒なまやけ鹽引しほびきさけよわる。……稗澤山ひえだくさんもそ/\の、ぽんぽちめし、あゝ/\旅行りよかうはしなければかつたとおもつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船頭おやぢ辨當べんたう使つかあひだ、しばらくはふね漂蕩へうたうながるゝにまかせて、やがて、かれひまして、ざぶりとふなべりあらさまに、割籠わりごむとてみづが、船脚ふなあしよりはながいて、うごくもののないおも
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)