かゝ)” の例文
勘次かんじはおしな病氣びやうきかゝつたのだといふのをいて萬一もしかといふ懸念けねんがぎつくりむねにこたへた。さうして反覆くりかへしてどんな鹽梅あんばいだといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一度クロープ性肺炎にかゝり発熱して血痰けつたんが出たりした時、女が私に内証で国許くにもとに報じ、父が電報で上京の時間まで通知して来たが
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
飛行場は陸軍省に属して居ても、官営万能まんのう𤍠にかゝつて居る日本と違つて格納庫も其れに納めてある飛行機もすべて私人の所有である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
國「へえ、ところが今いう通り、越後で病気にかゝりやしたが、わっちア一文も銭がねえから可愛想だとは思ったが、お浪を稼ぎに……」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其年そのとし京都きやうとふゆは、おとてずにはだとほ陰忍いんにんたちのものであつた。安井やすゐこの惡性あくしやう寒氣かんきてられて、ひどいインフルエンザにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「江川のは狩猟かりが好きなのぢやない、あれは病気なのだ、病気にも色々あるが、態々わざ/\あんな殺生病にかゝるなざ気の毒なもんだ。」
今日こんにちこれ復興ふくこうするをべし、而してその復興ふくこうはうたるや、安楽椅子あんらくいすかゝり、或は柔軟じうなんなる膝褥しつぢよくうへひざまづ如何程いかほど祈祷きたう叫号きうごうするも無益むえきなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
その當時流行してゐたチブスにかゝつたこと、母は父から傳染して、二人とも一月のうちに相繼あひついで死んだことを知つた。
かしこにてかのけがれし民の手にかゝりて虚僞いつはりの世——多くの魂これを愛するがゆゑに穢る——より解かれ 一四五—一四七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこへ、うちの副社長がまた北京特有の書画熱病にかゝつてゐる最中で、この知らせを受けたのだ。夏の暑い日だつた。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
かくの如き戦慄の快感を追究するのはあへて自分ばかりではあるまい。小説的ロマンチツクと云ふ病気にかゝつたものは皆さうであらう。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「しめたと思つたから、飛んで行つて勘三郎を擧げるつもりだつたが、いけねえ、——肝腎の勘三郎は、三日前から霍亂くわくらんかゝつて、死ぬやうな騷ぎだ」
武家に育つて、こんな氣風に慣れぬことから起つた京子の惱みが、其の不治の病にかゝもとであるといふ噂もあつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
夏の詩の最後の一首は松平露姫つゆひめの事にかゝる。露姫は松平縫殿頭定常ぬひのかみさだつねむすめである。幼にして書画歌俳を善くした。二年前疱瘡にかゝり、六歳にして夭した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
人物の一枯一栄一窮一達はすべて其行為の結果なり。故に行為は結果に対する源因となるなり。禍にかゝるも福を招くもそのげんを尋ぬれば、行為は明然之がいんをなす。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
自分は感冒に対して、おびえ切ってしまったと云ってもよかった。自分は出来るだけ予防したいと思った。最善の努力を払って、かゝらないように、しようと思った。
マスク (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そこで僕は先生が何か病気にかゝられたのではないかとも思ったことがあるけれど、やはりそうではなく、俊才に生理的に起る憂鬱状態と見るのが至当だったのだ。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
周三は、此のモデルをて、製作熱を倍加ばいかした。屹度きつと藝術界を驚かすやうな一大傑作だいけつさくを描いて見せると謂ツて、まるで熱にでもかゝツたやうになツて製作に取懸とりかゝツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
左様だ、彼の先生も御説の通りに獣皮かはいぢりでもして、神妙にして引込んで居れば好いのだ。それさへして黙つて居れば、彼様な病気なぞにかゝりはしなかつたのだ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
サンタは色蒼く、ひとみ常ならず耀かゞやけるが、友の詞を聞きていふやう。われも熱にかゝれりと覺ゆ。されど日曜日には病をつとめて往くべし。友のためには命をさへ輕んずべし。
何時いつだがのきつねみだいに口発破くちはつぱなどさかゝつてあ、つまらないもな、たかとち団子だんごなどでよ。」
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ところが、長子ちやうしのセルゲイは丁度ちやうど大學だいがくの四年級ねんきふになつてから、急性きふせい肺病はいびやうかゝ死亡しばうしてしまふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれど——従来これまで愚父ちゝなどの話に依りますれば、貴所あなたのやうな方は、監獄内で不測の災禍におかゝりなさる恐があると申すでは御座いませんか、出過ぎたことでは御座いますが
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いき絶々たえ/″\と成て頼みなき世の有樣に熟々つく/″\思ひめぐらす樣如何なればかゝ無實むじつの罪にかゝりし事ぞ是も前世の業因ごふいんならんと斷念あきらめながらもあまりと云へばなさけなし是まつた伯父をぢ九郎兵衞が賄賂まいない
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは至極当り前なことで、不景気だから、成るべくなら医者に払ふ金を倹約しようといふことになる。ところで、それはいゝが、不景気でも、病気にかゝらないといふわけはない。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それは肝心のお雪伯母が、腸窒扶斯チフスかゝつて避病院に入院させられたからであつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
……本艦内で、近来、盗難にかゝつた者が、二三ある。殊に、昨日、町の時計屋が来た際にも、銀側の懐中時計が二個、紛失したと云ふ事であるから、今日はこれから、総員の身体検査を
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
また陸上りくじよういへんで、きたな塵埃じんあいをあたりにすてると不潔ふけつなばかりでなく、いろ/\の病氣びようきかゝることを實驗じつけんして、不潔物ふけつぶつみづにすて清潔せいけつ生活せいかつをするといふ意味いみもあつたかとおもはれます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
作者さくしやなんゆえにラスコーリニコフが氣鬱病きうつびやうかゝりたるやをかたらず開卷かいかん第一にその下宿住居げしゆくじゆうきよ點出てんしつせり、これらをも原因げんいんある病氣びやうきいひしりぞけたらんには、このしよ妙所みやうしよついにいづれにかそんせんや。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
二日程前から病にかゝつて、老人はその腰の曲つた姿を家の外にあらはさなかつたが、其三日目の晩に、あまり家の中がしんとして居ると言ふので、隣の者が行つて見ると、老人としより行火あんくわり懸つたまゝ
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
お父さまは一週間前から感冒にかゝられておつてゐられます。それに持病の喘息ぜんそくも加つて昨今の衰弱は眼に立つて見えます。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
光線の圧力を研究するために、女を轢死させる事はあるまい。主人の妹は病気である。けれどもあにつくつた病気ではない。みづからかゝつた病気である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この赤い部屋の出來事があつた後、私はひどい、永びく病氣にかゝらなかつた。たゞそれは、私の神經に衝動しようどうを與へた。その反響を今日まで私は感じてゐる。
愛知医専教授中村豊氏(耳鼻咽喉専門)の説によると、芸妓といふものは大抵慢性喉頭加答児かたるかゝつてゐる。
牛込さかな町に町道場を開いてゐる、中條流の使ひ手紫田彈右衞門、一年前から輕い中風にかゝつて、起居も不自由ですが、門弟達が感心に離散しなかつたので、この正月も
たった一人のおっかさんがありまして、幸三郎に嫁を貰った処が、三年目に肺病にかゝりまして、佐藤さとう先生と橋本はしもと先生にもて貰ったが、思うようでなく、到頭死去みまかりました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
チフスや流行性感冒にかゝって、四十度位の熱が三四日も続けばもう助かりっこはありませんね。
マスク (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人の噂には、四五年前に重き病にかゝりてより、聲はたとつぶれぬといふ。その人の爲めにはいと笑止なる事ながら、聽衆の過去の美音を喝采せざるをば、奈何いかんともすべからず。
壽阿彌の墓は香華かうげ未だ絶えざるに厄にかゝつて、後僅に不完全なる代償を得たのである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
実は父親も最早もう好い年でしたからね——左様さうですなあ貴方の父上おとつさんよりは少許すこし年長うへでしたらう——彼様あゝいふ風に平素ふだん壮健たつしやな人は、かへつて病気なぞにかゝると弱いのかも知れませんよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
大抵たいてい赤痢せきりかゝつてやうや身體からだちからがついたばかりの人々ひと/″\例年れいねんごと草刈鎌くさかりがまつて六夕刻ゆふこく墓薙はかなぎというてた。はかほとりはえるにまかせたくさ刈拂かりはらはれてるから清潔せいけつつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何だか僕も先生と同じく肺炎にかゝって死にそうな気がしてならぬ。かつて中学時代に父を失ったとき、その当座は自分も死にそうに思ったが、その同じ心持ちを今しみ/″\感ずるのだ。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
とられしと云もをはらぬに重四郎成程なるほど金兵衞親方が殺されたと云うはさは聞たれ共人の云事ゆゑ實正じつしやうとも思はざりしが夫なら彌々いよ/\人手ひとでかゝられしかしてかたきは知しかと聞に掃部されば其事に付貴殿へ助太刀すけだち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくし人並ひとなみ生活せいくわつこのみます、じつに、わたくし恁云かうい窘逐狂きんちくきやうかゝつてゐて、始終しゞゆうくるしい恐怖おそれおそはれてゐますが、或時あるとき生活せいくわつ渇望かつばうこゝろやされるです、非常ひじやう人並ひとなみ生活せいくわつのぞみます、非常ひじやう
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一、夫婦の一方が、疾病しつぺいかゝりたるときは、隣人として看護の労をとること、たゞし、体温三十八度以下の風邪、又は単に頭痛腰痛み等にありては、必要に応じ、薬を調達するのみをもつて足れりとす
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
医者は三千代の心臓を診察して眉をひそめた。卒倒は貧血のためだと云つた。随分強い神経衰弱にかゝつてゐると注意した。平岡はそれから社をやすんだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ヴアン・ダイク博士はそれを聞くと、僂麻質斯リウマチスかゝつたやうに痛さうに顔をしかめた。教壇の下では校長が火事に出会でくはしたやうに真つ赤になつてふるへてゐた。
失望させてお氣の毒だけどジエィン・エアはくなつた、ローウッドでチブスにかゝつてくなつたと云つたのだよ。さあ、どうとも好きなやうにしておくれ。
後、海軍の兵曹の妻になつてH県のK軍港の方に行き難儀してゐるらしかつたが、病気にかゝつて実家に帰りY町の赤十字病院に入院してゐるといふ噂であつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ひかえの前次様も矢張流行感冐にかゝられました処、段々重くなるので、お医者方が種々いろ/\心配して居りますが、勇気のお方ゆえ我慢をなすって押しておいでのでいけません
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)