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絡
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まと
ふりがな文庫
“
絡
(
まと
)” の例文
こうして、現実の敗北と架空な戦勝との不思議な
絡
(
まと
)
い合せのまま時が経つうちに、その矛盾の間から、深刻な社会問題が生れて来た。
私たちの建設
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
胡麻塩羅紗
(
ごましほらしや
)
の地厚なる
二重外套
(
にじゆうまわし
)
を
絡
(
まと
)
へる
魁肥
(
かいひ
)
の老紳士は
悠然
(
ゆうぜん
)
として
入来
(
いりきた
)
りしが、内の
光景
(
ありさま
)
を見ると
斉
(
ひとし
)
く胸悪き色はつとその
面
(
おもて
)
に
出
(
い
)
でぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
山の井の家には薬局、受附など
真白
(
まっしろ
)
な筒袖の上衣を
絡
(
まと
)
って、粛々と神の使であるがごとく立働くのが七人居て、車夫が一人、女中が三人。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
後から暗い影の附き
絡
(
まと
)
っているような東京を離れて、独りで遠くへ出るにしても、母親の体の落着きを見届けておかなければならぬとも思った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鰍の群れはこの冷たい水を喜んで、底石に
絡
(
まと
)
わりながら上流へ
遡
(
のぼ
)
ってゆく。そのころ瀬を
漁
(
あさ
)
る鰍押しの網に入ったものが、一番上等といえるのである。
姫柚子の讃
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
▼ もっと見る
娘は手に持っていた
団扇
(
うちわ
)
をさし上げた。蛍の光はそれにちょっと
絡
(
まと
)
わったが、低く外れて海の上を渡り、また高く上って、星影に紛れ込んで見えなくなった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その節子の初心なところが彼女の若いことを証拠立てていて、
反
(
かえ
)
っていじらしく岸本の心に
絡
(
まと
)
いついた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
たとえばその昔女郎の足に
絡
(
まと
)
わって居た下駄だとか、或いは高家の隠居が愛用して居た
莨入
(
たばこいれ
)
だとか、そういったトリヴィアルなものに、特殊な床しい美が発見されるのです。
幼き頃の想い出
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
谷間の岩を縫ひつ、
絡
(
まと
)
ひつ
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
脊の高い
瘠男
(
やせおとこ
)
の、おなじ毛糸の赤襯衣を着込んだのが、
緋
(
ひ
)
の
法衣
(
ころも
)
らしい、坊主袖の、ぶわぶわするのを上に
絡
(
まと
)
って、
脛
(
すね
)
を赤色の巻きゲエトル。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
四つも五つも年上のこの女に附き
絡
(
まと
)
われるのをうるさがって、二階にいた中江という書生も、そのころはどこへか引っ越して
行方
(
ゆくえ
)
が知れなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
此の御方を母とし、
御前様
(
おんまへさま
)
を夫と致候て暮し候事も相
叶
(
かな
)
ひ候はば、私は土間に
寐
(
い
)
ね、
蓆
(
むしろ
)
を
絡
(
まと
)
ひ
候
(
さふらふ
)
ても、
其楽
(
そのたのしみ
)
は
然
(
さ
)
ぞやと、常に及ばぬ事を
恋
(
こひし
)
く思居りまゐらせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
まだ丑松が師範校の窓の下で歴史や語学の研究に余念も無い頃に、もう彼の若い夫婦は幼いものに
絡
(
まと
)
ひ付かれ、朝に晩に『父さん、母さん』と呼ばれて居たのであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な
風采
(
ふうさい
)
は、あたかも古武士が
鎧
(
よろい
)
を取って投懸けたごとく、白拍子が
舞衣
(
まいぎぬ
)
を
絡
(
まと
)
うたごとく、自家の特色を発揮して
余
(
あまり
)
あるものであった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お今は荷物などを作る自分の傍に、始終着き
絡
(
まと
)
って離れなかった静子に声かけながら、
門
(
かど
)
を離れて行った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何か職業を尋ね顔に、
垢染
(
あかじ
)
みた着物を身に
絡
(
まと
)
ひ乍ら、素足の
儘
(
まゝ
)
で土を踏んで行くものもあつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
宮は
鳩羽鼠
(
はとばねずみ
)
の
頭巾
(
ずきん
)
を
被
(
かぶ
)
りて、
濃浅黄地
(
こいあさぎぢ
)
に白く
中形
(
ちゆうがた
)
模様ある毛織のシォールを
絡
(
まと
)
ひ、学生は焦茶の
外套
(
オバコオト
)
を着たるが、身を
窄
(
すぼ
)
めて吹来る
凩
(
こがらし
)
を
遣過
(
やりすご
)
しつつ、遅れし宮の
辿着
(
たどりつ
)
くを待ちて言出せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
霧
(
きり
)
が
掠
(
かす
)
れて、ひた/\と
絡
(
まと
)
ひつく、
霜
(
しも
)
かと
思
(
おも
)
ふ
冷
(
つめた
)
さに、
戸
(
と
)
を
引
(
ひ
)
いたが、
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
の
硝子
(
がらす
)
に
面
(
おもて
)
をひたと
着
(
つ
)
けたまゝ、
身動
(
みうご
)
きもしないで
尚
(
な
)
ほ
見惚
(
みと
)
れた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この三、四日、何だか
家中
(
うちじゅう
)
引っ掻き廻されているような、一種の不安が始終
頭脳
(
あたま
)
に附き
絡
(
まと
)
うていたが、今夜の女の酒の飲みッぷりなどを見ると、一層不快の念が
兆
(
きざ
)
して来た。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
恍惚
(
こうこつ
)
として
瞳
(
ひとみ
)
を凝らしたりしが、にわかにおのれが
絡
(
まと
)
いし
毛布
(
ケット
)
を脱ぎて
被
(
き
)
せ
懸
(
か
)
けたれども、馭者は夢にも知らで
熟睡
(
うまいね
)
せり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そっちこちで悪い
噂
(
うわさ
)
が耳に入り、そのうち放浪時代から付き
絡
(
まと
)
っていた、
茨城
(
いばらき
)
生まれの情婦が現われたりして、彼女が十年働いて
溜
(
た
)
めた貯金も、あらかたその手切れに引き
取
(
だ
)
されてしまった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
見ろ、あの竜宮に在る珠は、悪竜が
絡
(
まと
)
い
繞
(
めぐ
)
って、その器に非ずして
濫
(
みだ
)
りに近づく者があると、呪殺すと云うじゃないか。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手術台なる伯爵夫人は、純潔なる
白衣
(
びゃくえ
)
を
絡
(
まと
)
いて、
死骸
(
しがい
)
のごとく横たわれる、顔の色あくまで白く、鼻高く、
頤
(
おとがい
)
細りて手足は
綾羅
(
りょうら
)
にだも堪えざるべし。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
乞食僧はその
年紀
(
とし
)
三十四五なるべし。
寸々
(
ずたずた
)
に裂けたる鼠の
法衣
(
ころも
)
を結び合せ、
繋
(
つな
)
ぎ懸けて、辛うじてこれを
絡
(
まと
)
えり。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
扉
(
とびら
)
浅
(
あさ
)
うして、
然
(
しか
)
も
暗
(
くら
)
き
奥
(
おく
)
に、一
個
(
こ
)
人面蛇体
(
にんめんじやたい
)
の
神
(
かみ
)
の、
躯
(
からだ
)
を三
畝
(
うね
)
り、
尾
(
を
)
と
共
(
とも
)
に一
口
(
ふり
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
絡
(
まと
)
うたのが
陰影
(
いんえい
)
に
立
(
た
)
つて、
面
(
おもて
)
は
剣
(
つるぎ
)
とゝもに
真青
(
まつあを
)
なのを
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
よ。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
柳の影を
素膚
(
すはだ
)
に
絡
(
まと
)
うたのでは、よもあるまい。よく似た模様をすらすらと肩
裳
(
もすそ
)
へ、腰には、
淡紅
(
とき
)
の伊達巻ばかり。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
褄
(
つま
)
を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、
紅
(
くれない
)
がしっとり垂れて、白い足くびを
絡
(
まと
)
ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
虎の皮には弱ったと見えて、火の車を飛ばした
三個
(
みつ
)
の鬼が、腰に何やらん
襤褸
(
ぼろ
)
を
絡
(
まと
)
っていた、は窮している。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鯰入
(
ねんにゅう
)
。花道より、濃い鼠すかしの
頭巾
(
ずきん
)
、
面
(
つら
)
一面に黒し。白き
二根
(
にこん
)
の
髯
(
ひげ
)
、鼻下より左右にわかれて長く
裾
(
すそ
)
まで垂る。墨染の
法衣
(
ころも
)
を
絡
(
まと
)
い、
鰭
(
ひれ
)
の形したる鼠の足袋。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
刺身ッていやあ
一寸試
(
いっすんだめし
)
だ、
鱠
(
なます
)
にすりゃぶつぶつ
切
(
ぎり
)
か、あの
又
(
また
)
目口
(
めくち
)
のついた
天窓
(
あたま
)
へ骨が
繋
(
つなが
)
って肉が
絡
(
まと
)
いついて残る図なんてものは、と
厭
(
いや
)
な顔をするからね。ああ
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
刺身
(
さしみ
)
ツていやあ
一寸試
(
いつすんだめし
)
だ、
鱠
(
なます
)
にすりやぶつ/\
切
(
ぎり
)
か、あの
又
(
また
)
目口
(
めくち
)
のついた
天窓
(
あたま
)
へ
骨
(
ほね
)
が
繋
(
つなが
)
つて
肉
(
にく
)
が
絡
(
まと
)
ひついて
殘
(
のこ
)
る
圖
(
づ
)
なんてものは、と
厭
(
いや
)
な
顏
(
かほ
)
をするからね。あゝ
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と見ると
鯱
(
しゃち
)
に似て、彼が城の天守に金銀を
鎧
(
よろ
)
った諸侯なるに対して、これは
赤合羽
(
あかがっぱ
)
を
絡
(
まと
)
った下郎が、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い魚身を、血に底光りしつつ、ずしずしと揺られていた。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
霜威
(
そうい
)
の
凜冽
(
りんれつ
)
たる冬の夜に、見る目も寒く水を浴びしと
覚
(
おぼ
)
しくて、真白の
単衣
(
ひとえ
)
は濡紙を貼りたる如く、よれよれに手足に
絡
(
まと
)
いて、全身の肉附は
顕然
(
あらわ
)
に透きて見えぬ。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ともの優しい、客は年の頃二十八九、
眉目秀麗
(
びもくしゅうれい
)
、
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な
風采
(
ふうさい
)
、
鼠
(
ねず
)
の背広に、
同一
(
おなじ
)
色の濃い
外套
(
がいとう
)
をひしと
絡
(
まと
)
うて、茶の
中折
(
なかおれ
)
を真深う、顔を
粛
(
つつ
)
ましげに、脱がずにいた。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
制服を
絡
(
まと
)
いたる判事、検事は、赤と青とカバーを異にせるテーブルを別ちて、一段高き所に居並びつ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
、この露路に入った時は、紫の
輪袈裟
(
わげさ
)
を雲のごとく尊く
絡
(
まと
)
って、水晶の
数珠
(
じゅず
)
を提げたのに。——
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
凝
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
める、と
最
(
も
)
う
其
(
そ
)
の
鳥居
(
とりゐ
)
の
柱
(
はしら
)
の
中
(
なか
)
へ、
婦
(
をんな
)
の
姿
(
すがた
)
が
透
(
す
)
いて
映
(
うつ
)
る……
木目
(
もくめ
)
が
水
(
みづ
)
のやうに
膚
(
はだ
)
に
絡
(
まと
)
ふて。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
又水の上を
歩行
(
ある
)
いて来たものがある。が船に居るでもなく、
裾
(
すそ
)
が水について居るでもない。
脊
(
せ
)
高
(
たか
)
く、霧と
同
(
おんなじ
)
鼠
(
ねずみ
)
の薄い
法衣
(
ころも
)
のようなものを
絡
(
まと
)
って、
向
(
むこう
)
の岸からひらひらと。
木精(三尺角拾遺)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
又
(
また
)
水
(
みづ
)
の
上
(
うへ
)
を
歩行
(
ある
)
いて
來
(
き
)
たものがある。が
船
(
ふね
)
に
居
(
ゐ
)
るでもなく、
裾
(
すそ
)
が
水
(
みづ
)
について
居
(
ゐ
)
るでもない。
脊
(
せ
)
高
(
たか
)
く、
霧
(
きり
)
と
同
(
おんなじ
)
鼠
(
ねずみ
)
の
薄
(
うす
)
い
法衣
(
ころも
)
のやうなものを
絡
(
まと
)
つて、
向
(
むかう
)
の
岸
(
きし
)
からひら/\と。
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの、雪に、糸
一条
(
ひとすじ
)
も
懸
(
かか
)
らぬか、と疑えば、非ず、ひたひたと身に着いた霞のような
衣
(
きぬ
)
をぞ
絡
(
まと
)
う。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
旧
(
もと
)
の
処
(
ところ
)
には
矢張
(
やツぱり
)
丈足
(
たけた
)
らずの
骸
(
むくろ
)
がある、
遠
(
とほ
)
くへ
避
(
さ
)
けて
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
へ
駆
(
か
)
け
抜
(
ぬ
)
けたが、
今
(
いま
)
にもあとの
半分
(
はんぶん
)
が
絡
(
まと
)
ひつきさうで
耐
(
たま
)
らぬから
気臆
(
きおくれ
)
がして
足
(
あし
)
が
筋張
(
すぢば
)
ると、
石
(
いし
)
に
躓
(
つまづ
)
いて
転
(
ころ
)
んだ
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其の鎧の、「
揺
(
ゆら
)
ぎ糸の紅は細腰に
絡
(
まと
)
ひたる肌着の
透
(
す
)
くかと
媚
(
なまめ
)
いたり。」綺麗ぢやありませんか。
いろ扱ひ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
旧
(
もと
)
の
処
(
ところ
)
にはやっぱり
丈足
(
じょうた
)
らずの
骸
(
むくろ
)
がある、遠くへ
避
(
さ
)
けて草の中へ
駈
(
か
)
け抜けたが、今にもあとの半分が
絡
(
まと
)
いつきそうで
耐
(
たま
)
らぬから
気臆
(
きおくれ
)
がして足が
筋張
(
すじば
)
ると石に
躓
(
つまず
)
いて転んだ
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
またまったく心持の可い時でないと見えんから、見えない時でも見るように、見るようにと心掛ける——それでも、散らかって、
絡
(
まと
)
まらないで、更に目に宿らん事が多い。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
召連れたる下男は銀平という、高田が気に入りの人非人。いずれも
法衣
(
ころも
)
を
絡
(
まと
)
いたる狼ぞかし。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なれども、僧都が身は、こうした墨染の
暗夜
(
やみ
)
こそ
可
(
よ
)
けれ、なまじ緋の
法衣
(
ころも
)
など
絡
(
まと
)
おうなら、ずぶ
濡
(
ぬれ
)
の
提灯
(
ちょうちん
)
じゃ、
戸惑
(
とまどい
)
をした
鱏
(
えい
)
の
魚
(
うお
)
じゃなどと申そう。
圧
(
おし
)
も石も利く事ではない。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
啊呀
(
あなや
)
と見る時、別なるがまた
頸
(
うなじ
)
を
絡
(
まと
)
いて左なるとからみ合いぬ。恐しき声をあげて浅尾の
呻
(
うめ
)
きしが、輪になり、
棹
(
さお
)
になりて、同じほどの
蛇
(
くちなわ
)
幾
条
(
すじ
)
ともなく釜の中より
蜿
(
うね
)
り出でつ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
艶
(
つや
)
のある
護謨布
(
ゴムぬの
)
を
蔽
(
おお
)
いかけた、小高い、およそ人の脊丈ばかりな手術台の上に、腰に
絡
(
まと
)
った
紅
(
くれない
)
の
溢
(
こぼ
)
るるばかり両の膚を脱いだ後姿は、レエスの窓掛を
透
(
すか
)
す
日光
(
ひのひかり
)
に、くッきりと
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と胸の
裡
(
うち
)
で繰返して、その目と、髪と、
色艶
(
いろつや
)
と、一つ一つ
絡
(
まと
)
まり掛けると……
覚
(
おぼえ
)
がある!
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
卯辰山
(
うたつやま
)
の山の
端
(
は
)
にあって、霞を
絡
(
まと
)
い、霧を吸い、月影に姿を開き、
雨夜
(
あまよ
)
のやみにも
灯
(
ともし
)
一つ、百万石の昔より、
往来
(
ゆきき
)
の旅人に袖をあげさせ、手を
翳
(
かざ
)
させたものだった、が、今はない。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絡
常用漢字
中学
部首:⽷
12画
“絡”を含む語句
連絡
脈絡
掛絡
附絡
引絡
纏絡
足手絡
絡合
籠絡
手絡
聯絡
絡繹
経絡
絡繰
対外文化連絡協会
込絡
繽紛絡繹
袈裟掛絡
足絡
緋手絡
...