立派りっぱ)” の例文
今日なら、もうほんとうに立派りっぱな雲のみねが、東でむくむくりあがり、みみずくの頭の形をした鳥ヶ森ちょうがもりも、ぎらぎら青く光って見えた。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし近頃ちかごろではもうそんなへた真似まねはいたしません。天狗てんぐがどんな立派りっぱ姿すがたけていても、すぐその正体しょうたい看破かんぱしてしまいます。
三人は順々じゅんじゅんにならんで、ばってねりあるき、めいめい自分の行進曲マーチをもっていた。もちろん、いちばん立派りっぱなのがクリストフのものだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
いま、このあたらしくはいって仲間なかま歓迎かんげいするしるしに、立派りっぱ白鳥達はくちょうたちがみんなって、めいめいのくちばしでそのくびでているではありませんか。
どうだの、これはべつに、おいらが堺屋さかいやからたのまれたわけではないが、んといっても中村松江なかむらしょうこうなら、当時とうじしもされもしない、立派りっぱ太夫たゆう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『私は近頃リストの伝記を読んで、すっかり感心してしまいました。昔からのエライ音楽者の中にも、リストほど立派りっぱな人はありませんね』
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
乳母 そのきずましたが、此眼このめましたが……南無なむさんぼう!……ちょうどこの立派りっぱ胸元むなもとに。いた/\しい、無慚むざんな、いた/\しい死顏しにがほ
落ちるといってもけっして卑怯ひきょうでも不義ふぎでもない。かえって、砦をまくらにして斬り死するより、立派りっぱなつとめをはたすんです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また一めんにはかれ立派りっぱ教育きょういくけ、博学はくがく多識たしきで、んでもっているとまちひとうているくらい。で、かれはこのまちきた字引じびきとせられていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「ねえ! とてもうつくしいとりだよ。そしてこんな奇麗きれいな、黄金きんくさりを、わたしにくれたよ。どうだい、立派りっぱじゃないか。」
しかし、それほど立派りっぱ一糸乱いっしみだれないなかに、一つだけいけないところがあります。エチエンヌがちいさすぎるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
第二の盗人 おれのマントルも立派りっぱな物じゃないか? これをこう着た所は、殿様のように見えるだろう。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それで二人は、こわれた人形を立派りっぱつくろって、それを山の神社おみやおさめました。さるは山の中へもどりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
見たことのない立派りっぱな家で御馳走をしたとか、その他いろいろの人間わざでない不思議を現じて、さてはあの旅人は神であったかと、心づいたことは皆同じである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「だれも行けないなら、おれが行って立派りっぱに退治して来て見せよう。」と言い出した。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
養父ようふも義弟も菊五郎や栄三郎いっそ寺島父子になってしもうた堀川の芝居の此猿廻わしのきりにも、菊之助のみは立派りっぱな伝兵衛であった。最早彼は此世に居ない。片市も、菊五郎も居ない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それに車も実業家の持物らしく立派りっぱだし、運転手助手の服装も整っていた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこに立派りっぱやかな初代三遊亭圓生のお墓が建てられていたのだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
早く身を堅めて地道じみちに暮らさなければ母の名誉をけがす事になる。妹だって裸でお嫁入りもできまいといわれれば、わたし立派りっぱに木村の妻になって御覧にいれます。その代わり木村が少しつらいだけ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
動機は立派りっぱでも年とともに堕落だらく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「いいえ。私のいのちなんか、なんでもないんです。あなたが、もし、もっと立派りっぱにおなりになるためなら、私なんか、百ぺんでもにます」
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかも今度こんどわたくし修行場しゅぎょうばは、やま修行場しゅぎょうばよりも一だんかくたか浄地じょうちで、そこにはたいそうお立派りっぱな一たい竜神様りゅうじんさましずまってられたのでした。
そして彼等かれらは、その立派りっぱつばさひろげて、このさむくにからもっとあたたかくにへとうみわたってんでときは、みんな不思議ふしぎこえくのでした。
をとこらしうもをなごらしうもえて、獸類けだものらしうもゆるともない振舞ふるまひ! はてさて、あきてた。誓文せいもんわし今少もすこ立派りっぱ氣質きだてぢゃとおもうてゐたに。
まち独立どくりつ立派りっぱ病院びょういん維持いじされようはいとか、とにかくわるいながらも病院びょういんのあるのはいよりもましであるとかと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
クリストフはがくらむような気がした。自分じぶんの名前、立派りっぱ表題ひょうだい、大きな帖面ちょうめん、自分の作品さくひん! これがそうなんだ。……彼はまだよく口がきけなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
おせんのはだかのぞこうッてえのは、まず立派りっぱ智恵ちえだがの。おのれをわすれて乗出のりだした挙句あげく垣根かきねくびんだんじゃ、折角せっかく趣向しゅこうだいなしだろうじゃねえか
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「じゃがおれ卑怯ひきょうなことは云わぬ。いかにもおぬしの云う通り、おぬしの父親てておやは己の手にかけた。この腰抜けでも打つと云うなら、立派りっぱに己は打たれてやる。」
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わけてもパデレフスキーの「雨滴れ」(ビクター六八四七)や第一七番「前奏曲=変イ長調(作品二八ノ一七)」などは記念的な意味以上に立派りっぱなものである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
それに、二十一日のあいだにやりさえすればいいんだから、立派りっぱに一つうちめてこい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかし印度いんどのある国に、一人の王子がありました。国王からは大事だいじそだてられ、国民からはしたわれて、ゆくゆくは立派りっぱな王様になられるにちがいないと、みなからのぞみをかけられていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
みちは、川の表面ひょうめんのようにたいらで、綺麗きれいで、くるまくつそこをしっかりと、しかし気持きもちよくささえてくれます。これはわたしたちのお祖父様方じいさまがたつくってくださったもののなかでもいちばん立派りっぱなものです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
曲馬小屋は、町の通りへ、もう立派りっぱに出来上がっていました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
(お前は今日きょうからおれの子供だ。もう泣かないでいい。お前の前のおかあさんや兄さんたちは、立派りっぱな国にのぼって行かれた。さあおいで。)
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うじゃ、立派りっぱなおみやであろうが……。これでそなたのようやかたまったわけじゃ。これからは引越ひっこしさわぎもないことになる……。』
萠黄色もえぎいろの、活々いき/\としたうつくしい眼附めつきわしよりも立派りっぱぢゃ。ほんに/\、こんどのお配偶つれあひこそ貴孃こなたのお幸福しあはせであらうぞ、まへのよりはずっとましぢゃ。
わたしちちわたし立派りっぱ教育きょういくあたえたです、しかし六十年代ねんだい思想しそう影響えいきょうで、わたし医者いしゃとしてしまったが、わたしがもしそのときちちとおりにならなかったなら
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
めくらなどは勿論立派りっぱなものです。が、最も理想的なのはこの上もない片輪かたわですね。目の見えない、耳の聞えない、鼻のかない、手足のない、歯や舌のない片輪ですね。
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
真証しんしょう間違まちがいなしの、立派りっぱ品物しなものってって、若旦那わかだんなよろこかおながら、拝借はいしゃくおよぼうッてんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして小父おじのゴットフリートにたいして、しみじみと愛情あいじょうおぼえた。もう今は、すべての人のうちで、ゴットフリートがいちばんよく、いちばんかしこく、いちばん立派りっぱに思われた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
彼は、小説しょうせつ戯曲ぎきょく評論ひょうろん伝記でんき、そのいろいろなものをきましたが、すべて、立派りっぱな作品として長くのこるようなものが多く、中でも、小説と随筆ずいひつとには、世界的せかいてき傑作けっさくが少なくありません。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「いっそぼく、あの立派りっぱとりんとこにんでってやろうや。」
立派りっぱであり、美しくはあるが、もはやショパンの夢がない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
こまるなあ。おいことわっちまえよ。奮起す。おーい、火山だなんてまるでべつだよ。ちゃんと立派りっぱなビルデングになってるんだぜ。
成程なるほど清水しみずと云う男は、立派りっぱに色魔たるべき人相にんそうを具えているな。」と、つぶやくような声で云った。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから笹田がおちぶれて、更木の斎藤では病気もすっかり直ったし、むすこも大学を終わったし、めきめき立派りっぱになったから
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は話には聞いていても、現在この立派りっぱさを見ると、声も出ないほどびっくりしてしまった。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(ああこんなけわしいひどいところを私はわたって来たのだな。けれども何というこの立派りっぱさだろう。そしてはてな、あれは。)
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしにも、御尋ね者の阿媽港甚内あまかわじんないにも、立派りっぱに恩返しが出来る愉快さは、——いや、この愉快さを知るものは、わたしのほかにはありますまい。(皮肉に)世間の善人は可哀そうです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
金剛石こんごうせきや草のつゆやあらゆる立派りっぱさをあつめたような、きらびやかな銀河ぎんが河床かわどこの上を、水は声もなくかたちもなくながれ、そのながれのまん中に
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)