-
トップ
>
-
此眼
乳母
其創を
見ましたが、
此眼で
見ましたが……
南無さんぼう!……ちょうど
此お
立派な
胸元に。いた/\しい、
無慚な、いた/\しい
死顏。
燈のかげ
少し
暗きを
捻ぢ
出す
手もとに
見ゆるは
殿の
名、よし
慝名なりとも
此眼に
感じは
變るまじ、
今日迄封じを
解かざりしは
我れながら
心強しと
誇りたる
淺はかさよ
殿、
今もし
此處におはしまして、
例の
辱けなき
御詞の
數々、さては
恨みに
憎みのそひて
御聲あらく、さては
勿躰なき
御命いまを
限りとの
給ふとも、
我れは
此眼の
動かんものか、
此胸の
騷がんものか