“此眼(このめ)” の例文
乳母 其(その)創(きず)を見(み)ましたが、此眼(このめ)で見(み)ましたが……南無(なむ)さんぼう!……ちょうど此(この)お立派(りっぱ)な胸元(むなもと)に。いた/\しい、無慚(むざん)な、いた/\しい死顏(しにがほ)。
燈(ともしび)のかげ少(すこ)し暗(くら)きを捻(ね)ぢ出(いだ)す手(て)もとに見(み)ゆるは殿(との)の名(な)、よし慝名(かくしな)なりとも此眼(このめ)に感(かん)じは變(かは)るまじ、今日迄(けふまで)封(ふう)じを解(と)かざりしは我(わ)れながら心強(こゝろづよ)しと誇(ほこ)りたる淺(あさ)はかさよ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
殿(との)、今(いま)もし此處(こゝ)におはしまして、例(れい)の辱(かたじ)けなき御詞(おことば)の數々(かず/\)、さては恨(うら)みに憎(にく)みのそひて御聲(おんこゑ)あらく、さては勿躰(もつたい)なき御命(おいのち)いまを限(かぎ)りとの給(たま)ふとも、我(わ)れは此眼(このめ)の動(うご)かんものか、此胸(このむね)の騷(さわ)がんものか
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)