様子やうす)” の例文
旧字:樣子
按摩あんまつゑちからに、かはべりの水除みづよづゝみると、つゑさき両手りやうてをかけて、ズイとこしばし、みゝそばだてゝかんがえて様子やうす、——とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ほんとさ。おまへさん。」おとよは首を長くのばして、「私の僻目ひがめかも知れないが、じつはどうも長吉ちやうきち様子やうすが心配でならないのさ。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おびあひだから紙幣入さついれを出して幾許いくらはらひをしてかへる時に、重い口からちよいと世辞せじつてきましたから、おほきに様子やうすよろしうございました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おくさんが坐敷ざしき真中まんなかつて、茫然ぼんやり周囲まはり見回みまはしてゐた様子やうすつたら、——随分可笑おかしなもんでした
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんだか、へだて或物あるものてつして、直接ぢかわたしせつしてやうとする様子やうすが、歴々あり/\素振そぶりえる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そこで二人は大家へ行つて部屋へや様子やうすをきき正した。私達わたしたちはもう家そのものはどうでも良かつた。たゞ自分達じぶんたちつかれた身体からだに一時も早く得心とくしんあたへるために直ぐその家を借りようといふになつた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
テン太郎さん ちよつと、まつて なんだか中の様子やうすがへんですよ
猟師れふしたれた様子やうすでもなかつたし。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
さらさら悲しい様子やうす
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
売薬ばいやくさきりたが立停たちどまつてしきり四辺あたりみまはして様子やうす執念深しふねんぶかなにたくんだか、とこゝろよからずつゞいたが、さてよくると仔細しさいがあるわい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
西京さいきやう大坂おほさか芸妓げいこまゐつてりましたが、みな丸髷まるまげ黒縮緬くろちりめん羽織はおり一寸ちよつと黒紗くろしやれをひつけてりまして、様子やうす奥様然おくさまぜんとしたこしらへで
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
長吉ちやうきちはたゞ眼をまるくしておいとの顔を見るばかりである。いつもと変りのない元気のいゝはしやぎ切つた様子やうすがこの場合むしにくらしく思はれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
竹村たけむらもそれ以上いじやうきもなじりもしたくなかつた。彼女かのぢよ大抵たいてい様子やうすがわかつたらしかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
どうも 様子やうすがわからん
畜生ちくしやう、)といつたがうまないわ。びく/\とうごめいてえるおほき鼻面はなツつら此方こちらけてしきり私等わしらはう様子やうす
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れにもかゝはらず、自分の母親のおとよはあまりくは思つてゐない様子やうすで、盆暮ぼんくれ挨拶あいさつもほんの義理一ぺんらしい事をかまはず素振そぶりあらはしてゐた事さへあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
御存生ごぞんじやうなら川田かはだらうくんだね、はらふくれてゐるところから体格かつぷくと云ひ、ニコヤカなお容貌かほつきと云ひ、えり二重ふタヘつてゐる様子やうすはそつくりだね、なにしろもうかみになつちまつてやうがない
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
様子やうすけば、わし言托ことづけとほり、なにか、内儀ないぎ形代かたしろ一心いつしんきざむとく、……それ成就じやうじゆしたと昨夜ゆふべぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
又他の一人が門前の溝にかけた石橋の欄干に腰をおろし煙管で烟草をのんでゐた様子やうすあひを見て、この馬車に乗つて来た人は同じやうな生垣つゞきの隣家ではなくして
冬の夜がたり (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なにふんだな、さつき身延山みのぶさんへおまゐりにた人が道に迷つて此処こゝたが、それは吉原よしはらにゐた時に出た客なんだよ、三りやうつゝんで出したがあと切餅きりもち(二十五りやうづゝみ)二へうぐらゐはある様子やうす
いか按摩あんま、とばゝつて、備中守びつちうのかみゆびのしなへでウーンとつたが、一向いつかうかんじた様子やうすがない。さすがに紫色むらさきいろつた手首てくびを、按摩あんまさすらうとせず
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
四五日目にちめ一人ひとり二人ふたりもあればいゝはうなので、道子みちこはそのころしきりひとうはさをする浅草公園あさくさこうゑん街娼がいしやうにならうと決心けつしんしたが、どのへんていゝのか見当けんたうがつかないので、様子やうすをさぐりに
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
しやくぐらゐあと退さがつてつて様子やうす、それが東京とうきやうの人だと
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
うかとおもへば、おびからしたは、げつそりとふううすく、すそしまつたが、ふうわりとしてちからはいらぬ。かゝといて、う、うへかつげられてさうな様子やうす
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きやく裸体はだかのまゝまどこしをかけて煙草たばこをのむをんな様子やうすながめながら
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
わめくが、しかし、一騎いつき朝蒐あさがけで、てきのゝしいさましい様子やうすはなく、横歩行よこあるきに、ふら/\して、まへたり、退すさつたり、蹌踉よろめき、独言ひとりごとするのである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つねつてもたしか活返いきかへつたのぢやが、それにしても富山とやま薬売くすりうりうしたらう、様子やうすではとうになつて泥沼どろぬまに。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また様子やうすては、たれあやしまずにはられない。——越中ゑつちううまひかへ、坐頭ざとうばうなにをする、とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なに、さういふ様子やうすえるのは、つひ四五日前しごにちまへからで、其前そのさきには些少ちつともこんなことはありはしなかつた。かへつて母様おつかさんにさういつて、何故なぜだかいてやうとおもつたんだ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれどもぶりではたしかにない、あのはらのふくれた様子やうすといつたら、宛然まるで鮟鱇あんかうるので、わたしかげじやあ鮟鱇博士あんかうはかせとさういひますワ。此間このあひだ学校がくかう参観さんくわんたことがある。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
方々かた/″\様子やうすみなほゞわかつた、いづれも、それ/″\お役者やくしやである。が、白足袋しろたびだつたり、浴衣ゆたかでしよたれたり、かひくちよこつちよだつたり、口上こうじやう述損のべそこなつたり……一たいそれはなにものだい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)