ぷく)” の例文
「毒か、わなを用いるほかない。」と、わたしは友に語ったのだが、大きいわなは持ってゆかなかったので、まず一ぷく毒を盛ることにした。
断念あきらめてりましたところが(泣声なきごゑ鉄瓶点てつびんだてゞ一ぷくくださるとは……往昔むかし友誼よしみをお忘れなく御親切ごしんせつに……わたくしう死んでもうございます。
やがて雁首がんくび奇麗きれいいて一ぷくすつてポンとはたき、またすいつけておたかわたしながらをつけてお店先みせさきはれると人聞ひとぎきかわるいではないか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一つの不用ふようぶん運河うんがから鬼怒川きぬがはかよ高瀬船たかせぶねたのんで自分じぶん村落むら河岸かしげてもらふことにして、かれ煙草たばこの一ぷくをもわすれないやうにつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「よけいなことはいわんでもよい。さ、一ぷくったら八ぽうへ手を分けて、まず第一に間道かんどうらしい洞穴ほらあなをさがしてみろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬかくぎッてな、おめえのこった。——火のおこるまで一ぷくやるから、その煙草入たばこいれを、こっちへよこしねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ひそかに話しわたくしにも昨日さくじつぷくつかはして貴君樣あなたさまの食事に入れてくれよとたのみ候と彼藥を見せければまた委細ゐさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こうして一ぷく一文の往きずりの客にも世辞のひとつも言う気になっているのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
チェリーを一ぷくっているところへ、ヤーロ親分が留置場りゅうちじょうから連れられてきた。
一九五〇年の殺人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
カチリと電燈をじる響と共に、きいろい光が唐紙からかみの隙間にさす。先生はのそのそ置炬燵から次の間へ這出はいだして有合ありあ長煙管ながギセルで二、三ぷく煙草を吸いつつ、余念もなくお妾の化粧する様子を眺めた。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おみちは朝から畑にあるもので食べられるものをあつめていろいろにり合せてみた。嘉吉かきちは朝いつもの時刻じこくをさましてからそべったまま煙草たばこを二、三ぷくふかしてまたすうすうねむってしまった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
で一ぷくということになった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
毒をしたところだけ、きれいにさきてて、毒のない部分をさんざん食いあらしていたのです。一ぷくろうたってあいつにゃ駄目だめです。
ると煎餅せんべいのやうなうすつぺらの蒲団ふとんつめ引掻ひつかくとポロ/\あかおちる冷たさうな蒲団ふとんうへころがつてるが、独身者ひとりものだからくすりぷくせんじてむ事も出来できない始末しまつ、金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あつちにちやぜにらねえな、煙草たばこぷくふべえぢやなし、十五日目にちめ晦日みそかでそれまでは勘定かんぢやうなしでそのあひだこめでもまきでもみんな通帳かよひりてくれえなんだから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あゝ可愛かあひさうなことをとこゑたてゝもきたきを、さしも兩親ふたおや機嫌きげんよげなるにいでかねて、けむりにまぎらす烟草たばこ二三ぷく空咳からせきこん/\としてなみだ襦袢じゆばんそでにかくしぬ。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「よろしゅうございます。では、しばらくそこで一ぷくってお待ちください。そして、わかりましたところから松明たいまつを空へ投げるといたしましょう。——これよ、蛾次がじ!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんならこっちのすみほうへ、まいまいつぶろのようンなって、一ぷくやっておりやしょう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
アノ今ね、田圃たんぼへ出て一ぷくやらうと思つていた、莨入たばこいれを忘れて出かけたのを…………。主「ヘイ、成程なるほど此品このしな御座ございますか。客「ウム、これさへあれば大丈夫だ。 ...
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
もうれたに太吉たきち何故なぜかへつてぬ、げんさんもまた何處どこあるいてるかしらんとて仕事しごとかたづけて一ぷくすいつけ、苦勞くらうらしくをぱちつかせて、さら土瓶どびんした穿ほぢくり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
煙草たばこを一ぷくふだけの時間じかんに、成熟せいじゆくしきつた大豆だいづやうやくぱち/\とかるこゝろよひゞきてつゝはじめた。大豆だいづことごとにはつちたふされた。三にん連枷ふるぢつてはしからだん/\とからつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
渋茶しぶちゃあじはどうであろうと、おせんが愛想あいそうえくぼおがんで、桜貝さくらがいをちりばめたような白魚しらうおから、おちゃぷくされれば、ぞっと色気いろけにしみて、かえりの茶代ちゃだいばいになろうという。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『おっと、お茶がこぼれます。まあ、一ぷくしあがって』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まア/\おいとしいことでございます……時に一寸ちよつと薄茶うすげやう鉄瓶点てつびんだてゞ……コレ/\其棗そのなつめい、るんでいからつておで……一ぷく鉄瓶点てつびんだてゞげませう
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
茶はきたてだけれども、うも湯加減ゆかげんが悪いのでうまく出来できないが、一ぷくげる。