如何どん)” の例文
『オヤそう、如何どんな顔をして居て? 私も見たいものだ。』と里子は何処どこまでも冷かしてかゝった。すると母はすごいほど顔色を変えて
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
犬に眼鏡をかけさせたら如何どんな顔になるだろうと思って掛けてやった。少しも似合わない。するとポチは隣の猫を見て追駆けて行った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その戰爭の結果が如何どんな事になるかを考へる者すら無いといふ有樣だつた。さうして議會も國民と全く同じ事をやつたに過ぎないのである。
大硯君足下 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
如何どんな詰らぬ事でも全氣全念で太閤は之を取り行つたに相違ない。で、其點を信長が見て取つて段々に採用したに相違無い。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しか勘次かんじ自身じしんには如何どん種類しゆるゐものでも現在げんざいかれこゝろあた滿足まんぞく程度ていどは、うしなうたおしな追憶つゐおくすることからける哀愁あいしうの十ぶんの一にもおよばない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
また葬式一切いっさいの費用に関しても、最早もはや自分の衣類道具も片なくなっているさいでもあるし、如何どんな事をするかも知れない
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
「そうでしょう。人の感情には程度があるもので、如何どんな場合にも身体に障るほど激動することは、まあないですね。」
二つの途 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
此話が発展したら、如何どんな面白い話になるのだか分らんのだけれど、其様そんな時に限って生憎あいにくと、茶の間あたりで伯母さんの奥さんの意地悪が私を呼ぶ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
安さんは大抵たいてい甲州街道南裏の稲荷いなりの宮に住んで居たそうだ。埋葬は高井戸でしたと云うが、如何どん臨終りんじゅうであったやら。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何時いつ何處どこで、如何どうしてうて、如何どう言寄いひよって、如何どん誓言せいごんをしたかは、あるきながらはなしませうほどに、承引しょういんしてくだされ、今日けふ婚禮こんれいさすることを。
一躰いったい自分の以前には如何どんな人が住んでおったかと訊ねたが、初めの内はげんを左右にして中々なかなかに真相を云わなかったがついにこう白状した、そのはなしによると
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
茫漠たる想ひにばかり酔つてゐる己れの存在が周囲の者の内心に如何どんな悲しみを与へてゐることだらう——そんな弱々しく尤もらしい屈托などにまで走つた。
雪景色 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
彼女の品行が果して如何どんなものであったかという事は、あの惨劇に依ってはしなくも暴露されたのでした。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
私は母のためならば、如何どんな寒い日にも、竹屋たけやの渡しを渡って、江戸名物の桜餅さくらもちを買って来ましょう。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
随分生皮いきがわはがれよう、を負うたあし火炙ひあぶりにもされよう……それしきはまだな事、こういう事にかけては頗る思付の渠奴等きゃつらの事、如何どんな事をするかしれたものでない。
軍人と辛苦をともにして、如何どんな難事にも耐える精神を養うのだ、というのだ。危い、危い、健は然し今ではもう行く気がしていなかった。——云うことだけは立派だ。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
何様どんなことか知らぬが尽かしゃしないよ、僕は君というものが好いんだから仮令これまでに如何どんなことをしていようとも何様な素姓であろうとも差支えないじゃないか。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
貴下あなた海上かいじやう法則ほうそくりませんか、たとへ如何どんことがあらうとも船員せんゐん以外いぐわいものそれくちばしれる權利けんりいです、またわたくし貴下あなたから其樣そん報告ほうこくける義務ぎむいです。
そのやうやす書物しよもつむかつても意味いみ容易よういとれない、もつと直譯ちよくやくしてときはどうかわかつてるらしいが、あと如何どん意味いみかとたゞしてるとほとんわかつてないやうである。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
生活の純真な芽に如何どんな苦痛を与えるのか、其を知ろうともしないのだ。無責任な人々よ。
此手紙以外このてがみいぐわいに、をんなにくには、如何どん秘密ひみつあとつけられてあるか、それは一さいわからぬ。こゝろおくに、如何どんこひふうめてあるか、それもとよりわからぬ。わたし想像さうぞう可恐おそろしくするどくなつてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ソレでモウ自分の一身は何処どこに行て如何どん辛苦しんくいとわぬ、ただこの中津に居ないで如何どうかして出てきたいものだと、独りればかり祈って居た処が、とうと長崎に行くことが出来ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
環境には目に見えない魂があつて、それがその環境の人間のする如何どんなものにも現はれてゐるといひ、これを離れると個人はその生活の活力を失ふと、地方主義者のマウリス・バレエスはいふ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
あゝ、生れた村は藁葺わらぶき荒壁あらかべの沼の中の痩村だけれど、此儘帰れたら如何どんなに嬉しからう! たゞ、しかし、帰つたとて仕方がない。椋助むくすけだの馬鹿だのと人は言ふけれど、ミハイロはく心得てゐる。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
彼は「今では、最早もはや馴れましたが、此処ここへ来た当座は、実に身の毛も竦立よだつ様な恐ろしい事が、度々ありました」というので、弟はひざを進めて、「一躰いったい、それは如何どんな事だった」といて訊ねたので
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
……ほんとにお嫁になど行かないで兄さんや姉さんを手伝った方が如何どんなにかったか今では真実ほんとに後悔していますのよ。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
如何どんなに馬鹿であらうと、無智であらうと、法螺吹きであらうと、取得のない酔払ひであらうと、多くの愚と悪の同意語で形容すべき人間であらうとも——。
鏡地獄 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ロミオ アーメン、アーメン! 如何どん悲哀かなしみようとも、ひめかほうれしさのその刹那せつなにはかへられない。
其後白と黒との間に如何どんな黙契が出来たのか、白はあまり黒の来遊らいゆうを拒まなくなった。白をもらって来てくれた大工が、牛乳ぎゅうにゅうぐるまの空箱を白の寝床に買うて来てくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この自動鐵檻車じどうてつおりのくるま出來できなさい、如何どん危險きけん塲所ばしよだつて平氣へいきなもんです、猛狒ゴリラ獅子しゝ行列ぎようれつてゝおそつてところで、此方こつち鐵檻車てつおりぐるまなかから猛獸まうじうども惡相あくさう目掛めがけて
無論まだ死ぬという事が如何どんな事だかくは分らなかったが、唯何となく斯う奥の知れぬ真暗な穴のような処へ入る事のように思われて、日頃から可怕おっかながっていたのだが
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「無理もない、ねえ。……が一体如何どんな人間だった? 本当の名を言って御覧。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
この猿松さるまつめ馬鹿野郎めとひとり心の中でののしり、ソレカラ山本の家にも事実は云われぬ、れがあらわれて奥平の不面目ふめんもくにもなれば、わざわいかえって私の身にふって来て如何どんな目に逢うか知れない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
何の罪がある? 何の報いで咽喉のど焦付こげつきそうなこのかわき? かわく! かわくとは如何どんなものか、御存じですかい? ルーマニヤを通る時は、百何十度という恐ろしい熱天に毎日十里ずつ行軍したッけが
わたくしはこのごろになつて益々ます/\かんずることは、ひと如何どん場合ばあひてもつねたのしいこゝろもつ其仕事そのしごとをすることが出來できれば、すなは其人そのひとまこと幸福かうふくひとといひることだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なくしたをとこが、そのなくしたといふたからをばわすれぬためし如何どん拔群ばつくん美人びじんをおせあっても、それはたゞその拔群ばつくんをも拔群ばつくん美人びじん思出おもひださす備忘帳おぼえちゃうぎぬであらう。さらば。
此哲人は如何どんな事を言っている。クロイツェル、ソナタの跋に、理想の完全に実行し得べきは真の理想でない。完全に実行し得られねばこそ理想だ。不犯ふぼん基督教キリストきょうの理想である。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
よろしい如何どんな事でも書くと云うから、云々うんぬん今後屹度勉強する、し違約をすれば坊主にされてもくるしからずと云う証文を書かせて私の手にとって置て、約束の通りに毎日別段に教えて居た所が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
如何どんな下等の人間でも口にしさうもない幾つかの雑言を繰り反してゐるうちに、このうちの何れでも好いから、一つはつきり相手に悟れるやうに叫んで見たいな——などと思つてゐるうちに
鏡地獄 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
死人しにんのやうなかほをしてぼくかへつてたのをて、宿やどもの如何どんなにおどろいたらう。其驚そのおどろきよりもぼくおどろいたのは此日このひきぬたが、午後ごゝまた實家じつかかへつたとのことである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それこそ如何どんな酷い目に遇ふか? 想つたゞけでも竦然とするし
鏡地獄 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
『それでは如何どんことせばろしう御座ございましよう。』とひました。老人らうじんぢたまゝ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ぼく溪流けいりう沿ふてこのさびしい往來わうらいあてもなくるいた。ながれくだつてくも二三ちやうのぼれば一ちやう其中そのなかにペンキで塗つたはしがある、其間そのあひだを、如何どん心地こゝちぼくはぶらついたらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『イヤ私だって不動様を信じないとは限りません。だから母上おっかさんまアその理由いわれを話て下さいな。如何どんなことか知りませんが、親子の間だからすこしあかされないようなことは無いでしょう。』
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小田原をだはらとほときぼく如何どんかんがあるだらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)