)” の例文
僕の友だちは僕のやうに年とつた小役人こやくにん息子むすこばかりではない。が、誰も「いちやん」の言葉には驚嘆せずにはゐられなかつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
時には相手が笑つてゐて、何時いつ迄も要領を得ない事がある。与次郎はこれひとあらずと号してゐる。或時あるとき便所からた教授をつらまへた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兵法へいはふに、百にして(四六)おもむものは、上將じやうしやうたふし、五十にしておもむものは、(四七)ぐんなかいた
かさねしが當代たうだい新田につたのあるじはいへにつきて血統ちすぢならず一人娘ひとりむすめ入夫にふふなりしかばあひおもふのこゝろふかからずかつにのみはし曲者くせものなればかねては松澤まつざは隆盛りうせい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ハテ岩崎弥之助君いはさきやのすけくんです、なんだつて日本銀行総裁にほんぎんかうさうさいといふのだからきんばかりもくらゐあがるか大層たいさうな事です、アノ御方おかたやりでもいて立つた姿は、毘沙門天びしやもんてんさうもあります
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
をもつて歐洲をうしうぼう強國きやうこく結托けつたくして、年々ねん/\五千萬弗まんどるちか賄賂わいろをさめてために、かへつて隱然いんぜんたる保護ほごけ、をりふしそのふね貿易港ぼうえきかう停泊ていはくする塲合ばあひには立派りつぱ國籍こくせきいうするふねとして
この機会きかいに乗じてみずから自家じかふところやさんとはかりたるものも少なからず。
仕事しごとはみな奉公人ほうこうにんがしてくれるし、かね銀行ぎんこうあずけておけば、利子りしがついて、ますます財産ざいさんえるというものだ。もうこんなくわなどを使つかうことはあるまい。まったく不要ふようなものだ。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
衣類いるゐ大小だいせうしち一口ひとくち最早もはや月切つきぎれ相成あひなりながれに出しゆゑ先日一寸御斷り申上げましたが止ておけとの事ゆゑ今日けふ迄見合せ置たれども今になん御沙汰ごさたもなきにより最早流れ切に致しますそれともあげを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かうべあるものこしかして、ぺた/\とつて瞪目たうもくしてこれれば、かしらなき將軍しやうぐんどう屹然きつぜんとして馬上ばじやうにあり。むねなかよりこゑはなつて、さけんでいはく、無念むねんなり、いくさあらず、てきのためにそこなはれぬ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衛生とは人のいのちぶるがくなり、人の命ながければ、人口じんこうえてしょくらず、社会しゃかいのためにはあるべくもあらず。かつ衛生のぎょうさかんになれば、病人びょうにんあらずなるべきに、のこれをとなうるはあやまてり云々。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
与うるにをもってするは道徳上非難すべきも、実際世の中を渡るには止むを得ざることとして、たがいにそのつもりで無言の約束を結んだも同然であれば、あながちそれだけを非難すべきでないが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
他郷たきょうっていさかいすべからず、ある争いもかならず不利、——ということわざは、むかしの案内記あんないきなどにはかならずしるしていましめてあることだ。まして、相手が悪そうだから、卜斎ぼくさいも悪びれないで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
転変てんぺんはげしきはしと某老人ぼうらうじん申候まうしそろ其訳そのわけ外充内空ぐわいじうないくう商略せふりやくにたのみて、成敗せいはい一挙いつきよけつせんとほつそろ人の、其家構そのいへかまへにおいて、町構まちかまへにおいて、同処どうしよ致候いたしそろよりのことにて、今も店頭てんとううつたかきは資産しさんあら
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
つまり、その時代の人心に、司政者にのある時には、法を枉げてもよい、と。天一坊の場合は、あきらかに、かかる者を御落胤として認める事は、天下人心によろしくも無く、御当代の為にも不為ふためじゃ。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
八月二十九日 昨夜軽井沢ふぎ泊り。小諸行、自動車。
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この質屋の「いちやん」も僕の小学時代の友だちだつた。僕はいつか遊び時間に僕等のうちにあるものを自慢じまんし合つたことを覚えてゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すると中々なか/\はなさない。どうか、うかはせて仕舞ふ。ときには談判中に号鐘ベルつて取りにがす事もある。与次郎はこれときあらずと号してゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鮑叔はうしゆくわれもつたんさず、まづしきをればなりわれかつ鮑叔はうしゆくめにことはかり、しかうしてさら窮困きうこんす。鮑叔はうしゆくわれもつさず、とき不利ふりるをればなり
「そんなことはない。吾輩にだって志はあるがときあらずで」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つくさして引入ひきいれしすくなからず塞翁さいをうがうまきことして幾歳いくとせすぎし朝日あさひのかげのぼるがごといまさかゑみな松澤まつざは庇護かげなるものから喉元のどもとすぐればわするゝあつ對等たいとう地位ちゐいたればうへこぶうるさくなりてひとりつく/″\あんずるやうけい十町じつちやう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
北高南低ほっこうなんてい城塞じょうさい善地ぜんち、水は南西にあるをありとしんず」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いとなむがうへれは本家ほんけとてもちひもおもかるべくわれとて信用しんよううすきならねど彼方かなた七分しちぶえきあるときこゝにはわづかに三分さんぶのみいへ繁榮はんえい長久ちやうきうさく松澤まつざはきにしかずつはむすめ容色きりやうすぐれたればこれとてもまたひとつの金庫かねぐら芳之助よしのすけとのえにしえなばとほちやうかど地面ぢめん持參ぢさんむこもなきにはあらじ一擧兩得いつきよりやうとくとはこれなんめりとおもこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)