)” の例文
その時分両親はまだ健全たっしゃで、親子三人暮し、家も貧しい方でもなくず普通の生活をしていた、元来がこういう温和な娘だったから
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
「何が無くとも、熱い雑炊でも進ぜよう。ず先ず炉端へくつろがれるがい、夜が明けたら、早速麓の村まで送り届けて進ぜよう」
自分の出来ないものは仕事の賃金に代へて貰つて来ると云ふこの暮しやうが私にはづ一番間違ひのない暮しやうだと思つて居るよ。
月夜 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あくる日はまる一日じゅう、諸方しょほうの訪問についやされた。新来の旅人はずこのまちのお歴々がたを訪問した。初めに県知事に敬意を表した。
かるが故に、新たなる啓示が出現した時には、もって、ふるい啓示の上に築き上げられた迷信の大部分を掃蕩そうとうするの必要に迫られる。
内山君うちやまくん足下そくか此位このくらゐにしてかう。さてかくごとくにぼくこひ其物そのもの隨喜ずゐきした。これは失戀しつれんたまものかもれない。明後日みやうごにちぼく歸京きゝやうする。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ずカーティンをあけると、晴れ渡ってはいるがまだ日が登らないのは、高山とは云え緯度の高いためであろう。支度はすぐ出来た。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
彼はず、材木会社を駈け廻り、その主流が支那人であるかなきかを確め、それに応じてその場で適宜の作戦を立てねばならぬのだ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
細かいことを云うようですが、ず月々の生活費が、いくら内輪に見積っても二百五十円以上、場合によっては三百円もかかります。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども、彼女かれも若い娘である。流石さすがに胸一杯の嫉妬と怨恨うらみとを明白地あからさまには打出うちだし兼ねて、ず遠廻しに市郎を責めているのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
原本写本会読の法それから塾で修行するその時の仕方しかた如何どう塩梅あんばいであったかと申すと、ず始めて塾に入門した者は何も知らぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
股引ももひきの破れをつゞり、笠の緒付けかへて、三里にきゆうすゆるより松島の月づ心にかゝりて、住める方は人に譲り杉風さんぷう別墅べつしよにうつる。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お舎弟様は文武の道にひいで、お智慧も有り、ず大殿様が御秘蔵の御方おんかた度々たび/\めのお言葉も有りました事は、父から聞いて居ります
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それよりも私はづそれを読んで下さい、と皆にたのみたい。恐らくは、そんな雑誌の存在をさへ知らない人が多いだらうと思ふ。
最近の感想 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
饅頭屋の主翁ていしゅは、関係のある人の書翰がこんなにいっしょに来るのも珍らしいと思いながら、ず××君の書翰から開封して見た。
二通の書翰 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東京から来た石田の目には、ず柱が鉄丹べんがらか何かで、代赭たいしゃのような色に塗ってあるのが異様に感ぜられた。しかし不快だとも思わない。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
ず美青年の右の眼にポッツリと黒い点が発生したかと思うと、みるみる、それがひろがって、眼全体を空虚な穴にしてしまった。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この事については私も娘読本をあらわす時くわしく意見を書くつもりですが簡略に申せばず英国風の習慣を採用するのが上策かと思います。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ず第一は毛沼博士が自動拳銃を持っていたということ、それから第二には博士が最近二三月何となく物を恐れる風があった事だった。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
前のことをず理解しないで、後のことをのみ主張する者があるとしたら、彼は未だ方法の何物であるかを理解しないものである。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
おまけに、もえ夜具やぐぶろしきを上被うはつぱりにかけて、つゝんでた。ひとつはそれにたいする敵愾心てきがいしんくははつたので。……奮發ふんぱつした。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はじめて庭に出た彼は、昇降口の段を下りようともせずに、何よりもずこの燃えるような花を眺めた。花はたった二つしかなかった。
幽霊が墓にはいって、ず一眠りして、寝返りをうつか、うたないうちに、まだ生存している友だちは近所を去っていってしまう。
一知はマユミとの幸福な生活を夢想する前に、何よりもずマユミの両親をこの世から抹殺する手段を考えなければならなかった。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この間などは「其後そのご別に恋着れんちゃくせる婦人も無之これなく、いずかたより艶書えんしょも参らず、ず無事に消光まかり在りそろ間、乍憚はばかりながら御休心可被下候くださるべくそろ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よつかくの如き獅子身中の虫を退治せんが為めに本組合ただちに彼を除名することの決議をして貰ひたい——緊急動議の要旨はれである
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ウィインですこぶる勢力のある一大銀行に、ずいてもいなくても差支さしつかえのない小役人があった。名をチルナウエルとう小男である。
ず数えてもいいでしょう。尚この他純文壇の人で、数も多く質にも優れた、探偵小説を作って居る人に、片岡鉄兵さんがいるようです
大衆文芸問答 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
向象賢はその劈頭へきとう第一に、ず国相具志川按司の跡役に就いて大和に伺ったら、自分に仰付おおせつけられたということを書いています。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
地震直後ぢしんちよくごから大正たいしやう十三四ねんごろまでのやうに十ドル以上いじやうさがつたこともあるけれども、平均へいきんしてづ四乃至ないしさがつてると状況じやうきやうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
こういう智識もその若い学者から学ぶところが多かったと、娘は真向から恋愛の叙情を語り兼ねてずこういう話から初めたのであった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
『おまへかみらなくッては』帽子屋ばうしやしばらくのあひださもめづらしさうにあいちやんをながめてましたが、やがしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ず日本に就いて言えば、我々の代表的な二つの国詩、即ち和歌と俳句に於て、前者は主観派に属しており、後者は客観派に属している。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
およそ人種または時代を異にせる芸術に接して能くその性質を明かにせんと欲すればづそのものに密接して怪訝かいがの念を去らしむるにあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ずこれから、宇都宮、大田原の城下などを振り出しに奥州路から中仙道へ折れ、あわ好くば四国西国をも一巡して来ようかと存じておる
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそ人事を区処くしょする、まさずその結局をおもんぱかり、しかして後に手を下すべし、かじきの舟をなかれ、まときのを発するなかれ」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
検疫船けんえきせん検疫医けんえきいむ。一とう船客せんかくどう大食堂だいしよくだうあつめられて、事務長じむちやうへんところにアクセントをつけて船客せんかくげる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
完全な六華の結晶は一応見切りをつけて、ず結晶の幾つかの枝をこの銅板の面から伸び出させようというつもりなのである。
雪を作る話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
こんな場所にこれほどの片田舎があることを知つて、彼はづ驚かされた。しかもその平静な四辺あたりの風物は彼に珍らしかつた。
自分がずまっさきにその号令に服してみせる、自分が天皇に服す範を人民に押しつけることによって、自分の号令を押しつけるのである。
堕落論〔続堕落論〕 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
御城代樣ごじやうだいさま御容態ごようだいは、づおかはりがないといふところでございませうな。癆症らうしやうといふものはなほりにくいもので。』と、玄竹げんちくまゆひそめた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
徳利式とくりしき貝塚土器かひづかどきは、東北とうほくおほくして、關東くわんとうにははなはすくない。——ないことはないが、たとしたら異例ゐれいつてもい。
愛するのは自分のためではなく、他人のためだと主張する人は、ずこの辺の心持を僻見へきけんなく省察して見る必要があると思う。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
例の赤外線男が出て来そうな気配けはいだったが、しかし仄暗ほのぐらいながら電灯がついているから停電でもしない限りず大丈夫だろう。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
膝下しっか奉仕ほうじすることとなすべきなど語り聞えて東京に帰り、ず愛児の健やかなる顔を見て、始めて十数日来のさをはらしぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ふゆ季節きせつほこりいて西風にしかぜ何處どこよりもおつぎのいへ雨戸あまど今日けふたぞとたゝく。それはむら西端せいたんるからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
十月十四の午後の出来事をづ書くべきにさふらはん。その前夜ぜんや私常よりも一層眠りぐるしく、ほとほとと一睡の夢も結びかねて明かせしにさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
吾々われわれは、〔残酷〕なる銃剣の下にたおれたる斎藤内大臣、高橋大蔵大臣、渡辺教育総監に対して、深厚なる弔意を表示すべき義務を感ずる。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
しかし、全く仰せの通り私のからだは両親のもので、両親にず第一に孝行しなければなりません。それで、本当の事を皆申し上げるのです。
おかめのはなし (新字新仮名) / 小泉八雲(著)