仕立したて)” の例文
掛て飴色網代に仕立したてしは此伊賀亮が計ひなり如何に越前守此儀あしかるべきやと問詰とひつめれば越前守は言葉なく無念におもへども理の當然なれば齒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おとうさんはまたぬのをもちだして、仕立したてしごとをつづけました。むすこのほうは、ある親方おやかたのところにしごとにいきました。
此度このたび徳川の橋詰に店出みせだし仕り候家餅いへもちと申すは、本家和歌山屋にて菊の千代と申弘もうしひろめ来り候も、此度相改め新製を加へごくあめりかに仕立したて趣向つかまつり候処
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ばかなんだけれど、それでも、私は立派に水野さんを仕立したててごらんにいれます。あのおかたは、上品な生れの人なのです。他の人とは、ちがうのです。
灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おかあさんはずっとせんから、よその仕立したてものをしていました。昔から裁縫がすきで、だから上手でもあるらしく、となりの村からまでたのみにきました。
柿の木のある家 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
嬰兒あかんぼちゝみますから、あつしうでも、彼女あれにはるものの一口ひとくちはせたうござんすから。」——で、さしあたり仕立したてものなどのあつらへはないから
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「一度申訳だけに舞台でて、あとは縫ひ返して子供の外套に仕立したてるんだ、型は古いがいんだからね。」
仕立したてかけの縫物ぬひものはりどめしてつは年頃としごろ二十餘はたちあまりの意氣いきをんなおほかみいそがしいをりからとてむすがみにして、すこながめな八丈はちぢやうまへだれ、おめしだいなしな半天はんてん
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おつたは幾年いくねん以前まへ仕立したてえる滅多めつたにない大形おほがた鳴海絞なるみしぼりの浴衣ゆかた片肌脱かたはだぬぎにしてひだり袖口そでぐちがだらりとひざしたまでれてる。すそ片隅かたすみ端折はしよつてそとからおびはさんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
国中一般に行届きて、誰れも彼れも学者に仕立したてたきことなれども、今日の事業において決して行われ難し。子供に病身なる者あり、不具なる者あり。家内に病人あり、災難あり。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
てうど時候も初袷に、天ぷらの外二三種は、お好み次第に庖丁いれ、直に仕立したてて差上ぐれど、行丈ゆきたけ揃はぬ器の上、糸さへ笑ふ手際のふつゝか、只あざらけき本場の魚を、遣ふを曠衣の売出しに
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
誠にどうもお仕立したてまうし、お落着おちつきのある流石さすが松花堂しようくわだうはまた別でございます、あゝ結構けつこう御品おしなで、斯様かやうなお道具だうぐ拝見はいけんいたすのは私共わたくしども修業しゆげふ相成あひなりますとつて、卑下ひげするんだ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
氏郷其日の容儀ようぎは別に異様では無かった。「飛騨守殿仕立したては雨かゝりの脇指にて候」とある。少し不明であってくわしくは分らぬ。が、政宗の如きでは無く、尋常に優しかったのであろう。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
義兄の深切でとつぐまでをその家でおくることになったが、姉夫婦は鄙少女ひなおとめの正子を都の娘に仕立したてることを早速にとりかかり、気の強い彼女を、温雅な娘にして、世間並みに通用するようにと
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
宗助は仕立したておろしの紡績織ぼうせきおりの背中へ、自然じねんと浸み込んで来る光線の暖味あたたかみを、襯衣シャツの下でむさぼるほどあじわいながら、表の音をくともなく聴いていたが、急に思い出したように、障子越しの細君を呼んで
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頃日このあひだ亡くなつた岩村透だんは、平素ふだんから自分を巴里パリー仕立したての結構な美術家だと信じてゐた。正直なところ、巴里仕立の美術家にしては、岩村男は全くが下手だつた。
正して居竝ゐならびたり越前守は見知人みしりにんの甚左衞門善助を御近習きんじふ仕立したて寶澤に相違なくはたもとを引べし夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今日けふなほりまする、なほつて兄樣にいさんのおはかま仕立したてげまする、おめしふてげまする、それはかたじけなはやなほつてふてれとへば、左樣さうしましたらば植村樣うゑむらさまんでくださるか
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お羽織んなさいまし、気味が悪いことはございません、仕立したてましたばかりでございます。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まづ此方こちらへと、鑑定めきゝをしてもらつもりで、自慢じまん掛物かけもの松花堂しやうくわだう醋吸すすひせいを見せるだらう、掛物かけものだ、箱書はこがき小堀こぼりごんらうで、仕立したてたしかつたよ、天地てんち唐物緞子からものどんすなか白茶地しらちやぢ古金襴こきんらんで。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
荒物店あらものやをはじめたのも此家ここのことであれば、母上は吉原の引手茶屋で手のない時には手伝いにも出掛けた。女史と妹の国子とは仕立したてものの内職ばかりでなく蝉表せみおもてという下駄げた畳表たたみおもてをつくることもした。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
持て折々をり/\宿やどへ參りし事有と云に其惣助と申す者は當時何方いづかたゐるや申聞すべしといへば只今は御普請ごふしん奉行小林軍次郎樣方に中間奉公致し居候と申にぞさらばとて早速使を仕立したて御差紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
太郎たらう仕立したてるにも母樣はゝさん馬鹿ばかにするになられたらなんとしまする、ふだけのこと屹度きつとふて、それがるいと小言こゞとをいふたらなんわたしにもうちありますとてるがからうではいか
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父親ちゝおや佛壇ぶつだん御明みあかしてんずるに、母親はゝおやは、財布さいふひもゆはへながら、けてこれ懷中ふところれさせる、女中ぢよちうがシヨオルをきせかける、となり女房にようばうが、いそいで腕車くるま仕立したてく、とかうするうち
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
上杉うへすぎのおぬひと桂次けいじがのぼせるだけ容貌きりようも十人なみすこしあがりて、よみ十露盤そろばんそれは小學校せうがくかうにてまなびしだけのことは出來できて、にちなめる針仕事はりしごとはかま仕立したてまでわけなきよし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
花紅葉はなもみぢうるはしく仕立したてむすめたちが春着はるぎ小袖こそでゑりをそろへてつまかさねて、ながめつながめさせてよろばんものを、邪魔じやまものゝあにうるさし、はやてゆけねとおもおもひはくちにこそいださね
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
元來もとよりぷくつゐなかそだちて他人たにんぜずのおだやかなるいへうちなれば、さして此兒このこ陰氣いんきものに仕立したてあげるたねけれども、性來せいらいをとなしきうへこともちひられねば兎角とかくもののおもしろからず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
書生しよせい千葉ちばさむかるべきをおぼしやり、物縫ものぬひのなかといふに命令いひつけて、おほせければそむくによしく、すこしはなげやりの氣味きみにてりし、飛白かすり綿入わたい羽織はをりときの仕立したてさせ、あくたまふに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)